論文内容要旨
論文題名
13C-炭酸カルシウム呼気試験を用いた新規胃内酸度測定法の検討
専攻科目名 薬学専攻薬物動態学 氏名 飛田和貴
内容要旨
胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)の治療では,
胃酸が逆流することで生じる胸やけ,呑酸などの不快な症状を改善させる ため,酸分泌抑制剤で胃内酸度を低くすることが重要とされている。胃内 酸度の検査法として,胃管で採取した胃液の胃酸度検査及び胃・食道内 pH を 24 時間モニターする検査法があるが,患者への負担が大きく臨床現 場で普及していない。そこで,13C で標識された炭酸化合物(Ca13CO3,NaH13CO3, Na213CO3)を用いた新規胃内酸度測定法に関する呼気試験を検討した。
雄性 SD ラット(200~250g)及び雄性カニクイザル(約 5kg)に各炭酸 化合物を経口投与後,経時的に採取した呼気の二酸化炭素中の 13CO2 の存 在比(呼気中13CO2濃度)を呼気中13C 安定同位体比測定装置(ABCA,Sercon 社)で測定し,炭酸化合物の投与前後における呼気中 13CO2濃度の変化量
(呼気中Δ13C)を算出した。その結果,Ca13CO3のみにおいて,酸分泌抑制 剤(オメプラゾール)の投与に応じた呼気中への 13CO2 排泄が認められ,
以降の呼気試験の検討には Ca13CO3を用いた。
ラットに 4~2000μmol/kg 及びサルに 8.3~100μmol/kg の Ca13CO3を経 口投与後,経時的に呼気を採取し,得られた呼気中Δ13C と Ca13CO3投与量 の用量比例性を直線回帰分析にて評価した。その結果,未処置の正常酸分 泌時のラットでは 100μmol/kg,酸分泌刺激剤(ペンタガストリン)処置 の酸分泌刺激時のラットでは 200μmol/kg,未処置の正常酸分泌時のサル では 33.3μmol/kg までの投与範囲に用量比例性が認められ,投与量が胃 酸より少ない場合,呼気中Δ13C は投与量に比例し,投与量が胃酸より過 剰の場合,呼気中Δ13C は比例しなくなったと考えられた。
また,ラット及びサルにオメプラゾール投与後,Ca13CO3を経口投与した 結果,呼気中Δ13C はオメプラゾールの投与量依存的に低下した。そこで,
被験動物の胃内酸度と Ca13CO3投与後の呼気中Δ13C との相関性を検討する ため,胃内酸度の指標として,摘出した胃から胃液全量を回収し,国内で 承認されている検査法に準じた水酸化ナトリウムによる滴定量から算出 した滴定酸度に胃液量を乗じた総胃酸量,又は,pH カテーテルセンサー
(GMMS-100 pH,スターメディカル社)を用いて胃内 pH を測定した。その 結果,胃内酸度と呼気中Δ13C との間に良好な相関性が認められ,Ca13CO3
呼気試験によって胃内酸度を定量的に評価できることが示された。
このことから,本呼気試験は臨床現場で非侵襲的に且つ簡便に胃内酸度 を検査でき,GERD の治療方針を決定する有用な方法になることが示唆さ れた。