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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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氏 名 藤居 一輝

授与した学位 博 士

専攻分野の名称 工 学

学位授与番号 博甲第 5736 号

学位授与の日付 平成30年 3月23日

学位授与の要件 自然科学研究科 応用化学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

学位論文の題目 Development of Highly Active Nucleophilic Catalysts for Enantioselective Transformations

(エナンチオ選択的分子変換のための高活性不斉求核触媒の開発)

論文審査委員 教授 菅 誠治 教授 高井 和彦 教授 坂倉 彰

学位論文内容の要旨

本学位論文は全6章で構成されており,第1章では求核触媒を用いる分子変換の研究背景,第2章では新 規不斉求核触媒の設計と合成,第3章と4章ではインドリルカーボネートとフラニルカーボネートのエナン チオ選択的Steglich転位反応,第5章と6章では第二級アルコールとd,l-1,2-ジオールの速度論的光学分割反 応について記した。N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)に代表される求核触媒はアシル基移動反応を 促進する触媒として広く知られており,近年では求核触媒にキラルな環境を付与した不斉求核触媒に関する 研究が盛んに行われている。しかしながら,これらの不斉求核触媒は一般に(1)合成工程が長く非効率的で あり,(2)かさ高い不斉環境を有するため求核性が著しく低下するという問題があった。そこで申請者は触 媒合成の効率化と求核触媒反応の高速化の両方を達成できる不斉求核触媒の開発に着手した。DMAP を用 いるアシル基移動反応では,反応中間体としてN-アシルピリジニウムイオンが生成する。このN-アシルピ リジニウムイオン中間体から求核剤へのアシル基移動段階が律速段階である。申請者は求核触媒内に組み込 んだ水素結合性官能基によってこの反応の遷移状態を安定化することで反応を加速し,また,同時にエナン チオ選択性の高度な制御を行うというコンセプトを考えた。このようなコンセプトのもと,不斉骨格として ビナフチル骨格を用い,その3,3´位に水素結合性官能基を導入した触媒をデザインした。実際に(S)-1,1´-ビ-2- ナフトール (BINOL)を出発物質として,様々な水素結合性官能基をビナフチル骨格の3,3´位に有するDMAP 誘導体を収率良く得た。合成した触媒をインドリルカーボネートとフラニルカーボネートのエナンチオ選択

的Steglich転位反応に用いたところ,極めて高い触媒活性とエナンチオ選択性を示した。両方の反応におい

て,大量スケール合成を行った結果,10 g 及び15 gスケールでは,高いエナンチオ選択性 (>98:2 er)の転位 生成物がほぼ定量的に得られるとともに,触媒は回収率95%以上で回収された。対照実験と反応遷移状態の DFT 計算より,触媒構造中のヒドロキシ基は反応基質と水素結合し反応遷移状態を安定化することで劇的 な反応加速効果もたらすことが判明した。第二級アルコールの速度論的光学分割反応では中程度から高い選 択性(最大s = 79.5)で進行し,様々なカルビノールに適用可能であった。本触媒を用いたd,l-1,2-ジオール の速度論的光学分割反応は低触媒量 (0.1–0.5 mol %)で進行し,高いエナンチオ選択性を発現する。(最大s = 180)また,過剰反応であるジアシル化反応の抑制にも成功している。各種対照実験より,触媒構造中のヒ ドロキシ基と反応基質の1,2-ジオール部位との間の水素結合がモノアシル化反応のみを劇的に加速し,高い 触媒活性とエナンチオ選択性を発現していることが明らかになった。さらに,この触媒反応系は,従来法で は難しい非環状および環状1,2-ジオールの両方を同一触媒を用いて分割することにも成功した。

(2)

論文審査結果の要旨

本学位論文は独自に設計・合成した高活性不斉求核触媒を用いた高エナンチオ選択的分子変換反応の 開発とその成果について記されている。

求核触媒にキラルな環境を付与した不斉求核触媒に関する研究は世界的に活発に進められ,多様な誘 導体が創製されてきた。しかしながら,これまでの不斉求核触媒は一般に(1)合成工程が長く, (2)必要 とする触媒量が多い,などの問題を抱えていた。申請者はジメチルアミノピリジンとよばれる求核触媒 にビナフトール骨格を用いてキラル環境を付与し,さらに触媒構造中に組み込んだヒドロキシ基などの 水素結合性官能基が反応遷移状態を安定化することで反応を加速し,同時にエナンチオ選択性の高度な 制御が可能であろう,との設計指針のもと,全く新しい触媒群を創製し,多様な分子変換を試みた。そ の結果,分子内アシル基移動反応であるインドリルカーボナートやベンゾフラニルカーボナートの Steglich型転位反応,第二級アルコール,d,l-1,2-ジオールの速度論的光学分割反応,meso-1,2-ジオール の非対称アシル化反応など広範囲の分子変換において非常に有効であることがわかった。特筆すべき点 は,本触媒群が既存の触媒を遥かに凌ぐ高い触媒活性を示す点であり,場合によっては触媒量を0.05 mol %まで低減することが可能となった。一般に,有機物を触媒とする有機分子触媒の研究分野では,

触媒活性がそれほど高くない場合が多く,数十から数 mol %の触媒を用いなければならない場合が多 い。本学位論文の研究成果は,有機合成化学分野において熱望されている触媒量の低減化の問題に対し て,その解決手段の一つ方向性を示すものであり,有機分子触媒の分野においても高い評価を受けてい る。さらに,提示されている多様なエナンチオ選択分子変換を用いたグラムスケールでの反応も実施さ れており,医薬品や農薬などの研究開発研究のための実用に耐えうるプロトコールも提供することがで きた。

以上のように,本論文の研究内容な有機合成および関連分野において非常に価値の高いものであり,

博士学位に値すると認められる。

参照

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