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博 士 ( 歯 学 ) 佐 藤 公 哉

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 佐 藤 公 哉

学 位 論 文 題 名

チ ロ シ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ 阻 害 薬 の Na+ , K+ ― ATPase に 対 す る 作 用

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

Na+,K+‑ATPaseは全ての 哺乳動物 の細胞膜 に存在し ており、ATP加水分解のエ ネ ルギ ー を 使っ てK+を 細 胞の 外 か ら内 側 ヘ取り込 み、Na+を細 胞の内か ら外側 ヘ 汲み だ し ている。 この細胞 膜を介す る輸送系は 動物細胞 の重要な 機能の維 持 に関 与している 。Na+,K+一ATPaseの 反応機構 および活 性調節に関しては多くの 報 告が あ る が、プロ テインキ ナーゼ及 ぴホスファ ターゼな どによる 調節に関 し て は報 告 が 少な い 。 そこ で 本研 究 は 、動 物細胞 の組織か ら調製し たNa+,K+― ATPa.seに 各種チロシ ンホスフ ァターゼ阻害薬を作用させたのちに活性を測定す る こと に よ り、チロ シンリン 酸化の関 与を推定し た。また 、ウェス タンブロ ツ ト 法に てNa+,K+ーATPaseのaサ ブユ ニ ッ トの チ ロシ ン リ ン酸 化 を検 討 した。

Na+,K+−ATPase研究に用いられている標品は種々の程度に他のタンパク質を混 在し ている。そ の中には 、Na+,K+―ATPaseの 活性調節 に関与している物質が含 ま れて い る 可能性も あると考 えられる ことから、 その点を 利用した のが本研 究 であ る。もし、Na+,K+ーATPase活性 を測定す るサンプ ル中にチロシンホスファ ター ゼが含まれ ており、 そのチロ シン脱リン酸化によりNa.+,K+−ATPase活性の 調 節に 関 与 している のなら、 チロシン ホスファタ ーゼ阻害 薬によっ てチロシ ン ホス ファターゼ が阻害さ れると、Na+,K+―ATPase活性 にも影響が出ると推定さ れ る 。 そ こ で 、 ラ ッ ト 脳 の ホ モ ジ ェ ネ ー ト を 用 い てdephostatinと3,4― dephostatinと プレイン キュベー ションし た際のNa+,K+―ATPase活性への 効果 を調 べると、濃 度に依存 しNa+,K+―ATPase活性を阻害し、IC50はdephostatin では9弘M、3,4ーdephostatinで は20ルM程度 であった 。

dephostatinと3,4ーdephostatinのチ ロシンホ スファタ ーゼ活性 阻害のIC50は 8ハMと18ロMと さ れ てお り 、両 阻 害 薬が チ ロシンホス ファター ゼ活性を 阻害し た 結 果 と し てNa十 ,K+ ―ATPase活 性 を 阻 害 し た と 考 え る こ と が で き る 。 もしNa+,K+一ATPase活性の 抑制が、 チロシン ホスファ ターゼを介するものであ

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る のなら、Na+,K+―ATPaseの精製 を進め共 存するチ ロシンホスファターゼが減 少 すると、チ ロシンホ スファタ ーゼ阻害 薬によるNa+,K+一ATPase活性の抑制も 低 下 する と予想さ れる。そ こでラッ ト脳のホ モジェネー ト、ミク ロソーム と精 製Na+,K+一ATPase標品で3,4−dephostatinによる阻害を調べたところ、精製が 進 むにっれ濃 度に依存 したNa+,K+―ATPase活性の抑制は減少し、見かけのICヨo 値 も増加した 。この結 果は、Na+,K+−ATPase活性の 抑制が共存するチロシンホ ス フ ァタ ーゼ活性 の阻害に 基づくも のである という予想 を支持す ると同時 に、

チ ロシンホス ファター ゼ阻害薬 が直接Na+,K+−ATPase活性を抑制するのではな いということを示している。

次 に 、こ の阻害が 脳以外で も起こる のか調べ る為、ラッ ト腎臓の ホモジェ ネー ト を サン プルとし て、チロ シンホス ファター ゼ阻害薬の 効果を調 べたとこ ろ、

ラ ット腎臓ホ モジェネ ートのNa+,K+ーATPase活性も 各阻害薬の濃度に依存して 阻 害 さ れ 、IC50に よdephostatin、phenylarsine、3,4―dephostatin、4− bromotetramisoleの 順 に5ハM、lluM、2011M以 上 、125皿M以 上 で あ っ た 。 phenylarsineと4−bromotetramisoleの チロシン ホスファ ターゼ阻 害のIC50値 はそれぞれ18弘MとO.ImMとされ、ホモジェネートのNa+,K十―ATPa.Se活性抑制 も チ ロシ ンホスフ ァターゼ 活性の阻 害に基づ くものであ ると考え ても矛盾 しな い 。 もし 、共存す るチロシ ンホスフ ァターゼ 活性が阻害 薬によっ て抑制さ れた 結 果としてラット腎臓ホモジェネートのNa+,K十一ATPase活性が阻害されるのな ら 、Na十,K十一ATPaseの精製度を高めてチロシンホスファターゼが除かれると阻 害 薬によるNa+,K十一ATPase活性抑制も軽減されると考えられる。そこで、ミク ロ ソーム分画を用いて同様の実験を行った。ミクロソームのNa十,K十―ATPase活 性 も 各阻 害 薬 の濃 度 に依 存 し 阻害 さ れ、IC50はdephostatin、phenylarsine、 4−bromotetramisoleの 順 にそ れ ぞれ 、2pM、13ルM、125ルM以上 であり、 ホモ ジ ェネートと 同様に4―bromotetramis01eの場合は 50%以上の活性抑制は得ら れ なかった。次に、精製Na+,K+―ATPaseを用いて同様の実験を行った。その結 果 、dephostatinおよびphenylarsine存在下でのNa+,K+−ATPase活性の抑制は 見られなかった。この結果も、チロシンホスファターゼによってNa十,K十―ATPase 活 性が調節さ れている 可能性を支持し、また、 ラットの脳と腎臓共通の機構で あ る こと を示唆す る。ラッ ト以外の 動物でも 同様に観察 されるの か確かめ るこ と を 目的 に、ブタ 腎臓のサ ンプルを 用いて同 様の実験を 行った。 まず、ブ タ腎 臓のミクロソームを用いてdephostatin、3,4―dephostatin、4―bromotetramis01e お よ びphenylarsineの 効 果を 調 べ た。 ミ ク ロソ ー ムで は 各 阻害 薬の 濃度に依 存 して阻害さ れ、IC50はdephostatin、3,4一dephOStatin、phenylarslne、4ー

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bromotetramisoleの 順に そ れ ぞれ 、5ルM、38 pM、50uM以上 、62ハM以 上 であ り 、4−bromotetramisoleの 場 合 は20% 以上 の 活性 抑 制 は得 ら れな か っ た。

次に 、精製Na+,K+一ATPaseを用い て同様の 実験を行 ったところ 、いずれの阻害 薬 に よっ て も 濃度 に 依存 しNa+,K+一ATPase活性 が低下す る傾向を 示したが 、 3,4ーdephostatin、phenylarsine、4−bromotetramisoleでは20Y09度の活性の 減 少 にと ど ま った 。dephostatinに よ るIC50は7ルMであ った。基 本的にラ ット 腎 臓 と脳 の 場 合と 類 似し 、 ブ タ腎 臓 でも チ ロ シンホス ファター ゼがNa+,K+一 ATPase活性 の 調 節に関与し ているこ とが示唆 されたが 、それぞ れの阻害 薬によ るIC50値 がラ ッ トの場合 と異なる こと、精 製Na+,K+一ATPaseで もdephostatin に よ る阻 害 は 強く見 られるこ となどか ら、種の 違いによ る関与す るチロシン ホ スファターゼの違いを反映している可能性がある。

Na+,K+一ATPaseは本来のATPase活性以外 に、ナト リウムイ オン非存在下、カリ ウム イオン存 在下で部 分反応で あるパラ ニトロフェ ニルリン 酸(p―NPP)の加水 分 解 活性 を 示 す。そ こで、pーNPP分解(p―NPPase)活性に対 するチロ シンホス フ ァ ター ゼ 阻 害薬 の 効果 を 調 べた 。 まず 、 プ タ腎 臓 のミ ク ロ ソー ム を 用い て dephostatin、3,4―dephostatin、4 ̄bromotetramisoleおよ乙ドphenylarsineの 効 果 を調 べ た 。ミ ク ロソ ー ム のlrNPPase活 性 は各 阻 害 薬の 濃 度に 依 存 して 阻 害 さ れた が 、 最大 阻 害の 程 度 は阻 害 薬に よ っ て異なり 、3,4ーdephostatin、 dephostatin、phenylarsine、4←bromotetramisoleのj|頃にそれぞれ、40%、20%、 15%、10%程 度であっ た。次に 、精製Na+,K+一ATPaseを用い て同様の実験を行っ たと ころ4―bromotetramisoleに よる阻害 はほとん ど認めら れなかった。一方、

dephostatin、phenylarsine、3,4一dephostatinでは 、濃度に 依存しp―NPPase 活 性 は低 下 し 、最 大 阻害 は40か ら50% 程 度で あ っ た。 チ ロシ ン ホ スフ ァ ター ゼ阻 害薬は、rrNPPase活性も濃度依存的に抑制すること.が示されたが、Na+,K+

‑ATPase活 性の 場 合と異なり 精製Na+,K+一ATPaseを用いる と逆に抑 制が増強 さ れ た 。チ ロ シ ン残基 に依存し ないホス ファター ゼ阻害効 果が出て いる可能性 も あ り 、今 後 の 検討が 必要であ る。以上 のことか ら、ラッ トの腎臓 と脳および ブ タの 腎臓にお いて、チ ロシンホ スファターゼがNa+,K+一ATPase活性の調節に関 与し ていると考えられるが、もし、Na+,K+一ATPase分子のチロシン残基の脱リ ン酸 化により 調節され るのなら 、dephostatinの有無 でNa+,K十‑ATPaseのチロ シ ン リン 酸 化 レベル が変化す る可能性 がある。 そこで、 ウェスタ ンブロット 法 によ ルラット 腎臓ホモ ジェネー トとミクロソームのNa十,K十―ATPaseaサブュニ ッ ト の、 チ ロ シン リ ン酸 化 レ ベル に 対す るdephostatinに よる前処 理の効果 を 調べ た。その結果、Na+,K十‑ATPaseのQサブュニットのチロシンリン酸化量は、

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dephostatinによる前処理によっていずれも増加した。この結果は、dephostatin によルチロシンホスファターゼ活性が阻害されると、Na+,K+一ATPaseのQサブ ユニットのチロシンリン酸化レベルが増加してNa+,K+一ATPase活性が抑制され ることを強く示唆する。

以上の結果から、Na+,K゛‑ATPaseの活性調節にチロシンホスファターゼが関与 しており、チロシン残基がりン酸化されるとATPase活性が抑制されると結論 した。

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学位論文審査の要旨 主査   教授   井上農夫男 副査    教授    鈴 木邦明 副査    教授    田 村正人

学 位 論 文 題 名

チロシンホスファターゼ阻害薬の Na+ , K+ ― ATPase に 対す る 作 用

審 査 は 、 井 上 、 鈴 木 お よ ぴ 田 村 の 各 審 査 担 当 者 が 学 位 申 請 者 に 対 し て 提 出 論 文 の 内 容 な ら び に 関 連 事 項 に つ い て 、 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た 。 始 め に 学 位 申 請 者 に 対 し 、 本 論 文 の 要 旨 の 説 明 を 求 め た と こ ろ 、 以 下 の 内 容 に っ い て 論 述 し た 。

  Na+,K+−ATPaseの 反 応 機 構 、 活 性 調 節 に 関 し て多 くの 報告 があ るが 、キ ナー ゼ 及 び ホ ス フ ァ タ ー ゼ 等 に よ る 調 節 に 関 し て は 報 告が 少 い為 、Na+,K+―ATPase活 性 の ツ ン 酸 化 、 脱 リ ン 酸 化 に よ る 調 節 を 検 討 す る こ と を 本 研 究 の 目 的 と し た 。   ラ ッ ト 脳 の ホ モ ジ ェ ネ ー ト でdephostatinと3,4−dephostatinのNa+,K+

‑ATPase活 性 へ の 効 果 を 調 べ る と 、 濃 度 依 存 的 に 活 性 を 阻 害 し 、IC、50は dephostatinで9ルM、3,4−dephostatinで は20ルM程 度 で あ っ た 。dephostatin と3,4―dephostatinの チ ロ シ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 阻 害 のIC50は8ルMと18ルM と さ れ て お り 、 両 阻 害 薬 が チ ロ シ ン ホ ス フ ァ タ ーゼ 活 性を 阻害 した 結果Na+ ,K゛ 一ATPase活 性を 阻害 した と考 えら れた 。

  又 ラ ッ ト 脳 の 各 精 製 段 階 の 標 品 で3,4―dephostatinに よ る 阻 害 を 調 べ た と こ ろ 、 精 製 が 進 む に っ れ 見 か け のIC。 。 値 が 増 加 し た こ と か らATPase活 性 の 抑制 が 共 存 す る チ ロ シ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 の 阻 害 に 基 づ く も の で 、 阻 害 薬 が 直 接Na

+,K+一ATPase活 性を 抑制 する の では ない こと を示 した 。ラ ット 腎臓 のホ モジェネ ー ト に お し ヽ て はIC50はphenylarslne、4ーbromotetramis01eで11ルM、125ルM以 上 で そ れ ぞ れ の チ ロ シ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ 阻 害 のIC50値 に 類 似 し ホ モ ジ ェ ネ ー ト の 場 合 も チ ロ シ ン ホ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 の 阻 害 に 基 づ く と 考 え ら れ た 。

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  もし共存するチロシンホスファターゼ活性が阻害薬により抑制された結果と してラット腎臓ホモジェネートのATPase活性が阻害されるなら、精製度を高め チロシンホスファターゼが除かれると阻害薬によるNa+,K+←ATPase活性抑制も 軽減さ れると考え られるがミ クロソーム でIC50値は増加し、精製標品では dephostatin、phenylarsine存在下での活性の抑制は見られず、この結果からも チロシンホスファターゼによりNa+,K+―ATPase活性が調節されている可能性を 示した。

  一方ブタ腎臓でもチロシンホスファターゼがNa+,K+一ATPase活性の調節に関 与することを示したが、IC50値がラットの場合と異なること、精製標品でも dephostatinによる阻害は強く見られることから種の違いにより関与するチロ シンホスファターゼが違う可能性が考えられた。

  Na+,K+−ATPaseはATPase活性以外に、Naイオン非存在下、Kイオン存在下で 部分反応のp‑NPPの加水分解活性を示しその活性も検討した。ブタ腎臓のミク ロ ソ ー ム のIr NPPase活 性 は 濃 度 に 依 存 し 阻 害 さ れ 精 製 標 品 で は 4−bromotetramisoleによる阻害は殆どみられず、他の3種類では最大阻害は40 ー50%程度でIrNPPase活性も濃度依存的に抑制することを示したが、精製標品 で抑制が増強しチロシン残基に依存しないホスファターゼ阻害効果が出ている 可能性も考えられた。

  ウェスタンブロット法でNa+,K+一ATPaseQサブュニットのチロシンリン酸化 レ ベル に 対す るdephostatinによ る 前処 理 の効果を 調べたとこ ろNa+,K+

‑ATPaseぱサブユニットのチロシンリン酸化量は、dephostatinによる前処理に より増加することを示した。

  試問では、本論文の内容とその関連事項にっいて、チロシンホスファターゼ 阻害薬を各動物組織から調整したNa+,K+―ATPaseに作用させた活性測定の結果 やりン酸化との関連についての質疑応答がなされた。゛これらに対して申請者は 本研究から得た知見について適切な回答を行った。

  本研究は、Na+,K+−ATPase活性の活性の調節にチロシンホスファターゼの脱リ ン 酸 化 が 関 与 し て い る こ と を 示 唆 し た 最 初 の 報 告 で あ る 。   以上より、審査委員は全員、本研究が学位論文に十分値し、申請者が博士(歯 学)の学位授与に相応しいと認定した。

参照

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