博 士 ( 薬 学 ) 岡 田 敦
学 位 論 文 題 名
パラジウム触媒によるアレン合成反応の 立体選択的分子変換への応用
学位論文内容の要旨
はじめに
2つ の炭素 ー炭素 二重結 合が集 積した構 造を持 つアレン化合物は、軸不斉や高い反応性など そ の特異 な構造に 由来す るユニ ークな 特徴を 持って おり、 合成中 間体として有用である。し か し、ア レンの合 成につ いては これま でに様 々な手 法が開 発され ているものの、光学活性な 軸 不斉ア レンの合 成法は 非常に 限られ ており 、また その多 くが量 論量の不斉基質・不斉反応 剤 を用い るもので あった 。より 効率的 な触媒 的合成 法とし て、近 年筆者の所属する研究室の 小笠原らはパラジウム触媒を用いた1,3‐ジエニル‑2‑ブロミドまたはトリフラートと¨soft¨な 求 核剤と の反応に より、 多置換 アレン を高収 率で得 ること に成功 している。この手法は光学 活 性な配 位子を用 いるこ とによ り、軸 不斉ア レンの 触媒的 不斉合 成へと応用可能であり、最 高93%eeの光学純度で軸不斉アレン化合物の合成を達成している。
筆 者は本 論文に おいて 、このパラジウム触媒アレン合成の鍵中間体であるアルキリデン・牙 ア リ ルパラ ジウム 錯体の 合成、X線構造 解析、 及び反 応によ って、 反応機構 に関す る研究 を 行 った( 第ー章) 。また この反応を利用して、合成中間体として有用な軸不斉アレニルシラン (第二章)、ホモアレニルシラン(第三章)、及び環状アレン(第四章)を合成し、それらの 更なる立体選択的分子変換反応について検討した。
筮 二 童 ( !ユ2エ3̲y3ニZ空 豊墨Z〓 墨:畫2ヒ)Z! 乏豊空 蠱錯佳Q金處ユ 撞造ユ 丞び反 応蛙 筆者は2‐ブロモ―1,3‐ジエンあるいはアレニルメチルエステルを基質とするパラジウム触 媒 アレソ 合成、 及び共役ジエン合成の中間体、アルキリデン・オアリルパラジウム錯体を合成 し、その三次元構造をX線結晶構造解析によって初めて明らかにした。単離した錯体と soft な 求核剤 との反 応によルアレンが、 hard な求核剤との反応により共役ジエンがそれぞれ選 択 的に得 られた が、この選択性はアルキリデン,牙アリルパラジウムを中間体とする触媒反応 における選択性と同様の傾向であった。またこの錯体は、2‐ブロモ‐1,3‐ジエンと soft な求
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核剤からアレンを 与える反応に対して、よい 触媒前駆体となること示した。
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不 斉試 薬として有用で あるが、触媒的不斉合成の手 法が確立されていない軸不 斉アレニル シラ ン化 合物について、 筆者はパラジウム触媒アレン 合成の手法を応用すること により、1‑
シリル―2‑ブロモ‑1,3‑ブタジエンを鍵中間体とする新規触媒的不斉合成法を開発した。この手 法を 用い て 最高91%eeの 光学 純 度で 軸不 斉ア レニ ル シラ ンが得られ、またその 軸不斉を求 電子剤とのSE2 反応に より生じる三級あるいは四 級不斉中心へと、光学純度を損なうことな く転写することができ た。全体として、3‐位に適当な置換基をもっプロモシリルジエンから、
2段 階 で 全 て 炭 素 置 換 さ れ た 四 級 不 斉 中 心 を 構築 可能 な新 たな 手 法の 開発 に成 功し た 。
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ホモアレニル シランの求電子剤との分子 間反応は、Sヨ2 型で位置選択的に進行することが 知 られ ているが、筆者がパラジ ウム触媒アレン合成の手法 により合成した、アセタール 側鎖 を持っホモアレ ニルシランの分子内環化反 応において、予想されたSヨ2.型環化生成物のほか に 、予 期しなかった環化生成物 が得られた。またこの生成 物を与える反応機構に関して 重水 素ラベル実験を用いて検討し、1,2―水素移動を伴う反応機構が関与していることを見出した。
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反応性が高く 、かつ選択性について制御 すべき要素の多いアレン化合 物の反応について、
筆 者は その 選択 性 を制 御す る1つのアプロ ーチとして環状アレンの構造 に注目し、パラジウ ム 触媒アレン合 成の手法を用いた9‑15員環 の環状アレンの触媒的合成法 を開発した。また、
合成した環状アレンとジクロロケテンとの[2十2]環化付加反応により、その特異な環状構造に よって反応の ジアステレオ面選択性が制御 されることを示した。
圭と 塗
パ ラジ ウ ム触 媒に よる ア レン 合成反応の反応機 構について、中間体のX線構 造解析及び反 応か ら様 々な知見を得 た。またこの触媒系を利用し て、合成中間体として有用 な官能基・構 造を 持つ ア レン 化合 物を 合 成し 、そ の応 用を 示 した 。
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学位論 文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 准教授 准教授
高橋 橋本 小笠原 中村
学 位 論 文 題 名
保 俊一 正道 精一
パ ラジウ ム触媒に よるアレン合成反応の 立体 選択的分子変換への応用
岡田 敦君 の パラ ジウ ム触 媒に よ るア レン 合成反応の 立体選択的分子変換ーの応 用 と 題さ れた 博士 論文は、 序論を含め全5章からなり、 パラジウム触媒による合成 中間体として有用 なアレン化合物の合成と、その更なる変換反応への応用 について述 べられている。
序論では、本論 文の内容の背景について述べられている。2つの炭素一炭素二重結合 が集積した構造を 持っアレン化合物は、軸不斉や高い反応性などその特異 な構造に由 来するユニークな 特徴を持っており、合成中聞体として有用である。しか し、光学活 性な軸不斉アレン の合成法は非常に限られており、その応用を制限する一 因となって いる。一方、近年 当研究室の小笠原らは、パラジウム触媒を用いた1,3−ジェニル‑2‑
ブロミドまたはト リフラートと soft な求核剤との反応による、多置換 アレンの触 媒的合成反応を報 告している。この手法は光学活性な配位子を用いること により、軸 不 斉ア レン の触 媒的 不斉 合成 へと 応 用可 能で あり、最高93% eeの光学純度で軸不斉 アレン化合物の合 成を達成している。岡田君は、この反応の汎用性に着目 し、合成中 間体として有用な 様々な軸不斉アレン化合物の合成を検討した。さらに、 合成した軸 不斉アレンを用い た新たな立体選択的分子変換反応についても検討を行っ た。また、
このパラジウム触 媒アレン合成反応の鍵中間体であるアルキリデン―『ア リルパラジ ウム錯体の単離、X線構造解析、及び反応によ って、反応機構に関する研究を行った。
第 一章 では 、パ ラジ ウム 触媒 アレ ン 合成 反応 の反応機構 に関する研究について述べ られている。反応 における鍵中間体アルキリデン一舮アリルパラジウム錯体を合成し、
そ の三 次元 構造 をX線 結晶構造解析によって初めて明らか にした。またこの錯体の動 的挙動や、求核剤 との反応についても研究を行い、その選択性について議論している。
第 二章 では 、軸 不斉 アレ ニル シラ ン の触 媒的 不斉合成に ついて述べられている。不
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斉 試薬 とし て有 用で あるが、触媒的不斉合法が 確立されていない軸不斉アレニルシラ ン化合物について、岡田君はパラジウム触媒アレン合成反応を利用して、1―シリル―2− ブロモー1,3−ブタジ ェンを基質とする触媒的不斉合成法を開発した。この手法を用い て 最高91% eeの 光学 純度 で軸 不斉 アレ ニル シ ラン が得 られ るこ とを 見出 している。
ま たそ の軸 不斉 を求 電子 剤と のSE2 反 応に より 生じる三級あるいは四級不斉中心へ と 、光 学純 度を 損な うこ とな く転 写可 能で あ ることを見出している。これ ら2段階の 変換反応により、3一位に適当な置換基をもっブロ モシリルジエンから、全て炭素置換 さ れ た 四 級 不 斉 中 心 を 構 築 可 能 な 新 た な 手 法 の 開 発 に 成 功 し て い る 。 第三 章で は、 ホモ アレニルシランの分子内環 化反応について述べられている。ホモ ア レニ ルシ ラン の求 電子 剤と の分 子間 反応 は 、SE2 型で位置選択的に進行すること が 知ら れて いる 。岡 田君は、パラジウム触媒ア レン合成法により調製した、アセター ル側鎖を持っホモアレ ニルシランの分子内環化反応において、予想されたSE2 型環化 生 成物 のほ かに 、予 期しなかった環化生成物が 得られることを見出している。またこ の生成物を与える反応 機構に関して重水素ラベル実験を用いて検討し、1,2―ヒドリド シフトを伴う反応機構 が関与していることを見出している。
第四 章で は、 環状 アレンの触媒的合成につい て述べられている。反応性が高く、か つ 選択 性に つい て制 御すべき要素の多いアレン 化合物の反応について、岡田君はその 選 択性 を制 御す る1つ のア プロ ーチ とし て環 状ア レンの構造に注目し、パラジウム触 媒 アレ ン合 成法 によ り、9―15員環 の環 状ア レン の触媒的合成を行った。合成した環 状アレンとジクロロケ テンとの[2十2]環化付加反応により、その特異な環状構造によ っ て 反 応 の ジ ァ ス テ レ オ 面 選 択 性 が 制 御 さ れ る こ と を 見 出 し て い る 。 以 上の よう に、 岡田 君の 研究 では 、パ ラジ ウ ム触 媒ア レン 合成 法を 用い た、合成中 間 体と して 有用 な様 々な軸不斉アレン化合物の 合成が達成されており、また合成した ア レン を用 いた 更な る新規な立体選択的分子変 換反応へと展開がなされていることな どから、博士の学位に 十分値するものと判断した。
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