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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 渡 邊 市 紀 子

     学位論文題名

  Studies of Bovine Lactoperoxidase : Comparison between Natural and Recombinant Lactoperoxidase      (ウシラクトペルオキシダーゼの研究:ラクトベルオキシダーゼ      とその遺伝子組換え体の比較)

学位論文内容の要旨

  本論文は図32、表13を含む、6章から構成され合計129ページからなる英論文で、

別に5編の参考論文が添えられている。なお、第1章は「序論」であり、以下にまと め た 研 究 の 背 景 と 目 的 に つ い て 記 述 し 、 第6章 は 「 総 合 考 察 」 で あ る 。   哺乳類の分泌する乳汁には、新生児の成長に必要な多様な成分が含まれている。そ れらは栄養的な意義の大きいものの他に、もっぱら感染防御機能を担うタンパク質成 分も多く含まれている。後者は異物から自身を防御すると考えられている生体防御性 の乳夕ンパク質であり、免疫グロブリン、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、

リゾチームなどが相当する。これらは特異的あるいは非特異的なメカニズムによって、

直接的に細菌やウィルスに対する殺菌作用を示したり、あるいは生体の免疫機能を何 らかの形で増強することによって間接的に機能するなど、様々な形で感染防御に寄与 している。本研究では特にラクトペルオキシダーゼの構造を詳細に調べる一手段とし て、組換え体を作成し、その生化学的な性質を調べた。

(1)ラクトペルオキシダーゼ遺伝子のク口ーニング

  屠殺直後のウシから乳腺細胞を含む組織を切り出し、常法によルフェノール・チオ シアン酸グアニジン溶液中で破砕した後、ク口口ホルム抽出によってタンパク質を除 き、全RNAからmRNA画分を得、さらに逆転写法によって1本鎖cDNAを得た。次いで既 知のアミノ酸配列に従って合成したプライマーを用い、ラクトペルオキシダーゼをコ ードする塩基配列を有するcDNAをPCR法で伸長・増幅させた。さらにTAクローニング を行なった後、ベク夕一の大腸菌への導入、cDNAプラスミドの調製を得て目的のクロ ーンを得た。

(2)ラクトペルオキシダーゼ組換え体の調製

  ラクトペルオキシダーゼをコードするcDNAを、動物細胞系発現ベクターpcDNA3に挿 入し、次いでエレク卜口ポーレーション法によってCHO細胞に導入して、組換えラク 卜ペルオキシダーゼを分泌させた。細胞培養上清中に分泌された組換えラクトペルオ キシダーゼは、陽イオンおよび陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。

(2)

なお、161ッIルの培養液から13rngの組換えラクトペルオキシダーゼが得られた。また、

組換え体作成に先立ち、ラクトペルオキシダーゼの検出・同定のために、ラクトペル オキシダーゼに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作成し、かっそれ らのエピトープの詳細も調べた。

(3)組換えラクトペルオキシダーゼの生化学的性質

  精製された組換えラクトペルオキシダーゼは緑色を呈しており、乳汁由来のものと 同じくペルオキシダーゼ活性も認められた。得られた組換えラクトペルオキシダーゼ をSDS―電気泳動法で分析したところ、移動度の異なる2種のタンノくク質が認められた。

一方、両者のNー末端アミノ酸配列が同じであったことから、糖鎖の不均一性による可 能性が大であると推定され、グリコシダーゼおよびレクチンを用いた糖鎖成分分析を 行なった。その結果、組換えラクトペルオキシダーゼの糖鎖は、乳汁由来のものが高 マンノース型であ吾のとは異なり複合型であることが判明した。さらに、N―末端アミ ノ酸配列を乳汁由来ラクトペルオキシダーゼと比較したところ、N―末端側が15〜20残 基分長いことが確認された。このことからラクトペルオキシダーゼが乳汁中に分泌さ れる際、シグナルペプチドよりさらにC―末端側でぺプチドの開裂が生じていること が明らかになった。また二次構造を円偏光二色性スペクトルの測定を行って比較し、

口―ヘリックス18.6%、ロ一構造50%、不規則構造28%なる値が得られ、乳汁由来ラクト ペルオキシダーゼとほとんど差が無いことが明かとなった。

(4)ヘム近傍構造解析へのアプローチ

  ラクトペルオキシダーゼの示す酵素活性の活性部位であると考えられているへム近 傍の構造を調べるため、ヘムに由来する可視部の吸収スペクトルを測定したところ、

組換えラクトペルオキシダーゼは乳汁由来のものと同じく、413 nmに吸収ピークを示 した。また、X一線結晶解析によりその詳細な立体構造が解明され、かっへム周辺の構 造が解明されているミエ口ペルオキシダーゼと比較して、ウシラクトペルオキシダー ゼのへ厶結合に関与していると考えられるアミノ酸残基を置換した変異体をCOS細胞 を用いて調製した。すなわち、Gln376をMetに置換した変異体を作成したが、ヘ厶結 合性に変化は見られなかった。

1079 ‑

(3)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

  Studies of Bovine Lactoperoxidase :Comparison between Natural and Recombinant Lactoperoxidase

(ウシラクトベルオキシダーゼの研究:ラクトペルオキシダーゼ     とその遺伝子組換え体の比較)

  本論文は図32、表13を含む、129ページからなる英文で、別に5編の参考論 文が添えられている。

  哺乳類の分泌する乳汁には、新生児の成長に必要な多様な成分が含まれてい る。それらは栄養的な意義の大きいものの他に、もっぽら感染防御機能を担う 成分も多く含まれている。後者は異物から自身を防御すると考えられてしてる生 体防御性のタンパク質で、免疫グ口ブリン、ラク卜ペルオキシダーゼ、ラクト フェリン、リゾチームなどが相当する。これらのタンパク質は特異的あるいは 非特異的なメカニズムによって、直接的に細菌やウィルスに対する殺菌作用を 示したり、あるいは生体の免疫機能を何らかの形で増強することによって間接 的に機能するなど、様々な形で感染防御に寄与している。本研究では特にラク トペルオキシダーゼの構造を詳細に調べる一手段として、組換え体を作成し、

その生化学的な性質を調べた。

(1)ラク卜ペルオキシダーゼ遺伝子のク口ーニング

  屠殺直後のウシから乳腺細胞を含む組織を切り出し、フェノール・チオシア ン酸グアニジン溶液中で破砕した後、ク口口ホルム抽出によってタンパク質を 除き、全RNAからmRNAを精製レた後、さらに1本鎖cDNAを得た。次いで既知の アミノ酸配列に従って合成したプライマーを用い、ラクトペルオキシダーゼを コードする塩基配列を有するcDNAをPCR法で伸長・増幅させた。さらにTAク口 ーニングを行なって目的のク口ーンを得た。

(2)ラクトペルオキシダーゼ組換え体の調製

一 治

敬 敬

崎 藤

河 上

島 近

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

  ラ ク卜 ペル オキ シダー ゼを コー ドす るcDNAを 、動物細胞系発現ペク夕一であ るpcDNA3に挿 入し 、次い でエ レク 卜口 ポー レー ショ ン法 によ ってCHO細 胞に 導 入し て、 組換 えラ クトペ ルオ キシ ダー ゼを 分泌 させた。細胞培養上清中に分泌 され た組 換え ラク 卜ペル オキ シダ ーゼ は、 陽イ オンおよび陰イオン交換ク口マ トグラフィーによって精製した。なお、16l)゛yIルの培養液から13mgの組換えラク トペ ルオ キシ ダー ゼが得 られ た。 また 、組 換え 体作成に先立ち、ラクトペルオ キシ ダー ゼの 検出 ・同定 のた めに 、ラ ク卜 ペル オキシダーゼに対するポリクロ ーナルおよびモノク口ーナル抗体を作成した。

(3)組換えラク卜ペルオキシダーゼの生化学的性質

  精 製さ れた 組換 えラク トペ ルオ キシ ダー ゼは 緑色を呈しており、乳汁由来の もの と同 じく ペル オキシ ダー ゼ活 性も 認め られ た。得られた組換えラクトペル オキ シダ ーゼ をSDS一電 気泳 動法 で分 析し たと ころ、移動度の異なる2種のタン パク 質が 認め られ た。両者のN―末端アミノ酸配列が同じであったことから、糖 鎖の 不均 一性 によ る可能 性が 大で ある と推 定さ れ、グリコシダーゼおよびレク チン を用 いた 糖鎖 成分分 析を 行な った 。そ の結 果、組換えラクトペルオキシダ ーゼ の糖 鎖は 、乳 汁由来 のも のが 高マ ンノ ース 型であるのとは異なり複合型で ある こと が分 かっ た。さらに、Nー末端アミノ酸配列を乳汁由来ラク卜ペルオキ シダ ーゼ と比 較す ると、15〜20残基、N一末端側が長かった。このことからラク トペ ルオ キシ ダー ゼが乳 汁中 に分 泌さ れる 際、 シグ ナル ペプ チド より さら にC 一末 端側 でペ プチ ドの開 裂が 生じ てい るこ とが 明らかになった。また二次構造 も、a―ヘリックス18.6%、ロ一構造50%、不規則構造28%と、乳汁由来ラクトペ ルオキシダーゼとほとんど差が無いことが分かった。

(4)ヘム近傍構造解析へのアプ口ーチ

  ヘ ムに 由来 する 可視部 の吸 収ス ペク トル を測 定レたところ、組換えラクトペ ルオ キシ ダー ゼは 乳汁由 来の もの と同 じく 、413nmに 吸収 ピー クを 示し た。 ま た、X一線 結晶 解析 によりその詳細な立体構造が解明され、かつへム周辺の構造 が解 明さ れて いる ミ工口 ペル オキ シダ ーゼ と比 較して、ウシラクトペルオキシ ダー ゼの へ厶 結合 に関与 レて いる と考 えら れる アミノ酸残基を置換レた変異体 をcoS細胞 を用 いて 調製 した 。す なわ ち、Gln376をMetに置換した変異体を作成 したが、ヘム結合性に変化は見られなかった。

  以上 の研 究成 果は 、ラ クト ペル オキ シダ ーゼの構造・機能について多くの新 知 見を 見出 し、 また 学術 上も 高く 評価 され ている。よって審査員一同は、渡邊 市 紀 子 が 博 士 ( 農 学 ) の 学位 を受 ける に十 分な 資格 を有 する もの と認 めた 。

参照

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