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博 士 ( 理 学 ) 小 橋 川 敬 博

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 小 橋 川 敬 博

     学 位 論文 題名

    NIVIR Study of Canine IVIilk Lysozyme : Analysis of Folding IVIechanism , and the Relationship     between Dynamics , Structure and Function

     ( イ ヌ ミ ル ク リ ゾ チ ー ム の NMR に よ る 研 究 : 折り畳み機構および構造一機能一ダイナミクス相関の解析)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  蛋 白 質 は 様々 な生 体反 応 に関 る分 子で あり 、 その 機能 、構 造、 物 性を 多角 的に 研 究す るこ と は 生 命 現 象 を理 解す る上 で 重要 であ る。 蛋白 質 は生 体内 にお いて → 旦ポ りベ プチ ド 鎖と して 合 成 さ れ た 後 に、 その 特異 的 な立 体構 造を 獲得 し て初 めて 機能 を発 揮 する 。多 くの 蛋 白質 は生 体 内 で 自 発 的 に立 体構 造を 形 成す るこ とが 知ら れ てい るが 、そ のメ カ ニズ ムに 関す る 詳細 は不 明 で ある 。

  ま た 、 立 体構 造を 獲得 し た蛋 白質 が機 能を 発 揮す る過 程に おい て 様々 なダ イナ ミ クス が関 っ て いる 。そ のダ イ ナミ クス は様 々なタイムスケール(ris〜our)および様々な振幅 から成り立って お り 、 例 え ぱ、 ルー プ領 域 の局 所的 なダ イナ ミ クス から ドメ イン ご との 大き なダ イ ナミ クス な ど か ら 成 る 。し かし なが ら 、そ れら ダイ ナミ ク スの 機能 に対 する 直 接的 な役 割に 関 して は研 究 例 が少 なく 、不 明 な点 が多 い。

  上 記 命 題 を解 明す る上 で 蛋白 質の 構造 、ダ イ ナミ クス に関 する ア ミノ 酸残 基レ ベ ルで の情 報 が 不 可 欠 で あ る 。 本 研 究 で はNMRと 他 の 様 々 な 物 理 化 学 的 手 法 を 組 み 合 わ せ る こ と に よル イ ヌ ミ ル ク リ ゾ チ ー ム (CML) の 構 造 、 ダ イ ナ ミ ク ス 、 機 能 に 関 し て 詳 細 に 調 べ た 。 2.イヌ ミルクリゾチームの特徴

  CMLは 細 菌 の 細 胞 壁 の 構 成 成 分 で あ る ペ プ チ ド グ リ カ ン 中 のN‑acetylglucosamineと N‑acetylmuramicacidの問のp.1,4 glycosideの加水分解反応を 触媒することにより、溶菌作用を示 す 酵素 であ る 。CMLは 酸性 条件 下、 適量 の 変性 剤存 在下 に おい てMolten Globule State(MG)とよ ぱ れ る 部 分 変 性 状 態 を 形 成 す る 。MGは 蛋 白 質 の 折 り 畳 み 中 間 体 に 類似 し てい るこ とが 知 られ て お り 、 蛋 白 質 の 折り 畳み 機構 を 研究 する 上で 格好 の モデ ルで ある 。こ れ まで に、 アミ ノ 酸配 列 で80% 以 上 の 相 同 性 を 示 す 蛋 白 質 で あ る 、 ウ マ ミ ル ク リ ゾ チ ー ム(EML)のMGに 関 し て 研 究 が 行 わ れ て き た が 、CMLは そ れ に 比 べ て 著し く高 い 安定 性を 保持 して い るこ とが 知ら れ てい る 。 本 研 究 で は2つ の 蛋 白 質 のMGを 比 較 す る こ と に よ り 、MGの 安 定 化 機 構 、 形 成 機 構 に つ いて検討 した。

  CMLの そ の 他 の 特 徴 と し て は1個 のCa2十 を結 合し 、 それ によ り熱 安定 性 が著 しく 向上 す るこ と が 挙 げ ら れ る 。CMLに 対 す るCa2゛ 結 合の 効 果に っい てよ り 詳細 に知 るた めに(1)溶菌 活 性の 温 度 依 存 性 、(2)立 体 構 造 、(3)ダ イ ナ ミ ク ス 、(4)基 質 お よ び 反 応 生 成 物 の 類 似 体 で あ る p‑aminophenyl‑tri‑N‑acetyl‑p‑cmtomoside(PAP‐m‐NAG)に対する結合および解離速度をCa2十.舶e お よ びCP・boundstateの両 方に つ いて 調べ た。 それ ら の結 果か ら、 酵素 活 性、 ダイ ナミ ク ス、

耐熱性の 相関を立体構造に基づいて 検討した。

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3.CMLの折 り 畳み 中間 体に 関す る 研究

  CMLのNative状 態 の1H NMRス ペ ク ト ル に は 環 電 流 効 果 に よ り0ppm以 下 に シ フ 卜 し た シ グ ナ ル が 存 在 し 、 芳 香 環 を 含 む 疎 水 性 コ ア の 存 在 を 示 唆 し て い る 。CMLが 完 全 にMGで あ る pH2.Oに お い て もOppm以 下 に シ フ 卜 し た シ グ ナ ル は ブ ロ ー ド化 され ては いる も のの 観測 され た ( 図1) 。 一 方 で 、EMLのMGに お い て はOppm以 下 に は シ グ ナ ル は 観 測 さ れ な い 。 こ の こ と よ りCMLのMGに お い て は 芳 香 環 を 含 む 疎 水 性 コ ア が ま だ 残 っ て お り 、 そ の こ と が 安 定 性 に 関 っ て い る と 考 え ら れ る 。 ま た 、CMLお よ びEMLの 立 体 構 造 はA,B,C,Dの4本 のa‐ ヘ リ ッ ク スよ りな るd ‑ド メイ ンと 、3本のD‐ シー トよ りなるp‐ドメ インにより構成されている が、

EMLのMGに お いて はp‐ ド メイ ンの 構造 は 壊れ てい てa|ド メイ ン の みが 残っ てい ると さ れて いる 。一 方 、CMLのMGに おい て 観 測 され る0 ppm以下 のシ グナ ル は全 てC‐ヘ リッ クス 周辺 残 基 m来し てお り 丶そ のシ フト 値ッIド メイ ン 内… 引tt靉

関 与 が 化 学 シ フ ト 値 の 計 算 値 と 実 測 値 の 比 較 か ら 示 唆 さ れ た 。   ! j  l こ の こと は、CMLのMGにお いてD‐ ドメ イ ンの 構造 の一 部が 残  |j

っ て いる こと を示 して い る。  ず

  次 に 主 鎖 ア ミ ド プ ロ 卜 ン の 重 水 素 交 換 反 応 を 行 っ た 。 交 換 速   U i1 度 が 速 い ほ ど そ の 残 基 の 溶 媒 露 出 性 が 高 い こ と を 示 す 。 CMLお   : nし よ びEMLの 両 方のMGに おい て4本の伐‐ ヘリックスの領域で交  丶 `AA.一|‑‑‥ー. ‥..atiw 換 速 度 が 遅 い と い う 傾 向 が 共 通 し て 見 ら れ た 。 し か し な が ら 、2  ` ^ 、 〜 〜 〜  u6 つ の 蛋 白 質 の 交 換 速 度 を 比 較 し た と き 、 CMLの 方 が 著 し く 遅 い  ー ‑〜   ‑     ・ー 〜UnfoIMd^

こ と が わ か っ た 。 こ の こ と は 、d‐ ヘ リ ッ ク ス 自 体 の 安 定 性 がCML  嚇1が 亀r万 一r布‑0.*−     H卿m

のMGの方 が高 いこ とを 示 して いる 。2つの 蛋白 質の アミノ酸図1:lHNMR,spectra of CML in the 配 列 を比 較し たと ころ 、CMLの 方 が丗 ヘリ ック ス間 の疎水性相native,MG :Wd unfolded states.

互 作 用を 強め る残 基ー の 置換 が起 こっ て いる こと がわ かっ た 。

こ の こ と よ りMGの 安 定 化 に お い て へ り ッ ク ス 問 の 協 同 的 相 互作 用が 重要 であ る こと がわ かっ た 。

4.  CMLの 構 造 ― 機 能 一 ダ イ ナ ミ ク ス 相 関 に 関 す る 研 究   Ca2十‑free CML(X‑ray)とCa2+̲bound CML(NMR)の構 造を比較し たと こ ろ、2っ の状 態問 で基 本構 造 の変 化は 見ら れ なか った(図 2) 。し かし な がら 、局 所的 な構 造 変化 がい くっ か の領 域に見ら れた 。 特筆 すべ き変 化 とし てCa2十‑bindingに伴うD‑helixの分子 内部 の 方へ の移 動が 挙 げら れる 。こ れに よ りD‑helix近 傍と疎水 性コ ア との 間の 相互 作 用が 増加 し、 それ に よりD‑helix近傍の構 造 が 安 定 化 さ れ 、 分 子全 体の 耐熱 性の 向 上を もた らし た と考 え られ る 。また、D‑helix近 傍において遅いタイムスケー ルてS〜ms) のダ イ ナミ クス の低 下 が観 測さ れて いる 。 この こと はD‑helix近 傍の 構 造安 定化 と相 関 があ ると 思わ れる 。 また 、D‑helix近傍は 基質 結 合領 域を 形成 し てい るが 、D‑helix近 傍に お ける ダイナミ ク ス お よ び 構 造 の 変 化は 基質 との 相互 作 用に 影響 を与 え るこ と が 予 想 さ れ る 。 実 際 、 基 質 お よ び 生 成 物 の 類 似 体 で あ る PAP‑tri‑NAGに 対す る結 合速 度と 解離速度はCa2十‑bindingに伴い 低下していた(表1)。また、速いタイムスケール(ps〜、ns)のダイ

ナ ミク ス に関 して は、6っ ある基質結 合 サ ブ サ イ ト の う ち3っ で 低 下 し た も の の 、 分 子 全体 では あま り 変化 し て いな か った 。

  以 上 よ り 、Ca2゛ の 結合 はCMLの 構 造 お よ ぴ ダ イ ナミ クス に対 し て、 分 子 全 体 に 均 一 とい うよ りは む しろ 局

 2:  Superimposition of the structures of Ca2+̲bound (black) and Ca2+̲free CML(gray).

表1: Enzymatic characterizationザくタ ゛‑触Pロndくゲ゛.6D甜耐Cん伍,

      Ca2+̲free CML     Ca2+̲bound CML Activation Energy (kj/moVK)       41.6      50.4 Optimum Temperarure(oC)     35      50

kon(lls)       8.80 x l02     4.02 x l02 kofi‑(l/s)       2.69 x 10‑3     1.24 x 10‑3 Melting Temperature (oC)      39.0      65.1

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所的に影響を与えることが明らかに

なった。そのダイナミクスの低下は主に基質結合領域に集中しており、それがCML の耐熱性 の向上、基質結合速度および生成物解離速度の低下に関っていることが示唆された。

‑ 271

(4)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授    新 教 授    田 助教授   渡 助教授   出

田 勝 利 中    勲 辺 信 久 村    誠

     学位論文題名

    NIVIR Study of Canine IVIilk Lysozyme : Analysis of Folding Mechanism ,and the Relationship     between Dynamics , Structure and Function

     ( イ ヌ ミ ル ク リ ゾ チ ー ム の NMR に よ る 研 究 : 折り畳み機構および構造―機能―ダイナミクス相関の解析)

   蛋白質は、 20 種類のアミノ酸が直鎖状にっながったポりペプチド鎖であり,配列 固有の立体構造を形成して初めて機能活性を獲得する。そのため、蛋白質がポりペ プチド鎖から機能活性を有する独自の立体構造を獲得するまでの過程,いわゆる折 り畳み過程の解明は生命科学の分野における重要な課題のーつである。多くの小型 の球状蛋白質は部分的に折り畳まれた中間体を経て特異的な構造へと折り畳まれる。

そのため、折り畳み中間体に関する蛋白質の折り畳み過程を解明していく上での手 がかりとな る。一部の 蛋白質では 平衡状態に おいて折り畳み中間体に類似した Molten Globule (MG) 状態と呼ばれる部分変性状態を安定に形成し、これまで折り畳み 中間体のモデルとして研究が行われてきた。以上のような背景にあって,申請者は,

カル シ ウム結 合性蛋白質 の一種であ るイヌミル クリゾチー ム (CML) をモ デル蛋 白質 と して, その MG 状態に ついて NMR により調べ た。また、 特異的な立 体構造 に折り畳まれた蛋白質は様々なりガンド分子と相互作用することにより,特殊な立 体構造変化を起こし,その機能活性や安定性を変化させる例が多々報告されている。

そこで、 CML に対す る Ca2 ゛の結合の影響について、 NMR による溶液構造およびダ

イナミクス解析、速度論的解析などにより調べ、その酵素学的性質との関係にっい

て体系的にまとめた。

(5)

   申 請者 は 、 CML の MG 状態 に 着目 レ ,こ の 状態 を 残基 レ ベ ルで 詳 細に追跡 す るために、 CD ス ペクトル,螢光スペクトル, NMR スペクトルを用いてその物理化 学的及び構 造学的な特性について考察した。CD スペクトルを用いた GuHCl 変性実 験の結果, CML の中間状態の安定性は,以前に報告されていたウマミルクリゾチ ーム (EML) のものと比較して 1kcal/mol 程度高いことを示した。また,申請者は,

CML 及 び EML の MG 状 態 に お け る 構 造 学 的 知 見 を 比 較 す る 事 で , CML の MG 状 態において Val‑98 及 びMet‑105 周辺で形成される芳香族クラスターがウマミルク リゾチーム に比べて天然状態に近いことを示した。これらの実験結果から,CML の MG 状態はこれ まで考えら れていた MG 状 態の概念とは著レく異なり,天然状態     j

様の構造を保持している可能性が高いことを示した。このことは,一般に多くの 球状夕ンパ ク質のフォ ールディン グ反応初期 に形成される MG 状態が,必ずしも 三次構造の崩壊 と言う状態として結論づけられるものではないことを示唆し て お り , 今 後 の フ 、 オ ー ルデ ィ ン グ研 究 の方 向 性を 示 した と もい え よう 。    また申請者は,CMI 」のCa2 ゛の結合に伴う構造、機能、ダイナミクスの変化を゛m 偲 および速度論的手法により調べた。その結果, Ca2 ゛の結合に伴い、酵素反応の活性 化エネルギーおよび至適温度が上昇すること、基質類似体に対する結合および解離 速度が低下することを示した。また、全体構造に関しては大きな変化はないものの,

a ‐ ド メイ ン 内の C‑helix 末 端に 存 在するル ープ領域 (100‑102 番目 残基)及び

D‑helix(ll0‑115 番目残基)周辺で局所的な立体構造変化が起こることを示した。ダイ

ナミクスに関しては、基質結合部位周辺においては ms 〜us の時間スケールの運動性

が低下すること、触媒残基周辺においては ps 〜ns における運動性が低下することを

示した。このように、 Ca2 ゛の結合はCML の構造およびダイナミクスに対して、分子

全体に均一というよりはむしろ活性部位周辺に局所的に影響を与え、それが活性化

エネルギーや至適温度などの酵素学的性質の変化と関連があることを示した。上記

の研究結果 は,今まで 曖味な認識 で捉えられ ていた酵素の活性とダイナミクス

の 関 係 を 生 物 物 理 学 的 に 明 ら か に す る 上 で 重 要 な 研 究 成 果 と 言 え よ う 。

   学位論文の公開発表の質疑応答では,申請者は自らの様々な実験経験や過去の

参 考 文 献 等 を 引 用 し , 豊 富 な 知 識 に 基 づ ぃ て 質 問 に 明 快 に 回 答 し た 。

   以 上のように 申請者は,CML の構造学的及び熱力学的特徴を研究する事で,カ

ルシウム結合蛋白質の立体構造変化におけるいくっかの重要な知見を示した.審

査員一同はこれらの成果を高く評価し,申請者が北海道大学博士(理学)の学位

を授与される資格があるものと認定した。

参照

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