東北医科薬科大学 審査学位論文(博士)
氏名(本籍) ナカイ ハジメ
中 居 肇(青森県)
学位の種類 博士(薬学)
学位記番号 薬学 第 127 号
学位授与の日付 平成 30 年 3 月 9 日
学位授与の要件 学位規則第4条2項該当
学位論文題名 キノロン系抗菌薬耐性化因子と PK ‐ PD 理論を用いた 耐性化機序に関する検討
論文審査委員
主査 教授 柴 田 信 之
副査 特任教授 鈴 木 常 義
副査 教授 藤 村 茂
キノロン系抗菌薬耐性化因子と キノロン系抗菌薬耐性化因子と キノロン系抗菌薬耐性化因子と
キノロン系抗菌薬耐性化因子と PK PK PK PK----PD PD PD PD 理論を 理論を 理論を 理論を 用いた耐性化機序に関する検討
用いた耐性化機序に関する検討 用いた耐性化機序に関する検討 用いた耐性化機序に関する検討
東北医科薬科大学 東北医科薬科大学 東北医科薬科大学
東北医科薬科大学大学院薬学研究科 大学院薬学研究科 大学院薬学研究科 大学院薬学研究科 臨床感染症学教室
臨床感染症学教室 臨床感染症学教室 臨床感染症学教室
中 中 中
中 居 居 居 居 肇 肇 肇 肇
【
【
【
【目次 目次 目次 目次】 】 】 】
緒言 緒言 緒言
緒言 1
第一章 第一章 第一章 第一章 地域における抗菌薬使用量と耐性菌の関連性 地域における抗菌薬使用量と耐性菌の関連性 地域における抗菌薬使用量と耐性菌の関連性 地域における抗菌薬使用量と耐性菌の関連性 第一節 序章 4
第二節 方法 5
第三節 結果 7
第四節 考察 9
第二章 第二章 第二章 第二章 LVFX LVFX LVFX LVFX 耐性大腸菌が分離される危険因子の検討 耐性大腸菌が分離される危険因子の検討 耐性大腸菌が分離される危険因子の検討 耐性大腸菌が分離される危険因子の検討 第一節 序章 10
第二節 方法 11
第三節 結果 13
第四節 考察 16
第三章 第三章 第三章
第三章 市中肺炎の主な原因菌におけるキノロン薬耐性の獲得条件 市中肺炎の主な原因菌におけるキノロン薬耐性の獲得条件 市中肺炎の主な原因菌におけるキノロン薬耐性の獲得条件 市中肺炎の主な原因菌におけるキノロン薬耐性の獲得条件
第一節 序章 18
第二節 方法 19
第三節 結果 22
第四節 考察 27
総括 総括 総括 総括 30
謝辞 謝辞 謝辞 謝辞 32
参考文献
参考文献
参考文献
参考文献 33
1
キ ノ ロ ン 系 抗 菌 薬 耐 性 化 因 子 と キ ノ ロ ン 系 抗 菌 薬 耐 性 化 因 子 と キ ノ ロ ン 系 抗 菌 薬 耐 性 化 因 子 と
キ ノ ロ ン 系 抗 菌 薬 耐 性 化 因 子 と PK PK----PD PK PK PD PD PD 理 論 を 用 い た 理 論 を 用 い た 理 論 を 用 い た 理 論 を 用 い た 耐 性 化 機 序 に 関 す る 検 討
耐 性 化 機 序 に 関 す る 検 討 耐 性 化 機 序 に 関 す る 検 討 耐 性 化 機 序 に 関 す る 検 討
東 北 医 科 薬 科 大 学 大 学 院 薬 学 研 究 科 臨 床 感 染 症 学 教 室 中 居 肇
諸 言 諸 言 諸 言 諸 言
抗 菌 薬 の 不 適 切 な 使 用 に よ る 薬 剤 耐 性 菌 の 増 加 は 世 界 的 に 大 き な 問 題 と な っ て い る 。 2016 年 5 月 に 日 本 政 府 が 薬 剤 耐 性 ( AMR ; Antimicrobial Resistance)対 策 ア ク シ ョ ン プ ラ ン を G7 サ ミ ッ ト で 公 表 し 、 2020 年 ま で に 実 施 す べ き 戦 略 や 取 り 組 み が 示 さ れ た 。 成 果 指 標 と し て 、 2014 年 時 点 に お け る 各 種 細 菌 の 薬 剤 耐 性 率 に 関 し 、 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 の メ チ シ リ ン 耐 性 率 を 51% か ら 20% 以 下 、 大 腸 菌 の フ ル オ ロ キ ノ ロ ン 耐 性 率 を 45% か ら 25%以 下 な ど 大 幅 な 削 減 が 求 め ら れ て い る 。ま た 、人 口 千 人 あ た り の 一 日 抗 菌 薬 使 用 量 に つ い て は 、 2020 年 ま で に 経 口 セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 系 薬 、 フ ル オ ロ キ ノ ロ ン 系 薬 、マ ク ロ ラ イ ド 系 薬 を 50% 削 減 し 、静 注 抗 菌 薬 の 使 用 量 も 20% 削 減 す る こ と に よ り 、全 抗 菌 薬 の 使 用 量 を 3 分 の 2 に 減 少 さ せ る こ と を 目 指 し て い る 。 今 後 、 AMR 対 策 ア ク シ ョ ン プ ラ ン の 成 果 指 標 に 近 づ け る 取 り 組 み と し て 、地 域 に お け る 感 染 対 策 活 動 を 通 じ た 抗 菌 薬 適 正 使 用 の 推 進 や 各 種 微 生 物 の 薬 剤 耐 性 率 に 及 ぼ す 危 険 因 子 、さ ら に は 薬 剤 耐 性 獲 得 傾 向 と そ の メ カ ニ ズ ム に つ い て 把 握 す る こ と が 求 め ら れ る 。
地 域 に お け る 地 域 に お け る 地 域 に お け る
地 域 に お け る 微 生 物 の 薬 剤 微 生 物 の 薬 剤 微 生 物 の 薬 剤 微 生 物 の 薬 剤 耐 性 化 に 及 ぼ す 関 連 因 子 耐 性 化 に 及 ぼ す 関 連 因 子 耐 性 化 に 及 ぼ す 関 連 因 子 耐 性 化 に 及 ぼ す 関 連 因 子
医 療 施 設 に お け る 感 染 症 は 原 因 微 生 物 が 学 校 や 老 健 施 設 な ど 地 域 の 各 施 設 か ら 伝 播 す る こ と が 多 い 。こ う し た 状 況 に お い て 、地 域 レ ベ ル で 薬 剤 耐 性 菌 お よ び 抗 菌 薬 使 用 状 況 の 情 報 を 共 有 し な が ら 感 染 管 理 を 実 施 す る こ と が 重 要 で あ る 。青 森 県 八 戸 市 で 、我 々 は 細 菌 感 受 性 動 向 調 査 連 絡 協 議 会 を 発 足 さ せ 、施 設 間 の 患 者 移 動 が 常 に 認 め ら れ る 一 次 医 療 圏 で の 多 施 設 共 同 活 動 を 実 施 し た 。主 な 活 動 は 、施 設 毎 の 各 種 感 染 対 策 の 取 り 組 み や サ ー ベ イ ラ ン ス の 成 績 、 最 新 の ト ピ ッ ク ス な ど を 共 有 す る こ と で あ る 。 協 議 会 参 加 施 設 は 、 A 病 院 608 床( 30 診 療 科 )、B 病 院 434 床( 24 診 療 科 )、 C 病 院 303 床( 17 診 療 科 )、 D 病 院 201 床 ( 8 診 療 科 ) の 4 施 設 で あ る 。
こ れ ら の 施 設 に お け る 注 射 用 抗 菌 薬 使 用 量 を 比 較 す る た め 、各 薬 剤 の 抗 菌
薬 使 用 密 度 ( AUD ; Antimicrobial use density ) を 算 出 し た 。 AUD は 患 者
2
数 に 左 右 さ れ な い 病 院 間 で の 抗 菌 薬 使 用 量 を 比 較 す る こ と が 可 能 で あ る 。ま た 、 各 抗 菌 薬 の 薬 剤 感 受 性 測 定 に つ い て は 、 Clinical and Laboratory Standards Institute ( CLSI) の 判 定 基 準 で 測 定 さ れ る MicroScan
WalkAway TM (Dade Behring 社 ) を 4 施 設 共 通 測 定 機 器 と し て 使 用 し た 。 こ の ほ か 2005 年 か ら 2014 年 に お け る 各 施 設 の Levofloxacin( LVFX)耐 性 大 腸 菌 分 離 率 も 調 査 し た( ( ( ( 図 図 図 図 1 1 1 1) ) ) )。い ず れ の 施 設 に お い て も 、LVFX 耐 性 大 腸 菌 分 離 率 が 2005 年 に は 10 ~ 20% だ っ た も の が 、 2014 年 に は 25 % ~ 35% ま で 上 昇 し て い た ( P < 0.05)。
図 図 図
図 1 1. LVFX 1 1 耐 性 大 腸 菌 分 離 率 の 推 移
ま た 、 4 施 設 で 使 用 さ れ た LVFX の AUD と LVFX 耐 性 大 腸 菌 分 離 率 の 関 係 は 、LVFX の 使 用 量 が 増 加 す る と LVFX 耐 性 大 腸 菌 の 分 離 率 が 上 昇 す る 正 の 相 関 ( 相 関 係 数 は r=0.415、 P=0.220 ) が 認 め ら れ た 。
臨 床 に お い て 抗 菌 薬 を 使 用 す る タ イ ミ ン グ は 様 々 で あ る 。経 口 薬 と 注 射 薬 が 選 択 で き る LVFX は 呼 吸 器 感 染 症 や 尿 路 感 染 症 な ど に 幅 広 く 活 用 さ れ 、入 院 患 者 の み な ら ず 外 来 で も 汎 用 さ れ 、 使 用 量 は 増 加 し て い る 。 LVFX 耐 性 大 腸 菌 の 分 離 率 増 加 に は 、 使 用 量 増 加 が 一 つ の 要 因 で あ る と 考 え ら れ る た め 、 LVFX を 使 用 す る 際 は 適 正 な 投 与 量 ・ 投 与 間 隔 が 重 要 で あ る 。
LVFX LVFX
LVFX LVFX 耐 性 大 腸 菌 が 分 離 さ れ る 危 険 因 子 耐 性 大 腸 菌 が 分 離 さ れ る 危 険 因 子 耐 性 大 腸 菌 が 分 離 さ れ る 危 険 因 子 耐 性 大 腸 菌 が 分 離 さ れ る 危 険 因 子
LVFX 耐 性 大 腸 菌 の 危 険 因 子 を 検 討 す る た め 、 2009 年 7 月 か ら 2012 年 3 月 ま で の 期 間 中 に LVFX を 服 用 し た 成 人 ( 18 歳 以 上 ) 入 院 患 者 の デ ー タ を 収 集 し た 。調 査 項 目 は LVFX が 投 与 さ れ た 時 点 か ら 過 去 6 か 月 以 内 の 入 院 歴 、 既 往 歴 、侵 襲 性 処 置 歴 、酸 素 吸 入 歴 、尿 路 カ テ ー テ ル 使 用 歴 、キ ノ ロ ン 薬 使 用 歴 、キ ノ ロ ン 薬 以 外 の 抗 菌 薬 使 用 歴 と し た 。ま た 、対 象 患 者 の 細 菌 培 養 結 果 か ら 、 LVFX-Sensitive Escherichia coli ( LVFX SEc) 群 お よ び LVFX-
0 10 20 30 40 50
A
病院B
病院C
病院D
病院分離率
(% )
3
Resistant Escherichia coli ( LVFX REc)群 を 抽 出 し た 。
過 去 6 か 月 以 内 の 医 療 行 為 お よ び 抗 菌 薬 使 用 歴 に お け る 危 険 因 子 を 表 1 に 示 す 。LVFX SEc 群 は 37 例 、 LVFX REc 群 は 21 例 で あ り 、入 院 歴 、尿 路 カ テ ー テ ル 使 用 歴 、キ ノ ロ ン 薬 使 用 歴 で 有 意 に 耐 性 化 の 危 険 因 子 と な っ て い た 。
表 表 表
表 1 1. 1 1 LVFX 耐 性 大 腸 菌 が 分 離 さ れ る 危 険 因 子
本 研 究 に お い て キ ノ ロ ン 薬 の 使 用 頻 度 の 増 加 に よ り 、耐 性 大 腸 菌 の 分 離 率 は 5.08 倍 と 高 か っ た 。 キ ノ ロ ン 薬 の 繰 り 返 し 投 与 は 微 生 物 の 耐 性 化 を 助 長 す る 可 能 性 が 明 ら か と な っ た 。
市 中 市 中
市 中 市 中 肺 炎 の 肺 炎 の 肺 炎 の 肺 炎 の 主 な 主 な 主 な 原 因 主 な 原 因 原 因 菌 原 因 菌 菌 菌 に お け る に お け る に お け る キ ノ ロ ン に お け る キ ノ ロ ン キ ノ ロ ン 薬 キ ノ ロ ン 薬 薬 薬 耐 性 の 獲 得 条 件 耐 性 の 獲 得 条 件 耐 性 の 獲 得 条 件 耐 性 の 獲 得 条 件
市 中 肺 炎 の 主 な 原 因 と な る Streptococcus pneumoniae 、 Haemophilus influenzae 、 Moraxella catarrhalis の 3 菌 種 に つ い て キ ノ ロ ン 薬 耐 性 の 獲 得 条 件 に つ い て 検 討 し た 。使 用 し た 抗 菌 薬 は 、外 来 で 汎 用 さ れ る レ ス ピ ラ ト リ ー キ ノ ロ ン 系 薬 の LVFX、 tosufloxacin ( TFLX )、 sitafloxacin ( STFX)、
garenoxacin( GRNX)で あ る 。各 菌 種 に 抗 菌 薬 負 荷 を お こ な い 、Minimum Inhibitory Concentration ( MIC) が breakpoint を 超 え て 耐 性 に な っ た 株 に つ い て 、 Quinolone resistance-determining region ( QRDR)の gyr A gene お よ び par C gene の DNA シ ー ク エ ン ス 解 析 を 行 っ た 。
表 2 に LVFX 非 感 受 性 S. pneumoniae お よ び 、 同 M. catarrhalis の MIC と QRDR 変 異 に 示 す 。 S. pneumoniae に 対 す る LVFX の 2 回 負 荷 に よ り 20 株 中 7 株 の MIC が 上 昇 し た 。 そ の 内 訳 は 3 株 が 25 μ g/mL 、 2 株 が 12.5 μ g/mL 、そ の 他 の 株 が そ れ ぞ れ 6.25μ g/mL と 3.125μ g/mL で あ っ た 。ま た 、 QRDR の ア ミ ノ 酸 変 異 は GyrA と ParC の 2 ヶ 所 に 確 認 さ れ 、 GyrA の Ser81
> Tyr へ 変 異 し た 株 が 4 株 と 最 も 多 く 、 残 り 3 株 は ParC の Ser79> Phe に 変 異 し て い た 。一 方 、 M. catarrhalis は 21 株 中 3 株 が MIC= 1.563μ g/mL を 示 し 、 こ れ ら の 3 株 は QRDR の GyrA が Thr80 > IIe へ 変 異 し て い た が 、 ParC に は 変 異 が 認 め ら れ な か っ た 。
危険因子
LVFX SEc
37
例LVFX REc 21
例オッズ比
95%
信頼区間 有意差医療行為 入院歴あり
4 10 7.73 0.02
-29.63 0.014
侵襲性処置歴あり12 9 1.56 0.52
-4.72 0.571
尿路カテーテル使用歴8 11 3.99 1.25
-12.72 0.020
抗菌薬使用歴 キノロン薬使用歴あり4 8 5.08 1.30
-19.84 0.020
キノロン薬以外の使用歴19 13 1.54 0.52
-4.59 0.584
4
表 表 表
表 2 2 2 2. LVFX 非 感 受 性 S.pneumoniae の MIC と QRDR 変 異
本 研 究 で は 、呼 吸 器 感 染 症 な ど 様 々 な 感 染 症 に 選 択 さ れ る キ ノ ロ ン 系 薬 で あ る LVFX は 使 用 頻 度 の 増 加 が S. pneumoniae の キ ノ ロ ン 耐 性 菌 を 出 現 さ せ る こ と を in vitro で 明 ら か に し た 。厚 生 労 働 省 が 示 し た 抗 微 生 物 薬 使 用 の 手 引 き に よ る と 、中 等 症 以 上 の 上 気 道 感 染( 鼻 副 鼻 腔 炎 )に ペ ニ シ リ ン 系 薬 を 推 奨 す る こ と が 示 さ れ た が 、 H. influenzae で は 、 既 に 耐 性 化 が 進 ん で お り 治 療 効 果 が 望 め な い 。す な わ ち 、今 後 上 気 道 感 染 症 に お い て も レ ス ピ ラ ト リ ー キ ノ ロ ン 系 薬 の 使 用 頻 度 が 高 ま る こ と が 考 え ら れ る た め 、こ れ ま で 以 上 に Pharmacokinetics-Pharmaco-dynamics : PK-PD 理 論 を 考 慮 し
Cmax/MIC お よ び AUC/MIC を 重 視 し た 投 与 の 徹 底 と 一 薬 剤 に 偏 っ た 使 用 を し な い 耐 性 化 抑 制 が 重 要 で あ る 。
< 参 考 論 文 >
< 参 考 論 文 > < 参 考 論 文 >
< 参 考 論 文 > 主 論 文 ( 原 著 論 文 ) 主 論 文 ( 原 著 論 文 ) 主 論 文 ( 原 著 論 文 ) 主 論 文 ( 原 著 論 文 )
1. Nakai H, Sato T, Uno T, Furukawa E, Kawamura M, Takahashi H, Watanabe A, Fujimura S. Mutant selection window of four quinolone antibiotics against clinical isolates of Streptococcus pneumoniae , Haemophilus influenzae and Moraxella catarrhalis . 2017 ; Journal of Infection and Chemotherapy, accepted.
2. 中 居 肇 , 工 藤 香 澄 , 吉 田 泰 憲 , 佐 藤 幸 緒 , 中 村 一 成 . Levofloxacin 耐 性 大 腸 菌 が 分 離 さ れ る 危 険 因 子 . 2013; 日 本 環 境 感 染 学 会 誌 , 28(5), 290-294.
3. 中 居 肇 , 田 村 健 悦 , 平 賀 元 , 古 川 卓 哉 , 伊 藤 宏 彰 , 舘 幸 子 . 地 域 感 染 対 策
ネ ッ ト ワ ー ク 構 築 に よ る 抗 菌 薬 適 正 使 用 へ の 試 み . 2007 年 ; 日 本 環 境 感
染 学 会 誌 , 22(1), 37-40.
1
諸言 諸言 諸言 諸言
抗菌薬の不適切な使用による薬剤耐性菌の増加は世界的に大きな問題となっ ている。この薬剤耐性菌による感染症の増加が特に医療分野で懸念されており、
英国の政府機関による報告書では、 「薬剤耐性菌による死亡者数はこのまま何も 対策をとらない場合、 2050 年には、現在のガンによる死亡者数を超える 1000 万人に達する」と試算された 1) 。こうした状況を踏まえ、 2015 年 5 月の世界保 健総会では、日本の薬剤耐性 (AMR ; Antimicrobial Resistance) に関するグロ ーバル・アクションプランが採択され、加盟各国は薬剤耐性に関する国家行動 計画を策定することが求められた。 2016 年 5 月の G7 サミットで日本政府から AMR 対策アクションプランが公表され、 「①普及啓発・教育」 、 「②薬剤耐性菌 の動向調査・監視」 、 「③感染予防・管理」 、 「④抗微生物剤の適正使用」 、 「⑤研 究開発・創薬」 、 「⑥国際協力」の 6 つの分野について、 2020 年までに実施すべ き戦略や取り組みが示された。さらに、ヒトの抗菌薬の使用量および医療分野 と畜産分野の主な微生物の薬剤耐性率について成果指標が設定された。 (表 表 表 表 1 1 1 1, , , , 2 2 2 2 )
2013 年における 経口抗菌薬の使用割合は、マクロライド系薬が 33 % 、セフ
ァロスポリン系薬が 27 % (うち 80 % は第 3 世代) 、 フルオロキノロン系薬が 19 % と全体の約 80 % を占める。これらの抗菌薬の使用を半減し、静注抗菌薬の使用 量も 20 % 削減することにより、全抗菌薬の使用量を 3 分の 2 に減少させるこ とを目指している。一方、医療分野における薬剤耐性率に関しては大腸菌・肺 炎桿菌のカルバペネム耐性率を除き、各種細菌の薬剤耐性率の大幅な削減が求 められている。
表 表
表 表 1 1 1 1 .ヒトの抗微生物剤の .ヒトの抗微生物剤の目標削減 .ヒトの抗微生物剤の .ヒトの抗微生物剤の 目標削減 目標削減率 目標削減 率 率 率(人口千人あたりの一日抗菌薬使用量) (人口千人あたりの一日抗菌薬使用量) (人口千人あたりの一日抗菌薬使用量) (人口千人あたりの一日抗菌薬使用量)
指 標 2020 年(対 2013 年比)
全体 33 %減
経口セファロスポリン系薬、フルオロキノロン 系薬、マクロライド系薬
50 %減
静注抗菌薬 20 %減
2
表 表 表
表 2 2 2 2 .各種 .各種微生物の薬剤耐性率(医療分野) .各種 .各種 微生物の薬剤耐性率(医療分野) 微生物の薬剤耐性率(医療分野) 微生物の薬剤耐性率(医療分野)
指 標 2014 年 2020 年
(目標値)
肺炎球菌のペニシリン耐性率 48 % 15 %以下 黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率 51 % 20 %以下 大腸菌のフルオロキノロン耐性率 45 % 25 %以下 緑膿菌のカルバペネム耐性率 17 % 10 %以下 大腸菌・肺炎桿菌のカルバペネム耐性率 0.1 - 0.2 % 同水準
今後、 AMR 対策アクションプランの成果目標を達成する取り組みとして、病 院内の Infection Control Team (ICT) や Antimicrobial Stewardship Team
(AST) 活動、薬剤感受性サーベイランス、さらには地域における感染対策活動
を通じた抗菌薬適正使用の推進などが重要となる。
Infection Control Nurse (ICN) を中心とした ICT ラウンド等では耐性菌を伝 播させない取り組みが多くの施設で実施されている 2,3) 。院内の採用抗菌薬の見 直しによる薬剤感受性率の維持 4) や積極的な Methicillin-resistant
Staphylococcus aureus (MRSA) 治療薬の薬物血中濃度モニタリングの実施に 関わることによって成果を上げている 5) 。また、耐性菌の出現予防および早期よ り優れた治療効果を獲得するために Infection Control Doctor (ICD) や抗菌化 学療法認定薬剤師を中心とした AST ラウンドが実施されてきている。特に AST 活動における抗菌薬適正使用の推進は、施設ごとの取り組みが重要である。具 体的には、病原微生物や感染臓器などの情報から判断して最適な抗菌薬選択が なされているかについて確認し、抗緑膿菌活性を有する広域抗菌薬の使用につ いて Pharmacokinetics-Pharmacodynamics (PK - PD) 理論を応用しながら抗菌 薬使用量を減少させた報告がある 6, 7) 。さらに、抗菌薬使用密度(AUD;
Antimicrobial use density) 8) を指標にすることにより、近隣の医療施設間にお ける抗菌薬使用傾向の把握が可能となる 9) 。併せて、臨床分離菌種別の抗菌薬感 受性を評価 10) し、地域の薬剤耐性菌の動向把握と地域医療圏における情報の共 有することにより、耐性菌対策が実施できる。表 表 表 表 2 2 2 2 の成果指標に示される肺炎 球菌のペニシリン耐性 (Penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae : PRSP および Penicillin-intermediate S. pneumoniae : PISP) 率、MRSA の検出率、
大腸菌のフルオロキノロン耐性率は病院内のみならず市中においても問題とな る。成人の呼吸器感染症患者から分離された肺炎球菌の中で PRSP の占める割
合は 65 %前後 11) であったが、肺炎球菌ワクチンの登場により、その頻度は減少
している 12) 。しかし、テトラサイクリン系薬やマクロライド系薬に耐性を示す
3
多剤耐性の PRSP が増加している 12) 。 MRSA は院内感染により伝播拡大する
HA-MRSA が主流だったが、近年、市中感染型の MRSA (CA - MRSA) が欧米で
蔓延しており、我が国でも分離されるようになってきた 13-15) 。大腸菌のフルオ ロキノロン耐性率は我が国を含め、世界的に増加傾向にある 16,17) 。フルオロキ ノロン系薬の中でも特に Levofloxacin (LVFX) は呼吸器感染症 18) や尿路感染症
19) などに幅広く活用され、剤形が経口剤と注射剤が選択できることから入院患 者のみならず外来でも汎用される。さらに抗菌力の強さから他のフルオロキノ ロン系薬の使用頻度や使用量も増加している。シタフロキサシン (Sitafloxacin :
STFX) は、好気性、偏性嫌気性のグラム陽性菌、グラム陰性菌から非定型菌に
まで及ぶ幅広い抗菌スペクトルを有し、その抗菌力は、従来のキノロン系薬に 比較して強力である 20) 。トスフロキサシン (Tosufloxacin : TFLX) は小児用製 剤としても承認 21) され、小児科や耳鼻科領域において有用性が期待されている。
ガレノキサシン (Garenoxacin : GRNX) は開発当初より PK- PD 理論に則り、
単回高用量投与を取り入れたレスピラトリ - キノロン系薬である 22) 。これらの経 口キノロン系薬は、クリニックを中心に呼吸器感染症に汎用されている。した がって、市中肺炎の三大起因菌 23) として挙げられる、 S. pneumoniae ,
Haemophilus influenza , Moraxella catarrhalis の耐性も重要であり、こうした 菌におけるキノロン耐性株の出現が懸念される。
本研究では、呼吸器や耳鼻科領域、泌尿器科領域などで多く使用されるキノ ロン系薬に焦点をあて、その耐性に関する検討をおこなった。第一章では地域 における LVFX 耐性大腸菌のサーベイランスおよび耐性化に及ぼす関連因子を、
第二章では LVFX 耐性大腸菌を発現させる危険因子について詳細に検討した。
第三章では、 市中肺炎の三大起因菌を対象に、 LVFX 以外に STFX, TFLX, GRNX
を追加し、各キノロン系薬の耐性獲得傾向とそのメカニズムについて検討した。
4
第一章 第一章 第一章 第一章 第一節 第一節
第一節 第一節 序章 序章 序章 序章
医療施設における感染症は図 図 図 図 1 1 1 1 のように原因微生物が各施設から伝播してく る。病院を受診する患者が他病院を併診することや診療所・クリニックと病院 間を患者照会または逆照会で移動することがある。さらには、集団感染を起こ しやすい介護施設や学校から病院に入院してくるケースも多い。こうした状況 において、感染症を地域全体のリスクとしてとらえたアンチバイオグラム 24-26) が検討されるようになり、地域レベルで薬剤耐性菌情報を共有しながら感染管 理を実施している 27) 。
図 図 図
図 1 1 1 1 .地域における患者の移動 .地域における患者の移動 .地域における患者の移動 .地域における患者の移動
著者らは青森県八戸市で、細菌感受性動向調査連絡協議会(以下、協議会)
を発足させ 28 ) 、施設間において共通のガイドラインを作成した 29) 。協議会の活 動は、図 図 図 図 1 1 1 1 のように施設間の患者移動が常に認められる一次医療圏での多施設 共同活動であり、基幹病院 4 施設と八戸市医師会(以下、医師会)からの代表 者が参加し、医師 3 名、薬剤師 7 名、検査技師 7 名で構成されている。
主な活動は、施設毎の各種感染対策の取り組みやサーベイランスの成績、最 新のトピックスなどを共有することである。こうして蓄積された情報は、地域 の研究会等で毎年発表し、医師や薬剤師にフィードバックしている。
本章では協議会に参加する 4 施設の AUD と薬剤感受性率についての調査をお こない、大腸菌のキノロン耐性に及ぼす関連因子を検討した。
中核病院
病院 学校
診療所・クリニック
介護施設
5
第二節 第二節
第二節 第二節 方法 方法 方法 方法
1.調査期間と対象施設
調査期間は 2012 年 1 月から 12 月までの 1 年間とし、八戸市内の 4 施設を対 象とした。対象施設の概要を表 表 表 表 3 3 3 3 に示す。 A 病院は最も病床数が多く 608 床、
次いで B 病院 434 床、 C 病院 303 床、 D 病院 201 床の順であり、診療科別では A 病院が 30 診療科と最も多く、 B 病院は 24 診療科であり、 4 病院のうち唯一 血液内科を有している。 D 病院は 201 床と最も病床数が少ないが、慢性期病院 であり老人保健施設を隣接している。
表 表
表 表 3. 3. 3. 3. 細菌感受性動向調査連絡協議会参加 細菌感受性動向調査連絡協議会参加 細菌感受性動向調査連絡協議会参加 細菌感受性動向調査連絡協議会参加 4 4 4 4 施設の概要 施設の概要 施設の概要 施設の概要
施設名 病床数 診療科
A 病院 608 床
消、化学療法、循、呼、腎内、内分泌、糖尿、神内、
外、小児、乳腺、形成、呼外、脳外、心外、皮、整形、
泌尿、リハ、産科、婦人、耳鼻、眼、精神、麻、放射、
口外、緩和ケア、総合診療、救急
B 病院 434 床
循、呼、消、小児、脳外、外、整、皮、泌、眼、産、
婦人、耳、精神、放射、リハ、呼外、放、神内、心外、
麻、糖尿、形成、血液
C 病院 303 床 循、消、内分泌、神内、小児、外、整、形、脳、心外、
皮、泌、眼、リハ、放、麻、口外 D 病院 201 床 消、循、外、整形、泌、眼、皮、婦人
2.抗菌薬分類基準と薬剤感受性測定
対象の抗菌薬は日本化学療法学会及び日本感染症学会が提唱する 30) 系統別に 分類した。すなわち、ペニシリン系薬、セフェム系薬第一世代、セフェム系薬 第二世代、セフェム系薬第三世代、オキサセフェム系薬、カルバペネム系薬、
キノロン系薬とした。また、各抗菌薬の薬剤感受性測定については、 Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) の判定基準 31) で測定される
MicroScan WalkAway TM (Beckman Coulter, CA) を 4 施設共通測定機器として
使用した。対象菌種は大腸菌である。
6
3. AUD の比較
抗菌薬使用量は各薬剤の AUD を算出した。 AUD の算出式は世界保健機構
( WHO )が定めた 1 日用量( defined daily dose : DDD )と在院延べ日数を用 いて以下の式より算出した 32) 。
抗菌薬使用量(g)×1000 AUD(DDD/1000bed days)=
DDD(g)×在院延べ日数(day)
4.LVFX 耐性大腸菌分離率
2005 年から 2014 年までの 9 年間に 4 施設で検出された LVFX 耐性大腸菌の 分離状況を調査した。
5.LVFX 使用量と LVFX 耐性大腸菌分離率の相関性
2014 年 4 月から 2014 年 9 月の 5 ヶ月間に各施設で使用された注射用 LVFX の AUD を月毎に算出し、 LVFX 耐性大腸菌の分離率と比較をおこなった。統計 解析はエクセル統計 2010 を用いてピアソンの積率相関係数を算出した。なお、
有意水準は P <0.05 とした。
7
第三節 第三節
第三節 第三節 結果 結果 結果 結果
1 . AUD の比較
各施設の系統別 AUD を図 図 図 図 2 2 2 2 に示した。総 AUD に対する各系統分類の比率と して、 A 、 B 、 C 病院ともセフェム系第三世代の使用割合が高く 22.4 ~ 42.5 % であった。また、 A 、 B 、 D 病院ではペニシリン系薬の使用割合も多く 26.7 %
~ 33.9 %であった。キノロン系薬の使用割合は、いずれの施設も 1.7 % ~ 3.9 % であった。
図 図 図
図 2. 2. 2. 2. 八戸地区 八戸地区 八戸地区 八戸地区 4 4 4 4 病院の注射用抗菌薬使用量 病院の注射用抗菌薬使用量 病院の注射用抗菌薬使用量 病院の注射用抗菌薬使用量
2. LVFX 耐性大腸菌分離率
各施設の LVFX 耐性大腸菌分離率の推移について図 図 図 図 3 3 3 3 に示した。 A 病院は 2005 年の 15 % から 2014 年は 25 % まで 10 % 上昇( P <0.05 )し、 B 病院と C 病院は 15 % から 30 % 、 10 % から 25 % にそれぞれ 15 % 上昇していた
( P <0.05 ) 。 D 病院は 15 % から 35 % ( P <0.05 )と 4 施設のうち 20 % と最も 上昇していた。
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0 D病院
C病院 B病院 A病院
ペニシリン系薬 セフェム系薬第一世代 セフェム系薬第二世代 セフェム系薬第三世代 オキサセフェム系薬 カルバペネム系薬 キノロン系薬 その他
AUD (DDD’s/1000 bed days)
8
図 図 図 図 3 3 3 3. LVFX . LVFX . LVFX . LVFX 耐性大腸菌分離率の推移 耐性大腸菌分離率の推移 耐性大腸菌分離率の推移 耐性大腸菌分離率の推移
3.注射用 LVFX の使用量と耐性大腸菌分離率の関係
各施設の注射用 LVFX の使用量と LVFX 耐性大腸菌分離率の関係について図 図 図 図 4
4 4
4 に示した。相関係数は r= 0.415 ( p= 0.220 )であり、 LVFX の使用量増加に伴 い LVFX 耐性大腸菌の分離率が上昇する正の相関が認められた。
y = 1.6292x + 14.43 R² = 0.1723
0 5 10 15 20 25 30
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0
図 図 図
図 4 4 4 4. . . . 注射用 注射用 注射用 注射用 LVFX LVFX LVFX LVFX の の使用量と の の 使用量と 使用量と 使用量と LVFX LVFX LVFX LVFX 耐性大腸菌分離率 耐性大腸菌分離率 耐性大腸菌分離率 耐性大腸菌分離率
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
A病院 B病院 C病院 D病院
AUD (DDD’s/1000 bed days)
L V F X 耐 性 大 腸 菌 分 離 率 ( % ) L V FX 耐性大腸菌分離率 ( %)
月
9
第四節 第四節
第四節 第四節 考察 考察 考察 考察
臨床において抗菌薬を使用するタイミングは様々である。一般に実施される 細菌感染症の治療以外に、手術後の感染予防として抗菌薬の投与 32 ) および抗 がん剤の副作用による発熱性好中球減少に使用する場合などがある 33) 。このう ちキノロン系薬を使用するケースとして 2 つあげられる。第一は、重症感染症 の場合である。病態・重症度に応じながらβラクタム系薬(ペニシリン系薬、
セフェム系薬第三世代、カルバペネム系薬など)と注射用キノロン系薬の併用 を考慮する方針が示されている 34) 。第二は、尿路および呼吸器感染症における 外来患者を中心とした経口剤の選択である。キノロン系薬は、経口および注射 剤が選択でき、適応症ならびに適応菌種が極めて多いことから、我が国のみな らず世界的に、その使用割合が多くなることが予想される。
LVFX 耐性大腸菌の分離率については、いずれの施設においても増加傾向にあ った。 LVFX 耐性大腸菌の分離率増加には様々な危険因子が報告 16) されており、
使用量増加が一つの要因であると考えられ、今回、我々の調査では LVFX の使
用量と耐性大腸菌分離率が相関することが明らかになった。 LVFX を使用する際
は使用量増加が耐性化を起こす一つの要因である可能性を考慮しながら、適正
な投与量・投与間隔が重要である。
10
第二章 第二章 第二章 第二章 第一節 第一節
第一節 第一節 序章 序章 序章 序章
LVFX は呼吸器感染症 18) や尿路感染症 19) などに幅広く活用され、剤形が経口 剤と注射剤が選択できることから汎用されるキノロン系薬である。第一章では 注射用 LVFX の使用量と耐性大腸菌分離率に相関があることを明らかにした。
その LVFX に耐性を示す大腸菌の分離率増加について臨床的危険因子は明らか になっていない。本章では入院患者を対象に LVFX 耐性大腸菌の分離率増加に つながる危険因子をレトロスペクティブに調査した。
11
第二節 第二節
第二節 第二節 方法 方法 方法 方法
1. LVFX 投与患者と大腸菌感受性率
2009 年 7 月から 2012 年 3 月までに、青森労災病院において LVFX が投与さ れた成人患者( 18 歳以上)をオーダリングシステムより抽出した。 LVFX が投 与された入院および外来患者 1987 人を対象に、起因菌として分離された大腸菌 に対する LVFX の薬剤感受性から MIC ≤ 4 µg/mL を LVFX 感受性大腸菌、
MIC>4 µg/mL を LVFX 耐性大腸菌と判定した。なお、 LVFX の感受性は CLSI の判定基準 31) を採用した。
図 図 図 図 5. 5. 5. 5. LVFX LVFX LVFX LVFX 感受性大腸菌 感受性大腸菌 感受性大腸菌 感受性大腸菌 と と と と LVFX LVFX LVFX LVFX 耐性大腸菌 耐性大腸菌 耐性大腸菌 耐性大腸菌の分類 の分類 の分類 の分類
2. LVFX 感受性大腸菌群と LVFX 耐性大腸菌群間の関連因子
LVFX 感受性大腸菌株 と LVFX 耐性大腸菌株について、それぞれの由来患者 群の年齢、性別、腎機能、感染症種別、検体由来、 LVFX の一日投与量と投与回 数、既往歴、入院歴、 LVFX が投与された時点から過去 6 か月間の侵襲性処置 歴、酸素吸入歴、尿路カテ-テル使用歴、キノロン薬使用歴、キノロン薬以外 の抗菌薬使用歴を患者カルテより抽出した。なお、調査項目を全て抽出できな い患者は除外した。
<2009年7月~2012年3月>
LVFX投与患者(n=1987)
→大腸菌感受性率不明(n=1092)除外 →大腸菌感受性率不明(n=265)除外
外来LVFX投与患者(n=364) 入院LVFX投与患者(n=266) 入院LVFX投与患者(n=531) 外来LVFX投与患者(n=1456)
→以下の患者基本情報なし
年齢、性別、腎機能、感染症種別、細菌培養検体種別(n=322)除外
→以下の患者基本情報なし
年齢、性別、腎機能、感染症種別、細菌培養検体種別(n=144)除外 外来LVFX投与患者(n=42) 入院LVFX投与患者(n=122)
・既往歴情報なし(n=3)
・入院歴情報なし(n=2)
・侵襲性処置歴情報なし(n=31)
・薬剤投与歴情報なし(n=0)
外来LVFX投与患者(n=6) 入院LVFX投与患者(n=52)
・既往歴情報なし(n=2)
・入院歴情報なし(n=2)
・侵襲性処置歴情報なし(n=66)
・薬剤投与歴情報なし(n=0)
LVFX感受性大腸菌 (n=0)
LVFX耐性大腸菌 (n=6)
LVFX感受性大腸菌 (n=37)
LVFX耐性大腸菌 (n=15)
MIC<4μg/mL MIC≥4μg/mL MIC<4μg/mL MIC≥4μg/mL
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3.統計解析
統計解析はエクセル統計 2010 TM を使用し、カイ二乗検定または Fisher の正
確検定、 Mann-Whitney 検定で評価をおこなった。なお、 P <0.05 を有意差あり
と判定した。
13
第三節 第三節
第三節 第三節 結果 結果 結果 結果
1. LVFX 投与患者と大腸菌耐性率
LVFX 投与患者数と LVFX 耐性大腸菌分離率の推移について図 6 に示した。
2009 年 8 月から LVFX 500 mg 錠が使用され始め、患者数も徐々に増加し始め
た。一方 LVFX 100 mg 錠の投与患者数は減少し、 2010 年 4 月から 500 mg 錠 に完全に切り替わった。 また、 LVFX 耐性大腸菌の分離率は 2009 年 10 月の 12 % から 2010 年 3 月は 28 % へ増加したが、その後は 25~28 % を推移した。
図 図
図 図 6 6. 6 6 . . . LVFX LVFX LVFX LVFX 使用患者数と 使用患者数と 使用患者数と 使用患者数と LVFX LVFX LVFX LVFX 耐性大腸菌 耐性大腸菌 耐性大腸菌 耐性大腸菌分離率の推移 分離率の推移 分離率の推移 分離率の推移
2. LVFX 感受性大腸菌群と LVFX 耐性大腸菌群の関連因子比較
LVFX 感受性大腸菌群(以下、感受性群)と LVFX 耐性大腸菌群(以下、耐 性群)の患者背景を示す(表 表 表 表 4 4 4 4 ) )。 ) ) LVFX が投与された 1987 名のうち、全ての 調査項目を抽出できた感受性群が 37 例、耐性群は 21 例であった。年齢、性別、
腎機能、 LVFX の 1 日投与量、 LVFX の投与回数、感染症種別、検体由来に差は 認められなかった。感染症種別の成績では膀胱炎が最も多く、感受性群で 38 %、
耐性菌群で 48 %であった。以下、感染性腸炎が 30 %、 29 %、尿道炎が 11 %、
15 %であった。由来検体は、尿が最も多く感受性群で 49 %、耐性群で 62 % であった。
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
20 09 . 07 20 09 . 08 20 09 . 09 20 09 . 10 20 09 . 11 20 09 . 12 20 10 . 01 20 10 . 02 20 10 . 03 20 10 . 04 20 10 . 05 20 10 . 06 20 10 . 07 20 10 . 08 20 10 . 09 20 10 . 10 20 10 . 11 20 10 . 12 20 11 . 01 20 11 . 02 20 11 . 03 20 11 . 04 20 11 . 05 20 11 . 06 20 11 . 07 20 11 . 08 20 11 . 09 20 11 . 10 20 11 . 11 20 11 . 12 20 12 . 01 20 12 . 02 20 12 . 03
LVFX100mg錠 LVFX500mg錠
L V FX 投与患者数(人) L V FX 耐性大腸菌分離率( %)
14
表 表
表 表 4 4 4 4 . . . . LVFX LVFX LVFX LVFX 感受性大腸菌 感受性大腸菌群と 感受性大腸菌 感受性大腸菌 群と 群と 群と LVFX LVFX LVFX LVFX 耐性大腸菌 耐性大腸菌 耐性大腸菌 耐性大腸菌群の患者背景 群の患者背景 群の患者背景比較 群の患者背景 比較 比較 比較
また、過去 6 か月以内の医療行為および抗菌薬使用歴の比較を表 表 表 表 5 5 5 5 に示す。
入院歴については、感受性群で入院歴 1 回が 2 例、 2 回が 2 例であったものの 耐性群では入院歴 1 回が 6 例、 2 回が 3 例、 3 回が 1 例であり、 LVFX 耐性大 腸菌が分離される Odds 比は 7.73 倍であった( 95 % 信頼区間: 0.02 - 29.63 、
p=0.014 ) 。このほか LVFX 耐性大腸菌の Odds 比が高かった因子は、キノロン
系薬使用歴が 5.08 倍( 95 % 信頼区間: 1.30 - 19.84 、 p=0.020 ) 、尿路カテーテル 使用歴が 3.99 倍( 95 % 信頼区間: 1.25 - 12.72 、 p=0.020 )であった。
なお、使用されていたキノロン系薬は、感受性群では LVFX が 3 例、
Ciprofloxacin ( CPFX )が 1 例、耐性群では LVFX が 6 例、 CPFX は 2 例で あった。
項目(単位)
項目(単位)
項目(単位)
項目(単位) 感受性群感受性群感受性群感受性群 耐性群耐性群耐性群耐性群
P
値値値値対象患者(例数)
37 21
-年齢(歳)
73.05±16.45 69.24±16.66 0.433
性別(男/女)
13/24 10/11 0.305
腎機能
eGFR
(ml/min
)68.06
±31.40 73.40
±47.58 0.960
LVFX1日投与量(mg) 412.50±120 417.50±120 0.910
LVFX投与回数(回) 1.70±0.94 1.76±0.99 0.884
感染症種別(%) 膀胱炎
14(38%)
感染性腸炎11(30%)
尿道炎
4(11%)
肺炎
3( 8%)
胆嚢炎
3( 8%)
手術創の二次感染
2( 5%)
膀胱炎
10(48%)
感染性腸 炎
6(29%)
尿道炎
3(15%)
咽頭炎
1( 4%)
手術創の二次感染
1( 4%)
0.466
細菌培養 検体種別(%)
尿
18(49%) 便 12(32%)
胆汁3( 8%)
喀痰3( 8%)
膿1( 3%)
尿
13(62%)
便4(19%)
褥創
3(14%)
喀痰1( 5%)0.169
15
表 表
表 表 5 5 5 5 .過去 .過去 .過去 .過去 6 6 6 6 か月以内の医療行為および抗菌薬使用歴 か月以内の医療行為および抗菌薬使用歴 か月以内の医療行為および抗菌薬使用歴 か月以内の医療行為および抗菌薬使用歴の比較 の比較 の比較 の比較
LVFX 服用患者の既往歴の比較を表 6 に示した。呼吸器疾患がある患者の Odds 比が 7.04 倍( 95 % 信頼区間: 1.97 - 25.16 、 p=0.002 )と最も高く、悪性腫瘍の 既往は 5.89 倍( 95 % 信頼区間: 1.81 - 19.14 、 p=0.004 )であり、これら 2 項目 が LVFX 耐性大腸菌分離に関係していた。
表 表 表
表 6 6 6 6 . . . . LVFX LVFX LVFX LVFX 服用患者の 服用患者の 服用患者の 服用患者の既往歴 既往歴 既往歴 既往歴の比較 の比較 の比較 の比較
危険因子 感受性群
n=37
耐性群
n=21
オッズ比
95%信頼区間 p値
心疾患あり
14 10 1.49 0.51-4.42 0.581
悪性腫瘍あり8 13 5.89 1.81-19.14 0.004
呼吸器疾患あり5 11 7.04 1.97
-25.16 0.002
腎疾患あり11 8 1.46 0.47-4.49 0.569
脳神経疾患あり6 8 3.18 0.92
-11.00 0.108
糖尿病あり8 10 3.30 1.03-10.51 0.075
高血圧あり8 10 3.30 1.03-10.51 0.075
危険因子 感受性群
n=37
耐性群
n=21例
オッズ比
95%信頼区間 p値
医療行為 入院歴あり
1回 2回 3回
2 2 0
6 3 1
7.73 0.02-29.63 0.014
侵襲性処置歴あり
12 9 1.56 0.52- 4.72 0.571
酸素吸入歴あり12 10 1.89 0.63- 5.68 0.275
尿路カテーテル使用歴あり8 11 3.99 1.25-12.72 0.020
抗菌薬使用歴 キノロン系薬使用歴あり4 8 5.08 1.30-19.84 0.020
キノロン系薬以外の
抗菌薬使用歴あり