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博 士 ( 理 学 ) 福 平 由 佳 子

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 福 平 由 佳 子

    

学位 論文題名

Study of Honeycomb

patterned Films for lVIedical Devices     

( 医 療 用 ハ ニ カ ム 構 造 フ イ ル ム に 関 す る 研 究 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  我 々 の 体 に は 、 創 傷 治 癒 と 呼 ば れ る 体 の 傷 を 治 そ う と す る 生 理 的 な 作 用 が 存 在 す る 。 し か し 、 治 癒 の 過 程 で 、 本 来 結 合 し て い な ぃ 組 織 同 士 が 接 着 し 、 新 た な 結 合 が 生 じ る こ と が あ り 、 こ れ を 癒 着 と 呼 ん で い る(Fig.1) 。 癒 着 は 、 臓 器 の 本 来 の 動 き を 抑 制 す る こ と か ら 、 イ レ ウ ス 、 疼 痛 、 不 妊 症 な ど 二 次 的 な 症 状 を 引 き 起 こ す 、 ま た 、 再 手 術 を 困 難 に さ せ る な ど 大 き な 問 題 に な っ て い る 。 現 在 、 癒 着 を 防 止 す る た め に 、 癒 着 防 止 材 が 販 売 さ れ て い る 。 日 本 で も っ と も 売 れ て い る 癒 着 防 止 材 は 、 ヒ ア ル ロ ン 酸 ナ ト リ ウ ム と カ ル ボ キ シ メ チ ル セ ル ロ ー ス ナ ト リ ウ ム か ら な る フ イ ル ム 状 の 商 品 で あ る 。 患 部 に 貼 付 す る と 体 液 や 血 液 を 吸 収 し 、 ゲ ル 化 す る こ と を 特 徴 と し て い る 。 し か し 、 柔 軟 性 に 欠 け 、 濡 れ た 手 術 手 袋 な ど に 付 着 す る な ど 問 題 点 も 有 し て お り 、

よ り 使 い 勝 手 の よ い 癒 着 防 止 材 が 求 め ら れ て い る 。 癒 着 防 止 材 に 求 め ら れ る 性 質 と し て は 、 線 維 芽 細 胞 の 遊 走 を 防 ぐ バ リ ア と し て 働 く こ と 、 近 年 増 加 傾 向 に あ る 非 侵 襲 性 手 術 ( 内 視 鏡 手 術 ) に 対 応 で き る 柔 軟 性 が あ る こ と 、 縫 合 せ ず に そ の 場 に 貼 付 で き る こ と 、 取 り 扱 い 性 が よ い こ と 、 癒 着 が 形 成 さ れ る 間 バ リ ア と し て 働 き 、 そ の 後 生 体 内 に 分 解 さ れ て い く こ と な ど が 挙 げ ら れ る 。

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Fig.  'I Mechanism of adhesion and adhesion prevention.

  こ れ ら の 要 件 に 見 合 う も の と し て 、 ハ ニ カ ム 構 造 フ イ ル ム に 着 目 し た 。 こ の フ イ ル ′ ム は 、 Fig.2に 示 す よ う な 均 一 な 孔 を 片 面 に 有 し 、 裏 側 は 、 穴 の 開 い て い な い フ ラ ッ ト な 構 造 を 取 っ て い る 。 孔 は フ イ ル ム 内 で 隣 り 合 う6つ の 孔 と 連 通 し て

い る 。 こ の 孔 の 内 部 に 体 液 や 血 液 が 入 り 込 み 、 毛 管 カ に よ っ て 組 織 に 接 着 す る と 考 え た 。 ま た 、 穴 は フ イ ル ム を 貫 通 し て い な い た め 、 線 維 芽 細 胞 の 遊 走 を 抑 制 す る と 予 測 し た 。 さ ら に フ イ ル ム の 厚 み は10ll,m前 後 と 非 常 に 薄 膜 で 柔 軟 性 に 富 ん で い る 。 し か し 、 こ れ ま で に 報 告 が あ っ た ハ ニ カ ム 構 造 フ イ ル ム は い ず れ も 、 体 外 で 使 用 す る こ と を 目 的 に 作 製 さ れ た も の で あ り 、 生 分 解 を 有 し て い な か っ た 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 生 体 内 で 使 用 す る こ と を 目 的 に 、 生 体 親 和 性 の 高 ゾ ヽ 界 面 活 性 剤 を 用 い た ハ ニ カ ム 構 造 フ ィ ル ム の 作 製 を 検 討 し 、 得 ら れ た フ イ ル ム が 実 際 に 癒 着 防 止 材 と し て 有 効 か 否 か ラ ッ ト の 盲 腸 癒 着 試 験 で 検 証 し た 。

Fig.  2  Structure  of  the honeycomb‑patterned film.

2章 で は 、 細 胞 膜 の 成 分 で あ る り ン 脂 質 の 中 で 、 あ る 特 定 の り ン 脂 質 の み 、 ハ ニ カ ム

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(2)

構造フイルムを形成できることを見出し、リン脂質の中でのハニカム形成の可否が存在す る理由について検討した。ハニカム構造フイルムは水滴を鋳型としているため、ポリマー 溶液と水滴との界面が重要であると考え、表面張カおよぴ界面張カを測定した。測定の結 果、表面張カはほとんど変化がないのに対し、界面張カは、ポリマー溶液が濃縮されてい くとともに、低下し、ある濃度以上では、一定になることが明らかとなった。また、ハニ カム構造フィルムを形成するりン脂質は、形成できないりン脂質に比べて、界面張カが高 いことが明らかとなった。水滴の形を模擬的に観察したところ、ハニカム構造が形成でき なルリン脂質では、溶媒濃縮に従って、水滴はレンズ状に広がる様子が観察された。この ことから、界面張カの低い溶液中で水滴はレンズ状に広がり、隣り合う水滴と合一し、ハ ニカム構造を形成できなかったと思われる。

  3章では 、このようにして得られた生分解性のハニカム構造フイルムの癒着防止材と しての有効性を確認した。まず初めに、リン脂質からなるフイルムの生体親和性を確認す るため、線維芽細胞を用いて代謝活性試験を行った。その結果、細胞死は観察されず、既 存の界面活性剤を用いたフイルムに比べて、より高い代謝活性を示し、高い生体適合性を 有していることが明らかとなった。

  次にフイルムの特異な構造から、このフイルムは通常の加工されていなぃ平滑なフイル ムに比べて高い接着カを有すると予想し、生体組織への接着カを血vitroで測定した。生体 組織としては、トリ胸肉を用い、接着カとしては引き剥がしに必要なカを測定した。この 結果、ハニカム構造フイルムば´、I平滑なフイルムに比べて高い接着カを示した。これは、

ハニカム構造にすることによって比表面積が増大したことによる接着の仕事量の増加、ハ ニカム構造内への粘液の侵入による引き剥がし時の毛管カの発生、ハニカム構造によるア ンカー効果くこれらの積み重ねにより発生した接着強さだと考えられる。通常、生体内で 医療用材料を用いる場合、縫合または接着剤による貼付が必要となるが、医療用材料その ものに接着カを有していれば、これらの処理が不要になり、生体に対してより親和性があ る。

  癒着防止材としての有効性は、ラット盲腸癒着モデルにて評価を行った。方法としては ラットの盲腸にガーゼにて擦傷し、点状出血を起こす。擦傷部位にハニカム構造フイルム を貼 付し、一 週間後に癒着の程度を確認する。評価群は、1.ハニカム構造フイルム、2.

平滑フイルム、3.コントロール(擦傷のみ)。その結果、コントロール群では全例に癒着 が認められたが、ハニカム構造フイルムではコントロール群に比べて癒着を減少させるこ とが分かった。ハニカム構造フアルムは、一週間後でも盲腸にフイルムが貼付されている 様子が確認されたが、平滑フイルムは盲腸から外れ、移動している姿が観察された。この 結果から、ハニカム構造フィルムの接着カは、盲腸に貼付し留まるだけのカを有している こと、癒着防止材としての効果を有していることが分かった。

  このハニカム構造フイルムは、細胞培養基材として様々な研究が行われている。生分解 性の ハニカム 構造フイルムは再生医療用の足場材としてより有効である。第4章では、足 場材としての可能性を確認するため、軟骨細胞の培養評価を行った。軟骨細胞は、細胞培 養基材上で培養すると脱分化し、細胞の形状が球状から扁平になるという問題がある。ハ ニカム上で培養した結果、細胞は、球状の形状を保持し、より多くの細胞外基質を産生す ることが確認された。軟骨はハニカム構造フイルムを三次元の足場として認識したともの と考えられる。

  以上より、生分解性ハニカム構造フイルム作製のための新規な界面活性剤として生体膜 成分であるりン脂質が有用であることを見出した。フイルム作製のメカニズムについて詳 細に検討し、フイルムの鋳型となる水滴の安定保持のために最適な界面張力範囲があるこ とを明らかにし、フィルム作製の設計指針を得た。また、得られたフィルムを用いて、癒 着防止材としての有効性を動物実験にて明らかにし、癒着防止材に求められる生分解性、

薄膜性、柔軟性、線維芽細胞の遊走抑制、生体接着性を満たす新規な癒着防止材を開発し た。

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学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査   教授   居城邦治 副査   教授   村越   敬 副査   教授   坂口和靖

副査   教授   下村政嗣(東北大学多元物質科学

    

研究所)

    

学位論文題名

Study of Honeycomb

―patternedF 丶ilms for :NiIedical Devices

    

( 医 療 用 ハ ニ カ ム 構 造 フ イ ル ム に 関 す る 研 究 )

  我々の体には、創傷治癒と呼ばれる体の傷を治そうとする生理的な作用が存在する。

しかし、治癒の過程で、本来結合していない組織同士が接着し、新たな結合が生じるこ とがあり、これを癒着と呼んでいる。癒着は、臓器の本来の動きを抑制することから、

イレウス、疼痛、不妊症など二次的な症状を引き起こす、また、再手術を困難にさせる など大きな問題になっている。癒着を防止するための癒着防止材には、使い勝手の悪さ な ど 改 善 の 余 地 が あ り 、 よ り 良 い 癒 着 防 止 材 が 求 め ら れ て い る 。   本論文では、生分解性のハニカム構造フィルムの作製とそのフィルムの医療応用とし て癒着防止材と再生医療用の足場材としての検討を行った。生分解性ハニカム構造フイ ルム作製のための新規な界面活性剤として生体膜成分であるりン脂質が有用であること を見出した。フィルム作製のメカニズムについて詳細に検討し、フィルムの鋳型となる 水滴の安定保持のために最適な界面張力範囲があることを明らかにした。また、得られ たフィルムを用しゝて、癒着防止材としての有効性を動物実験にて明らかにし、癒着防止 材に求められる生分解性、薄膜性、柔軟性、線維芽細胞の遊走抑制、生体接着性を満た す新規な癒着防止材を開発した。さらに、その他の医療応用として、再生医療用の足場 材としてハニカム構造フィルムを用い、軟骨細胞を培養し、ハニカム構造フィルム上で 軟骨細胞は脱分化せずに、軟骨の球状を保ち、細胞外マトリックスの産生が増進するこ とを明らかにした。これらの結果により、生分解性ハニカム構造フィルム作製における 液液界面での界面活性剤の働きに関する新たな知見を得るとともに、癒着防止材および 再生医療用の足場材としての新規ハニカム構造フィルムの可能性・有用性を見出したこ とを意味している。

  よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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