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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 薬 学 ) 齋 藤 学 位 論 文 題 名

ニッケル触媒による不斉環化反応の開発及び ビスメタル化反応への展開

学位論文内容の要旨

  遷移金属錯体を用いた反 応の大きな特徴のーつとして、多重結合間で容易に炭素・

炭素結合を形成させ得るこ とが挙げられる。後周期遷移金属錯体であるニッケルは古 くから多重結合間での重合 反応に高い活性を示すことが知られている。当研究室では Et3SiH存在下、Ni(0)触媒による1,3‐ジエンとアルデヒドの立体選択的環化反応の開発 に成功し報告している。本 反応の活性種はヒドリドニッケル錯体である。このヒドリ ド錯体と基質のジエン部分 との反応によって生成した兀‐アリルニッケル中間体を経 由して反応が進行し、側鎖 の立体化学が完全に制御された5イ員環化合物が生成する。

著 者 は 本 反 応 の さ ら な る 応 用 性 の 拡 大 を 目 指 し 研 究 に 着 手 し た 。

】:盒窒素複 素璽化金物の金成と 天然物金成仝の広 田

  本 反 応 の 適 用 範 囲 の 拡 大 を 目 指 し 含 窒 素 複 素 環 合 成 を 行 な っ た 。3‑Aza‑3‑(p‑

toluenesulfonyl)57‑octadienalを 触 媒 量 のNi(cod)2及 びPPh3の 存 在 下 でEt3SiHと 反 応 させた。その結果、(3S*,4S゛)→4‑[( lE)‑Propenyl]‐1 ‑(p‑tolue nesulfon yl)‑3‑triethylsilyloxy pyrrolidineの み が63%の 収 率 で 得 ら れ 、 本 反 応 が 含 窒 素 複 素 環 の 合 成 に 適 用 可 能 で あ る こ と が わ か っ た 。 そ こ で 本 閉 環 反 応 を 種 々 の 基 質 に 適 用 し た と こ ろ 、 ピ ベ リ ジ ン 誘 導 体 及 び ア ゼ ピ ン 誘 導 体 を 立 体 選 択 的 に 合 成 す る こ と が で き た 。 次 に 含 窒 素 二 環 式 骨 格 の 構 築 に 適 用 す べ く(S)‑ピ ロ グ ル タ ミ ン 酸 か ら 合 成 し た 光 学 活 性 な 基 質 を 用 い て 反 応 を 行 な っ た と こ ろ 、 ピ 口 リ チ ジ ン 誘 導 体 を 立 体 選 択 的 に 光 学 活 性 体 と し て 合 成 す る こ と が で き た 。 さ ら に 本 方 法 論 を イ ン ド リ チ ジ ン ア ル カ ロ イ ド(‑)‑ElaeokanineCの 合 成 に 利 用 す る こ と に し た 。Et3SiHを 用 い(5S)‑l‑(‑2‑Formylethyl)‑5‑(13‑pentadieneyl)‑2‑

pyrrolidinoneの 閉 環 反 応 を 行 な っ た と こ ろElaeokanineCと 立 体 化 学 が 一 致 す る 閉 環 体 と 、Et3Si0基 に 関 す る 立 体 異 性 体 が 収 率 良 く 得 ら れ た 。 後 者 の 閉 環 体 は 前 者 へ 容 易 に 変 換 可 能 で あ る 。 前 者 の 閉 環 体 か ら 数 工 程 で 既 に 報 告 さ れ て い る(‑)‑ElaeokanineC 合成中間体へ 誘導し、形式的全合 成を達成した。

2:1.3:2エ2とZ2k王ヒピc丕壷獲化反応Q囲発

  遷移金属触媒を用いる不斉環化反応は、 環形成時に環状骨格上の不斉中心を一挙に 構築できる有用な方法論である。著者は本 閉環反応を不斉環化反応へと展開できたな

‑ 600

(2)

ら ば 、 環 状 化 合 物 の 新 た な 触 媒 的 不 斉 合 成 法 と な り 得 ると 考 え た 。ま ず 、 プ □キ ラ ル な4,4‑Dimethoxycarbonyl‑5,7‑octadienalを基 質とし 、Et3SiH存 在下で 本系に適用可能な 光学活 性配位 子を探 索した 。(R,R)‑2.5‑Dimethyl‑l ‑phenylp hospho raneを用い、THF中 0°Cで 反応さ せると内 部オレ フィン を持つ (1S,2S)‑4,4‑Dimethoxycarbonyト2・[(IE)‑

propenyl]‑l‑triethylsilyloxycyclopentane及び末端オレフィンを持つ(IS,2S)‑4,4‑Dimethoxy carbonyl‑2‑(2‑propenyl])‑1 ‑triethylsilyloxycyclopentaneが合わせて84%の収率、4.3:1の 比 で生 成 し た 。こ れ ら の 閉環 体 の 鏡 像異 性 体 過 剰率 は そ れぞ れ20/0 ee、47c70 eeと大 き く 異 な っ て い た 。 そ こ で 反 応 条 件 を 種 々 検 討 し た 。 そ の結 果 、 閉 環体 の 生 成 比及 び 鏡 像 異 性 体 過 剰 率 は 用 い る シ ラ ン と 反 応 溶 媒 の 極 性 に 影 響さ れ る こ とが わ か っ た。 特 に (Et0)3SiHを 用 い 、DMFあ る い はMeCN中‑20°Cで 反 応 さ せ る と 内 部 オ レ フ ィ ン を 持 つ 閉 環 体 の み が 生 成 し 、 鏡 像 異 性 体 過 剰 率 は73% eeに ま で 向 上 し た 。 一 方Ph2MeSiH を 用 い 、DMF中‑20 0Cで 反 応 さ せ る と 末 端 オ レ フ ィ ン 体 の 生 成 比 が 増 大 し 、 ニ 種 類 の 閉 環 体 が83%の 収 率1:1.2の 比 で 得 ら れ た 。 ま た 、 末 端 オ レ フ ィ ン 体 の 鏡 像 異 性 体 過 剰 率 は860/0 eeま で 達 し た 。 二 種 類 の 閉 環 体 が 得 ら れる 機 構 に つい て 考 察 した 。 内 部 オ レ フ ィ ン を 有 す る 閉 環 体 は 兀 . ア ル ル ニ ッ ケ ル 中 聞体 を 経 由 する 機 構 で 生成 し た と 説 明 す る こ と が で き る 。 一 方 、 末 端 オ レ フ ィ ン を 有 す る 閉 環 体 は 、 基 質と0価 二 ッ ケ ル錯 体 が 反 応し 生 成 し たオ キ サ ニ ッケ ラ サ イ クル と シ ラ ンと のo―bond metathesisを 経 て 得 ら れ た と 考 え ら れ る 。 用 い る シ ラ ン の 違 い や 反 応条 件 に よ って ニ 種 類 の閉 環 体 の 生 成 比 と 鏡 像 異 性 体 過 剰 率 が 異 な る と い う 結 果 か ら 、本 反 応 で は恐 ら く こ れら の ニ つ の 経 路 が 同 時 に 進 行 し て い る と 思 わ れ る 。 次 に 不 斉 環化 反 応 適 用範 囲 の 拡 大を 目 指 し 検 討 し た と こ ろ 、 本 反 応 が5員 環 形 成 だ け で な く 、6員 環 お よ び ピ 口 リ チ ジ ン 環 の 構 築 に も 適 用 可 能 で あ る こ と が わ か り 、 種 々 の 環 状 化 合物 を 光 学 活性 体 と し て合 成 す ることができた。

3: ピ ス 茎 空2kiヒ 反 応 を 佳2‑1.3: 翌 エ2とZ2kiヒ ピc受i匕 反 広 全 の 展 囲   金 属 ‐ 金 属 結 合 を 持 つ 化 合 物 は 、 遷 移 金 属 触 媒 存 在下 で 多 重 結合 に 付 加 しジ メ タ ル 化 合 物 を 与 え る こ と が 知 ら れ て い る が 、 こ の 反 応 を 環 化反 応 へ と 応用 し た 例 は数 例 報 告 さ れ て い る の み で あ る 。 著 者 はNi触 媒 に よ る ジ ェ ン. ア ル デ ヒド の 環 化 反応 に ピ メ タ リ ッ ク な 化 合 物 を 用 い 、 ピ ス メ タ ル 化 を 経 由 す る 新 しい 環 化 反 応へ と 展 開 すべ く 研 究 に 着 手 し た 。 ま ず 、 種 々 の ジ シ ラ ン 存 在 下 で5員 環 形 成 反 応 を 検 討 し た と こ ろ 、 PhF2SiSiMe3を 用 い た と き に ア リ ル シ リ ル 基 を 持 つ 閉 環 体 が 立 体 選 択 的 に 生成 し た 。 一 方Me3SiSnBU3用 いPMe2Ph存 在 下 で 同 様 に 反 応 さ せ る と 、 ア リ ル ス タ ニ ル 側 鎖 を 持 つ閉 環 体 が 立体 選 択 的 に得 ら れ た 。さ ら に シ リル ス 夕 二 ル化 に つ い て検 討 し た とこ ろ、

DMF中 で 反 応 は 速 や か に 進 行 し 、 ス 夕 二 ル 基 を 持 つ 閉 環 体 が66%の 収 率 で 得 ら れ た 。 本 反 応 はDMF中 で は 配 位 子 を 添 加 し な く て も 収 率 良 く 進 行 す る こ と が わ か っ た 。 ま た 、 本 反 応 も 六 員 環 及 び ピ ロ リ チ ジ ン 環 の 構 築 に 適 用 可能 で あ る 。本 反 応 で 得ら れ た ア リ ル ス 夕 二 ル 側 鎖 を 持 つ 閉 環 体 をPhCHOとBF3‑OEtZ存 在 下 で 反 応 さ せ た と こ ろ 、 カ ッ プ リ ン グ 体 が54%の 収 率 で 単 一 生 成 物 と し て 得 ら れ 、 閉 環 体 が ア リ ル スタ ナ ン と し て 利 用 で き た 。 さ ら に 、 本 環 化 反 応 に 光 学 活 性 配 位 子を 用 い る と反 応 は ェ ナン チ オ 選択 的 に 進 行し 、 不 斉 環化 反 応 へ 展開 し 得 る こと が わ か った 。

601

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 講師

森   美和子 橋 本 俊 一 中 島    誠 佐 藤 美 洋

学 位 論 文 題 名

ニ ッ ケ ル 触 媒 に よ る 不 斉 環 化 反 応 の 開 発 及び      ビ ス メ タ ル 化 反 応 へ の 展 開

2 月10 日斎藤望 から提出された表記題名の学位論文の審査会を行った。彼 の学位 論文の内容 は以下のと おりである 。

遷移金属錯体を用いた反応の大きな特徴のーっとして、多重結合間で容易に 炭素ー炭素結合を形成させ得ることが挙げられる。後周期遷移金属錯体である ニッケルは古くから多重結合間での重合反応に高い活性を示すことが知られ ている。彼はこれまで当研究室で開発された Ni 触媒を用いる環化反応のさら な る 応 用 性 の 拡 大 を 目 指 し 幾 っ か の 興 味 あ る 知 見 を 得 た 。 1 .含窒素複素環化合物の合成と天然物合成への応用

   反応の適用範囲の拡大をインドリチジンアルカ口イド(‑)‑ElaeokanineC の合 成に利用形式的全合成を達成した。

2 ・ 1.3‑ ジエンとアルデヒドの不斉環化反応の開発

  遷 移 金 属 触 媒 を 用 い る 不 斉 環 化 反 応 は 、 環 形 成 時 に 環 状 骨 格 上 の 不 斉 叫 | 心 を 一 挙 に 構 築 で き る 有 用 な 方 法 論 で あ る 。 彼 は 本 閉 環 反 応 を 不 斉 環 化 反 応 へ と展開を試みた。(尺,R)‑2,5−Dimethyl‑I−phenylphosphoraneを用い、THF中0°C で反応さ・せると内部オレフインを持く)(lS,2の‐4,4‑Dimethoxycarbonyl‑2―[(lめー propenyl]‑l‑triethylsilyloxycyclopentane及び末端オレフインを持つ(1S,2S)‑4,4‐ Dimethoxy carbonyl‑2‑(2−propenyl])‑ l‑triethylsilyloxycyclopentaneが合わせて84%

の 収 率 、4.3:1の 比 で 生 成 し た 。 こ れ ら の 閉 環 体 の 鏡 像 異 性 体 過 剰 率 は そ れ ぞ れ2% ee、47%eeと 大 き く 異 な っ て い た 。 そ こ で 反 応 条 件 を 種 々 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 閉 環 体 の 生 成 比 及 び 鏡 像 異 性 体 過 剰 率 は 用 い る シ ラ ン と 反 応 溶 媒 の f亟セトに影響されることがわかった。

(4)

   特に (Et0) 、SiH をHI い、 DMF ある いは MeCN 巾 ‑20 °C で 反応 させ ると 内部 オ レフインを持つ閉環体のみが生成し、鏡像興´PE 体過剰率は73 %ee にまで向上 した 。一 方Ph ,MeSiH を 用い 、DMF 叫 1 ‐20 °C で 反応させると末端オレフイン 体の生成比が増大し、二種類の閉環体が83 ワ。の収率l ニ1.2 の比で得られた。ま た、 末端 オレ フイ ン体 の鏡 像異 性体 過剰 率は86% ee であった。二種類の閉環 体が 得ら れる 機構 につ いて も考 察を 加え ている 。内部オレフインを有する閉 環体は襾一アリルニッケル中間体を経由する機構で生成したと説明することが でき,る。 一方、末端オレフインを有する閉環体は、基質とO 価ニッケル錯体 が反応し生成したオキサニッケラサイクルとシランとのa‑bond metathesis を経 て得 られ たと 考え られ る。 用い るシ ラン の違い や反応条件によって二種類の 閉環 体の 生成 比と 鏡像 異性 体過 剰率 が興 なると ぃう結果から、本反応では恐 ら くこ れら のニつ の経 路が 同時 に進 行し てい ると 思わ れる 。更 に本 反応が 5 貝環 形成 だけ でな く、6 員環およびピロルチジン環の構築にも適用可能である ことがわかり、種々の環状化合物を光学活性体として合成することができた。

3 .ビスメ生2 虹ヒ反応を伴う.12‑3 一ジエンとアルデヒドの環化反応への展開    金属.金属結合を持つ化合物は、遷移金属触媒存在下で多重結合に付加しジ メタル 化合 物を 与え るこ とが 知ら れて いる が、この反応を環化反応へと応用 した例は数例報告されているのみである。彼ははNi 触媒によるジエンーアルデ ヒドの 環化 反応 にビメタリックな化合物を′n い、ビスメタル化を経由する新 しい環 化反 応を 開発 した 。そ の結 果Me 、SiSnBU3 用いPMe っPh 存在下でNi 触媒 を用い て反 応さ せる と、 アリ ルス タニ ル側 鎖を持つ閉環体が立体選択的に得 られた 。又 DMF 中で反応は速やかに進行し、スタニル基を持つ閉環体が66 ワ。

の収率で得られた。本反応はDMF 叶l では酉じ位子を添加しなくても収率良く進 行する こと がわ かっ た。 また 、本 反応 も六 員環及びピロリチジン環の構築に 適用可 能で ある 。本反応で得られたアリルス夕二ル側鎖を持つ閉環体をPhCHO とBF¥‑OEt っ存 在下 で反 応さ せたと ころ 、カ ップリング体が54% の収率で単一 生成物 とし て得 られ 、閉 環体 がア リル スタ ナンとして利用できた。さらに、

本環化 反応 に光 学活 性配 位子 を用 いる と反 応はエナンチオ選択的に進行し、

不斉環化反応ヘ展開し得ることがわかった。

これ らの 結果 は非 常に 新し い知 見で あり 、すでにアメリカ化学会誌に掲載が

予定 され てい る。 学位 審査 会で は充 分北 海道大学の博士の学位を得るに値す

る結 果と 判断 した 。

参照

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