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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

(中央大学論文審査報告書)

論文の内容の要旨

有機化学においてベンゼンはそのシンボルとも言える六員環構造を有し、安定な化合 物であるだけでなく、様々な有機化合物の基幹骨格としてこれを含む分子は無数に存在 する。このベンゼンの炭素原子を第3周期以降の高周期典型元素に置き換えたヘテロベ ンゼン類は、導入した高周期元素がベンゼン分子の構造や芳香族性にどのような影響を 与えるかという観点から研究が行われている。これまでに1415族元素を組み込んだ ヘテロベンゼンが数多く報告され、その構造や芳香族性が明らかにされてきた。一方で 13族元素ではホウ素を組み込んだボラベンゼンが広く研究されてきたが、高周期13 元素を含むベンゼンの研究は極めて限られており、ガラベンゼンのNMRスペクトル観 測が唯一の報告例であった。そのため、高周期13族元素を骨格に含むベンゼンの構造 や性質は明らかにされていなかった。本論文は、高周期13族元素としてアルミニウム、

ガリウムまたはインジウムを組み込んだベンゼン誘導体とその遷移金属錯体の合成と 性質を包括的に解明した研究成果をまとめたものであり、全6章から構成されている。

1 章は序論であり、芳香族分子の基礎物性、高周期元素含有芳香族化合物の分類、

それらの合成と性質(特に14, 15, 16族元素含有芳香族化合物)、例の少ない13族含有芳 香族化合物の合成と性質、13 族元素含有ベンゼン類の金属錯体の合成と性質、などに 関して、全ての鍵論文を網羅すると共に、最近の研究成果を概説した。

2章では、アルミナシクロヘキサン誘導体を鍵中間体としたアニオン性アルミナベ ンゼンの初めての合成と構造解析を達成、光電子特性の解明と理論計算により、芳香族 性を持つ共鳴構造および求電子性と求核性を両方有する共鳴構造の寄与を見いだした。

3章では、より高周期の13 族元素であるガリウムおよびインジウムを導入したア ニオン性ガラベンゼンおよびインダベンゼンを初めて合成し、その構造解析等を通して これがアルミナベンゼンと類似の芳香族性を持つことや、アルミナベンゼンに比べて共 有結合性の高いE-C結合を有することなどを明らかとした。

4 章では、アルミナベンゼンを前周期金属のZr へ導入し、アルミナベンゼンがη5 型でZrに配位すること、Al原子のルイス酸性を反映してZr上に置換した塩素原子から 分子内配位を受けること、を明らかとした。また、アルキル置換Zr に対してアルミナ ベンゼンを導入するとカチオン性 Zr 錯体が得られ、これが助触媒無しでエチレン重合 活性を有することに加えて、超高分子量ポリエチレンを与えることも見いだした。

5章では、アニオン性アルミナベンゼンを高周期金属のRh, Irへ導入し、アルミナ ベンゼンがη5型でRh, Irに配位すること、後者については従来報告の無い選択性でNEt3

をボリル化できる触媒として応用可能なことを示した。

6章は本論文の総括及び今後の展望に関して述べている。

以上のように、本論文では高周期13族元素を組み込んだベンゼン誘導体とその遷移 金属錯体の合成と性質を包括的に解明することに成功している。

(2)

(中央大学論文審査報告書)

論文審査の結果の要旨

1.論文の主題

Heavy Group 13 Element-Containing Benzene Derivatives and Their Transition-Metal Complexes

(高周期13族元素を骨格に含むベンゼン誘導体とその遷移金属錯体)

2.当該研究分野における位置付け

有機化学において最も重要な分子の一つに数えられるベンゼンの炭素原子を第 3 期以降の高周期典型元素に置き換えると、導入した高周期元素の特徴を組み込んだヘテ ロベンゼン類が得られる。これまでに1415族元素を組み込んだヘテロベンゼンが数 多く報告され、その構造や芳香族性が明らかにされてきたが、13 族元素ではホウ素を 組み込んだボラベンゼンのみが深く研究されており、他にはガリウムの誘導体の報告が 1 例あるのみで、高周期 13族元素を骨格に含むベンゼンの構造や性質は明らかにされ ていなかった。本研究では高周期13族元素としてアルミニウム、ガリウムまたはイン ジウムを組み込んだベンゼン誘導体を初めて合成・単離し、その構造解析および光電子 物性を明らかにすると共に、芳香族性および求電子性と求核性を併せ持つ共鳴構造を有 することを明らかとした。また、アルミナベンゼンの前周期および高周期金属錯体を合 成し、これらがルイス酸性のアルミニウム原子を含有する特徴を活かして、超高活性エ チレン重合触媒、位置選択的 C-H 結合官能基化触媒として利用可能なことを示した。

これらの発見は典型元素化学・有機金属化学・触媒化学等の広い分野に重要な知見を付 け加えた。

3.論文の構成

本論文は、高周期 13族元素としてアルミニウム、ガリウムまたはインジウムを組み 込んだベンゼン誘導体とその遷移金属錯体の合成と性質を包括的に解明した研究成果 をまとめたものであり、全6章から構成されている。

1 序論

2 アニオン性アルミナベンゼンの合成と性質

3 アニオン性ガラおよびインダベンゼンの合成と性質

4 アルミナベンゼン-Zr錯体の合成・構造・エチレン重合触媒への応用 5 アルミナベンゼン-Rh,Ir錯体の合成・構造・C-Hホウ素化触媒への応用 6 総括と展望

4.論文の独自性・成果

本研究において明らかとした最も重要な概念は「高周期13族元素含有ベンゼンが求

(3)

(中央大学論文審査報告書)

電子性と求核性を両方有すること」であり、これを遷移金属の配位子として利用するこ とで特徴のある触媒反応まで形成することが可能であった点も特筆すべきである。本論 文ではアニオン性アルミナベンゼン・ガラベンゼン・インダベンゼンの合成とその性質 の詳細な解明、アルミナベンゼン-Zr 錯体の合成と分子内ルイス酸点を持つ錯体として の特徴の解明および重合触媒への応用、アルミナベンゼン-Rh,Ir錯体の合成および位置 選択的 C-H ボリル化触媒としての応用、を体系的に明らかにしてきた。本論文の成果 は以下の3点である。

(1) アルミナベンゼン・ガラベンゼン・インダベンゼンの X線結晶構造解析、NMR ペクトル、紫外可視吸収スペクトルにより、これらヘテロベンゼン類の平面構造と芳香 族性を明らかとした。また、理論計算を併用し、これらが芳香族性および求電子性と求 核性を併せ持つ共鳴構造を有することを明らかとした。

(2) アルミナベンゼンを前周期金属のZr へ導入すると、アルミナベンゼンがη5型で Zr に配位すると同時に、Al原子のルイス酸性を反映してZr上に置換した塩素原子から分 子内配位を受けること、を明らかとした。また、アルキル置換 Zr に対してアルミナベ ンゼンを導入するとカチオン性 Zr 錯体が得られ、これが助触媒無しでエチレン重合活 性を有することに加えて、超高分子量ポリエチレンを与えることも見いだした。

(3) アニオン性アルミナベンゼンを高周期金属のRh, Irへ導入すると、アルミナベンゼ

ンがη5型でRh, Irに配位すること、後者をNEt3C-H結合ボリル化触媒として利用し

たところ、従来報告の無い選択性を与えることを示した。

5.論文の課題

アルミナベンゼンを触媒の配位子として用いる際に、置換基の多様性があればより汎 用的な配位子としての利用が期待できる。現段階で合成できるアルミナベンゼンは嵩高 iPr3Si基を持つものに限られているが、嵩の低い置換基を持つアルミナベンゼンを配 位子とすることができればより高性能な触媒の開発が可能になる。重合触媒であれば、

エチレン以外のオレフィンを重合する活性なZr触媒の開発ができ、またIr触媒におい てトリエチルアミン以外の多くの基質で特異な位置選択性を示す C-H ホウ素化触媒の 開発が可能になると推定される。

6.論文の評価

上述したように、本論文では高周期 13族元素としてアルミニウム、ガリウムまたは インジウムを組み込んだベンゼン誘導体とその遷移金属錯体の合成と性質を包括的に 解明してきた。これらの成果は当該分野における学術的な貢献度が極めて高いものと判 断し、本論文が博士(工学)の学位論文として価値あるものと認める。また、平成302 16日に論文の内容とそれに関連した事項に関する諮問を行った結果、合格と認めた。

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