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(1)

早稲田大学大学院 基幹理工学研究科

博 士 論 文 審 査 報 告 書

博 士 論 文 審 査 報 告 書

論 文 文 題 題 目 目

On the loca l and g loba l we l l-posedness for the compress ib le Nav ier-Stokes equat ions

圧縮性ナビエ・ストークス方程式に対する

時間局所的・大域的適切性について

申 請 者

M iho MURATA

村田 美帆

数学応用数理専攻 偏微分方程式研究

2015年 2月

(2)

流体に限らず,非線形偏微分方程式の数学的解析において時間局所的適切性,および時間大域的適切性 を考察することは最も基本的な研究課題である.本論文では,準線形双曲型・放物型混合方程式系として表 される圧縮性粘性流体の運動を記述する方程式に対し二つの問題の適切性を考察している.第一にスリッ プ境界条件を課した初期値境界値問題(第1章から 4章),第二に圧縮性流体と剛体の連成問題(第 5章)

である.スリップ境界条件を課した問題に対しては,一般領域における時間局所的適切性と初期値が十分小 さい場合に有界領域における時間大域的適切性を,連成問題に対しては時間局所的適切性を得ている.解 のクラスはLp-Lq最大正則性原理の成立するクラスである.ここで,一般領域とは一様 Wq3−1/q領域を指 し,境界の点の取り方によらず一様な球で領域を覆うことができるという性質をもち,半空間,摂動半空間, チューブ領域,層領域,外部領域のような非有界領域も含むものである.

以下,各章の概要を述べる.第 1章では,Introductionとして研究の背景,最大正則性原理や一般領域な どの定義の後,スリップ境界条件下での圧縮性粘性流体の運動を記述する方程式









∂tρ+div(ρu)=0 inΩ×(0,T), ρ(∂tu+u·∇u)−DivS(u)+∇P(ρ)=0 inΩ×(0,T), D(u)n−⟨D(u)n,n⟩n=0,u·n=0 onΓ×(0,T),

(ρ,u)|t=0=(ρ∗+θ0,u0) inΩ

(1)

に対し得られた結果が述べられている.主な結果は,(1)から得られる線形化問題に対応するレゾルベント 問題の解作用素のR有界性と,これより得られる解析半群の生成と Lp-Lq最大正則性原理,及び非線形問 題(1)の一般領域における時間局所的適切性,有界 Wq4−1/q級領域において初期値が小さいという仮定の下 での時間大域的適切性である.スリップ境界条件下での圧縮性粘性流体の運動を記述する方程式の時間局 所的適切性・時間大域的適切性に関する先行研究はBurnat-Zaj¸aczkowskiと Kobayashi-Zaj¸aczkowskiの 2 つのみである.これらの論文では有界領域で,初期値は (θ0,u0)∈H1+α(Ω),α∈(1/2,1)であり,解のクラ スは時間空間ともにL2枠である.以下,第 2章から 4章では第 1章で述べた結果の証明を行っている.

第2章ではまず,非線形問題 (1)の線形化問題









∂tρ+γ2divu=f inΩ×(0,∞), γ0∂tu−DivS(u)+∇(γ1ρ)=g inΩ×(0,∞), α[D(u)n−⟨D(u)n,n⟩n]=h−⟨h,n⟩n, u·n=˜h onΓ×(0,∞),

(ρ,u)|t=0=(ρ0,u0) inΩ.

(2)

とこれに対応するレゾルベント問題





λρ+γ2divu=f inΩ, γ0λu−DivS(u)+∇(γ1ρ)=g inΩ, α[D(u)n−⟨D(u)n,n⟩n]=h−⟨h,n⟩n, u·n=˜h onΓ

(3)

を考察している.全空間と半空間においては部分フーリエ変換を用いレゾルベント問題の解表示を行い,一 般領域においては境界近傍を半空間からの摂動,境界から離れた部分を全空間として捉え,半空間と全空間 における解をcut-off関数でつなぎ合わせることにより R有界な解作用素の存在を得ている.

Theorem1. 1<q<∞,N <r<∞,max(q,q)≤r(q=q/(q−1)),0<ϵ<π/2,Ωを一様 Wr3−1/r

領域,

Xq(Ω)={(f,g,h,˜h)|f∈Wq1(Ω),g∈Lq(Ω)N,h∈Wq1(Ω)N, h∈Wq2(Ω)},

Xq(Ω)={F=(F1,...,F7)|F1∈Wq1(Ω),F5∈Lq(Ω),F2,F3,F6∈Lq(Ω)N,F4,F7∈Lq(Ω)N2} とする.このとき,λ0≥1と作用素の族 R(λ)∈Hol(Λϵ,λ0,L(Xq(Ω),Wq1,2(Ω)))が存在し,任意の λ∈Λϵ,λ0, (f,g,h,˜h)∈Xq(Ω)に対し (ρ,u)=R(λ)(f,g,λ1/2h,∇h,λh˜,λ1/2˜h,∇2˜h)は 方程式 (3)の一意解を与え、

さらに作用素R(λ)は次の評価を満たす.

RL(Xq(Ω),Wq1,0(Ω))({(τ∂τ)(λR(λ))|λ∈Λϵ,λ0})≤C, RL(Xq(Ω),Wq1,0(Ω))({(τ∂τ)(γR(λ))|λ∈Λϵ,λ0})≤C, RL(Xq(Ω),Lq(Ω)N 2)({(τ∂τ)1/2∇PvR(λ))|λ∈Λϵ,λ0})≤C, RL(Xq(Ω),Lq(Ω)N 3)({(τ∂τ)(∇2PvR(λ))|λ∈Λϵ,λ0})≤C.

1

(3)

ここで,RL(X,Y )(T)は作用素の族 T ⊂L(X,Y)の R-bound,L(X,Y)は X から Yへの有界線形作用素全 体,λ=γ+iτ,ℓ=0,1,

Σϵ,λ0={λ∈C||λ|≥λ0,|argλ|≤π−ϵ}, Kϵ={λ∈C|(λ+ γ

α+β+ϵ)2+(Imλ)2≥( γ

α+β+ϵ)2}, Λϵ,λ0=Σϵ,λ0∩Kϵ, Wqm,ℓ(Ω)={(f,g)|f∈Wqm(Ω),g∈Wq(Ω)N}.

R有界性の定義から作用素の族が R有界ならば一様有界であるので,レゾルベント評価を得ることがで きる.これより Wq1,0(Ω)上で (2)に対する解析半群が生成されることが分かる.さらに R有界な解作用素 の存在によりWeis の作用素値 Fourier multipliertheoremを応用することにより方程式 (2)に対し次の最 大正則性原理を得る.

Theorem2. 1<q<∞,N <r<∞,max(q,q)≤r(q=q/(q−1)),0<ϵ<π/2,Ωを一様 Wr3−1/r

領域とする.このときある γ0>0が存在して次が成立する.

方程式(2)の初期値は ρ0∈Wq1(Ω),u0∈Bq,p2(1−1/p)(Ω)N,右辺は任意の γ≥γ0に対して, e−γtf∈Lp(R,Wq1(Ω)),e−γtg∈Lp(R,Lq(Ω)N),e−γth∈Lp(R,Wq1(Ω)N), e−γtΛ1/2γ h∈Lp(R,Lq(Ω)N),e−γt˜h∈Lp(R,Wq2(Ω))∩Wp1(R,Lq(Ω)),

f= ˜h=0,g= h=0(t <0)であり,整合条件 α[D(u0)n−⟨D(u0)n,n⟩n] =(h−⟨h,n⟩n)|t=0, u0·n = ˜h|t=0 onΓを満たすとする. このとき方程式 (2)は一意解 ρ∈ Wp,loc1 ((0,∞),Wq1(Ω)),u ∈ Lp,loc((0,∞),Wq2(Ω)N)∩Wp,loc1 ((0,∞),Lq(Ω)N)で次の評価を満たすものをもつ.

∥e−γt(γρ,∂tρ)∥Lp((0,∞ ),Wq1(Ω))+∥e−γt(γu,∂tu)∥Lp((0,∞ ),Lq(Ω))+∥e−γtu∥Lp((0,∞ ),Wq2(Ω))

≤C(∥ρ0∥Wq1(Ω)+∥u0∥Bq,p2(1−1/p)(Ω)+∥e−γt(f,g)∥Lp(R,Wq1,0(Ω))

+∥e−γt(∇h,Λ1/2γ h)∥Lp(R,Lq(Ω))+∥e−γt˜h∥Wp1(R,Lq(Ω))+∥e−γt˜h∥Lp(R,Wq2(Ω))) foranyγ≥γ0.ここで,Bq,p2(1−1/p)(Ω)=(Lq(Ω),Wq2(Ω))1−1/p,p.

第3章では一般領域における時間局所的適切性を Lp-Lq枠で得ている.

Theorem3. 2<p<∞,N <q<∞,R>0,Ωを一様 Wq3−1/q領域とする.ρ∗を正定数,P(ρ)を ρ>0 上定義されたC 関数で,任意の ρ∈(ρ∗/4,4ρ∗)に対し ρ1<P(ρ)<ρ2(ρ1,ρ2>0)を満たすものとす る.さらに,(1)の初期値 (θ0,u0)∈Wq1(Ω)×Bq,p2(1−1/p)(Ω)Nは次を満たすとする.

α[D(u0)n−⟨D(u0)n,n⟩n]=0,u0·n=0 onΓ, (4)

∥θ0∥Wq1(Ω)+∥u0∥Bq,p2(1−1/p)≤R, ρ∗/2<ρ∗+θ0(x)<2ρ∗ (x∈Ω). (5) このとき,Rに依存する T >0が存在し方程式 (1)は次のクラスの一意解 (ρ,u)をもつ.

ρ∈Wp1((0,T),Lq(Ω))∩Lp((0,T),Wq1(Ω)), u∈Wp1((0,T),Lq(Ω)N)∩Lp((0,T),Wq2(Ω)N).

Theorem3を得るためににまず,オイラー座標からラグランジュ座標への変数変換を行っている.この ような変換を行う理由は(1)の第一式に現れる質量保存を表す方程式は双曲型の方程式であり Lp-Lq最大 正則性原理では扱えないので,座標変換により密度の時間微分のみに変えるためである.この変換が全単射 であることからラグランジュ座標上で記述される非線形問題に対し,縮小写像の原理により時間局所的適切 性を得ている.このとき,第 2章で証明した線形化問題に対する最大正則性の評価から時間局所的な最大正 則性の評価を得ることが証明の本質となっている.そのために,最大正則性の評価の右辺に現れる時間非局 所的作用素Λ1/2γ を時間局所的作用素∂tを用い評価している.

第4章では有界領域において,初期値が十分小さい場合に時間大域的適切性を Lp-Lq枠で証明している.

Theorem4. N <q < ∞,2<p<∞,Ωを有界 Wr4−1/r級領域とする.粘性係数 α,βは α>0,β >

(N−2)α/Nを満たすとする.このとき,ある ϵ>0が存在して,初期値 (θ0,u0)∈Wq1(Ω)×Bq,p2(1−1/p)(Ω)N 2

(4)

は(4),(5),及び ∥θ0∥Wq1(Ω)+∥u0∥B2(1−1/p)q,p ≤ϵを満たし,さらに Ωが回転対称領域の場合には直交条件 ((ρ∗+θ0)u0,p)Ω=0(p∈Rd:rigidspace)を仮定すると,(1)は次のクラスの一意解をもつ.

ρ∈Wp1((0,∞),Lq(Ω))∩Lp((0,∞),Wq1(Ω)), u∈Wp1((0,∞),Lq(Ω)N)∩Lp((0,∞),Wq2(Ω)N).

これを得るために線形化問題(2)に対する解の指数減衰評価を示し,第 3章で得た時間局所解を時間に ついて延長している.

第5章では 3次元全空間上に広がる圧縮性流体中に回転や平行移動する剛体がある場合の流体と剛体の運 動について記述した以下の連成問題を扱っている.剛体は有界領域 B(t)で表すものとし,流体が占める領 域は外部領域D(t)=R3\B(t),その境界を Γ(t),初期領域を D=D(0)とする.

























∂tϱ+div(ϱu)=0 inD(t)×(0,T) ϱ(∂tu+u·∇u)−DivT(u,P)=0 inD(t)×(0,T),

u(t,x)=η(t)+ω(t)×(x−xc(t)) on Γ(t)×(0,T), mη(t)−∫

Γ(t)T(u,P)n(t,x)dσ=F(t) t∈(0,T), (Jω)(t)−∫

Γ(t)(x−xc)×T(u,P)n(t,x)dσ=M(t) t∈(0,T), (ρ,u)|t=0=(ρ0,u0) inD(0), (η,ω)|t=0=(η0,ω0).

(6)

u=(u1,u2,u3),ρ,Pは第 1章で定義したものと同様,η,ωはそれぞれ重心 xc(t)の速度,角速度を表す未 知関数,mは剛体の質量を表す正定数,J(t)は慣性モーメント,F,M はそれぞれ既知の外力とトルクを表 す.この問題の先行研究として,Boulakia-Guerreroは初期値が (ρ0−¯ρ,u0)∈H3(D)×H3(D)(ここで,¯ρ はρ0の平均値を表す正定数),かつ整合条件:∂tiu|t=0=∂it(η+ω×(x−xc))|t=0(i=0,1)を満たすとき L2-L2枠で時間局所的適切性と時間大域的適切性を得ている.本論文では,スリップ境界条件の場合と同様, 線形化問題に対しLp-Lq最大正則性原理を得ることにより,次の Lp-Lq枠における時間局所的適切性を得 ている.

Theorem5. 1<p < ∞,3<q < ∞,R > 0とし,D ⊂ R3をC2,1級の境界をもつ外部領域と する. F,M ∈ Lp((0,T);R3)とし,初期値 (ρ0− ¯ρ,v0)∈ Wq1(D)×Bq,p2(1−1/p)(D),η0,ω0∈ R3

∥ρ0−¯ρ∥Wq1(D)+∥u0∥B2(1−1/p)q,p (D)+|η0|+|ω0|≤R,整合条件 :u0=η0+ω0×xを満たすとする.このとき, Rに依存する T >0が存在し方程式 (6)は次のクラスの一意解 (ρ,u,η,ω)をもつ.(η,ω)∈Wq1((0,T),R6), ρ∈Wp1((0,T),Lq(D(·)))∩Lp((0,T),Wq1(D(·))), u∈Wp1((0,T),Lq(D(·))3)∩Lp((0,T),Wq2(D(·))3),

以上述べてきたように,申請者はスリップ境界条件下での圧縮性粘性流体の運動を記述する方程式に対 する時間局所的・大域的適切性と,圧縮性粘性流体の運動と剛体との連成問題に対する時間局所的適切性 を,これまで扱われていた L2枠ではなく,Lp-Lq最大正則性枠で示すことが出来た.特に一般領域におけ るレゾルベント問題の解作用素のR有界性を基盤として,非線形問題の適切性を得るという申請者の開拓 した手法は,数理物理学に現れる放物型または双曲・放物型の非斉次初期値境界値問題に対し広く適用で き,今後の発展が大いに期待できる.よって本論文は博士 (理学)の学位論文として十分に価値のあるもの と認める.

2015年 1月 審査員

(主査) 早稲田大学教授 理学博士(筑波大学) 柴田良弘 (副査) 早稲田大学教授 理学博士(北海道大学) 小薗英雄 

早稲田大学教授 理学博士(京都大学) 小澤徹 

Prof.ofTUDarmstadt Ph.D.(EberhardKarls MatthiasHieber Universit¨atT¨ubingen)

3

参照

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