278 金沢大学十全医学会雑誌 第63巻 第2号 278−285 (1959)
制癌に関する実験的研究
第9報 異処的投与法によるBis(2−hydroxy−3,5−dibromophenylazo)
一n−propylphloro91ucino1〔Azo−106〕の抗腫瘍性の検討米
金沢大学医学部薬理学教室(主任 岡本 肇教授)
金沢大学結核研究所化学部(主任 越村三郎教授)
宮 地 民 子
(昭和34年8月18日受付)
*本研究費の一部は文部省科学研究費癌綜合研究の補助金によった.
2,2 一Dihydroxyazobenzene系諸誘導体を指向し た癌化学療法の実験的研究において,さきに平田1)
によってBis(2−hydroxy−3,5−dibromophenylazo)一n−
propylphloroglucino1〔Azo−106〕がエールリッヒ腹水 癌移植マウスに対し顕著な抗腫瘍性効果を呈する物質 であることが見出され,次いで聞もなく本物質は又吉 息肉腫,サルコーマ1802)及び白血病SN 363)に対 しても効果的であるという実証**がもたらされた.
ところで今,これら研究における実験方法について 見ると,そのいずれにあっても腫瘍細胞を腹腔内移植 した動物に対し被検物質の腹腔内投与を行なうという 方式が適用されているのであるが,このことと,現在 悪性腫蕩に対する実験化学療法研究の分野では決定的 なスクリーニング法なるものがなく,効果判定の手段 として各人により各様の方式が提案,採用されている 状態で4)一9)あることに鑑みるとき,Azo−106にあっ ても亦その制癌物質としての性格に関する諸他の実験 方式による検討が要請されていることは申すまでもな いところである,
即ち私は前記平田等の研究に続行し,ここに腫瘍細 胞(エールリッヒ癌並びにサルコーマ180)の移植止 処に対しAzo−106の投与部位を異にせしめるという 方式による吟味実験(即ち換言すればAzo−106には 流血を介しての効果性があるか否かの考査)に着手し
たわけである.
以下その成績を報告する.
工.腹水腫瘍における実験
吉田肉腫,エールリッヒ癌及びサルコーマ180等の 腹水腫瘍細胞を腹腔内移植した動物に対し,移植24時 間後からAzo−106を直接腹腔内に投与するという方 式の実験で,宿主動物における生命の著しき延長或い は完全治癒の成績が得られたことについては既に報告 されたところである.
しからばかかる腫瘍移植動物に対し,Azo−106を直 接腹腔内に投与せずに,腫瘍細胞移植の場所とは蕪関 係な遠隔の部位に投与したらばどうであろうか?
本問題に対する吟味検:討の第一着手として,エール リッヒ癌及びサルコーマ180を対象とし,まずマウス に対しそれぞれの腫瘍細胞の腹腔内移植を行ない,次 いでAzo−106を皮下投与或いは西明投与して治療す る実験を行なった.
A.腫瘍細胞の腹腔内移植マウスに対するAzo−106 皮下投与の治療実験
実験方法
1.使用動物:体重17〜219の純系マウス(ddN,
δ)を使用し,1群10匹宛とし,10群を用意する.
2.Azo−106溶液の調製:Azo−106の12.Omg
**エールリッヒ腹水癌移植動物を対象とするAzo−106, Thio−TEPA, BCM,6−Mercaptopurine, Carzinophyllin,
Mitomycin C,及びActinomycin J等の制癌実験の成績については文献2)を参照のこと.
Experimental Anticancer Studies. Part 9 Test for Tumor−inhibitory Action of Bis(2−
hydroxy−3,5−dibromophenylazo)一n−propylphloroglucion1(Azo−106)Administered in a Part of Body Remote from the Site of Tumor Implantation in Mice. Tamiko Miyaji Department of Pharmacology(Director:Prof. H. Okamoto), School of Medicine, Kanazawa University;
Departnlent of Chemistry(Director:Prof. S Koshimura), Researcb Institute of Tuberculosis,
Kanazawa University
を秤取し,これを:NNaOH 2〜3滴の添加のもとに 滅菌生理的食塩:水15ccに溶解せしめた(0.2mg/0.25
cc).
3.腫蕩細胞懸濁液の調製3
i)エールリッヒ癌細胞懸濁液=約1,500万個の エールリッヒ癌細胞を腹腔内移植した純系マウスか ら,移植10日目に腹腔穿刺により潴溜腹水を採取し,
これを約2倍量の滅菌食塩水(少量のペニシリン添加)
中に混和す.この混液についてまずcell countを行な い,次いでその腫瘍細胞数に応じて4,000万/ccとな るように滅菌食塩水を追加した.即ち本懸濁液0.2cc は癌細胞800万個を含有す.
ii)サルコーマ180細胞懸濁液:サルコーマ180 細胞の約2,000万個を純系マウスの腹腔内に移植し てから14日目に腹水を採集し,これをエールリッヒ癌 細胞懸濁液調製の場合と同様に処理して5,000万/cc 懸濁液とした.即ち本懸濁液0.2ccはサルコーマ180 の細胞1,000万個を含有す,
4.実験術式:
i)移植: 5群の動物に対し一斉にエールリッヒ 癌の細胞懸濁液0.2cc(移植細胞数は800万個)宛の 腹腔内移植を行ない,他の5群の動物に対しては一斉 にサルコーマ180の細胞懸濁液0.2cc(移植細胞数は 1,000万個)宛の腹腔内移植を行なう.
ii)Azo−106の投与:
a)エールリッヒ癌細胞移植動物群のうち1群(V)
を対照とし,この群の各動物には移植1時間後に滅菌 食塩水0.25cc宛の第1回背部皮下注射を行ない,翌
日より1日1回宛6日間に亘って同様の注射を行な う.而して他の4群1,皿,皿及びW)は治療実験用 とし,腫蕩細胞を移植してから工群では1時間後に,
皿群では24時間後に,皿群では48時間後に,又W群で は72時間後に.それぞれの動物に対しAzo−1060.2mg/
o.25cc(即ちMTD≒o.8mg/20g mouse, sb.の砥量:)
をもってする第1回の皮下注射を行ない,以後1日1 回宛6日間連続して同様の処置を行なう.
なお注射は背部皮下の左右に対し隔日交互せしめて 行なった.
b)サルコーマ180細胞の移植動物群における治療 実験も亦前記a)の方式に準じて行なった.
5.判定:全実験動物は最後(第7回目)の注射を 行なってから以後何らの処置をも施さずに正常の飼育 管理下に置き,その生存状況を一途中発死したマウ スは剖検:によって腫瘍死(腹水潴溜並びに腫瘍浸潤の 有無及びその程度)か否かを確かめながら一逐日観 察した.而して最後に晶群についてその動物の平均生
存旧数(及び50%生存日数)を求めた.
実験成績
Fig. Iaはエールリッヒ癌の腹腔内移植マウスに対 するAzo−106(0.2mg/day/mouse)の皮下投与にお ける実験の成績を生存曲線をもつて示したものであ
る.
即ち本図では
1)対照群(V)マウスは癌細胞移植後18日以内に 全部腫瘍死しており,その平均生存日数は14・9日
(50%生存日数は15日)であるに対し,
2)移植1時間後及び24時間後からAzo−106を皮 下投与した実験群1及び皿にあっては動物の平均生存 日数はそれぞれ19.7日及び22・2日(50%生存日数 はそれぞれ18日及び22日)であって,軽度ながら平均 生存期間の延長が現われている.
3)しかし移植48時間後及び72時間後から治療を開 始した実験群皿及びIVでは,そのいずれにあっても生 存日数の関係においては対照群のそれに対比して全く 差異するところがないという所見である.
而してFig. Ibはサルコーマ180の腹腔内移植マ ウスに対するAzo−106の皮下投与における実験成績 を示したものであって,この場合は前記工一ルリッヒ 癌細胞における程ではないが,サルコーマ180移植1 時間後並びに24時間後にAzo−106による治療を開始
した実験群1及び皿において平均生存期間が僅かに延 長しているを見る.
B.腫瘍細胞の腹腔内移植マウスに対するAzo−106 の経ロ投与の治療実験
実験方法
1.使用動物:ddNマウス(17〜20g,δ)を使用,
1群10匹宛とし治療並びに対照の2群を用意する.
2.Azo−106内服液の調製=Azo−106はトラガン ト漿をもつて乳剤となして経口的に投与す.即ちま ずAzo−106の45mgを乳鉢にとり2〜3滴の95%ア ルコールをもつて研磨細粉化す.次いで,これに0.5
%トラガント漿の少量宛を加えつつ研磨の操作を続 け,最後にトラガント漿をもつて全量15ccとす.本 乳剤0.5ccはAzo−1061.5mgを含有す.
本乳剤はこれを1ccの注射筒に吸引し,その0.5cc 宛を特製の高富細管を介して直接試獣の胃中に注入せ しめた.対照群動物には0.5%トラガント漿0.5cc宛 を投与す.
3.腫瘍細胞懸濁液の調製:前項Aにおけると同 様にしてエールリッヒ癌細胞2,500万/cc及びサルコ
ーマ180細胞4,000万/ccの懸濁液を調製す.
4.実験術式:
280 宮
i)まず2群の全動物に対し一斉にエールリッヒ癌 細胞懸濁液0.2cc宛の腹腔内移植を行なう.移植6 時間後に治療群に,あってはAzo−106懸濁液0.5cc
(L51ng Azo−106/0.5cc/1uouse)をもってする第i回 の経論投与を行ない,以後同様の処置を1日1回宛2 日聞連続せしめ,4日目に1日の休止日を置き,第5 日目から3日間に亘り1日1回Azo−106懸濁液0.5 cc宛の投与を行なう.
対照群に.対しては同様の方式で0.5%1トラガント漿 0.5cc宛の経口投与を行なう.
ii)サルコーマ180細胞移植動物群に.おける治療実 験も亦上記i)の方式に準じて行なった.
5.判定:前述の1−A項実験と同様.
実験成績
Fig.五a及びII:bに示したように,エールリッヒ癌 における実験では治療動物群の平均生存臼数は対照動 物群のそれに対比して2日間延長しており,又サルコ ーマ180における実験では治療群の平均生存日数は 対照群のそれに対比して4日間程延長しているを見
る.
而してこの実験ではAzo−106それ自体を直接トラ ガント喪中に1.5mg/0.5ccに懸濁せしめたものを内 服せしめたのであるが,他方,Azo、106を一旦脳a一 塩の濃厚水溶液とし,次いでこれを0.5%トラガント 漿に1.2mg Azo−106/0.3cc(即ちMTD≒4mg/209 mouse, pef os,の%量)の濃度としたものを内服せし めた実験でもFig.∬a及び皿bに類似した成績が得
られた.
皿.結節型腫塩における実験
前項工のAzo−106による治療実験は,それが皮下 投与法によったものたると北画的投与法によったもの とを問わず,いずれも腹腔内に腫瘍移植を行なった動 物を対象として行なわれたのであるが,しからば皮下 結節腫瘍の動物を対象とした場合は如何。即ちこのこ とに対する検討とし七,腫瘍細胞の鼠隈部皮下移植に よって起る腫瘤形成に及ぼすAzo−106の影響をその 腹腔内投与と背部皮下投与の両場合について考査し
た.
A.腫瘍細胞の皮下移植マウスに対するAzo−106 腹腔内投与の治療実験
実験方法
L実験材料=体重18〜2igの純系マウス(d己:N)
を使用す.而して注射用Azo−106溶液(0.2mg/0.25 cc),及び腫瘍細胞懸濁液(エールリッヒ癌細胞では 4,800万ノcc,サルコーマ180細胞では5,400万/cc)
地
は前項i−Aにおけると同様にして調製す.
2.・実験術式;
i)エールリッヒ癌における実験:まず5群(1群 10匹宛)の動物に.対し一斉にその左鼠隈部皮下に960 万細胞/0.2㏄/mouseの移植を行なう.次いで1群 では1時間後に,皿群では24時間後に,皿群では48 時間後に,F群では72時間後に, Azo−106の0・21ng/
0.25君cγ加σuse〈LD50二〇.8m君/2091箪ouse2」・P・の%
量)をもってする第i回目の腹腔内投与を行ない,以 後各群に対しそれぞれ1肩1回宛Azo−106の0.2m9
/0.25cc/mouseの腹腔内投与を6日間に亘って連続
せしめた.
なお腹腔内注射は毎常右側腹部より行なった.
ii)サルコーマ180における実験: i群が12匹宛 であり,サルコーマ180の移植細胞数が810万/0・15 cc/mouseである点が異なっているだけで,その他の 方式は前記i)と同様.
3.判定;エールリッヒ癌における実験では12日 目に,又サルコーマ180における実験では移植後14日 目にそれぞれにおける全群の動物をクロロフォルムで 殺して,腫瘤の摘出を行なう.而して各摘出腫瘤につ いては,まずその重量を測定し,各群における平均重 量を求む.:最後に各腫瘤の大きさの相対的関係を示す べく摘出腫瘤を魚群毎に整列せしめて撮影す(Fig.
皿a及び皿bに示した腫瘤の大きさはこの写真像に
基づいたもの).
因に結節型腫瘍(solid tumor)を対象とする薬物の 抗腫瘍試験では各研究者によってそれぞれの実験方式 なり或いは効果判定の基準としている点で異なってい るところがあるが,一般に効果判定には腫瘍の直径を caliperで測定し4),実験群平均値/対照群平均値の百 分率が求められていた場合が多い.しかしながら最近 腫瘤の平均重量比をもつて効果の有無を表示せんとす る傾向もあるので,本研究ではこの表示法を採用する ことにした訳である10)・11).
実験成績
Fig.皿aはエールリッヒ癌の結節型腫瘍形成に対す るAzo−106の腹腔内投与による治療実験の成績を展 示したものである.
まず本座を一目して腫瘤像(size)の大きさの関係 では大体
V群(対照)≧IV群〉皿群〉皿山≧1群
の順であることが感知されよう.而して同様の関係が 又各自における腫瘤の平均重量の方からも看取され る.即ち対照群における平均重量が0.679であるに 対し,治療開始が移植1時間後に行なわれた1群にあ
つては,対照群の約駈即ち0.169であるに過ぎず,
しかも24時間後治療開始の国論においても亦大体これ に類する成績が得られている.しかし治療開始が移植 48時間後に行なわれた晶群では成績が劣り,平均重量 は0・29g(即ち対照群の約施)の値を示し,更に72時 間後からの治療群(IV)では,平均重量は0.619で 対照群における値との間に殆んど差異がないといった 所見である.
他方,サルコーマ180の結節型腫瘍形成に対する Azo−106の腹腔内投与における実験成績はFig.皿b に示した.即ち本図では移植1時間後から治療を開始
した1群では対照に較べて明らかに成績良好であり,
平均重量では前者が0.339で,後者の0.929に対し て約%に過ぎないこと,及び治療開始が移植24時間 後,48時問後,及び72時間後に行なわれた皿,皿及び IV群では,それぞれの成績間に大した差異はないが,
それでも対照群に比すればよい成績(平均重量比は約
%)が得られていることに注目すべきであろう.
B.腫瘍細胞の皮下移植マウスに対するAzo−106 皮下投与の治療実験
実験方法
1.使用動物3体重17〜199の純系マウス(ddN)
を使用,1群8画面とする.
2.Azo−106溶液の調製3前項1−Aにおけると 同様にして調製する.
3.腫瘍細胞懸濁液の調製:前項1−Aに準じて,
エールリッヒ癌では1,200万/0、2cc/mouse,又サルコ ーマ180では900万/0・2cc/mouseなる如くした.
4.実験術式3第皿一A項の実験方式に準じて行 なう.即ち腫島細胞懸濁液0.2ccをマウスの密婦隈 部皮下に移植.Azo−106の1回の投与量は0.2mg/
0.25ccとし,注射部位は背部皮下.移植後から第1 回のAzo−106注射までの時間がそれぞれ1,24,48 及び72時間なる4群を置き,いずれも以後1日1回宛 6回のAzo−106注射(背部皮下の左右へ各回交互に)
を行なう.
5.判定3前項皿一Aに準ず.但し腫瘤重量の測 定はエールリッヒ癌及びサルコーマ180のいずれの場 合にあっても移植後3週間目に行なった,
実験成績
Fig. IVaはエールリッヒ癌細胞の皮下移植マウスに 対し,Azo−106を皮下投与した実験の成績である.
即ち対照群(V)における腫瘤の平均重量が2.349 であるに対し,Azo−106の投与が移植1時間後より行 なわれた1群にあっては約施の0.839,又治療開始が 24時間後(11群),48時間後(皿群),及び72時間後
(IV群〉のものではいずれも%程度(それぞれ1.069,
LO19及び1.079)という成績であることを見る.
しかもこれと大体同様関係の成績がFig、 VI b提示 の如く,サルコーマ180における実験でも得られてい た(腫瘤の平均重量は1群で0・639,∬群で0.889,
皿群で1.15g, IV群でL10gであるに対し,対照の V群では1.999).
総括並びに考按
Table Iは以上各項に亘って述べてきた成績につい て,それらの相互関係の理解に便ならしめるために総 括したものである.
今本表を一瞥すると,今回行なわれた異処的投与法 によるAzo−106の七一ルリッヒ癌並びにサルコーマ 180に対する抗腫瘍性の検討では
1)腫瘍細胞の腹腔内移植マウスに対するAzo−106 の皮下投与による治療実験(工一A)
2)腫瘍細胞の皮下移植マウスに対するAzo−106 の腹腔内投与による治療実験(皿一A),並びに 3)腫瘍細胞の皮下移植マウスに対するAzo−106 の皮下投与による治療実験(皿一B)
のいずれにおいてもAzo−106(投与量は0.2mg/
day/mouse,7回)による治療開始の時間が早期であ るもの程治療成績が良好であるという点で一致してい るのであるが,これはまさにAzo−106の抗腫瘍性の 顕現であること,換言すれば即処的に投与されたAzo
−106が流血を介して腫瘍細胞の増殖に対し抑制の効 を示したためであることの証左といえよう.
他方,実験1−BのAzo−106の経口的投与による 治療実験にあっては,
1)治療開始が腫瘍細胞の腹腔内移植後6時間目で ある場合についての考査のみであること,及び 2)治療動物群の対照動物群に対する平均延命日数 が2〜3日(Table工では士)であること
に想到するならば,もしこの実験のみが単独に行な われたような時は,或いはこの成績は実験誤差の範囲 内にあるともいえよう.しかし,}A,∬一A及び 丑一Bの各抗腫瘍実験の成績から推して,この経口投 与の実験成績も亦Azo−106の抗腫瘍性の現われであ ると解しても支障がないところであろう.
ところで,ここに注記すべきことは,さきに平田及 び岡本等はエールリッヒ癌細胞を腹腔内に移植した後 24時間を経てからAzσ一106の腹腔内投与による治療 を行なった制癌実験で生存率に.おいて60〜90%にも 及ぶという顕著な抗腫瘍成績を得ているに対し,今回 のAzo−106の異処的投与による制癌実験ではその抗
282 宮 地
腫瘍成績が甚だしく劣っていることであろう.しかし
今,
1)前者のような腹腔内移植に対する腹腔内投与の 実験方式では,たとえ24時間内に腫瘍細胞の一部が既 に組織内へ侵入したものがあろうとはいえ,大部分の 腫瘍細胞は高濃度のAzo−106の直接的影響を蒙るで
あろうこと,しかるに
2)後者のようなAzo−106の異言的投与による制 癌実験では,Azo−106が一旦投与箇処から血流に吸 収され,しかる後遠隔部位にある腫瘍細胞に作用する のであるから,Azo−106の作用濃度は甚だしく稀薄 であろうこと,
に思いを致すならば,両者間で抗腫蕩物質の効果が 懸絶して現われることはむしろ当然のことと理解し得 るところであろう.
結 語
本研究ではBis(2−hydroxy−3,5−dibromophenyi−
azo)一n−propylphlofoglucinol〔Azo−106〕について,
これを腫瘍細胞(エールリッヒ癌並びにサルコーマ 180)の移植部位から遠隔した体部に適用する時,果 して抗腫瘍効果を期待し得るであろうかについて次の ような諸方式での考査が行なわれた:
1.腹水腫瘍を対象とし,延命効果で判断する実験 A.腫蕩細胞の腹腔内移植マウスに対するAzo−106 の皮下投与の影響
B.腫瘍細胞の腹腔内移植マウスに対するAzo−106 の経口投与の影響
皿.結節型腫瘍を対象とし,腫瘤増大に対する抑制効 果で判断する実験 .
A.腫瘍細胞の鼠隈部皮下移植マウスに対する Azo−106の腹腔内投与の:影響
B.腫瘍細胞の鼠隈部皮下移植マウスに対する
Azo−106の背部皮下投与の:影響
そして,以上の各検討実験を通じて,Azo−106によ る治療開始が早期である場合に生存日数の延長,或い は腫瘤増大の軽少が招来されるという点で一致してい
る成績が得られ,こ、こにこれらの成績に対する多角的 判断の結果としてAzo−106には流血を介してもエー ルリッヒ癌並びにサルコーマ180に対し抗腫瘍効果を 呈する性能があると論結されるに至った訳である.
丈 献
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Abstract
Using Ehrlich ascites carcinoma, and Sarcoma 180, as the implantation material to mice,
followig series of anticancer experiments were designed:
1.Experiments on animals implanted with tumor cells intraperitoneally.
a)Ef〔ect of subcutaneous administration of Azo−1060n the life−span of the animals.
b)Effect of oral administration of Azo−1060n the life−span of the animals.
2.Experiments on animals implanted with tumor cells subcutaneously in the left groin.
a)Effect of illtraperitoneal administration of Azo−1060n the growth of tumor.
b)Effect of subcutaneous administration of Azo−1060n the growth of tumor.
Summing up the results obtained in all these experiments(cf. Table I), it was concluded that Azo−106, even when it is administered at a place distant from the tumor, exerts an inhibitory activity against the tumors.
Table I・ Summary of Results
Exp. No.
I
I[
A
B
A
B
Kind of tumor
implanted
Ehrlich .carcmoma
Sarcoma 180
Ehrlich .carclnoma
Sarcoma 180
Ehrlich carcinoma
Sarcoma 180
Ehrlich carcinoma
Sarcoma 180
Experimental conditions Site of
tumor cells implantation
=>as
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Results of anticancer experiments The time of begining of
treaement with Azo‑106 tumor‑cells implantation
after
1 hr
+
±
.
.
'i‑l'
+ + +
6 hrs
.
.
±
±
.
.
,
.
24 hrs
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±
.
.
+
±
+ +
48 hrs
.
.
+
±
+
± 72 hrs
pt
.
.
pt
±
+
±
Control
.
‑
Remarks
O.
veal'SgS"g/g;/ts/ti'an‑..111"s, o 1
i・9k.i,g,kvg
U o.
/g,g,,/L.zlk/lg,1'
・,g・.viliiiglZiti,
Fig.la Effect cif Subcutaneous Adminislrrcition of Azo‑106 ofi AscMc Tumor df Ehrtich thrcinopmq in SVIice
lnotatatioft : Eignt miUioft tumor ceUs vvere imptartted to each. ntotLse }rttrtLperitoneatly.
Tretrtmeptt : Each animat of the tnded groups receJved a daity smbctitineous dose di' o.2mg AEe‑106 (,n o 2scc) fer 'T saccessive days.
:ach opritrot antmat received a datty sul)cutafteous iqjectibn of o.2S cc tif' satme for Y successive days.
,Enpertntefttat sroup
DurtztionTOofexperimefttindays2030 su.Wrd
C'1.) 1oo
Averpggsurvtyat
days
t‑'‑'N 1 so 19.7
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Fig,1b Elrffedt csf Subcutaneoug AdkiAislltzrtLiott df A,ED‑ I06 on Ascitic 'fumor (if Sarcoma lgO ift lvlice
g
1ftocuLatien ; Ten milhon tumor cetts wete inpta"ted to eack ntouse
'
LatroperitoneaUy
TreatmefrtJ : Each attiptaL ofVie treetea crours receivedi a daity subcntaneeus dese uf o2 mg A2o ‑I06 (in o2Scc ) forV successive days, Each coftrroL aftinat received a daily subcutafteous injeetion of olgcc df sahne fbr Y suceessive dqys
Experiaerttak
9reuP Duratio"ofexper;wtentiftdays
Su,v,wtrtLte
<e!o) Average 6urVIVof days
I(1hr)
2Ll
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