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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 高 橋    淳

     学位論文題名

Development and Application of Two‑Centered Organoalumlnum Reagent in Organic Synthesis

(二中心型有機アルミニウム反応剤の創製と有機合成への応用)

学位論文内容の要旨

  1950

年代 にチ ーグ ラー によ って 金属 アル ミニウ ムか らの直接合成法が確立されて 以 来 、 高 活 性 か つ 安 価 な 有 機 ア ルミ ニウ ム化 合物 は工 業的 にも 広く 利用さ れて お り 、高 分子 化学 の発 展と とも に近 年そ の重 要性は ます ます高まっている。アルミニ ウ ムは 高い 親酸 素性 を有 し、 その ルイ ス酸 性を活 かし て種々の反応剤が開発され、

選 択的 有機 合成 へと 応用 され てい る。 その 一方で 有機 アルミニウム化合物に含まれ る アル キル 基は 、ヘ テ口 原子 が配 位す るこ とによ って 誘起される潜在的な求核性を 持 ち合 わせ てお り、 有機 金属 試薬 によ るカ ルポニ ル基 のアルキル化の反応機構研究 の モデ ル化 合物 とし て用 いら れて きた 。本 研究は 、ル イス酸として、またアルキル 化 剤と して の有 機ア ルミ ニウ ム化 合物 の性 質に着 目し 、同一分子内の適当な位置に ニつの等価なアルミニウム中心を有する反応剤(2,7−ジメチル−1,8―ビフェニレンジオ キシ)ビス(ジメチルアルミニウム)の創製と、その反応性・選択性の合成化学的評価 を目的としたものである。

1

.ニ点配位型ルイス酸

  

ルイス酸がカルボニル基に配位する際の形式には、大きく分けて兀一配位(A)とG―配 位

(B)

があ り、 前者は 遷移 金属 に、 後者 は典 型金 属に 多<見られる。一方、Cのよう に カル ボニ ル基 のニ つの 非共 有電 子対 にニ つの金 属が 同時に配位した形式も考えら れ 、こ の時 カル ボニ ル基 の反 応性 は大 き< 変化す るこ とが予想される。しかし、例 え 過剰 のル イス 酸の 存在 下においてもlニl複合体形成が非常に有利なため、Cの形で の カル ボニ ルー ルイ ス酸 複合 体の 性質 につ いては これ までほとんど理解されていな か っ た。 そこ で、 適当 なス ベー サー を用 いて金 属間 距離 を固 定す るこ とで 、

D

の 形 でのニ点同時配位を実現しようと考えた。

¥C/  ¥C/   丶C/

/ 丶    | I+M ←二 ニ  II

O ー M  O 一´M  M 丶丶丶`O 一´M   A  B  C

  

スベーサーとして選んだ2,7―ジメチル−1,8―ビフェニレンジオールを、前述のように 親 酸 素 性 の 高 い ト リ メチ ルア ルミ ニウ ム2当量 と反応 させ ると 反応 剤1が調 製され る。1.1当量の1存在下、ジク口ロメタン中5‐ノナノンを1.2当量の水素化トリブチル

(2)

ス ズと反応 させると 、‑78℃20分で相当する還元生成物5−ノナノールが86uhの収率で 得 られた。 対照的に 、一点配位 型ルイス 酸である

2

を用いて 同様の条件下で反応を行 う と、還元 体の収率 は僅か6c/0にとどまった。基質としてアセトフェノンを用いた場 合 に も 、また向 山アルド ール反応 において も1と2の間 には大き な反応性の 差が見ら れ た 。 これらの 結果は、 親電子的 二重活性 化によっ て1が2と比 較して非常 に高い活 性 化能を有 すること をはっきり と示して いる。

       1 0r 2, CH2CI2

BuBu̲) B1,)310       Bu`丶/ Bu        SnH, ‑78 0C, 20 min     OI H   @aTrlithl

      6% with 2

  

ニ 点配位に よるカル ボニル基の 活性化の より直接 的な知見 を得るために、1一カル ボ ニ ル 化合 物 複合 体 の

NMR

測 定 を行 い 、 分光 学 的に も

1

が カ ルボ ニ ル基 を 強く活性 化 している ことを確 認した。更 に、向山 ーマイケル付加反応における立体選択性も、

1

の ニ点配位 を強く示 唆している 。このニ 点配位型 ルイス酸 は、アセ タール存在下で の カ ル ボニ ル 化合物の 選択的活 性化や、 アリルビ ニルエーテ ルのクラ イゼン転 位反 応 にも応用 可能であ る。

2

. 六員環遷 移状態テ ンプレート

  

有 機金 属 反応 剤による カルボニ ル基のア ルキル化 は、有機合 成化学に おいて最 も 基 礎 的 かつ 重 要な反応 のーつで あるが、 その反応 機構につい ては未だ に不明な 点が 多 い。これ までに遷 移状態とし ていくっ かの形が提案されているが、近年は1ニlで反 応 する(E)より

1

分子のカ ルボニル化 合物に対 して2分子 のアルキ ル金属が関与する形 式

(F)

が支持さ れており 、この際六 員環遷移 状態を経 ることで 円滑に反応が進行する も の と 考え ら れている 。この考 えに基づ けば、1を

G

のように六 員環遷移 状態のテ ン プ レ ー ト と し て 用 い る こ と で ア ル キ ル 化 が 促 進 さ れ る こ と が 予 想 さ れ る 。

 II I     ‑   I   ―→ Me O …|AIR2 R2A'¥R,.,,A'R2  E      F

  9

R

託 え

R

嶋 ー

R

    

  

  O  O

M e

G

  

実際に、1に

1

当量のベ ンズァル デヒドを 加えて−

20

℃で4時間反応させると、メチ ル化体であ るフェネ チルアル コールが

84c/o

の収率で 得られた。一方、2を2当量用い て 同 様 の 条 件 で 反 応 を 行 っ て も 、 反 応 は 全 く 進 行 し な か っ た 。

      1 0r2      Ph PhCHO ‑  → PhYMe  @7 ‑lith1

       CH2CI2, ‑20 'C, 4 h         OH       0% with 2

  

こ の反応に おいて、 ジメチル アルミニ ウムフェノ キシドに よってメ チル化が進行 し ているこ とは注目 に値する 。通常ト リアルキル アルミニ ウムは、 三つのア ルキル

(3)

基のうちーっしかカルボニル基との反応には用いられず、この傾向はト1Jメチルア ルミニウムにおいて顕著である。それにも関わらず1によるメチル化が.円滑に進行す るとぃう事実は、遷移状態の安定化が反応の加速に不可欠であるということを如実 に示している。

  

以上のように、ニつのアルミニウム中心を適当なスベーサーで固定することで反 応性・選択性が飛躍的に向上することが明らかになった。この概念は有機化学のみ ならず、生体反応の機構や分子認識化学を考える上でも非常に重要であり、今後の 発展が期待される。

(4)

学位論文審査の要旨

主査  教授  宮下正昭

副査

  

教授  丸岡啓二(京都大学大学院理学研究科)

副査  教授  村井章夫

副査  助教授  大井貴史(京都大学大学院理学研究科)

     学位論文題名

Development and Application of Two‑Centered Organoaluminum Reagent in Organic Synthesis

(二中心型有機アルミニウム反応剤の創製と有機合成への応用)

  

ル イス 酸は 有 機合 成化 学に おいて欠くことの できない重要なツールである が、現在までに用 いら れて きた も のは ほと んど が中心金属をーつ しか持たない。生体内におけ る酵素反応におい ては 、複 数の 金 属が 同時 に反 応に関与すること による反応の促進効果が認め られており、真に 有効 な反 応系 を 構築 する とぃ う有機合成化学の 立場からこの概念を導入する ことが強く求めら れて いる 。し か しこ のよ うな 状況下において、 複数金属関与型の反応例は非 常に少なく、未だ 未開拓の分野であるとぃえ る。

  

本論文は、有機アルミニ ウム化合物の高いルイス酸性に着目し、1,8‐ビフェニレンジオール誘 導体 をス ペー サ ーと して 二点 配位型ルイス酸を 創製することを目的としたも のである。まず従 来型 の一 点配 位 型ル イス 酸と の反応性、選択性 を比較し、ニ点配位型ルイス 酸がカルボニル化 合物 、あ るい は エー テル 化合 物の反応を親電子 的二重活性化によって大幅に 促進することを見 出し 、NMR測 定に よる 分光 学 的知 見を 得た 。 さら に、 カルボニル基のニつの 非共有電子対に同 時配 位す るこ と に起 因す る特 異な 立 体選 択性 、官 能基 選 択性 を示 すこ と を明 らかにした。ま た、 有機 アル ミ ニウ ム化 合物 のアルキル化剤と しての機能にも着目し、この 反応剤が六員環遷 移 状 態 を 安 定 化 す る こ と で ア ル デ ヒ ド の ア ル キ ル 化 反 応 を 促 進 す る こ と を 見 出 し た 。

  

こ れを 要す る に、 著者 は二 点配位型有機アル ミニウム反応剤の創製に成功 し、その反応性、

選択 性に つい て 初め ての 知見 を得たものであり 、真に効率的な反応が求めら れる有機合成化学 の現 状に 対し て 貢献 する とこ ろ大なるものがあ る。これは複数金属関与型の 反応系構築のため の 基 礎 と な る 概 念 で あ る の み な ら ず 、 分 子 認 識 化 学 の 視 点 か ら も 非 常 に 興 味 深 い 。

  

よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

―191―

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