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上路プレートガーダー下フランジ山形鋼疲労き裂の発生原因推定

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Academic year: 2022

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写真1 下フランジ山形鋼の疲労き裂

図1 ソールプレートの摩耗等によるき裂発生

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(隙間)

図2 山形鋼の首振り

上路プレートガーダー下フランジ山形鋼疲労き裂の発生原因推定

西日本旅客鉄道株式会社 正会員 ○西田 寿生 西日本旅客鉄道株式会社 正会員 木村 元哉 大阪大学接合科学研究所 正会員 金 裕哲 1.はじめに

鋼鉄道橋で数多く見られる変状として,上路プレートガーダー

(リベット構造)の支承部下フランジ山形鋼(以下,山形鋼とい う)に生じる疲労き裂が挙げられる(写真1).このき裂の発生原 因としては,端補剛材下端部が腐食し,鉛直力を山形鋼に伝達で きなくなり,さらにソールプレートが摩耗することで,山形鋼の コーナー部に高い面外曲げが生じ,き裂発生に繋がることが一因 として考えられる1)(図1).著者らはき裂の発生原因として山形 鋼と端補剛材接触部の摩耗に着目し,山形鋼上面の摩耗(写真2 参考)を模擬した試験体を用いて疲労試験を行った.その結果,

山形鋼上面に摩耗があり,かつ,山形鋼上面に高い引張応力が生 じる条件において山形鋼上面からき裂が発生し,摩耗のない状態 や圧縮応力下ではき裂が生じないことを確認した2)

き裂の発生原因としては,ソールプレートや山形鋼の摩耗の他,

腐食による応力集中,沓座の損傷や下部工の沈下・傾斜等による 支点部のバタつきに伴う山形鋼の首振り挙動(図2)の発生等が 考えられる.しかしながら,き裂発生の主たる原因や,き裂発生 に至るメカニズムについては現在のところ十分に解明されていな い.今後,き裂を適切に補修し,将来に亘って適切な維持管理を 継続して行うためには,き裂の発生原因を解明し,それらの原因 に応じた措置を施すことが肝心である.本稿では山形鋼のき裂発 生部についてミクロ観察等を行い,き裂の発生・進展のメカニ ズムについて検討した.

2.調査内容

調査は疲労き裂が生じたために交換した山形鋼を対象に行っ た.この山形鋼は1928年製作の橋梁にき裂が生じたものであり,

山形鋼の設計上の断面寸法は152.4×152.4×12.7mmである.

調査手順としては,はじめに塗膜や錆除去処理を行い,磁粉探 傷試験や拡大鏡によりき裂の有無を調査した.その後,分割切断,

き裂部の破面解放を行い,き裂の断面や破面について,光学式顕 微鏡を用いて調査を行った.

3.調査結果

写真2に山形鋼き裂部の分割切断・き裂破面解放状況を示す.

なお,山形鋼上面における端補剛材との接触箇所では摩耗が見ら れ,山形鋼の板厚が7~9mmまで摩耗減肉していた.

山形鋼切断面を写真3に示す.き裂は山形鋼の内角コーナー部から鉛直方向に貫通している.また,写真4 にはき裂先端付近の,写真5には端補剛材付近(き裂起点付近)におけるき裂破面解放部の写真と模式図を示 す.写真4の山形鋼表側や写真5のき裂破面に凹凸があることが特徴的である.これは山形鋼の表面から複数 のき裂が発生し,隣接するき裂同士が短絡したものと考えられる.なお,写真4ではき裂が表裏から発生し,

板厚中央付近で繋がり,稜線のような形状を成しているが,写真5のき裂起点部付近では稜線は見られず,き 裂は表裏片面から発生し,反対面へ進展したことが伺える.き裂破面は腐食が酷く,破面からき裂進行方向は 確認できないが,後述する調査結果より,き裂は表面腐食孔より発生し,裏面へ進展したものと推定している.

次に山形鋼表面の状況について観察結果を図3に示す.山形鋼の表面には腐食孔が複数観察されたが,ウェ ブとの接触面やソールプレートとの接触面においては,腐食孔は殆ど見られなかった.これは山形鋼がウェブ

キーワード 鉄道上路プレートガーダー,疲労き裂,下フランジ山形鋼,破面調査 連絡先 〒532-0011 大阪市淀川区西中島5-4-20中央ビル2F TEL: 06-6305-6958

(端補剛材)

下フランジ

山形鋼 疲労 腐食

き裂

(シュー) ソールプレート 摩耗

面外曲げ

支点部に隙間が ある場合

(列車通過時)

土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)

‑137‑

Ⅵ‑069

(2)

.

腐食生成物

.

・鋼材表面に腐食孔

・腐食孔からき裂が発生進展

・き裂内部は腐食進行

・先端からき裂進展

写真6 腐食孔からのき裂の進展 0.4mm

2.5mm 0.4mm

1.1mm

0.4mm

0.9mm やソールプレートと密着しているため,腐食しにくい

ことや,ソールプレートとの接触面においては摩耗に より,腐食孔が消失することも一因と考えられる.ま た,写真4のき裂破面において,裏側からのき裂には 明確な凹凸が見られなかったが,これはき裂が橋軸方 向に長く進行したことにより,当該箇所では相当に大 きい応力振幅が生じ,腐食孔を必ずしも起点とせずに 疲労き裂が発生したものと推定される.

写真6には光学式顕微鏡による腐食孔の拡大写真を 示す.写真6はそれぞれ別の位置での写真であるが,

このように腐食孔からき裂が発生・進展していること が伺える.また,写真6の中段では,き裂の枝分かれ が見られるが,応力に起因するき裂であれば,き裂が 途中で分岐することは考え難く,このことからも,山 形鋼のき裂は,腐食を伴い進展していることが分かる.

4.まとめ

き裂破面詳細調査により,以下のことが分かった.

(1)山形鋼表面には腐食孔が複数確認された.

(2)疲労き裂は山形鋼表面の内角コーナー部付近の腐食 孔を起点に,複数のき裂が発生し,腐食の進行ととも にき裂は進展している.なお,き裂の進展に伴い隣接 するき裂同士が短絡し,破面の凹凸が形成されている.

今回の調査で,き裂発生の起点や進展のメカニズムに ついて推定できた.今後は,別の橋梁における山形鋼の き裂について調査を行い,同様の現象が生じているかを 確認したい.

参考文献

1) 杉本一郎,小林裕介,市川篤司:溶接付加物が鋼リベット桁の疲労に 及ぼす影響と延命化手法,鉄道総研報告,20-5,2006.5

2) 西田寿生,金 裕哲:鉄道上路プレートガーダー下フランジ山形鋼 に生じた疲労き裂発生要因に関する検討,土木学会第 66 回年次学術 講演会,Ⅰ-518,2011

溶接補修跡

写真3 山形鋼切断面(き裂先端付近)

写真2 山形鋼の分割切断・破面解放状況 (写真4)

破面解放 (写真5)

表裏から き裂が発生・進展

摩耗と腐食により 残存板厚 3mm (写真 3)

山形鋼A

き裂 L=465mm

端補剛材接触部.

摩耗により,

板厚7~9mmまで減肉 (側面(ウェブ面))

(下面)

()

写真4 き裂破面

(き裂先端付近)

写真5 き裂破面

(端補剛材付近)

表面から き裂が発生・進展

(推定)

き裂破面に 凹凸あり

図3 山形鋼表面の腐食孔(模式図)

腐食孔

(ソールプレート)

(山形鋼)

土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)

‑138‑

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参照

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