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ハンチ取付けによる箱断面鋼製ラーメン橋脚隅角部の疲労強度向上

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Academic year: 2022

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図-3 試験セットアップ

ハンチ取付けによる箱断面鋼製ラーメン橋脚隅角部の疲労強度向上

東京工業大学 フェロー 三木 千壽※1 東京工業大学 学生会員 ○田辺 篤史※1

1. はじめに

都市内高速道路の鋼製ラーメン橋脚隅角部で,平成9年の点検時に疲労 損傷が発見され,それ以降多数の疲労損傷が確認されている1).隅角部 のフランジ端部には,せん断遅れ(shear lag)によって高い応力が発生する ことが知られており2),この疲労き裂はそのように高い振幅応力が作用 するため生じたものと考えられている1).そのため,隅角部フランジ端 部に発生する応力集中を低減させることが,隅角部の疲労強度を向上さ せる方法として有効と考えられる.そこで,本研究では隅角部フランジ 端部にハンチを取り付けて応力集中を軽減することによる疲労強度向上 について,大型試験体の疲労試験により検討を行った.

2. 疲労試験

図-1に試験体の寸法を,図-2にハンチの詳細を示す.図 -3に試験のセットアップ状況を示す.図-4にゲージの貼付 位置を示す.溶接継手部を評価するために,実橋脚の約3 分の1サイズで試験体を2体作成した.鋼材はSM490材を用 い,継手部は完全溶け込み溶接により製作した.試験体の うち1体は,本体の溶接を行った後,ハンチを溶接により取

り付けた.この時,ハンチのすりつけ部に溶接欠陥が入りにくい様にす るためハンチの先端部を長くのばして,溶接を行った後グラインダーに より整形した.また,応力分布をみるためにひずみゲージを貼付した.

疲労試験における最大荷重は,奥村らによる算定式2)を用いて計算し

た応力がSM490材の降伏応力となる荷重として790kNとした.疲労試験

の荷重範囲は,図-4に示すターゲットゲージの応力が,ハンチ無しの場 合に70MPaとなる荷重として354kNとした.この応力(70MPa)は,実橋脚 において行われた3日間の応力頻度測定と25t荷重車による載荷試験の結 果(表-1)をもとにして決定した.また,アクチュエータの変位が,試験 開始時より10mm増加した時点を持って試験終了とした.

キーワード: 疲労,き裂,隅角部,ハンチ,応力集中

※1 東京工業大学 東京都目黒区大岡山2-12-1 Tel:TEL03(5734)2596

図-1 試験体寸法

図-2 ハンチ詳細

図-4 ゲージ位置 表-1 応力頻度測定結果

20 50 20 50

応力極大値 (MPa) 56 54 56 54 応力極小値 (MPa) -14 -10 -10 -10 最大応力振幅 (MPa) 68 64 66 62

21 20 20 17

25t車載荷時発生応力(MPa) 応力頻度計測

フランジ端部からの距離(mm) 柱向き左側 柱向き右側 項目

土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)

‑325‑

I‑163

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3. 実験結果

図-5に354kN載荷時の梁フランジの応力分布を示す.図-5には比較のた

めに図-6のモデルを用いたFEM解析による応力を合わせて示す.ハンチ取 付けにより,フランジ端部の応力集中を6割程度にまで軽減できている.

図-7および図-8に疲労き裂の状態を示す.ハンチ無し試験体は,1.7万回 時に引張側フランジの端部でき裂が発見され,13万回時でき裂長が50mm に達し,40万回で試験を終了した.ハンチ取付け試験体では85万回時に疲 労き裂がハンチ先端部付近の溶接ビード止端部で発見され,105万回でき裂 長が50mmに達し,140万回で試験を終了した.表-2に疲労き裂発見時のサ イクル数・き裂長および,き裂長50mmにおけるサイクル数について示す.

これより,き裂発生寿命が10倍以上に延びていることがわかる.

き裂長50mmの時点で整理したS-N線図を図-9に示す.ハンチ取付けによ り疲労強度3)がH等級からE等級まで,3等級向上している.

4. 結論

箱断面が直交する隅角部のフランジ端部にハンチを取り付けることによ り,応力集中を6割程度まで軽減することができ,隅角部の疲労強度をH等 級からE等級まで向上させることができる.

謝辞:本研究は東京工業大学創造プロジェクト研究体 SIG8(鋼構造物のレ トロフィッティング研究会)の一環として行われました.ここに記して感謝 の意を表します.

参考文献:

1) 森河久,下里哲弘,三木千壽,市川篤司:箱断面柱を有する鋼製橋脚に発生した 疲労損傷の調査と応急対策,土木学会論文集,2002.4

2) 奥村敏恵,石沢成夫:薄板構造ラーメン橋脚隅角部の応力計算について,土木学 会論文集,pp1-18,1968.5

3) 日本鋼構造協会:鋼構造物の疲労設計指針・同解説,技報堂出版.

柱 梁

完全固定

ハンチ無し

ハンチ付き P=354kN

柱 梁

完全固定

ハンチ無し

ハンチ付き P=354kN

図-6 FEMモデル(シェル要素)

図-7 ハンチ無し試験体

10万回時き裂発生状況 図-8 リブ取付け試験体(上側) 100万回時き裂発生状況

図-9 S-N線図 図-5 溶接止端部付近の

梁フランジ応力分布

-200 0 200

0 50 100 150

354kN載荷時 溶接止端部付近 (柱・梁フランジの交差部から20mm)

フランジ内位置 (mm)

梁軸方向応力 (MPa)

ハンチ付き FEM ハンチ無し FEM

公称応力 ハンチ付き 実験値 ハンチ無し 実験値

表-2 き裂長と載荷回数の関係

き裂長50mm 載荷回数 き裂長 載荷回数 ハンチ無し 3.6万回 16mm 13万回 ハンチあり 85万回 5mm 105万回

き裂発見時

104 105 106

10 50 100 500 1000

応力範囲 (MPa)

サイクル数 A

C B E D G F

H

ハンチ無し

ハンチあり 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)

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参照

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