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博士(農学)田中 潔 学′位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)田中   潔 学′位論文題名

Tap たr むna 属菌による広葉樹のてんぐ巣病に関する研究 学位論文内容の要旨

  植物の瘻瘤(gall)は、器官瘻(てんぐ巣)と組織瘻(こぶ、葉ぶくれ など)とに分けられる。本研究では、Taphrina属菌により広葉樹10種の 枝に形成されたの奇形について、枝の叢生の有無を調ベ、それぞれの奇形 が器官瘻であるか、組織瘻であるかを判定した。また、器官癈(てんぐ巣)

については、枝の叢生機構を要因別に解析し、てんぐ巣の形態が様々に異 なる理由を明らかにした。さらにこの研究結果を踏まえ、タケ、針葉樹、

広葉樹を含む、多くの木本植物に生ずる55種のてんぐ巣における枝の叢生 機 構 を 整 理 し 、 新 し い 「 て ん ぐ 巣 の 定 義 」 を 提 唱 し た 。 1)マイコプラズマ様微生物によるてんぐ巣病では、二次・三次伸長枝が 形成 され、1年以内にてんぐ巣へと発展する。Taphrina属菌によるてん ぐ巣病罹病枝でも、健全枝に比べて二次伸長枝形成増が認められたが、い ずれの樹種においても、二次伸長枝の形成は枝の叢生への寄与率が低かっ た。したがってTaphrina属菌によるてんぐ巣は、枝の叢生に数年を要す る永年生のてんぐ巣である。

2)ミヤマザクラ、スモモ、モモ、ウメ(ブンゴウメ)の罹病枝は1年以 内に枯死するため、てんぐ巣形成はなかった。

3)微弱なてんぐ巣を形成するケヤマハンノキとウダイカンバでは、罹病

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枝 の3年 間 の 累積 の枯 死率 は、96 ‑99%と 極め て高い 値を 示し た。 また、

枝 の叢生 程度 が高 い典 型的な てん ぐ巣 を形 成する オオ ヤマザクラ、ソメイ ヨシノ、 シラカンノくでは、罹病枝の枯死率が22〜34%であった。さらに、

や や 枝 の 叢 生 程度 が高い てん ぐ巣 を形 成する ダケ カン バでは 、罹 病枝 の3 年 間の累 積の 枯死 率は66%で 、微 弱な てん ぐ巣を 形成 するグループと、典 型 的 な て ん ぐ 巣 を 形 成 す る グ ル ー プ と の 中 間 で あ っ た 。 4) 罹 病 枝 の 枯 死 は、9月 〜ll月 の 秋 枯 れ が 多 く、冬 期間 の枯 死( 耐凍性 の低下による枯死)は少なかった。

5) 子 の う 形 成葉 は早 期に 落葉し た。 その ため 子のう 形成 率が 高い 樹種で は 、葉の 寿命 が極 端に 短くな った 。ま た、 全展開 葉に 対する子のう形成葉 の 割 合 と 、 罹 病 枝 の 枯 死 率 に は 正 の 相 関 が 認 め ら れ た 。 6) ウ ダ イ カ ン バ と ダ ケ カ ン バ では 、 春 葉 に お け る 子 の う 形成 率 は ほ ば 100% で あ り 、両 者の 子の う形成 率に も大 差が なかっ た。 しか し、 ウダイ カンバでは枝の枯死率が高く、枝の叢生程度を低下させたが、ダケカンノく で は半枯 れ枝 とな って 枝の基 部が 生き 残り 、枝の 叢生 程度を上昇させた。

7) 罹 病 葉 の 蒸散 量は 、健 全葉よ りも 子の う形 成以前 から 多か った 。子の う 形 成 後 は 蒸 散 量 が急 増 し 、 罹 病 葉 で は 健 全 葉の約12倍 に達 した 。子の う 形成に よる 葉の 急激 な老化 は、 蒸散 量の 異常増 加に 起因すると考えられ る 。酸性 フク シン 溶液 を用い た実 験に より 、子の う形 成葉における急激な 蒸 散量の 増加 は、 クチ クラの 裂開 部か ら蒸 散が行 われ た結果であることを 明らかにした。

8) ケ ヤ マ ハ ンノ キ、 オオ ヤマザ クラ 、ソ メイ ヨシノ の一 次罹 病枝 では、

節聞短縮は枝の叢生に対する寄与率が低い。′ウダイカンバとダケカンバの

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罹病枝における著しい節間短縮は、枝の叢生機構として重要と思われる。

9)ウダイカンバ健全枝では、,摘葉により人工的に葉量を減らした場合に も、著しい節間短縮が起った。春葉摘葉区よりも、夏葉摘葉区の方が節間 短縮が強く現れた。節間短縮は摘葉率を強く反映していた。摘葉率の高い 区では枝の枯死が発生し、枯死する時期は、罹病枝と同様に秋枯れが多か った。

10)枝下 部からの長枝形成数の増加に伴う分枝率の上昇は、Taphrina属 菌によるてんぐ巣病罹病枝に共通する特徴で、枝の叢生機構として最も重 要である。

11)オオヤマザクラ、ソメイヨシノ、シラカンバでは、親枝1本当たりの 長枝形成数と、単位長(10cm)当たりの長枝形成数は、健全枝に比べて罹 病枝では2〜4倍になっていた。この分枝率の上昇が年々積算され、枝の 叢 生 程 度 が 高い 典 型 的 な て ん ぐ 巣を 形 成 す る ことを 明ら かにし た。

12)木本植物で報告されている、55種類のてんぐ巣病罹病枝における枝の 叢生機構は、の不定芽の形成、◎節間短縮、◎こぶ形成、@枝の枯れ下が りの繰り返し、◎樹種の弱化による枝下部からの長枝形成数増(分枝率の 上昇)に分類することができる。これらの要因の2〜3項目が同時に働き、

枝の叢生をもたらしている。この5項目のうち、木本植物のてんぐ巣病に 最も多いは、Taphrina属菌によるてんぐ巣病罹病枝と同様に、◎の頂部 優 勢 の 弱 化 に よ る 枝 下 部 か ら の 長 枝 形 成 数 増 で あ っ た 。 13)本研究から、次のようなてんぐ巣の新しい定義を提唱した。「健全枝 と比較して、頂部優勢の弱化による枝下部からの長枝形成数増が認められ るもの」。この定義は、マイコプラズマ様微生物などによる1年生植物、

及び、木本植物の二次伸長枝形成によるてんぐ巣にも、さらに、枝以外の     ー442―

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器 官 ( 花 、 芽 、 根 ) の 叢 生 に も 当 て は め る こ と が で き る 。 14)Taphrina属 菌によるてん ぐ巣病罹病枝には、二次伸長枝形成数増、

分枝率の上昇、及び、花芽がほとんどっかないといった若化傾向と、子の う形成に伴う罹病葉の早期落葉、罹病枝の枯死といった老化傾向のニっの フェーズがある。てんぐ巣病罹病枝の若化は、芽の展開時期から枝の伸長 初期(春から夏)に現れる現象であり、枝の老化・枯死は、秋から冬に現 れる現象である。

15)Taphrina属 菌の分類では 、器官瘻形成菌であるか、組織瘻形成菌で あるかが重要な区別点になっている。ところがァaphrina属菌によって形 成された枝の奇形は、枝の叢生程度が高い典型的なてんぐ巣から、枝の叢 生程度が低い微弱なてんぐ巣、さらに、単なる組織の肥大・肥厚にとどま るものまで様々である。微弱なてんぐ巣を器官瘻と認めるか、組織瘻と判 定するかは研究者により意見が異なるため、分類学的な論争が長い間続い ている。本研究では、新しく提唱した「てんぐ巣の定義」にのっとり、

Taphrina属菌を、器官瘻形成菌(てんぐ巣形成菌)であるか、組織瘻形成 菌であるか をそれぞれ判 定し、日本に産するTaplu‑ina属菌は、総数26 種十疑問種2種、そのうち器官瘻形成は、のFIゲj esn erj、◎丁.betuliー cola、 ◎Fbetul ina、OT.nana、 ◎Fepiph yl la、◎Fjaponicaの6 種であることを明らかにした。

(5)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 助教授

五十嵐 生 越 矢 島

学 位 . 論 文 題 名

恒夫          ,響姜     71

Tc ゆん r むna 属菌による広葉樹のてんぐ巣病に関する研究

  本 給 文 は10章 で 構 成 さ れ 、 図21、 表17、 写 真83、 引 用 文 献167、 総 頁 数228頁 の 和 文 給 文 で あ る 。 別 に 参 考 論 文57紹 が 添 え ら れ て い る 。

  本 研 究 は 、Taphrina属 菌 に よ り 広 葉 樹10種 の 枝 に 形 成 さ れ た 奇 形 に つ い て 詳 細 な 観 察 と 実 験 を 行 い 、 新 し ぃ て ん ぐ 巣 の 定 義 を 提 唱 し 長 い 間 混 乱 し て い た て ん ぐ 巣 病 菌 の 分 類 を 行 っ た も の で あ る 。

1) マ イ コ プ ラ ズ マ 様 微 生 物 に よ る て ん ぐ 巣 病 で は 、 二 次 ・ 三 次 伸 長 枝 が 形 成 さ れ 、1年 以 内 に て ん ぐ 巣 へ と 発 展 す る 。 Taph rina属 菌 に よ る て ん ぐ 巣 は 、 枝 の 叢 生 に 数 年 を 要 す る 永 年 生 の て ん ぐ 巣 で あ る 。

2) ミ ヤ マ ザ ク ラ 、 ス モ モ 、 モ モ 、 ウ メ ( プ ン ゴ ウ メ ) の 罹 病 枝 は1年 以 内 に 枯 死 す る た め 、 て ん ぐ 巣 形 成 は な か っ た 。 罹 病 枝 の3年 間 の 累 積 の 枯 死 率 は 、 ケ ヤ マ ハ ン ノ キ 、 ウ ダ イ カ ン バ な ど96 9‑9% と 極 め て 高 い 値 を 示 す グ ル ― プ 、 枝 の 叢 生 程 度 が 高 い 典 型 的 な て ん ぐ 巣 を 形 成 す る オ オ オ ヤ マ ザ ク ラ 、ソ メイ ヨシ 丿、

シ ラ カ ン バ の よ う に2 234% と 低 い グ ル ― プ 、 さ ら に ダ ケ カ ン バ は66% で 2者 の 中 間 で あ っ た ,

3) 子 の う 形 成 葉 は 早 期 に 落 葉 し た 。 そ の た め 子 の う 形 成 率 が 高 いI樹 種 で は 、 藁 の 寿 命 は 極 端 に 短 く な っ た 。 ま た 、 全 展 開 葉 に 対 す る 子 の う 形 成 葉 の 割 合 と 、 罹 病 技 の 枯 死 率 に は 正 の 相 関 が 認 め ら れ た 。

4) 罹 病 葉 の 蒸 散 量 は 、 子 の う 形 成 後 急 増 し 、 健 全 葉 の 約12倍 に 遼 し た 。 子 の う 形 成 に よ る 葉 の 急 激 な 老 化 は 、 蒸 散 量 の 異 常 増 加 に 超 因 す る と 考 え ら れ る . 酸

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性フクシン溶液を用いた実験により、子のう形成葉における急激な蒸散量の増加 は、ク チクラの裂 開部から蒸敵が行われた結果であることを明らかにした。

5)ウダイカンバとダケカンバの羅病技における節問短轤は、枝の簸生機構とし て重要である。ウダイカンバ健全校では、摘葉により人工的に薬量を滅らした鬢 舎にも、著しい節間短縮が起こり摘藁串を強く反映していた.摘葉率の高い区で は技の 枯死が発生 し、枯死する時期は、罹病枝と同様に秋桔れが多かった。

6)枝下部カ、らの長枝形成数の増加に伴う分校串の上昇は、Taphrina属苗による てんぐ巣病罹病枝に共通する特徴で、枝の叢生畿構として最も重要である。オオ ヤマザクラ、ソメイヨシ丿、シラカンバでは、親枝1本当りの畏技形成数と、単 位長(10 crn)当りの長枝形成数は、健全枝に比べて罹病枝では24倍になっ ていた。この分校率の上昇が年々積算され、枝の叢生程度が高い典型的なてんぐ 巣を形成することを明らかにした。

7)木本植物で報告されている55種類のてんぐ巣罹病枝における技の叢生億構は、

の不定芽の形成、@節間短縮、@こぶ形成、@枝の枯れ下がりの繰り返し、@頂 部優勢の弱化による技下部からの畏枝形成数増(分校率の上昇)に分頬することが で巻る。これらの要因の23項目が同時に働き枝の撥生をもたらすが、木本植 物のてんぐ巣病に最も多いのは、Taphrina属菌によるてんぐ巣病罹病枝と同様 に 、 @ の 頂 部 優 勢 の 弱 化 に よ る 枝 下 部 か ら の 畏 枝 形 成 数 増 で あ っ た 。 8)てんぐ巣の新しい定義として「健全校と比較して、頂部優勢の弱化による枝 下部からの長枝形成数増が認められるもの」を提唱した.この定翦は、マイコプ ラズマ様微生物による1年生植物、及び木本植物の二次伸長枝形成によるてんぐ 巣、さらに枝以外の器官(花、芽、根)の叢生にも当てはめることがで巻る。

9Taphrina属菌によるてんぐ巣罹病枝には、二次伸長枝形成数増、分校率の上 昇、及び花芽がほとんどっかないといった若化頗向と、子のう形成に伴う罹病藁 の早期落葉、罹病枝の枯死といった老化傾向のニっのフェ―ズがある。てんぐ巣 罹病枝の若化は、芽の展開時期から校の伸長初期(春から蔓)に現れる現譲であ り、枝の老化・枯死は、秋から冬に現れる現象である。

10) Taphrina属苗の分類では、器官療形成薗であるか、組織痩形成苗であるか が重要な区別点になっているが、微弱なてんぐ巣では判定が難しく分類学的な瞼

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争が長い 間続いて きた,本研究で新しく提唱した「てんぐ巣の定義」により、Ta‑

ヒhrina属菌を器官癌形成菌(てんぐ巣形成苗)であるか、組織痩形成菌であるかを 判定 し 、 日本 に 産 するTaphrina属 薗は 、 総数26種十 疑 問種2種、その うち器官

@T.betulicola, T. betulina, @T. nana,T.

epiphylla, ◎ 王 . japonica6種 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   以上のように本研究は、従来混乱してぃたTaphr!Q!属菌の分類を新しい定義に より整理 したもの で、樹木 病害研究 の進展に 寄与するところ大きぃものがある。

よって審 査員一同 は。別に 行った学 力確認試 験の結果と合わせて、本論文の提出 者田 中 潔 ば博 士 ( 農学 ) の学位を 受けるに 十分な資 格がある ものと認定 した。

参照

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