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博士( 理学 ) 橋口未奈子

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Academic year: 2021

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(1)

博士( 理学 )    橋口未奈子

学 位 論 文 題 名

    Hydrogen and nitrogenlSOtopiCCOmpOSitionSand   . OCCurrenCeSOfiSOtopiCa11yanoma10uSOrganiCmatterSin     CarbonaCeouSChondriteS

(炭素質コンドライト隕石中の同位体異常をもつ有機物の水素・窒素同位体組成と産状)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    本学位 申請論 文では ,そ の場分 析を用 いた手 法に より, 始原的 隕石である炭素質コンド ラ イ ト 隕 石 に含 ま れ るDや15Nに富 む有機 物の同 位体的 ,形 態的特 徴を明 らかに した .さら に , 鉱 物 と 付随 し たDや15Nに富む 有機物 を複数 発見し ,鉱 物の酸 素同位 体組成 から 発見し た 同 位 体 異 常を も つ 有 機 物が 先 太 陽 系 では な く 太 陽 系 内部 で 形 成さ れた ことを 示した ,     Dや15Nに 富む隕 石有機 物は, 分子 雲や初 期太陽 系円盤 外縁部 という極低温下で形成した と 考えら れて おり分 子雲内 や初期 太陽系 円盤 外縁部 での物 理化学 反応の痕跡を残しているこ と が期待 され る.Dや15Nに富 む隕石 有機物 は,先 太陽 系であ る分子 雲あるいは初期太陽系内 部 のどち らで も形成 可能で あると 予測さ れて おり, その起 源を特 定されていない.しかし,

有 機物の 起源 を特定 するこ とが出 来れぱ ,分 子雲や 初期太 陽系円 盤外縁部の環境や物理化学 反 応のさ らな る理解 に繋が ること が期待 され る,

    分子雲 や初期 太陽系 円盤 外縁部 の極低 温領域 にお いて, 塵表面 に形成された氷の層への 紫 外 線(UV)照 射 に よっ て, 有機物 が形成 される と予測 され ている ことか ら,有 機物 に付随 し た鉱物 は有 機物の 起源を 特定す るため の有 用なツ ールと なるこ とが期待される.例えば,

先 太陽系 の分 子雲で 形成さ れた有 機物で あれ ば,DやlNの 過剰を もち, さら に内部 には先 太 陽 系で形 成さ れた粒 子(プレソーラー粒子)を含むと予測されるからである.これまでの隕石 有 機物の 研究 は,酸 処理によって隕石鉱物から分離された不溶性有機物を用いたものであり,

Dや15Nに富 む有機 物の特 徴, 特に鉱 物との 関係を 明ら かにし た研究 例は非常に少なく,同位 体 異 常 を も っ た 隕 石 有 機 物 が ど の よ う な 特 徴 を も つ の か 良 く 分 か っ て い な い .     本研 究 で は , 始原 的 隕 石(NWA 801隕 石 ,Murchison隕 石)に 含まれ るDや15Nに富む 有 機 物の同 位体 的,形 態的特 徴を明 らかに する こと, そして ,有機 物に 付随し た鉱物 からDや 15Nに富 む有機 物の 起源に 制約を 与える こと を目的 とした .

    第二 章 で は , 本研 究で 用いた その場 分析に よるDや15Nに富 む有 機物の 探索お よび観 察 法 につい て記 してい る.そ の場同 位体比 分析 には, 同位体 顕微鏡 システムを用いた同位体イ メ ー ジ ン グ を用 い , 有機 物の位 置決定 と観 察にはFE‑SEM‑EDSシ ステム を用い た.同 位体 顕 微 鏡シス テム は,投 影型二 次イオ ン質量 分析 装置と 研究室 で開発 した二次元イオン検出器を 組 み 合 わ せ た 独 自 の 分 析 機器 で あ る た め ,そ の 特 長 と 動作 原 理 に つ いて 記 し て あ る.

    第三 章 で は , 始原 的 隕 石 で あるNWA 801隕 石(CR2コ ンド ラ イ ト) から発 見し たDに 富 む 有機物 の水 素同位 体組成および形状について記している.水素同位体イメージングにより,

Dに富 む炭素 質スポ ッ卜 (6D=2,500‑II,l00%o)を計85個 発見し ,そ のうち67個にっ いて 物 質 の形状 観察 に成功 した. 発見し た物質 は, 水素, 炭素を 含んで おり ,6D値がCR2コ ンドラ イ ト隕石 有機 物から の報告 値と調 和的で ある こと, さらに これら の炭 素質物 質はCR2コン ド ラ イト中 の有 機物と 似たラ マンス ペクト ルを 示した ことか ら,発 見した物質は隕石有機物に 対 応する 物質 である と考え られる .さら に, その同 位体的 特徴か ら,分子雲あるいは初期太 陽 系円盤 外縁 部にお いて形 成され た有機 物で あると 考えら れる. 観察の結果,発見した有機

―926 ‑

(2)

物 は , ケ イ 酸 塩や 酸 化物 を含 む りン グ状 の 粒子 ,ケ イ 酸塩 との 集 合体 ,そ し て鉱 物と 付 随し な い 丸 あ る い は不 規 則な 形状 を した 有機 物 粒子 であ る こと が分 か った .ケ イ 酸塩 や酸 化 物を 含 む 有 機 物 粒 子は , 理論 的に 分 子雲 や初 期 太陽 系円 盤 外縁 部の 低 温領 域に お いて 形成 さ れる こ と が 予 測 さ れて い たが ,こ れ まで に報 告 例が なか っ た物 質で あ る. 内部 に ケイ 酸塩 や 酸化 物 を 含 む 有 機 物 , 鉱 物 と 付 随 し な いDに 富 む有 機物 粒 子は ,ケ イ 酸塩 との 集 合体 を成 す 粒子 と , 水 素 同 位 体 組 成 お よ び サ イ ズ が 類 似 し て い た . ま た ,NWA 801隕 石のDに富 む有 機 物は 大 部分 が ケイ 酸塩 と の集 合体 で あっ たこ と から ,Dに 富む 有 機物 粒子 は 形成 後に そ の大部分が ケ イ酸 塩 と合 体し て 集合 体を 形 成し たこ と が示 唆さ れ た.

    さ ら に , 本研 究 では ,有 機 物内 部に 含 まれ る, あ るい は集 合 体と して 付 随し たケ イ 酸塩 や 酸化 物 に着 目し , それ らが 太 陽系 物質 で ある か先 太 陽系 物質 (プレソーラ ー)であるかを明 ら か に す る た め, 酸 素同 位体 イ メー ジン グ によ る酸 素 同位 体比 測 定を 行っ た .ケ イ酸 塩 や酸 化 物 を 内 部 に 含ん だ 有機 物お よ びケ イ酸 塩 との 集合 体20個 を分 析 し, それ ら に付 随し た 粒子 の 酸素 同 位体 組成 は 太陽 系物 質 と同 じで あ った ,  NWA 801隕石 と同 じ 母天 体で あ ったと考え ら れ て い るNWA 852隕 石 か ら は , プ レ ソ ー ラ ー ケ イ 酸 塩 や 酸 化 物の 報 告が ある , 一方 ,NWA 801隕石 有機 物 に付 随す る 鉱物 から は 酸素 同位 体 異常 が検 出 され なか っ たこ とか ら ,有機物に 付 随 し た 鉱 物 は太 陽 系で 形成 し た物 質で あ ると 考え ら れる .よ っ て, ケイ 酸 塩を 含む あ るい は 集 合 体 を 成 すDに 富 む 有 機 物 は , 初 期 太 陽 系 内 で 形 成 さ れ た こ と が 示 唆 さ れ た .     第 四 章 で は , 始 原 的 隕 石Murchison隕 石(CM2コ ン ド ラ イ ト )とNWA 801隕石 から 発 見し たDあ る い は15Nに 富 む 有 機 物 の 同 位 体組 成お よ び形 状に つ いて 記し て いる ,Murchison隕石 か ら17個 ,NWA 801隕 石 か ら12個 のDあ る い はlNに 富 む 有 機 物 を 発 見 し , こ れ ら の 有 機 物 が 示 すDとlNの 過 剰 は 一 致 し な い こ と が 分 か っ た . ま た ,Murchison隕 石 とNWA 801隕 石 にお い て, 発見 し た有 機物 の 同位 体組 成 は,615Nの 幅は 類似 し てい たの に 対し ,Murchison 隕 石 有 機 物 は , NWA 801隕 石 有 機 物 よ り も 6D値 が 低 い も の が 多 か っ た .     NWA 801隕 石 とMurchison隕 石 の 有 機 物 の 同 位 体 組 成 は , 発 見し た有 機 物は 分子 雲 や初 期 太 陽 系 円 盤 外縁 部 にお ける 多 様な 同位 体 分別 効果 に よっ て説 明 可能 であ り ,分 子雲 や 初期 太 陽系 円 盤外 縁部 で 形成 した 有 機物 に対 応 する と考 え られ た.Murchison隕 石は , 隕石母天体 で 水 質 変 質 を 受け て いる 隕石 で あり ,太 陽 系物 質の 水 は隕 石有 機 物よ り6D値 は低 いと 考 えら れ て い る こ と から ,Murchison隕石 の 有機 物のDの過 剰 は水 によ る 同位 体交 換 反応 によ っ て小 さ くな っ てい るこ と が示 唆さ れ た.

    第 五 章 で は, 本 研究 の結 果 をま とめ た 結論 を示 し てい る. 本 研究 によ り ,炭 素質 コ ンド ラ イ ト 隕 石 に 含 ま れ る 個 々 のDやINに 富 む 有 機 物 の 同 位 体 的 , 形 態 的 特 徴 が 明 ら か と なっ た . さ ら に ,NWA 801隕 石 ,Murchison隕 石 には ,明 ら かに 分子 雲 起源 と考 え られ る有 機 物,

っ ま ル プ レ ソ ー ラ ー 粒 子 を 内 部 に 含 ん だ 有 機 物 は ほ と ん ど 保 存 され てい な いこ とが 分 かっ た . 分 子 雲 起 源有 機 物は ,NWA 801隕 石,Murchison隕 石母 天体 へ 集積 する 前 ある いは 集 積時 に 破 壊 さ れ て 形 状 が 変 化 し て い る , ま た はDや15Nの 同 位 体 異 常 を失 って い たこ とが 示 唆さ れ た.

‑ 927 ‑

(3)

学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教 授 教 授 准教授 准教授

圦本 鈴木 山本 橘

学 位 論 文 題 名

尚義 徳行 順司 省吾

    Hydrogen and nitrogenlSOtopiCCOmpOSitionSand      ●    ●

OCCurrenCeSOfiSOtopiCa11yanoma10uSOrganlCmatterSln     CarbonaCeouSChondriteS

(炭素質コンドライト隕 石中の同位体異常をもつ有機物の水素・窒素同位体組成と産状)

     博士学位論文審査等の結果について(報告)

   本学位申請論文では,炭素質コンド ライト隕石中のD や 15N に富む有機物の同位体的,

形態的特徴を明らかにした.

     第ー章では,本研究の研究目的を述べている. 炭素質コンドライト隕石からは,D や 15N に富む有機物が報告されており,分子雲や初期太陽系円盤外縁部の起源が提唱されてい るが,その特定はされていない.有機物の起源が特定出来れば,分子雲や初期太陽系円盤 外縁部の環境や物理化学反応の理解に繋げられる,先太陽系時代の分子雲で形成した有機 物は,先太陽系時代に形成した粒子(プレソーラー粒子)を付随していると予測され,有機物 に付随する鉱物は,隕石有機物の起源を特定するための重要な指標となる.しかし,従来 の研究の多くは,酸処理によって鉱物から分離した不溶性有機物を用いていたため,有機 物と鉱物との関係は不明であった,また,隕石有機物の同位体組成は太陽系内の変質変成 で変化する事が示唆されており,隕石有機物の起源を理解するには形成後の同位体的変化 も明らかにする必要がある.本研究では,酸処理を行わずその場分析を用い,炭素質コン ドライト隕石の D や15N に富む有機物の 同位体的,形態学的特徴を明らかにし,有機物の 起源や進化に制約を与えることを目的とした.

     第二章では,本研究で用いた D や15N に富む有機物の探索および観察,同定法を述べ ている,その場同位体分析には,同位体顕微鏡システムを用いた同位体イメージングを用 いた.同位体顕微鏡システムは,投影型二次イオン質量分析装置と研究室で開発した二次 元イオン検出器を組み合わせた独自の分析機器である.有機物の観察には,走査型電子顕 微鏡とエネルギー分散型 X 線分光器を用い,物質の同定のためラマン分光分析も行った.

     第三章では,発見したD や 15N に富 む炭素質物質の水素・窒素同位体組成や産状,ラ マンスペクトル,物質に付随する鉱物の酸素同位体組成について述べている,  NWA 801 隕

―928―

(4)

石 とMurchison隕 石 か ら , 合 計113個 のDやlsNに 富 む 炭 素 質 物 質 を 発 見 し た . 発 見 し た 物 質 は , 水 素 や 窒 素 を 含 み , 炭 素 質 コ ン ド ラ イ ト 隕 石 の 不 溶 性 有 機 物 と 類 似 し た 同 位 体 組 成 を 示 し た . 多 く の 場 合 , 物 質 のDと15Nの 過 剰 は 一 致 し な か っ た . ま た ,Murchison隕 石 に は ,NWA 801隕 石 よ りDに 富 む 炭 素 質 物 質 の 割 合 が 少 な か っ た , 物 質 の ラ マ ン ス ペ ク ト ル は , 炭 素 質 コ ン ド ラ イ ト 不 溶 性 有 機 物 の ス ペ ク ト ル と 類 似 し て い た . 発 見 し た 物 質 は , 粒 子 状 の 炭 素 質 物 質 で あ り , ケ イ 酸 塩 や 酸 化 物 を 含 む り ン グ 状 の 粒 子(ring globule)や ,ケ イ 酸 塩 と の 集 合 体(globule aggregate), 鉱 物 と 付 随 し な い 丸 あ る い は 不 規 則 な 形 状 を し た 粒 子 で あ っ た .    Ring globuleは , 理 論 的 に 予 測さ れ て い た が報 告 例 が な く, 本 研 究 で 初め て 発 見 さ れ た .  Ring globule,globule aggregateに 付 随し た 鉱 物 の 酸素 同 位 体 組 成は 太 陽 系 物 質と 同 じ で あ っ た ,

    第 四 章 で は , 発 見 し た 物 質 の 起 源 と 進 化 に つ い て 議 論 し て い る . 発 見 し た 炭 素 質 物 質 は ,Dや15Nの 過 剰 を 示 し , 水 素 を 含 み , 同 位 体 組 成 や ラ マ ン ス ペ ク ト ル が 炭 素 質 コ ン ド ラ イ ト 不 溶 性 有 機 物 と 類 似 し て い る こ と か ら , 隕 石 有 機 物 に 対 応 し て い る と 考 え ら れ る , 同 位 体 的 特 徴 か ら , 分 子 雲 や 初 期 太 陽 系 円 盤 外 縁 部 に お け る 多 様 な 同 位 体 分 別 効 果 で 生 じ たD や15Nの 過 剰 を 引 き 継 い だ 有 機 物 で あ る と 考 え ら れ る .Murchison隕 石 は 隕 石 母 天 体 で 水 質 変 質 を 経 験 し た 隕 石 で , 太 陽 系 内 の 水 は 隕 石 有 機 物 よ り6D値 が 低 い と 考 え ら れ て い る こ と か ら ,Murchison隕 石 有 機 物 のDの 過 剰 は 水 と の 同 位 体 交 換 反 応 で 小 さ く な っ た こ と が 示 唆 さ れ た .

    有 機 物 の 多 く は ケ イ 酸 塩 と の 集 合 体 で あ っ た こ と か ら , 大 部 分 の 有 機 物 は 形 成 後 に ケ イ 酸 塩 と 合 体 し た こ と が 分 か っ た .  Ring globuleとglobule aggregaeに 付 随 す る 鉱 物は , 酸 素 同 位 体 異 常 を 示 さ な い こ と か ら , 太 陽 系 で 形 成 し た 物 質 で あ る と 考 え ら れ ,ring globule やglobule aggregateは 初 期 太 陽 系 内 で 形 成 し た こ と が 示 唆 さ れ た ,

    第 五 章 で は , 本 論 文 の ま と め と 結 論 を 述 べ て い る , 本 研 究 で は , 炭 素 質 コ ン ド ラ イ ト 隕 石 か らDや15Nに 富 む 有 機 物 を 大 量 に 検 出 し , そ の 同 位 体 的 , 形 態 的 特 徴 の 関 係 を 初 め て 明 ら か に し た . さ ら に , 鉱 物 を 付 随 し た 有 機 物 を 発 見 し た . NWA 801隕 石 ,Murchison 限 石 に は , プ レ ソ ー ラ ー 粒 子 を 付 随 し た , 明 ら か に 先 太 陽 系 起 源 と 考 え ら れ る 有 機 物 は 見 っ か ら な か っ た . 先 太 陽 系 起 源 の 有 機 物 は ,NWA 801隕 石 ,Murchison隕 石 母 天 体 集 積 前 あ る い は 集 積 時 に 破 壊 さ れ , 同 位 体 組 成 も 変 化 し て い る と 考 え ら れ る .     以 上 の 成 果 は , 従 来 の 宇 宙 有 機 物 の 従 来 の 理 解 を 飛 躍 的 に 発 展 さ せ る 研 究 で あ る . よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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