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博士(工学)仙北久典 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)仙北久典 学位論文題名

Molecular Transformations of Steroids based on     Ionic and Radical Reactions of Hypoiodites

(次亜ヨウ素酸エステルのイオンならびに ラジカル反応によるステロイド分子変換)

学位論文内容の要旨

  ラジカルが今世紀初頭,新たな化学種として発見されて以来,反応性に富むラジカルは,有機 化学反応における重要な中間体として注目され,ラジカル反応にっいての活発な研究が行われて きた。ラジカルは基礎有機化学のみならず,有機化学工業においてラジカル重合などによる基礎 原料の大規模合成など数々の重要な役割を果たしてきた。

  従来,短寿命で,反応の制御が比較的困難と考えられたラジカル種の有機合成化学への応用の 試みは必ずしも活発ではなかった。しかし一方,ラジカル反応はほぼ中性の条件,室温で分子変 換を達成し得るなど合成反応として数々の利点を有し,最近の有機化学工業におけるファインケ ミカルズ,スペシャリティーケミカルズ指向の中で,この10年間,ラジカル反応を用いる有機合 成の新手法の開発が活発に研究されてきた。その結果,多くの立体ならびに位置選択的なラジカ ル反応が開発され,従来,比較的選択性にとぼしく,精密な有機合成の方法として不適当と考え られていたラジカル反応に対する認識が改められ,ラジカル反応の有機合成における有用性が広 く認められている。本論文に述べるアルコール,ヒド口ペルオキシド等から生成し得るアルコキ シルラジカルの有機合成への応用は,特にその高い選択性により有機合成化学への応用に対し将 来の展開が期待されている。

  アルコキシルラジカルの示す主要な反応としては,6員環遷移状態を経由する分子内水素引き 抜き反応による炭素ラジカルへの転位,炭素ー炭素結合の開裂(ロー開裂),および分子内の適 当な位置に二重結合を有する際の分子内環化がある。これらの反応のうち,分子内水素引き抜き 反応は,Barton,Breslowらを頂点とする多数の研究者により分子内非活性部位への官能基導 入に極めて有効であることが実証されてきた。一方,ロ―開裂反応は,イオン反応による開裂反

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応に比べて多くの利点を有するにもかかわらず,有機合成への応用はほとんど行われていなかっ た。しかし,最近,杉野目らによルアルコキシルラジカルの高選択的ロ―開裂反応の有機合成へ の応用が活発に推進され,数々の新合成法の開発が報告されている。二重結合への付加反応につ いては,数例 の報告があるのみで,組織的な合成への応用研究はほとんど行われていない。

  本研究は,アルキル次亜ヨウ素酸工ステルの光分解により発生せしめたアルコキシルラジカル の高選択的ロ―開裂反応をステ口イドの分子変換に応用し,A環が芳香族化されたエスト口ンな どの芳香族ステロイド,海洋産物に含まれる19−ノルステ口イド類,ならびにフクジュソノロン などの18一ノルステ口イド類等,各種生理活性ステ口イドの新合成に成功した成果を述べたもの である。申請者はまた,これらの新しい分子変換の研究において,不飽和アルコールから生成し た次亜ヨウ素酸工ステルの分子内イオン付加反応によってテトラヒド口フラン環が高収率で生成 する新たな反応を見いだした。

  本論文は4章から構成されている。第1章では,本研究の目的,意義を述べた。第2章では,

アルキル次亜ヨウ素酸工ステルの光分解により発生せしめたアルコキシルラジカルの選択的目―

開裂反応を利用するステ口イドA環の芳香族化された生理活性ステロイド,種々の海洋産19−ノ ルステ口イドへの分子変換の新手法を述べた。すなわち,申請者は,すでに杉野目らによって見 いだされているステロイドラクトールの次亜ヨウ素酸工ステル(ROI)の光反応によるアルコキ シルラジカルの選択的炭素―炭素開裂によるステ口イド骨格の10位‑19位炭素→炭素結合開裂反 応をキーステップとするエス卜ロン,ならびにそのコレスタン同族体の合成に成功した。また,

本手法を応用して,カリフォルニア産海産物の成分である19―ノルコレスト‑4→工ンー3―オ ンの新合成に成功するとともに,多数の新しい関連19一ノルステ口イド分子を合成し,本手法の 汎用性を明らかにした。

  第3章で倣,第2章において述べた新手法を生理活性18―ノルステ口イド合成に応用した成果 を述べた。18―ノルステ口イドとして自然界からはじめて単離されたフクジュソノ口ンを夕一 ゲッ卜分子に選び,プレグネノ口ンを出発物質として,18―ヒドロキシ―18,20―工ポキシステ ロイド次亜ヨウ素酸工ステルの光分解で発生せじめたアルコキシルラジカルの位置選択的ロ―開 裂反応をキ―ステップとし,10段階の反応により12−デオキソフクジュソノロンの合成に成功し た。

  最後に,第4章では,新たに見いだされたアルキル次亜ヨウ素酸工ステルの分子内二重結合への イオン付加に よるテトラヒドロフラン類の新合成にっいて述べた。米国のKrausとThurston は,最近,ビスホモアリルアルコールの次亜ヨウ素酸工ステルの光分解で発生せしめたアルコキ

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シル ラジカ ルが分 子内二 重結合 に付 加し, 単一の スピ口 型テ 卜ラヒ ド口フラン環を生成すると報 告し た。申 請者は 新たに 合成し たビ スホモ アリル アルコ ール をモデ ル基質として本付加反応を詳 細 に検 討 し , 本 反 応が ,KrausとThurstonの 主張 と異 なルア ルコキ シルラ ジカ ルを経 由せず , 次亜 ヨウ素 酸工ス テルの ヨード ニウ ムイオ ンのイ オン環 化を 経由す ることを種々の実験事実から 明 らか に し た 。 申 請者 は ま た ,Krausらの 実 験 を 再 検討 しKrausら の合 成した スピ口 型ケ ター ル は, ジ ア ス テ レ オマ ー の 混 合 物で あ る こ と をプ 口 ト ンNMRに よ り 明 らか に し た 。 さら に 申 請者 はアル キル次 亜ヨウ 素酸の 分子 内イオ ン付加 反応が 室温 ,中性 条件における不飽和アルコー ルか らテト ラヒド 口フラ ン誘導 体の 高効率 合成に 極めて 有カ な手段 となり得ることを明らかにし た。

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 教授

杉 野 目 横 田 鈴 木

    浩 和 明     童

  反 応性 に富む ラジカ ルは, 有機化 学反 応にお ける重 要な中 間体 である 。ラジカルは今日まで,

基 礎有機 化学の みな らず, ラジカ ル重合 など による 基礎原 料の大 規模合 成など有機工業化学にお い て数々 の重要 な役 割を果 たして きた。 従来 ,短寿 命のラ ジカル 種は, 反応の制御が比較的困難 と 考えら れ,有 機合 成化学 への応 用の試 みは 必ずし も活発 ではな かった 。しかし一方,ラジカル 反 応はほ ば中性 の条 件,室 温で分 子変換 を達 成し得 るなど 合成反 応とし て数々の利点を有し,最 近 の有機 化学工 業に おける ファイ ンケミ カル ズ,ス ペシャ リティ ーケミ カルズ指向の中で,この 10年 間, ラジカ ル反応 を用い る有機 合成 の新手 法の開 発が活 発に 研究さ れている。その結果,多 く の立体 ならび に位 置選択 的なラ ジカル 反応 が開発 され, 有機合 成にお ける有用性が広く認めら れ ている 。本論 文に おける アルコ ールか ら容 易に生 成し得 るアル コキシ ルラジカルの有機合成へ の 応用は ,特に その 高い選 択性により有機合成化学への応用に対し将来の発展が期待されている。

  アルコ キシル ラジ カルの 示す主 要な反 応と しては ,6員環遷 移状態 を経由 する分 子内 水素引 き 抜 き反応 による 炭素 ラジカ ルヘの 転位, 炭素 ―炭素 結合の 開裂( ロ―開 裂),および分子内の二 重 結合へ の付加 があ る。こ れらの 反応の うち ,分子 内水素 引き抜 き反応 は,すでに多数の研究者

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によ り分子 内非 活性部 位への 官能基 導入などにきわめて有効であることが実証されてきた。一方,

ロ― 開裂反 応は ,イオ ン反応 による 開裂 反応に 比べて 多くの 利点を 有す るにもかかわらず,有機 合成 への応 用は ほとん ど行わ れてい なか った。 しかし ,近年 ,国の 内外 で,アルコキシルラジカ ルの 高選択 的ロ ―開裂 反応の 有機合 成へ の応用 が活発 に推進 され, 数々 の新合成法が開発されて いる 。二重 結合 への付 加反応 にっい てfま,数 例の 報告があるのみで,合成への応用研究はほとん ど行 われて いな い。

  本 研究tま, アルキ ル次亜 ヨウ素 酸工ス テル の光分 解により発生せしめたアルコキシルラジカル の 高選 択的 ロー開 裂反応 をステ 口イ ドの分 子変換 に応用 し,A環が 芳香族 化さ れたェ スト口 ンな どの 芳香族 ステ 口イド ,海洋 産物に 含ま れる19― ノルス テ口 イド類 ,なら びにフクジュソノ口ン など の18― ノルス テ口イ ド類等 ,各 種生理 活性ス テ口イ ドの 新合成 に成功 した成果を述べたもの であ る。著 者は また, これら の新し い分 子変換 の研究 におい て,不 飽和 アルコールから生成した 次亜 ヨウ素 酸工 ステル の分子 内付加 によ るテ卜 ラヒド ロフラ ン環の 生成 が光の関与しないイオン 反応 である こと を明ら かにし ている 。

  本論 文 は4章 から 構 成 さ れ て いる 。 第1章 では , 本研究 の目的 ,意義 が述 べられ ている 。第2 章で は,ア ルキ ル次亜 ヨウ素 酸工ス テル の光分 解によ り発生 せしめ たア ルコキシルラジカルの選 択的 ロ―開 裂反 応を利 用する 生理活 性芳 香族ス テロイ ド,種 々の海 洋産19―ノルステロイドへの 分子 変換の 新手 法が記 載され ている 。す なわち ,著者 は,ス テロイ ドラ クトールの次亜ヨウ素酸 工 ス テ ル(ROI)の 光 反 応 に よる ア ル コ キ シル ラ ジ カルの 選択 的炭素 ー炭素 結合開 裂に よるス テ 口イ ド骨格 の10一19位炭 素,炭 素結合 開裂反 応をキ ―ス テップ とする エスト ロン,ならびにその コレ スタン 同族 体の新 合成法 を開発 した 。また ,本手 法を応 用して ,カ リフエルニア産海産物の 成 分 で ある19― ノ ルコ レ ス ト ―4― 工 ン‑3ー オ ン の新合 成に 成功す るとと もに, 多数 の新し い 関 連19一 ノ ル ス テ ロ イ ド 分 子 を 合 成 し , 本 手 法 の 汎 用 性 を 明 ら か に し て い る 。   第3章 で は , 第2章 に お いて 述べた 新手法 を生理 活性18―ノル ステロ イド合 成に 応用し た成果 が記 されて いる 。18―ノ ルステ ロイ ドとし て自然 界から はじ めて単 離され たフクジュソノ口ンを 夕一 ゲット 分子 に選び ,プレ グネノ 口ン を出発 物質と して,18―ヒ ド口キ シ−18,20宀工ポキシ ステ ロイド 次亜 ヨウ素 酸工ス テルの 光分 解で発 生せし めたア ルコキ シル ラジカルの位置選択的ロ

―開 裂反応 をキ ーステ ップと し,10段階の 反応に より12―デオ キソフ クジュ ソノロンの合成に成 功し ている 。

  最後 に,第4章 では, アルキ ル次亜 ヨウ 素酸エ ステル の分子 内二 重結合 への付 加によ るテト ラ ヒ ド 口 フラ ン 環 の 生 成の 機 構 と 一 般性 が 論 じ ら れてい る。米 国のKrausとThurstonは ,最近 ,

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ビ スホモ アリ ルアル コール の次亜 ヨウ素 酸工 ステル の光分 解で発 生せ しめたアルコキシルラジカ ル が分子 内二 重結合 に付加 し,単 一のス ピ口 型テト ラヒド ロフラ ン環 を生成すると報告した。著 者 は,新 たに 合成し たビス ホモアリルアルコールをモデル基質として本付加反応を詳細に検討し,

環 の生成 は, アルコ キシル ラジカ ルを経 由せ ず,次 亜ヨウ 素酸工 ステ ルのヨードニウムイオンの イ オ ン 環 化 によ る も の で ある こ と を 種 々の 実験 事実か ら明ら かにし た。 著者は また,Krausら の 合成し たス ピ口型 ケター ルは, ジアス テレ オマー の混合 物であ るこ とを明らかにした。さらに 著 者はア ルキ ル次亜 ヨウ素 酸工ス テルの 分子 内イオ ン付加 反応が 室温 ,中性の条件における不飽 和 アルコ ール からテ トラヒ ドロフ ラン誘 導体 の高効 率合成 に極め て有 カな手段となり得ることを 明 らかに して いる。

  こ れを 要する に著者 は,ア ルコ キシル ラジカ ルのロ ―開裂 反応 を有機合成に応用して,生理活 性 分子を 含む 多数の 新分子 を合成 すると とも に,不 飽和ア ルコー ルの 次亜ヨウ素酸工ステルの分 子 内反応 に関 して新 知見を 見出しており,有機合成化学の進歩に寄与するところが大である。よっ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 の あ る も の と 認 め る 。

参照

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