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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 獣 医 学 ) 浅 野    淳 学 位 論 文 題 名

げっ歯類の褐色脂肪組織での血管内皮細胞増殖因子     (VEGF) フ ん ミ リ ー 発 現 の 交 感 神 経 性 調 節

学位論文内容の要旨

   動物 を長 期間 寒冷 暴露 すると 、BAT では交感神経の活性化と共に組織増生が起こり熱 産 生能 が増 大す る。 この ような BAT の増生に伴い血管新生が起こるが、この血管新生の メ カ ニ ズ ム は 不 明 で あ っ た 。 本 研 究 で は血 管新 生因 子の ーつ であ るVEGF ファ ミリ ー   (VEGF 、 VEGF ― B 、 VEGF‑C) に 着 目 し 、 VEGF フ ァ ミ リ ー の BAT に お け る 血 管 新 生 へ の 関 与 を 明 らか にす るた め、 ラッ トと マウ スを用 いて BAT 及び 褐色 脂肪 細胞で のVEGF ファミリーの発現調節機構について調べた。

   ラ ッ ト の 成 熟 個 体 の BAT に お い て 、 VEGF ― CmRNA は 検 出 で き な か っ た が 、 VEGF と VEGF‑B は 大 量 に 発 現 し て い た 。 こ の 定 常的 なVEGF と VEGF −B の 発現 はBAT の血 管構 造 の 形成 や維 持に 必要 な因 子であ るこ とが 推察 され た。 ラッ トに 寒冷刺激を加えると、

BAT の VEGF mRNA レ ベ ル は 早 期 に 一 過 性 の 上昇 が 起 こ っ た が 、 VEGF − B は全く 変化 し

な か っ た 。 ま た 他 の 組 織 の VEGF 及 び VEGF ーBmRNA レ ベ ル は 寒 冷 暴 露 の 影響を 受け な

か っ た 。 従 って 、VEGF は 、BAT の増 生に 伴っ て組 織特 異的 に発 現量 が増 加し、 血管 新

生 に 重 要 な 役割 を果 たす 可能 性が 示さ れた 。また 、VEGF mRNA レベ ルに 対する 寒冷 暴

露 の 影 響 は 、BAT に分 布す る交 感神 経枝 を外 科的 に切 除す るこ とに よっ て完全 に消 失

し、ノルアドレナリンやCL316 ,243 としゝったアドレナリン作動薬を投与することによっ

て 寒冷 暴露 と同 等の 効果 が得ら れた 。こ れら の結 果か ら、 寒冷 暴露によるVEGF 遺伝子

の 発現 誘導 は交 感神 経に よって 直接 調節されていると結論した。さらに、ロ3 受容体作

動 薬 に よ っ て も VEGFmRNA 誘 導 が み ら れ たこ とか ら、 VEGF は褐 色脂 肪細 胞でお もに 産

生 さ れ 、 p 作用 によっ て発 現が 調節 され てい るこ とが 推定 され た。 また 、VEGF のア イ

ソ フオ ーム のう ち、 ヘパ リン結 合能 を欠 くVEGF120 mRNA の 発現 の割合が寒冷暴露時に

(2)

高くなっていた。っまり、BAT の増生時には、周囲の血管内皮細胞に到達しやすい VEGF120 がより多く産生され、効率よく血管新生を促進していることが示唆された。

   がん抑制遺伝子p53 を欠失させたマウスより、不死化褐色脂肪細胞株を樹立し、HB2 細胞と名付けた。HB2 細胞は褐色脂肪細胞の分化マーカーであるUCP1 や aP2 のmRNA を 発現しており、褐色脂肪細胞としての性質を有すると結論した。次にこの細胞を用いて VEGF ファミリーの発現調節機構について検討した。VEGF mRNA は分化前のHB2 細胞よ りも分化して脂肪を蓄積した細胞の方が発現レベルが高かった。また、分化前の細胞で はノルアドレナリンやcAMP 誘導体刺激でVEGF の発現が亢進したが、分化した細胞につ いては効果がみられなかった。これらの結果より、少な<とも前駆褐色脂肪細胞におい てはアドレナリンのロ作用によりVEGF mRNA の発現が調節されていると結論した。一 方、VEGF はフォルボールエステルやCa2+ イオノフオアの刺激によっても誘導された。

従って、アドレナリンロ1 受容体を介した調節機構や他の細胞増殖因子による調節機構 の存在も予想された。VEGF − BmRNA の発現は、HB2 細胞の分化状態に影響されず、交 感神経性刺激や種々の細胞内シグナル伝達経路の活性化による影響もみられなかった。

っまり、褐色脂肪細胞ではVEGF ― B が安定して発現していると考えた。 VEGF ーCmRNA

は成熟個体組織では検出できなかったが、HB2 細胞においては検出可能であり、血清に

より発現が誘導されたと考えられた。また、ノルアドレナリン、cAMP 誘導体及びトロ

グリタゾンの刺激によってVEGF ―C の発現が低下した。これらの結果から、アドレナリ

ンp 受容体や核内レセプター PPARy を介したVEGF‑C の発現抑制機構が存在することが

示唆された。さらにin vivo において、寒冷暴露や交感神経性刺激によるBAT の増生時

に、VEGF −C の発現が上昇して血管新生を促進する可能性は低いと結論した。以上の結

果をまとめると、前駆褐色脂肪細胞はアドレナリン月作用によりVEGF の産生を増加さ

せ、血管新生を促進することが考えられた。また各VEGF アイソフオーム遺伝子の発現

調節機構は全く異なると結論した。

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教授    斉藤雅之 副査    教授    葉原芳昭 副査    教授    渡邉智正 副査   助教授   木村和弘

学 位 論 文 題 名

げっ歯類の褐色脂肪組織での血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) フんミ リー発現 の交感神経性調節

  寒 冷 暴 露 に よ っ て 熱 産 生 臓 器 であ る褐 色脂 肪組 織(BAT)は 増生 し、 同時 に血 管新 生が 起こ る。 この 血管 新生 の調 節機 構を 明ら か にす るために、血管新生因子VEGF(血管内皮 細胞増殖因 子) フん ミリ ーに 着目 し、 ラッ トBATと、 不死 化褐 色脂 肪細 胞(HB2細胞)における 発現を検討 し、血管新生との関連について以下の結果を得 た。

  1. ラ ッ ト を4℃ の 寒 冷 環 境 下 で 飼 育 す る と 、 寒 冷 暴 露 後1‑4時 間 でBATのVEGF mRNAレベ ルが約2.4‑2.7倍上 昇した。しかし、24時間以内にもとのレベルにまで低下し、10日後まで変化は な か った 。一 方、BATのVEGF‑B mRNAレベ レは 寒冷 暴露 の期 間中 変化 しな かっ た。 従っ て、

VEGFはBATの 増 生 に 伴 う 血 管 新 生 に 関 与 す る 可 能 性 が 示 唆 され た。VEGF mRNAレベ ルに 対す る寒 冷暴 露の 効果 は、 この 組織 に分 布 する 交感神経枝を外科的に切除することによ り完全に消 失し た。 しか し、 ノル アド レナ リン を 投与 すると寒冷暴露と同様にmRNAレベルが上 昇した。こ れ ら の結 果か ら、BATのVEGF mRNAレ ベル は 交感 神経 のノ ルア ドレ ナリ ンに よっ て調 節さ れて いる こと が明 らか にな った 。さ らに 、p3受 容体作動薬のCL316,243を投与しても寒 冷暴露の効 果が 再現 され たこ とか ら、 この 効果 は 褐色 脂肪細胞に対するアドレナリンロ受容体 を介した機 構によるものと予想された。

  2.褐 色 脂肪 細胞 にお けるVEGFファ ミリ ー遺 伝子 の発 現調 節機 構 を調べる目的で 、がん抑制 遺 伝 子p53欠 失 マウ スよ りHB2細 胞を 樹立 し た。 分化 する 前のHB2細胞 は 、VEGF、VEGFーB及び VEGF‑Cの 各mRNAを 発 現 し て い た 。HB2細 胞 を 分 化 さ せ る とVEGFは 発 現 が 増 加 し た が 、 VEGF‑BとVEGF‑Cの 発 現 に 変 化 は な か っ た 。 分 化 前 のHB2細 胞 を ノ ル ア ド レ ナ リ ン あ る いは cAMP誘 導 体 で 刺 激 す る とVEGF mRNAレ ベ ル が 上 昇 し 、p受 容 体を 介す る情 報伝 達路 の存 在が 示唆 され た。 また 、フ ォル ボー ルエ ス テル とCa2+イオノフォアでもVEGFの誘導がみ られ、アド レ ナ リンal受 容体 を介 した 調節 機構 や他 の 細胞 増殖 因子 を産 生さ せてVEGFを誘 導す る機 構が 予想 され た。 しか し、 分化 させ た細 胞 では ノル アド レナ リン の効 果が 消失した。VEGF―BmRNA レ ベ ル は 、 分 化 前 後 に 関 わ ら ず 種々 の刺 激に 対し て変 動し なか った 。VEGF‑C mRNAレベ ルは VEGFとは 逆に 、ノ ルア ドレ ナリ ン刺 激で 低 下し た。 この 効果 はcAMP誘 導体 刺激 でも みら れた こと から 、p受 容体 を介 した 発現 抑制 機構 の存 在が 示唆 され た。 以 上の結果をまと めると、前

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駆褐色脂肪細胞はアドレナリンロ作用によりVEGFの産生を増加させ、血管新生を促進すること が考えられた。

  以上のように、本研究は、小型げっ歯類のBATの増生に伴う血管新生に、褐色脂肪組織が発 現するVEGFが関与する可能性を示し、その発現調節を交感神経系が行うことを明らかにしたも のであり、哺乳類の生理学への貢献が大である。よって審査員一同は浅野淳氏が博士(獣医 学)の学位を受ける資格が十分あると認めた。

参照

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