博 士 ( 工 学 ) 朴 相 均
学 位 論 文 題 名
ロ ボ ッ ト 用 自 然 給 気 型 燃 料 電 池 の 基 本 構 造 と 性 能 特 性 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEMFC)は 自 動 車 用(50kW以 上 ) , 定 置 用 (1kW〜50 kW), 移 動 ・ 携帯 用( 数百W以下 )と して ,様 々な 用途 に 応じ た研 究開 発が なさ れて いる .自 動車 用や 定置 型で は高 圧水素もしく は炭化水素による改質ガスを用いるものが主流であるが ,移動 用お よび 小型 燃料 電池では手軽 で安全な供給燃料が要求されることから,メタノールを 直接セ ル に 供 給 す る ダ イ レ ク ト ・ メ タ ノ ー ル 燃 料 電 池(DMFC)に 対 す る 研 究 が100W以 下 の 用 途 に 関 し て 盛 ん に な さ れ て い る . し か し, 数百WからlkW間 に位 置す る小 型携 帯用 電池 につ いて はそれほど多くの研究開発が行われていない.こ のクラスに相当するロボット用電源を考えた場 合 ,DMFCで は 出 カ な ら び に 効 率 が 低く ,し かも 大 型と なる ため に, 小型 の水 素ボ ンベ を搭 載 し たPEMFCが む し ろ 適 し て い る よ う に 思 わ れ る , そ こ で 本 研 究 で は , 数 百Wか ら 数kWク ラスの水素燃料によるロボット用燃料電池を対象 とし,コンプレッサーや加湿器等の補機を持た ない 自然 給気 型燃 料電 池に 関す る最 適基 本 構造 とそ の際 の性 能特 性に っいて研究を行 った.
まず ,基 本構 造と して 小型 携帯 電池 で多 用 され てい る開 放型 (オ ープ ン型)と積層化 可能な チャネルタイプの比較を行い,それぞれの特徴を 明らかにしたほか,ロボット用としての評価を 行っ た. 次に ,加 湿器を持たな いために生じるドライアウト現象に的を絞り,送風量や 温度条 件によるドライアウト状態の変化を解析した,こ れにより,ファンの有効性と送風量に対する制 限条 件を 明ら かに した .最 後に400Wのロ ボ ット 用電 池を 対象 とし て, サイズや重量に 関する 試算を行った.
論文 は全5章 で構 成 され てい る. 以下 にそ の内 容と 結果の概要を示す,
第1章 は序 論で あり ,研 究の 背景 につ いて 述 べる とと もに ,本 研究 の目 的お よび得られた結 果 の 概 要 に つ いて 論述 した ,ま た, 燃料 電池 一般 につ い ての 概説 ,小 型燃 料電 池の 開発 動 向 , 自 然 給 気 型 燃 料 電 池 の 開 発 お よ び 研 究 動 向 に つ い て と り ま と め た .
第2章 で は , 自 然 給 気 の た め の カ ソ ー ド構 造に つい て比 較・ 評価 を行 った .自 然給 気型 燃 料電池のカソードセノくレー夕構造として,小型電池で多用されているオープン型とチャネル型 の2種類が考えられる.オ ープン型では,カソードセパレータに貫通スリッ卜を設け,これを通
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し て 周 囲 空 気 が 直 接 拡 散 層(GDL)に 供 給 さ れ る 構 造 と な って いる .一 方, チャ ネル 型で は カソ ード セパ レータは両端が大気に開放された直線形 垂直チャネル構造となっており,周囲空 気が 浮カ によ ルチャネル下端から上方向に供給される 構造となっている.オープン型は空気に 接す る面 が多 く充分な給気が可能であるのに対して, チャネル型では積層が可能となる利点を 有し てい る. 実験 では ,ま ず有 効反 応 面積18 cm"の 自然 給気 型電 池を設計・製作し,カソー ドセ パレ ー夕 構造 が電 池性 能に 及ぼ す 影響 につ いて 比較 を行 った .チャネル型電池では空気 供給 に大 きな 影響 を及 ばす セパ レー タ の流 路幅 およ び流 路深 さを 種々変化させ,最適な形状 につ いて 検討 を行 った .さ らに ,カ ソ ード 流路 内部 の自 然対 流な らぴにガス組成分布を三次 元数値シミュレーションを用いて解析し,実験 より得られたセパレー夕形状の影響を考察した.
そ の 結 果 , オ ー プ ン 型 自 然 給気 型電 池 は面 圧分 布を 均一 にか つ高 く保 つこ とが 難し く, 接 触抵 抗の 増大 を解 決し 難し いこ とが 明 らか とな った .一 方, チャ ネル型自然給気型電池は一 様な面圧を保って接触抵抗を小さくすることができるほか,チャネル形状を最適化することによっ て, 充分 な酸 素供 給が 可能 であ るこ と が分 かっ た. さら にチ ャネ ル構造ではセルの積層化が 可能 であ り, 小型で高性能なロボット用電池を実現す る上で,オープン型よりも高い可能性が あるものと判断された.また,3次元数値シミュレーションによって電池内の現象を把握すること がで き, チャ ネル深さに対するチャネル内酸素濃度分 布状態の変化を明らかにすることができ た. これ によ り,最適なチャネル幅や深さ形状を示す ことができ,本実験の結果範囲では流路 幅2mm, 流 路 深 さ10mmの チ ャ ネル 形状 にお いて ,最 大出 力密 度l05lTiW/cfl12を 達成 する こ とができた・
第3章 では ,送 風 用フ ァン の必 要性 につ いて 明ら かに する ため に, 送風 量 に対 する ドライア ウト状態の変化につい て実験を行った.無加湿ガスを供給する本燃料電池ではドライアウトが生 じ やす いために,必ずしも送風ファンの組み込みが優 位となるとは限らない.そこで,空気流 量 の 計 測 が 可 能 な 通 常 の強 制給 気電 池 を用 いて ,無 加湿 運転 時の 電池 温度 ,ガ ス流 量, お よび電流密度による電 池性能の変化を計測した.
その結果,ドライガス 条件では電池温度が低いほどドライアウトしにくくなるために,電池性能 が良好となることが明 らかとなった.逆に電池温度が50℃以上ではドライアウトが顕著に生じる た めに 運転 が困 難で ある こと が分 かった. 50℃以下 の温度条件では生成水によって運転の継 続 が可 能であり,空気流量が多い場合にはドライアウ ト現象と酸素拡散速度の向上がお互いに バ ラン スし合って,空気流量や電流密度にかかわらず 電池電圧が概ね一定となることが分かっ た.これに対して空気流量を少なくした場合には生成水によってフラッディングが生じ始めるが,
その境界領域において フラッディングなしに電解質膜が最も良好に湿潤化される領域があること が 明ら かとなった.したがって,無加湿運転による燃 料電池では,ファン等によって単に供給 空気量を増大すれば良 いと言うわけではなく,フラッディングの生じにくいセル構造が設計可能 であれば,むしろ送風 量は僅かでよいことが明らかとなった,
第4章 で は , 第2,3章 の 実 験 結 果 を 用 い て , 次 世 代 ロ ボ ッ ト と し て 最 近 注 目 さ れ て い る HONDAのASIMO電 源 を 想 定 し て , 出 力400W級 の 自 然 給 気 型 燃 料 電 池 の 基 本 構 造 に つ い
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て検 討を 行っ た. その 結果 ,4W程 度の 送風 ファ ンを 設置して,カソード セパレー夕流路深さ 2mmの チャ ネル 型セ ルと する のが 最も コン パク ト化 でき ,ス タ ック サイ ズは200mm(W)X185mm (D)X45mm(H)の スタ ック (定 格電 流密 度222mA/cm2)にな ると 試 算さ れた .水 素夕 ンクを含め た総重量および体積はりチウムイオン二次電 池と比べて,現状ではむしろ大型化してしまうが,
DOEの 目 標 水 素 貯 蔵 密 度 を 持 っ た タ ン ク を 用 いた 場合 には ,5時 間用 仕様 で重 量的 に1/5, 体積的に3/4程度 になると試算された.
第5章 は本 論文 の結 論であり,得ら れた結果の概要を示した.
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
美 彦 靖 之
ロボット用自然給気型燃料電池の基本構造と 性能特性に関する研究
固体 高分子形燃料電池(PEMFC)は自動車用(50kW以上),定置用(lkW〜50 kW),移動・
携帯用(数百W以下)として,様々な用途に応じた研究開発がなされている.しかし,数百W からlkW間に位置する小型携帯用電池についてはそれほど多くの研究開発が行われていなぃ.
このクラスに相当するロボット用電源を考えた場合,小型の水素ボンベを搭載したPEMFCが アルコール等を燃料とするよりもむしろ適しているように思われる.そこで本研究では,数 百Wから数kWクラスの水素燃料によるロボット用燃料電池を対象とし,コンプレッサーや加 湿器等の補機を持たない自然給気型燃料電池に関する最適基本構造とその際の性能特性に ついて研究を行った.
まず,基本構造として小型携帯電池で多用されている開放型(オープン型)と積層化可能 なチャネルタイプの比較を行い,それぞれの特徴を明らかにしたほか,ロボット用としての 評価を行った.オープン型では,カソードセパレータに貫通スリットを設け,これを通して 周囲 空気が直接拡散層(GDL)に供給される構造となっている.一方,チャネル型ではカソ ードセパレータは両端が大気に開放された直線形垂直チャネル構造となっており,周囲空気 が浮カによルチャネル下端から上方向に供給される構造となっている.オープン型は空気に 接する面が多く充分な給気が可能であるのに対して,チャネル型では積層が可能となる利点 を有している.実験の結果,オープン型自然給気型電池は面圧分布を均一にかつ高く保つこ とが難しく,接触抵抗の増大を解決し難しいことが明らかとなった.一方,チャネル型自然 給気型電池は一様な面圧を保って接触抵抗を小さくすることができるほか,チャネル形状を 最適化することによって,充分な酸素供給が可能であることが分かった.さらにチャネル構 造ではセルの積層化が可能であり,小型で高性能なロポット用電池を実現する上で,オープ ―62―
武
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主
副
副
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ン型よりも高い可能性があるものと判断された,また,3次元数値シミュレーションによっ て電池内の現象を把握することができ,チャネル深さに対するチャネル内酸素濃度分布状態 の変化を明らかにすることができた.これにより,最適なチャネル幅や深さ形状を示すこと ができ,本実験の結果範囲では流路幅2mm,流路深さ10mmのチャネル形状において,最大出 力密度l05rnW/crn2を達成することができた,
次に,無加湿ガスを供給する本燃料電池ではドライアウトが生じやすいために,必ずしも 送風ファンの組み込みが優位となるとは限らない.そこで,送風用ファンの必要性について 明らかにするために,送風量に対するドライアウト状態の変化について実験を行った.その 結果,ドライガス条件では電池温度が低いほどドライアウトしにくくなるために,電池性能 が良好となることが明らかとなった.逆に電池温度が50℃以上ではドライアウトが顕著に生 じるために運転が困難であることが分かった.50℃以下の温度条件では生成水によって運転 の継続が可能であり,空気流量が多い場合にはドライアウト現象と酸素拡散速度の向上がお 互いにバランスし合って,空気流量や電流密度にかかわらず電池電圧が概ね一定となること が分かった.これに対して空気流量を少たくした場合には生成水によってフラッディングが 生じ始めるが,その境界領域においてフラッディングなしに電解質膜が最も良好に湿潤化さ れる領域があること が明らかとなった,したがって,無加湿運転による燃料電池では,ファ ン等によって単に供給空気量を増大すれば良いと言うわけではなく,フラッディングの生じ に くいセル構造が設計可能であれば,むしろ送風量は僅かでよいことが明らかとなった.
最後に,今回得られた実験結果を用いて,次世代ロボットとして最近注目されているHONDA のASIMO電源を想定して,出力400W級の自然給気型燃料電池の基本構造について検討を行つ た.その結果,4W程度の送風ファンを設置して,カソードセパレータ流路深さ2mmのチャネ ル 型 セ ルと す る の が最 も コ ンパ ク ト 化で き , スタ ッ クサイ ズは200mm (W)X185mm (D) x 45mm (H)のスタック(定格電流密度222mA/cm2)になると試算された,水素タンクを含めた 総重量および体積はりチウムイオン二次電池と比べて,現状ではむしろ大型化してしまうが,
DOEの目標水素貯蔵密度を持ったタンクを用いた場合には,5時間用仕様で重量的に1/5,体 積的に3/4程度になると試算された.
これを要するに,著者は,ロボット用自然給気型燃料電池の基本構造と性能特性に関する 新知見を得たものであり,エネルギー工学ならびに熱流体工学の発展に対して貢献するとこ ろ大なるものがある.よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格ある ものと認める.
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