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博 士 ( 農 学 ) 納 口 る り 子

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 納 口 る り 子

    

学位論文題名

北 陸 地 域 に お け る 大 規 模 稲 作 経 営 の 展 開 論 理

    

―1950 年代後半以降の一農家の経営展開事例分析一

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本諭文 は7章 からな る総頁数148ぺ―ジの和文論文である。図17、表26、和文 88の 引 用 文 献 ・ 参 考 文 献 を 含 み 、 他 に 参 考 論 文16編 が 添 え ら れ て い る 。   今日、わが国の稲作生産は重大な局面を迎えており、稲作経営には低コスト生 産やさらなる規模拡大が強く求められている。そして稲作経営者に対しては、企 業的経営者としての経営主体の確立が必須とされているが、企業的農業者の育成 という問題について憾、実際の普及教育の現場でも試行錯誤の段階にある。とこ ろで今日の大規模稲作経営は、1970年代後半の中型機械化体系の成立によって技 術的基礎を与えられ誕生したものである。大規模稲作経営に関する研究はそれ以 降数多く行われてきた。しかしその多くは生産構造諭的分析で、大規模稲作経営 成立の経営的・技術的条件を明らかにするものであり、経営発展の主体的要因の 解明については不十分な形でしかなされてこなかった。

  本論文は、経営主体の具鉢的な経営管理行動、すなわち絶え間ない経営計画の 実行過程を分析素材として、大規模稲作経営の経営展開論理を明らかにする事を 課題とするものである。研究方法としては、大規模稲作経営展開の先進地である 北陸地域に存立する一農家を対象として、現経営者が就農した1957年以降の具体 的 な経営 展開 プロ セスを素材として、経営計画モデルを適用した分析を行う。

  序章では、課題と分析方法の限定を行っている。本論文の分析対象は、中型機 械化体系成立以降の大規模稲作経営である。経営者の主依的な経営行動に焦点を 当てて経営展開論理を明らかにするために、一農家の経営展開を継続的に.とらえ、

詳細な経営データを用いて実証的な分析を行うこととレた。また、大規模稲作経 営が一定の経営者機能を保有していることを前提に、経営主鉢の活動を、一般経 営学における戦略的経営計画モデルによって分析することとした。第1章では、

稲作経営を巡る諸条件の変化を簡単に整理する。大規模稲作経営の成立過程にお

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いて、経営を取りまく外部環境は激しく変化してきた。米価水準は停滞または低 下し、他の要因も厳しさを増してきたが、自主流通米制度や特別栽培米制度など の導入により、稲作経営が経営者としての能カを発揮する領域が増大してきたこ と を指摘している。第2章では、北陸地域の大規模稲作経営の展開を代表的な地 域について述ベ、上越地域の稲作経営の特徴と、事例経営の位置づけを行った上 で、事例経営の経営画期を6期に区分している。

  第3章では 、「零細分 散錯圃制下 における経営展開(1)」として、規模拡大 に伴う零細分散錯圃の拡大の実態と、それへの経営対応として形成される圃場利 用秩序の内容と経営的意義について述べている。.すなわちここでは、零細分散錯 圃の経営的克服という経営戦略に即して、経営の内部環境整備の方向を分析す.る ことを課題とする。激化する零細分散錯圃という外部環境に対し、作業能率向上 のための労働手段の高度化や、団地を基本とする農作業構造、さらには団地ごと の圃場条件に合わせた品種の選択等の、経営の内部環境の連鎖的な整備を行うこ とにより対応する。それらの対応により、団地ごとの収益性格差は縮小されてい ることを指摘している。しかし、圃場利用秩序の形成が、既成の稲作技術の枠内 における作業方法・品種・施肥管理技術の徹底や合理化という点での経営対応に 留まり、稲作技術自体を大規模経営にふさわしいあり方に変革するとか新しい土 地利用方式の創出や農法の変革を行うといった点には至っていないことを指摘し ている。

  第4章「零 細分散錯圃 制下におけ る経営展開 (2)」 では、第3章よりもさら に外部環境が悪化した段階における経営展開を、前章と同様の視点から取り上げ る。この段階での経営戦略は、特別栽培米への取り組みによる収益性の向上であ る。まず特別栽培米への取り組みと同時に、品種構成の著しい変化が生じ、コシ ヒカリへの作付集中がみられた。特別栽培米を拡大する上で不可欠であった、コ シヒカりの作付拡大を可能にした技術的及び経営的要因は、春作業の早期化及び 用排水路の整備による安定栽培の実施、秋作業関連の機械類の能力向上、作業受 託の縮小による作付自由度の向上、であった。さらに、生産コストを分析するこ とにより、特別栽培米への取り組みによる収益的な効果は大きかったことを明ら かにしている。特別栽培米への取り組みに当たっての、経営の内部環境の整備の 特徴は、ほば前章で述べたことと同様であった。ここでも積極的な機械・施設へ の投資がみられる反面、個別で行う圃場整備の限界や、低投入型農法の不徹底な どが指摘できた。

  第5章「経営展開のための組織化の意義」では、経営と経営との間の生産組織

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化を、外部環境の変化に対応して経営の内部環境を整備することを助長するだけ でなく、外部環境に対して積極的に働きかけることによって、外部環境そのもの の変革をも可能にするものとしてとらえる。そして事例経営の展開に即して生産     ―・

組織化の意義を整理し、生産組織が、次の発展段階への移行に際して踏切板の役 割を果たすことを明らかにした。

  終章では、事例経営の経営展開を、「戦略的経営計画の実践プ口セス」として 再整理レ、経営発展上の画期から次の画期への転化の論理を中心に分析し、そこ から読み取った経営展開の論理を示している。まず、戦略的経営計画で事例経営 と竹本経営の経営展開が適切に分析できたことから、大規模稲作経営の展開が、

常に新しい経営問題の発生に対する経営対応を要請されるという、戦略的経営計 画の実践過程であったことが明らかになった。また、ある画期から次の画期への 移行に際して、ある画期の経営戦略が、その前の画期の経営戦略と全く無関係で、

分断されたものではなく、前画期に行われていた経営実践の一部を拡大する形で、

次の画期展開がなされていることを指摘している。経営展開は「戦略的経営計画 の実践」として、画期から画期への移行に際しては、これまでに経験したことの ない新たな経営問題の発生があり、その意味で非連続的であるが、他面では連続 的な面を合わせ持つことで、発展的・革新的かつ安定的な経営展開が可能になっ てきたとし ている。また、2経営の戦略的経営管理領域の変化を分析することに より、@経営者が管理しなければならない経営管理領域が拡大してきた。@各時 期に新たに加わった管理領域は戦略的な管理領域として、その時期で最も重要で あり、かつ経営者能カが発揮される領域となっている。◎戦略的経営管理領域自 体が、次第に広い領域に関連するものに変化してきている。@新たに取り組まれ る経営戦略が、経営内の多くの管理領域に係わるようになるため、経営者行動に 占 め る 戦 略 的 部 分 の 割 合 が 増 加 す る 、 な ど の 特 徴 が 明 ら か に な っ た 。   以上本研究は、単に大規模稲作経営成立の技術的および経営的要因の議論にと どまらず、大規棲稲作経営展開の論理を、経営主体の経営管理行動を動態的に分 析し、経営画期転化の法則性を明らかにすることによって、実証的に明らかにす るもので、動態的な経営者諭として新しい境地を切り開くものである。同時に本 研究は、具体的に今後の大規模稲作経営における経営展開の条件と経営者能力陶 冶の方向を提示する点で、実際界に対しても貢献することろが極めて大きいと考 えられる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

北陸地域における大規模稲作経営の展開論理

1950年代 後 半以 降 の ―農 家 の経 営 展 開事 例分析 ―

  本 論 文 は7章 か ら な る 総 頁 数148ぺ ー ジ の 和 文 論文 で ある 。 図17、 表26、 和文 88の 引 用 文 献 ・ 参 考 文 献 を 含 み 、 他 に 参 考 論 文16編 が 添 え ら れ て い る 。   今 日 、稲 作 を 巡る 経 済条 件 が 益々 厳 しさ を 増 す中 で 、 経営 の主体的 行動の重 要 性が 高 ま って い る 。し か し、 経 営 主体 に 焦点 を 当 てた 経 営展 開論理 の解析は 、こ れま で 不 十分 な 形 でし か 行わ れ て こな か った 。 本 研究 は 、わ が国で 最も早く 稲作 上層 農 家 の形 成 が 注目 さ れた 北 陸 地域 を 対象 に し て、1970年代 の中型機 械化体系 成立 以 降 の大 規 模 稲作 の 展開 論 理 を、 主 体的 な 行 動に 即 して 明らか にするこ とを 目的 と す るも の で ある 。

  序章 では、課 題と分析 方法の限 定を行っ ている。 ゛本論文の 分析対象 とする大 規 模稲 作 地 帯で は 、 所与 の 技術 的 ・ 経済 的 諸条 件 の 下で 規 模拡 大のた めの多様 な試 行が 重 ね られ る と 同時 に 、経 営 を 取り 巻 く社 会 経 済的 な 諸条 件を改 編して、 経営 展開 を 図 る間 断 の ない 経 営計 画 プ ロセ ス が積 み 重 ねら れ てい る。こ の実態に 着目 して 、 こ のよ う な 経営 計 画プ ロ セ スの 累 積・ 展 開 の過 程 を克 明に分 析して課 題の 解明 に 迫 ると い う 方法 を 採り 、 従 来、 主 とし て 進 めら れ てき た生産 構造論的 接近 と共 に、経営 主体に即 した実態 分析を進 めるため 、一般経営 学に・お ける戦略 的経 営計 画 モ デル を 援 用す る 研究 方 法 を提 示 して い る 。

  1章 で は 、稲 作 経営 を 巡 る諸 条 件の1960年 代 以降 の 変化 を 整 理し 、 大規 模 稲 作経 営 の 成立 過 程 にお い て、 米 価 水準 は 停滞 ま た は低 下 し、 他の要 因も厳し さを 増し て き たが 、 一 方で 稲 作経 営 者 が経 営 者と し て の能 カ を発 揮する 領域が増 大し て き た こ と を指 摘 して い る 。第2章 で は、 北 陸 地域 の 大規 模 稲 作経 営 の展 開 を 代 表的 な 地 域に つ い て述 ベ 、上 越 地 域の 稲 作経 営 の 特徴 と 、事 例経営 の位置づ けを 行っ た 上 で、 事 例 経営 の 約35年 間に 亘 る詳 細 な 経営 記 録 の整 理分析を もとにし て

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経営画期を6期に区分している。

  第3章では、規模拡大に伴って深刻化する零細分散錯圃状況に対して、作業能 率向上のための労働手段の高度化や、団地を基本とする農作業編成、さらには団 地ごとの圃場条件に合わせた品種の選択等、経営の内部環境の連鎖的な整備など により、団地ごとの収益性格差は縮小されている。しかし、圃場利用秩序の形成 が、既成の稲作技術の枠内における作糞方法・品種・施肥管理技術の徹底や合理 化という点での経営対応に留まり、稲作技術自体の変革や、新しい土地fii用方式 の創出、さらには農法の変革といった点には至っていないことを指摘している。

  第4章では、゛さらに外部環境が悪化した段階における経営展開を取り上げるが、

まず特別栽培米への取り組みと同時に、品種構成の著しい変化が生じ、コシヒカ リへの作付集中がみられた。特別裁培米としてのコシヒカりの作付拡大を可能に した技術的及び経営的要因は、,機械施設の大型化など、新規の投資を伴う経営行 動であったが、さらに、生産コストの分析により、特別裁培米への取り組みによ る収益的な効果が大きかったことを明らかにしている。

  第5章では、経営と経営との間の生産組織化を、外部環境の変化に対応して経 営の内部環境を整備することを助長するだけでなく、外部環境に対レて積極的に 働きかけることによって、外部環境そのものの変革をも可能にするものとしてと らえ、3回に亘る生産組織化が、次の発展段階への移行に際して踏切板の役割を果 たすことを明らかにした。

  終章では、事例経営の経営展開を、「戦略的経営計画の実践プロセス」として 再整理し、経営発展上の画期から次の画期への転化の諭理を中心に分析し、ある 画期から次の画期への移行の際に1ま、前画期に対する連続性と非連続性を併せ持 つことで、発展的・董新的かつ安定的な経営展開が可能になってきたことを明ら かにしている。また、2経営の戦略的経営管理領域の変化を分析することにより、

経営者行動に占める戦略的経営管理領域が拡大しているなどの特徴が明らかにな った。

   以上のように本研究は、ただ単に大規模稲作経営成立の技術的および経営的要 因の議論にとどまらず、大規模稲作経営展開の論理を、経営主体の経営管理行動 の視点に立って実証的に明らかにするもので、動態的な経営者論として新しい境 地を切り開くと同時に、今後の大規模稲作経営における経営展開の条件と経営者 能力陶冶の方向を具休的に提示する点で、実際界に対しても貢献することろが極 めて大きいと考えられる。よって審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果 と合わせて、本論文の提出者納□るり子は博士(農学)の学位を受けるのに十分 な資格があるものと認定した。

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参照

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