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博士(農学)箭田浩士 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)箭田浩士 学位論文題名

ヒノキ漏脂病菌Cryp めsporiopsfsQ ろfe とむ凡〇および、

マツ類の青変病菌 Cera め CyS とむsp む ceae の産生する 生理 活性物質に関する化学的研究

学位論文内容の要旨

現 在ま でに 多く の植 物生 理活 性物 質が 微生物 、特 に植 物病 原菌 の代 謝産 物中に見い だ され てい る。 しかし、植物病原菌の中で樹木病原菌の生産する植物生理活性物質の 探 索研 究は 、農 作物(草本植物)のそれと比べて研究例が少ない。樹木病原菌の生産 す る生 理活 性物 質の検索は、植物病理学の一分野である樹病学的見地から望まれてい る だけ でな く、 農薬や医薬などのりード化合物の発見に結び付く可能性がある。著者 は 、簡 便な 生理 活性試験法を考案、または利用することで、ヒノキ漏脂病菌およびマ ツ類の青変病菌の産生する、abscisterol 類などの新規生理活性物質の単離、構造決定 に成功した。

本 論 文 の 第 一 部 に お ぃ て 、 ヒ ノ キ 漏 脂 病 の 病 徴 であ る 樹脂 流出 がヒ ノキ 漏脂 病菌 Cryptosporiopsis abietina の生産する物質による継続的刺激によって引き起こされるい う 仮 説 を た て 、 新 た に 考 案 し た ヒ ノ キ 鱗 片 葉 を 用い た 生理 活性 試験 を指 標と して C り′pro .甲研ops おa6 嵒血a の菌体n ‐ヘキサン画分について生理活性物質の検索を行い、ヒ ノキ鱗片葉の結合部分を脱離させる活性をもつ新規化合物abscisterolA (1 )を単離した

(Fig .1 )。1 の構造は、1D ーおよぴ2D ‐NMR より相対立体構造を、改良Mosher 法ならぴに

1 の酸化反応により得た3 ‐oxoabscisterolA のCD スペクトルを測定することにより絶対

(2)

立体配 置を決 定した。1は構 造的な 特徴とし て、21‑nor‑A17co‑E‑二重 結合と、4[3,19‑エー

テ ル 結 合 を 有 し て い た 。 現 在 ま で に 、 天 然 よ りAnco̲二 重 結 合 を 有 す る ス テ ロ イ ド は

数 種 類 報 告 さ れ て い る が 、21位 の 炭 素 を 失 っ た も の は1が 初 め て で あ り 、 そ の 生 合 成

機構に ついて 興味が持 たれる。Cryptosporiopsis abietinaの菌体n‐ヘ キサン 画分について

さ ら に 検 索 を 行い 、1の構 造 類 縁体 で あ る21位 の炭 素 を 失 ったabscisterolB〜F(2〜6)

な ら び に21位 が カ ル ボ キ シ ル 基 と な っ た21−oic acid型 のス テ ロ ール(7)を 単 離 構造 決

定 し た(Fig.1) 。こ れ ら 関連 化 合 物の 構 造 を考 慮 し て 、abscisterolAの 構 造 的な 特 徴 で

あ る21̲nor̲Anco̲E.二 重 結合 の 生 成機 構 は 、21‑oic acid型ス テ ロ ー ルの17位に脱離 基を

も つ 仮 想 中 間 体 の 脱 炭 酸 と 共 に 形 成 さ れ る と 予 想 し た 。 ま た そ の 他 の成 分 と して 、 ス

テ ロ ー ル お よ び 芳 香 族 化 合 物 を 単 離 し 、 構 造 決 定 ま た は 同 定 し た(Fig.1) 。

Cryptosporiopsis abietinaから単離した1,abscisterolBく2),D(4),ergosterolく9),ergosterol

peroxide (8), 芳香 族 化 合 物で あ る10,11な ら ぴ に植 物 ホ ルモ ン の アブ シジ ン酸(ABA),

イ ン ド ー ル 酢 酸(IAA), ナ フ タ レ ン 酢 酸(NAA), 市 販 の ス テ ロ ー ル4種 類 に つ い て ヒ ノ

キ 鱗片 葉 脱 離活 性 試 験を 行 っ たと こ ろ 、1,2,4,ergosterol,IAAおよ びNAAにのみ 脱離

活 性が 認 め られ た 。 脱離 活 性 の強 さ は 、abscisterol類の 間では、1,4,2の順で 活性が強

く 、IAAとNAAは1と 同 程 度の 活 性 、ergosterolはabscisterol類 と 比べ て か なり 弱 い 活 性

を 示 し た 。 本 論 文 中 で は 漏 脂 現 象 とabscisterol類の 示 す 鱗片 葉 脱 離活 性 の 関係 を 明 ら

か に す る に は 至 ら な か っ た が 、 ヒ ノ キ 漏 脂 病 抵 抗 性 候 補 木 な ら ぴ に 罹病 性 木 の鱗 片 葉

に つ い て1に 対 す る 感 受 性 を 試 験 し た と こ ろ 、1が 低 濃 度 の 場 合 に お い て 、 抵 抗 性 候

補 木 の な か に 脱 離 活 性 が 現 わ れ る ま で に 時 間 が か か る も の 、 ま た は 脱離 活 性 の現 わ れ

な い も の が 認 め ら れ 、1を 漏 脂 病 抵 抗 性 候 補 木 の 選 抜 育 種 に 利 用 で き る 可 能 性 が 示 さ

れ た。 ま た 、1,2,4の 薬 理活 性 に つ いて 依 頼 試験 を 行 った と こ ろ、colchicineにより 誘

導 さ れ る ア ポ ト ー シ ス 型 神 経 細 胞 死 を 抑 制 す る 効 果 が 見 ら れ た 。 ア ポト ー シ ス型 神 経

細 胞 死 は 、 ア ル ツ ハ イ マ ー 病 な ど の 脳 の 疾 患 に 深 く 関 与 し て い る と 考え ら れ てい る 。

(3)

1 , 2 , 4 の アポトー シス型神 経細胞死 抑制効果は、H こ対して行われた他の活性試験の 結果か ら、ある 種のタン パク質リ ン酸化酵 素に対す る阻害作用が関与している可能性 が考えられる。

   第二部では、マツ類の青変病菌であるCeratocystis piceae の代謝産物について、レタ ス 実 生 に 対 す る 生 育 阻 害 活 性 試 験 と 、 Cladosporium herbarum を 用 い た TLC bioautography による 抗菌活性試験を指標として生理活性物質の検索を行い、活性物質 として3 , 5‑dihydroxytetradecanoic acid より誘導される化合物群と、安息香酸ならぴにフェ ニ ル酢 酸 の 誘導 体 を単 離 し た。 単 離 した 化 合物 に つ いて 、 1D‑ お よぴ 2D‑NMR ,化 学 合 成、 改 良 Mosher 法 、化 学 変換 ならびに CD スペクト ルの比較 などにより 絶対配置 を 含めた 化学構造 を決定し た (Fig.2 )。得られた活性物質のなかでは 6 ーラクトン 12 が最 も生成 量が多く 、レタス 実生に対 する生育 阻害活性 も試験した化合物の中で最も強い ことから、 Ceratocystis p た瑚 e の病原性に深く関わっていると考えられた。量的に多く 得 られ た 12 お よ ぴ 13 、 なら び にこれら ニつの天 然物から 化学変換に よって得 られた 6 ‐ラクトン 16 , 17 , 18 (Fig .3 )、化学合成によって得られた安息香酸誘導体14 、フェ ニ ル酢 酸 誘 導体 15 につ い て、 Q 悶 賦 p ぬ p 漑 ae の 宿 主で あ る アカマツの 幼苗に対 する 生理活 性試験を 行った。 レタスの 場合と同 様に 12 カ淑 にネクローシスを引き起こし、

試験し た化合物 の中では 最も強い 生育阻害 活性を示 した。根を切ったアカマツ幼苗を

用 いた 試 験 では 、 12 は 生 育阻 害活性 を示さな かったこ とから、 12 は 根の細胞 にネク

ロ ー シ ス を 引 き 起 こ し 、 生 育 阻 害 活 性 は 二 次 的 に 現 わ れ た も の と 考 えら れ る。

(4)

O O O O

O O

O     O H O

1 0

O C H 3

O O O

1 O H

F i g .   1 C r y p t o s p o r i o p s i s   a b i e t i n a よ づ 爺 ず ぎ 汁 イ 匕 め 茸

1 2

1 3

q

F i g .   2 C e r a t o c y s t i s   p i c e a e l   l 9 C ) ぎ 汁 イ 匕 ゆ 蓉

丶 〉 / 丶 冫 丶 丶 一 丶 / 丶 ′ 丶 丶 エ o 、 、 .

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0 2 H

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F i g .   3       1 2 眦 汁 再 1 3 h d f 匕 怖 辯 潜 襾 h O ‑ C 葡 卩 ぎ t ‑   ‑ t ヒ ゅ 蓉

1 8 4 7 l

(5)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    市 原 耿 民 副 査    教 授    水 谷 純 也 副査    助教授    佐藤博二

     学位論文題名

ヒノキ漏脂病菌Cryp めspor Lops むsa ろLe とf 凡0 および、

マツ 類の青変病菌 Cera と OCyS と isp む ceae の産生する 生理活性物質 に関する化学的研究

  本論文は 緒論、本文2部で構成され、 図109、表24、スキーム4、引 用文献

78を 含 む 、 総 頁 数 168頁 の 和 文 論 文 で あ る 。 ほ か に 参 考 論 文3編 が 添 え ら れ て い る。

  キiね 物 病J泉1衛 の 産 !l三す る 生理 活性 物質 はキ ぬ 物病 害に おけ る病 徴 の発 現に 関わ る 重要 因 子 で あ る キIn物 う を 素 と し て の 役 割 が 解1丱 さ れ て い る ほ か 、 植 物 ホJレ モ ン に み ら れ る よ う な 植 物 成i; 甜 節 物 質 や 医 薬 品 の り ー ド 化 合 物 と し て の 可 能 性 も あ る こ と か ら 、 多 而 的 応 川 研 究 が 展 開 さ れ て い る 。 本 論 文 は 比 較 的 研 究 例 の 少 な い 樹 木 病 原 菌 を 対 象 と し 、 簡 便 な 生 尹1! 活 性 試 験 法 を 考 案 す る こ と に よ り 、 ア ブ シ ス テ ロ ーJレ 類 な ど の 新 規 生 理 活 性物質のIlj.離、構造研究、生理活性 について述べたものである。

  第一ふ15ではヒノキ鱗片葉を用いた新しい!1:.珂!活´Pト試験をj旨檪として、ヒノキ淵J亅旨ヨlb 1衛Cル'ptosporiopsis abietinaよ ル ヒ ノ キ 鱗 片 葉 の 結 合 部 分 を 脱 離 さ せ る 活 性 を も つ 新 規 化 合 物 ア ブ シ ス テ 口 ー ルA( 1) を 単 離 し た (Fig:, 1) 。1の 平 而 構 造 な ら び に ォE1対 配 艫 は1次 元 お よ ぴ2次 元 核 磁 気 共 鳴 ス ベ ク ト ) レ を 巾 心 と す る 各 種 ス ベ ク ト ル 、 絶 対 立 体 配 置 は 改 良Mosher法 な ら び に1の 酸 化 反 応 に よ り 得 た3― オ キ ソ ア ブ シ ス テ ロ ー ルAのCDス ベ ク ト ル を 測 定 す る こ と に よ り 決 定 し た 。1は21f、 ・ ′ . の 炭 素 原 子 をiij尖 し た21, nol一 ・ △17(20)‑E二 重 結 合 と 、4月 ,19‑エ ー テ ル 締 合 を 有 し て い る 。 現 れ ! ま で21 ‑norstei‑oidは 発 児 さ れ て お ら ず 、1が 初 め て の 例 で あ る 。 さ ら に 代 謝 産 物 の 検 索 を 行 っ た と こ ろ 、21 ‑爪Zに 炭 素 を イrし な い ! 緑イ イ. くア フ ・. シス テ口 ー ルB〜F

(2〜6) な ら び に21位 が カ ル ボ キ シ レ 盤 と な っ た ス テ ロ ー ル7を い 璃 佳 .tル 造 決

(6)

う 辷 し て い ろ , 従 っ て ア ブ シ ス テ ロ ー ル 類jの 生 合 成 機 竹 と し て 、7の1 7t、/に 脱 離IIkを も つ 仮 想 中 問 体 の 脱 炭 酸 を 伴 う 経 路 を 提 案 し て い る 。 ま た そ の 他 の 成 分 と し て 、 ス テロ ール(8,9)お よび 芳香族 化合物 (10,1l)をj江離 し、同 定して いる 。

こ れ ら の 化 合 物 と 市 販 の 植 物 ホ ル モ ン 類 、 ス テ 口 ー ル 類 に つ い て ヒ ノ キ 鱗)1・ 葉 脱 離 活 性 試 験 を 行 い 、 ア ブ シ ス テ ロ ー 彫 類 で は 1, 4, 2の 順 で 淅 ´ ドkがlUく な り 、 IAAと NAAは1と 同 程 度 のf両 性 、 エ ル ゴ ス テ ロ ー ル は ア ブ シ ス テ ロ ーJレ お ! と 比 べ て か な り 弱 い 活 性 を 示 し た 。 本 論 文 で は 漏 脂 現 象 と 鱗 片 葉 脱 離;ll´rEの | 州 系 を | リJら か に す る に は 至 ら な か っ た が 、 ヒ ノ キ 漏 脂 づI芍 抵 抗 性 候 袖 水 な ら び にw:.jl` ´rIt水 の 鱗 外 菜 に つ い て1に 対す る感受 ´rl:を ;b℃!験 した ところ、1が低濃度のJ笏合、抵lJ.L´rト候゛tlnホのIllに脱窩作fll´Plミの 現 れ な い も の 、 現 れ る ま で 時 間 の か か る も の が 認 め ら れ 、1を 漏0旨jI` 抵fJLrI: 候 螽 お 木 の 選 抜 育 種 に 利 ′ nで き る 可 能 性 が 示 さ れ た 。 ま た 、1,2,4に つ い て 薬 理I!tlヤ ト 試 験 を 行 っ た と こ ろ コ ル ヒ チ ン に よ り 誘 導 さ れ る ア ポ ト ー シ ス 型 神 経 細 胞 死 を 抑 制 す る 効 果 カ ミ 確 か め ら れ た 。 ア ポ ト ー シ ス 型 神 経 細 胞 死 は ア ル ソ ハ イ マ ー 病 な ど の 脳 の 疾 患 に 深 く 関 与 し て い る と 考 え ら れ 、 1が あ る 種 の タ ン ハ ク 質 リ ン 酸 化 酵 素 に 対 し てm害 作 用を 示すも のとの 推察を 行っ ている 。

  第 二 音 お で は マ ツ 類 の 、 青 変 病 菌CeraC〇cysむspfceaeの 代 謝 産 物 に つ い て 、 レ タ ス 実 生 に 対 す る 生 育 阻 害 活 性 試 験 と 抗 菌 活 性 試 験 を 併 用 し 、 活 性 物 質 と し て3,5− ジ ヒ ド 口 キシ テトラ デカン 酸の誘 導体 (12,13) のほ か有機 酸(14,15)をIp離し

た(Fig.2) 。生成 量の最 も多い お・ラ クト ン12を化 学変換 して 得られ ろ誘導 体

(16,17,18) (Fig.3)と共 にこれ らの代 謝産 物のア カマツ 幼1竹に対 す

る 釧 ミ 到 ! 活 ´Pに 試 ! 験 を 行 い 、 さ ・ ラ ク ト ン12が 最 も 強い ; に 育Kn害 活 ´ ピ1: を ガ ミ し 、 病原 性 に 深く 関わっ ている 川.能 性を 示した 。

   以 上のよう に本研究は 樹木病理 化学に新 しい知見 を加えたのみならず、天然物化学

な らびに脳神経化学にも多而的な展開が可能であることを示したものであり、ざ:術的

に 貢献する こと極めて 大である 。よって 審査員一 同は最終試験の結果と合わせて本論

文の捉H .|l 者箭剛浩;|:ば博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定

した。

(7)

O O O O

O OO O

H O H       A b s c i s t e r o l   C ( 3 )

O

        O エ O

    O     O H O エ

辱 【 O c H 。 。 g         O エ

        1 0         1 1

F i g . C p t o s p o r i o p s i s   a b i e t i n a h     l 9 ぎ 汁 吟 莓

q

F i g .   2 C e r a t o c y s t i s   p i c e a e h   l 9 尋 ず ぎ 汁 イ 匕 吟 j

´ ′ ′ 丶 / 丶 ノ く 丶 ノ く 丶 / , エ O 、 ヾ     1 6

0 2 H

} マ 〆 丶

F i g 1 3 N 卅 汁 ヰ 】 い h d イ 匕 囃 瓣 潜 襾 h O べ 彳 尋 や ぎ 汁 イ 匕 ゆ 蓉

  8 5 0 1

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