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博 士 ( 工 学 ) 小 寺 隆 夫 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 小 寺 隆 夫

学 位 論 文 題 名

低 平 地 に お け る 河 川 計 画 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 論文は ,海面 の標高 より 低い土 地を流 れる河 川の 下流部 におい て,浚渫により洪水時の水位 を低 下さ せ,河 口堰に よって 流水 の正常 な機能 を維持 して, 安全 で快適な人間環境を形成するた めの 河川 計画の 手法に っいて 論じ たもの である 。その 実際例 とし て長良川下流部を取り上げてお り, 結論 を含め 全5章で構 成され ている 。

  著 者は, 昭和34年,塩 害,地 盤沈下 ,用水 不足 に苦し む木曽 三川下 流部デルタ地帯の環境を改 善す る方 途とし て長良 川に逆 潮堰の設置,木曽長良成戸導水門および堰直上流部取水を提言した。

昭和35年, 引き続 く大出 水に 対し長 良川下 流部河 道の 大規模 な浚渫 によって洪水位の大幅な低下 を図 り, 同時に 木曽三 川およ び伊 勢湾の 水面を 活かし たりク リェ ーション施設を提言した。さら に昭 和36年 ,水質 汚濁防 止を 事業に 加えた 長良川 下流 部の河 川総合 開発構想「長良川河口ダムの 構想 」を 発表し た。序 論では ,30年 以上経 過した 現在 におけ るこの 堰の存在理由にっいて述べら れて いる 。

  浚 渫,堰 の設置 という 河道 に対す る行為 は,河 道の 水理, 河床変 動の傾向を変化させ新しい環 境を 形成 させる 。第1章で は,こ のこと を評 価する システ マチッ クな指 標と して不 等流計 算法を 基礎 とし て求め られる 「河道 特性 」を提 案して いる。 河道特 性の 応用として過去の時間水位曲線 の変 換, 入退潮 流量の 推定の 簡便 な方法 を提案 してい る。河 道の 河床変動の傾向に関する特性を 知る ため に,河 床変動 の予測 計算 を行い ,長良 川下流 部の浚 渫河 道は長期にわたって埋没するこ とナ ょく ,また ,浚渫 区間直 上流部を除いて上流は扇状地における河川特有の河床上昇を続けるこ とを 明ら かにし ている 。木曽 三川 河口部 は,遠 浅でノ リ養殖 ,ア サリ,シジミ,ハマグりの好適 な漁 場で ある。 従来, 河口に 土砂 が堆積 して洲 ができ るのを 河口 閉塞と称して洪水疎通上有害と 認識 され ていた 。著者 は,浚 渫を 堰上流 に限定 して, 堰下流 の河 口部は現状のまま保全し,基本 高水 流量8,000ボ /s流 下時 に明治 改修の 起点成 戸地点 の水 位を, 当時の 計画高 水位 まで低 下さ せる 新浚 渫計画 を提言 し,そ の河 道特性 にっい て検討 を行っ た結 果,実現可能であることを明ら かに して いる。

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  水資源開発計画の立案の際,常に最初に河川維持用水の取扱いが問題となる。第2章では,従 来の河川維持用水に代えて低水流量以下の流況を保全する「利水制限流量」を提案している。水 資源の問題は,有限の水資源に対する現在および将来の需要者の調整が根本である。地域の超長 期の水需要に応え住民の不安焦操感を解消するためのマス夕一プランを,木曽三川の水資源の特 性を活かし,その一体的活用を図る成戸導水門をはじめとする全体施設計画を,システマチック な水計算手法によって具体的に示し,それに基づいて,いま着手すべき第1段階の建設にっいて の提言を行っている。

  第3章では,海面下の浚渫の有効性にっいて,界面抵抗係数を含む等価粗度係数を用いて証明 を行っている。浸透流を含めた流体内に仮想管網を設定して,3次元の格子座標と位置座標を持 つ節点におけるエネルギー位を未知量とし,仮想管内はダルシー則に従うとした堤防地盤の浸透 流解析を行う節点法を提案し,浚渫をしたまま放置すれば沿川の地表面に近い地下水は100年足 ら ずで3000ppm程度まで塩水化することを予測している。また,現在濃尾平野臨海部の深層の 水圧が海面下10mまで低下していることから,地下水全体の塩水化が懸念されることを指摘して い る。さらに,浚渫区間の下流の河床は,河口堰建設の有無にかかわらずwash loadの沈澱堆 積によってシルト質化し,もし,流域の変化によりwash loadが現在以上に増大するとすれば,

浚渫区間の河道は埋没の危険性があることを指摘している。

  第4章では,輪中の地下水圧にっいての調査結果から,堤内排水機,承水路の設置の影響が大 きいことを明らかにし,前章で提案した節点法による浸透流解析により各種漏水対策工の効果に っいて予測し,堤喞水略が提対の安全上不可欠であることを指摘している。堰設置後湛水区域の 水質を良好に保っためには,堰上流への塩水の侵入を完全に阻止し堰直上流部取水を厳密に実施 することが必須条件であるが,非常に長い延長を有する戸当たり部からの塩水侵入にっいては,

堰上流の水位を所定の高さに保っことにより阻止できることを示している。船が閘門を利用して 堰下流から堰上流へ通閘する場合,閘室内の水は殆ど完全に堰下流の水によって置換され,上流 側ゲートの開放とともにその全量が堰上流へ流出することを模型実験によって明らかにし,模型 実験および現地実験により閘室内の塩水を効果的に排除し短時間で上流側ゲートを塩水漏洩の恐 れなしに開放できる方法を開発している。また,喫水の浅い船にっいては,2段ゲートを採用す ることにより上流側ゲート上の流速を限界流速に保って塩水の侵入を防ぎ,かっ時間的損失なし に通閘させる方法を提案している。次に,前述の節点法において管内の流速をマニング式による ものとし,その粗度係数を全水深の平均流速を求める河床の粗度係数から対数則によって定め,

流体解析を行う手法を開発している。この解析結果を用い,降海する仔アユの取水工への吸入を

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防 止する ために ,仔 アユの 生態を 利用し た河 床取水 方式を 提案し ,下向き流速が許容流速以下と な ること を明ら かに してい る。椎 アユは ,満 潮を少 し過ぎ た引き 潮時に活発に遡上する性質を有 す る。従 来の魚 梯でfま, この とき, その大 部分が水中に没して機能を発揮しない。呼び水放流施 設 も肝心 の先端 部が 死に水 となっ て効果 が発 揮され ない。 これを 解決するため流速流量制御型呼 び 水放流 施設付 き可 変勾配 魚梯を 提案し てい る。本 方式の 魚梯に よれば,常に魚梯入り□が一定 し ,稚ア ユが最 も活 発に遡 上する 満潮直 後の 堰下流 側の水 位が比 較的高いときに魚梯全体が有効 に 働く。 すなわ ち, 魚梯1段の 落差が 極めて 小さく なり 稚アユ の遡上 が容易 となる 。ま た,本方 式 の呼び 水放流 施設 によれ ば,魚 梯入り 口に 常に一 定流量 一定流 速の呼び水を与えることができ る 。さら に,河 口か らアユ 棲息域 まで全 体を 椎アユ の遡上 路とし て配慮すべきであるとして,湛 水 区域内 の護岸 に多 自然工 法を取 り入れ るこ とを提 言して いる。

学位論文審査の要旨

  本論文 は,海 面の標 高より 低い 土地を 流れる 河川の 下流 部にお いて, 河口堰により流水の正常 な 機能を 維持 すると ともに 洪水時 の水 位を低 下させ ,安全 で快適 な人 間環境を形成するための河 川 計画の 手法 にっい て論じ たもの であ る。そ の実際 例とし て長良 川下 流部を取り上げており,結 諭 を含め 全5章で構 成さ れてい る。

  序論で は,低 平地に おける 河川 計画の 現状に っいて 総括 を行い ,問題 点の指摘を行っている。

特 に,濃 尾平 野の低 平地に おける 河川 計画の 経緯っ いては ,塩害 ,地 盤沈下,用水不足に苦しむ 木 曽三川 下流 部デル 夕地帯 の環境 を改 善する 方途と して, 著者が 昭和34年に行った,長良川の逆 潮 堰の設 置, 木曽長 良成戸 導水門 およ び堰直 上流部 取水の 提言。 昭和35年,引き続く大出水に対 し 長良川 下流 部河道 の大規 模な浚 渫に よって 洪水位 の大幅 な低下 を図 り,同時に木曽三川および 伊 勢湾の 水面 を活か したレ クリェ ーシ ョン施 設の提 言。さ らに昭 和36年 ,水質汚濁防止を事業に

興 浩

博 男

   

倉 伯

田 木

授 授

授 授

   

   

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上経過した現在におけるこの堰の存在理由にっいて論じている。

  凌渫,堰の設置という河道に対する行為は,河道の水理,河床変動の傾向を変化させ新しい環 境を形成させる。第1章では,このことを評価する系統的な指標として不等流計算法を基礎とし て求められる「河道特性」を提案し,浚渫河道は長期にわたって埋没することなく,また,上流 は河床上昇を続けることを明らかにしてる。木曽三川河口部は,遠浅でのノリ養殖,また貝類の 好適な漁場である。著者は,浚渫を堰上流に限定して,堰下流の河口部は現状のまま保全し,現 在の基本高水流量を明冶改修当時における計画高水位まで低下させる新浚渫計画を提言し,その 妥当性を明らかにしている。

  第2章では,水資源開発計画の立案の際,常に問題となる河川維持用水に代えて低水流量以下 の流況を保全する「利水制限流量」を提案している。水資源の問題は,有限の水資源に対する現 在および将来の需要者の調整が根本である。木曽三川の水資源の特性を活かし,その一体的活用 を 図 る マ ス タ ー プ ラ ン を 系 統 的 な 水 計 算 手 法 に よ っ て 具 体 的 に 示 し て い る 。   第3章では,海面下の浚渫の有効性にっいて,界面抵抗係数を含む等価粗度係数を用いて証明 を行っている。次に,浸透流を含めた流体内に仮想管網を設定し,節点におけるエネルギー位を 未知量として解析を行う節点法を提案し,沿川の地表面に近い地下水の挙動および塩水化の予測 を行っている。また,現地調査の結果から現在の濃尾平野臨海部の深層の水圧が海面下10mまで 低下していることおよびその問題点を指摘している。さらに,河床変動解析の結果から浚渫河床 は.   wash loadの沈 澱堆積によヮてシルト質化 する危険性があることを指摘 している。

  第4章では,節点法により各種漏水対策工の効果を予灑lJし,堤脚水路が堤体の安全上不可欠で あることを指摘している。また,堰設置後湛水区域の水質を良好に保っためには,堰上流への塩 水の侵入を完全に阻止し堰直上流部取水を厳密に実施するこが必須条件であることを指摘してい る。ゲート戸当たり部からの塩水侵入にっいては,堰上流の水位を所定の高さに保っこと。閘門 からの塩水侵入に対しては,大型船舶にっいては閘室内の塩水を効果的に排除する新しい方式を 実験を併用して開発し,喫水の浅い船にっいては,2段ゲート上の流速を限界流速に保って塩水 の侵入を防ぎながらゲート越流面を通閘させる方式の提案を行っている。次に,前述の節点法に おいて管内の流速をマニング式によるものとして流体解析を行う手法を開発している。この解析 結果を用い,降海する仔アユの取水工への吸入を防止するために,仔アユの生態を利用した河床 取水方式を提案している。稚アユは,満潮を少し過ぎた引き潮時に活発に遡上する。この特性を 活かした,流速流量制御型呼び水放流施設付き可変勾配魚梯を提案している。さらに,河口から アユ棲息域まで全体を稚アユの遡上路として配慮すべきであるとして,湛水区域内の護岸に多白

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然 工法を取り入れることを提言している。

これを 要する に, 著者は 低平地 におけ る総合 的河 川計画 の策定に関する新しい手法を提案した もので あって ,多く の新知見を与え,河川工学上寄与するところが大きい。

よっ て著者 は,博 士( 工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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