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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

レース用ガソリン筒内直接噴射過給機付きエンジン の希薄燃焼に関する研究

松村, 基宏

http://hdl.handle.net/2324/2236320

出版情報:九州大学, 2018, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

博士論文

レース用ガソリン筒内直接噴射過給機付きエンジンの 希薄燃焼に関する研究

平成 30年度

九州大学大学院統合新領域学府 オートモーティブサイエンス専攻

松村 基宏

(3)

ⅰ 記号一覧

Cm :平均ピストン速度 [m/s]

CR :圧縮比 [-]

Cμ :乱流モデル定数 Cεl : モデル定数 Cε2:モデル定数

COV :有効 Covariance [%]

Cpi :Pi 偏差 [%]

CVGeo : 渦形状係数

dv: バルブシート内径 [m]

D:シリンダボア径 [m]

d :液滴の直径 [m]

E: エネルギー [m2/s2]

Ext : 燃料消費による火炎の消滅 (消散項)[-]

k :乱流エネルギー [m2/s2]

ne ,N エンジン回転速度 [rpm]

m 質量 [kg]

:計測質量流量 [kg/s]

th : 論理吸入空気質量流量 [kg/s]

𝑃

𝑘 :点火自着火による火炎の生成 [-]

R: 渦半径 [m]

SL l :層流燃焼速度 [m/s]

ST :乱流燃焼速度 [m/s]

s:ストローク [m]

TR: タンブル比 [-]

𝑢 :乱れ強さ [m/s]

𝑢’/Cm : 乱れ強さ素質 [-] 注)7500[rpm] 相当ピストン速度で比較する素質評価因子 ui, uj, uk : x,y,z, 軸方向の瞬時流速 [m/s]

ui, uj, uk : x,y,z, 軸方向の平均流速 [m/s]

Vt : 渦粘性係数 [m2/s]

WMot , ω:エンジン角速度 [Rd/s]

(4)

ⅱ 𝑊̅: PIV から求めた平均軸速度 [Rd/s]

x,y,z:座標軸 [m]

X : 亜成層シフト率 [-]

uFu :未燃域燃料質量分率 [-]

z :バルブ数 [-]

β : 流動素質 [-]

ΔP :流動差圧 [Pa]

ε :乱流エネルギー散逸率 [m2/s3]

ηth: 理論熱効率[%]

ηthi , ηi : 図示熱効率[%]

ηthb , ηe : 正味熱効率[%]

κ:比熱比 [-]

μσ :流動抵抗係数

ν :動粘性係数 [m2/s]

νγ :渦粘性係数 [m2/s]

φ :当量比 [-]

π :円周率 [-]

ω ̅

uFu

: 燃料消費速度 [kg/m

3

s]

ρ :流体密度 [kg/m3]

ρ :気相の密度 [kg/m3]

ρ :液滴の密度 [kg/m3]

ρ :気泡の密度 [kg/m3]

ρu :未燃域ガスの密度 [kg/m3]

ρ

̅u :未燃域ガス密度 [kg/m3]

Σ :単位体積あたりの層流火炎面積 [m2/m3] =(Flame Surface Density)

ω:流動角速度 [Rd/s]

𝜔𝐹𝐾: PIV から求めた速度分布により発生する角速度 [Rd/s]

(5)

添え字

g : gas L : Laminar Rel.: relative D: drag f : flow

TD: Turbulence drag Sat.: saturation W: wave T: time d: droplet

注記

IVC: Intake Valve Closing Cyl.: Cylinder Average Plug: Around Spark Plug Av.: Average

(6)

目次

第一章 序論

1.1 自動車とエンジンを取り巻く環境 ……… P1 1.2 経済成長と自動車需要の変化 ……… P1 1.3 エネルギー需要の予測と課題 ……… P4 1.4 地球の温暖化 ……… P6 1.5 省エネルギー要請の高まり ……… P9 1.6 ガソリンエンジン技術 ……… P13 1.7 ガソリン筒内直噴エンジン燃焼システム開発の経緯と現状 ……… P18

1.7.1 初期の直噴ガソリンエンジン ……… P18

1.7.2 ウォールガイド式 筒内直噴システム事例 ……… P22

1.7.3 エアガイド式 筒内直噴システム事例 ……… P28

1.7.4 スプレーガイド式筒内直噴システム事例 ……… P30

1.7.5 混合比率と排出ガスの関係 ……… P34 1.8 レース用エンジン規則と競争の変化 ……… P35 1.9 レース用筒内直噴過給機付きガソリンエンジンの燃焼システムとその構成 …… P38 1.10 レース用筒内直噴過給機付きガソリンエンジンの開発前性能と目標設定 … P40 1.11 本文の目的と内容構成 ……… P43 参考文献 ……… P44 第二章 レース用筒内直噴過給機付ガソリンエンジンの熱効率改善への数値流体力学(CFD)

解析活用

2.1 はじめに ……… P47 2.2 数値シミュレーションによるエンジン仕様の検討と熱流体解析ソフトウェアについて P47 2.3 解析全体の流れ ……… P49 2.4 筒内ガス流動 ……… P51

2.4.1 計算モデルおよび解析条件 ……… P51

2.4.2 ガス流動数値計算モデル ……… P51

2.4.3 ガス流動 CFD シミュレーション比較と検証結果 ……… P52

(7)

2.4.4 ガス流動解析代表点について ……… P56 2.5 混合気形成 ……… P57

2.5.1 混合気形成計算領域の形状と使用した初期条件と境界条件 …… P57

2.5.2 噴霧と混合気形成のモデル ……… P57

2.5.3 混合気形成シミュレーション結果 ……… P58

2.6 燃焼 ……… P59

2.6.1 燃焼シミュレーションの構成概要 ……… P59

2.6.2 燃焼熱流体解析計算領域の形状と使用した初期条件と境界条件 P59

2.6.3 点火と燃焼の計算モデル ……… P60

2.6.4 燃焼シミュレーション結果 ……… P61

2.7 第二章のまとめ ……… P63 参考文献 ……… P64 第三章 高負荷希薄燃焼を可能とするガス流動

3.1 はじめに ……… P65 3.2 従来ポート形状とガス流動の弱点 ……… P65 3.3 タンブル渦による燃焼の促進効果 ……… P68 3.4 要求されるガス流動とタンブル渦 ……… P72 3.5 タンブル渦を乱れに変化させるシステム構成とその発生・減衰時期の制御 … P77 3.6 ガス流動シミュレーション結果と実機実験による比較 ……… P88 3.7 第三章のまとめ ……… P94 参考文献 ……… P95 第四章 高負荷希薄燃焼を可能とする混合気の形成とその制御

4.1 はじめに ………P96 4.2 燃焼から要求される混合気とその形成 ………P97 4.3 混合気形成のプロセスと解析モデルの選定 ………P98 4.4 混合気形成シミュレーション結果と実機実験による比較 ………P99 4.4.1 ポート形状によるガス流動と混合気形成 ………P99

4.4.2 燃料噴射時期による混合気形成への影響 ………P104

4.4.3 マルチ噴射による成層混合気形成と燃焼への影響 ………P108

4.4.4 噴射弁特性差による混合気形成と燃焼への影響 ………P117

(8)

4.5 高負荷希薄燃焼の要求する混合気の形成と制御 ………P127 4.6 第四章まとめ ………P128 参考文献 ………P129 第五章 高回転・高負荷希薄燃焼の検証と考察

5 . 1 は じ め に … … … P 1 3 0 5.2 レース用高負荷希薄燃焼による熱効率向上手順とその効果 …………P130 5.3 燃焼数値解析技術の精度と今後の課題 ………P132 5.4 燃焼期間と熱効率に関する考察 ………P133

5.5 図示熱効率と正味熱効率の乖離に関する考察 ………P134

第六章 結論

結論 ………P136

謝辞

………P138

(9)

1

第一章 序論

1.1 自動車とエンジンを取り巻く環境

内燃機関は、エネルギー転換装置の一つで燃料の燃焼という化学変化からその熱エネルギーを運動エ ネルギーに変換することができる。 その利便性とガソリンあるいは軽油等の燃料の取扱い易さから自動車 に代表される運輸機関の主要な動力源となるに至った。 産業革命以降自動車が発明され、エネルギ ーの体積密度が高く、保存と活用に便利な液体燃料の使用量は世界経済の発展とともに関連する産 業の成長に合わせ、増大してきた。 経済発展は移動と物流に支えられてきたとも言え、今後とも新興 国の人口増加に合わせた経済成長にけん引され、物流と人々の移動量はますます増加し、自動車の需 要も増加すると考えられ、エネルギーの使用量も飛躍的に増加することが予測される。 内燃機関はエネ ルギーの転換装置ではあるが、その効率から動力に転換できなかった熱を大気に排出する。

内燃機関が発明されて以降工業技術の発展と内燃機関研究者のたゆまぬ努力により性能と熱効率 は大幅に向上を続けており主要な動力源として活用される一方、化石燃料の消費、排出ガスによる大 気汚染の問題が表面化してきている。 解決しなければいけない問題の一つは化石燃料資源の消費に より将来枯渇が予測されていること、二つ目は環境整備汚染である。 大気汚染の問題の顕在化に合 わせて施行された排出ガス規制によって、有害物質の削減システムの開発は加速され、排出ガスの無害 化(二酸化炭素への転換処理など)が大幅に進んだ。 しかしながら昨今の研究ではこの二酸化炭素 の排出が地球の受熱と放熱のバランスに影響を与えマクロには平均温度を上昇させている課題「地球の 温暖化」が懸念されている。

1.2 経済成長と自動車需要の変化

自動車の需要と経済の成長には密接な関係があり、今後の自動車の需要と世界での保有台数を考 察するために、経済成長と自動車需要の関係について整理した。 図1-1 に一人当たりの GDP と一人 当たりの移動距離の関係を示す。(1.1) 経済がすでに発展した先進国ではその成長は鈍化傾向が見え るが、新興国においては経済成長とともに物流と人々の移動が増大することになると先進国の過去のデ ータから予測される。 また、この移動の増加は、自動車の需要が今後とも旺盛に続く可能性を持ってい ることを示している。

(10)

2

Fig.1-1 Relations between Moving Distance and Per Capita GDP(1.1)

図 1-2に各地域別人口の推移予測を示す。(1.2) 21世紀初頭には約61億人であった世界人 口が2050年には50年間で約1.5倍に増加し93 億人を突破すると予測されている。 特に 欧州、北米等の先進諸国では安定して著しい増加は見られない状況に対し、アフリカ、アジアオセアニア、

中南米諸国等の新興国では増加を続けると予測され、世界的には今後も人口の増加が続くものとみら れる。

この将来にむけた人口増加に合わせ経済も発展すると予測されるので、図 1-1 に示した新興国の経 済的発展にともなう移動の要求増加は、世界のエネルギー消費に影響を与えると考える。

Fig.1-2 Population Estimates by Each Region (1.2)

(11)

3

図 1-3 に各国別の自動車保有率(人口 1000人当たりの自動車保有台数)を示す。 先進国 における自動車保有率に対し、新興国では保有率が低い状況であり、米国並みの自動車保有率に世 界各国がなることはないにしても、公共交通機関の普及状況が十分整わない状況下での経済の急激な 発展によって、現在の欧州並みまで BRICS に代表される新興国の自動車保有率が将来増加するとす れば、インドと中国だけでも今後 2050 年に向けて5億台以上の保有増加する可能性もあり、図 1-4 に示すように世界の自動車保有台数は増加する。(1.3)

Fig.1-3 Car Ownership Rate by Each Country

Data Source: JAMA Primary Countries Auto Penetration, FOURIN Data, Daily China News

Fig.1-4 The Total Numbers of Cars in Global (1.3)

(12)

4

1.3 エネルギー需要の予測と課題

本項では自動車の需要と保有の将来増加も考慮に入れた場合の 1 次エネルギー消費需要とその予 測について述べる。 図 1-5-1 に世界の 1 次エネルギー各国別消費推移と予測を示す。(1.4) OECD 諸国でエネルギー消費が 2005 年をピークに安定消費量となった状況に対し、中国・インドに代表される 新興国においては、エネルギー消費量が今後とも大きく増大すると予測されている。 これは、今後各国の CO2 排出規制の強化とエネルギーコスト増加により、距離当たりの CO2 排出量が削減されても、人口 の増加および経済発展による移動の増加と、そしてその自動車保有率の増加によって、図 1-5-1 に示 すように Global のエネルギー消費を増大させる見込みである。 今後の世界の自動車によるエネルギー 消費量の増加によって、有限と言われる化石燃料の供給に対しバランスを保つことが将来難しくなる可能 性があり、エネルギー枯渇可能性の見地からも自動車の燃料消費の削減は、非常に重要な課題である と考えられる。

Fig.1-5-1 Global Primary Energy consumption trends by Region (1.4)

(13)

5

一方で現在様々な将来エネルギー供給の予測がなされているが、図 1-5-2 に示す代表的な 21 世 紀世界のエネルギー種類別供給予測によれば、石油エネルギーの供給は 2030 年をピークに減少に転 じている。(1.5) 昨今のシェールガスによるエネルギー供給の増加や継続的な石油資源探査と開発により、

エネルギーの枯渇が数年内の問題になることは考えにくいが、需要が継続的に増加している中で供給が 十分でない時期がいずれやってくるとすれば、石油資源を用いているガソリンエンジンの熱効率改善は重 要な課題であると考えられる。

Fig.1-5-2 World Energy Production Forecast (1.5)

(14)

6

1.4 地球の温暖化

人口の増加と経済の発展とともに、生物の生存環境の破壊は深刻化している。 主に内燃機関を用い る自動車の排出ガスは地球環境に影響を与えていると考えるのが妥当である。 この排出ガスは、CO2 に代表される温室効果ガスと有害ガスに分類されるがいずれにしても環境への影響が大きいとすれば対 応策が必要である。 18 世紀に始まった産業革命以降、化石燃料(石炭・石油など)の使用量の増 加に合わせ、これらの排出物質が地球環境や人類の健康など様々な方面に影響を与えていると報告さ れている。(1.6) また有害排出ガスの規制により有害物質は減少したものの、CO2 をはじめとする温室効 果ガスの大気中濃度は増加を続けており、図 1-6 地球の平均気温の推移を示すように年ごとの小さな 変動はあるものの、マクロに見れば地球が温暖化している傾向が見える。(1.7) また、図 1-7 に 1999~

2008 年の平均気温推移と 2070~2100 年の温度上昇の推定を地域別に表示したマップを示すが、

温暖化に影響を与える、温室効果ガスの排出を続けた場合、地球の温度を制御する自然のバランスが 崩れ、大幅に地球の各地における平均気温が上昇すると予測されている。(1.8) この温暖化対策も世 界的な課題として取り上げられており、自動車用ガソリンエンジンの CO2 排出削減は重要課題と位置 付けられている。 ただし、地球の温暖化についてはそのメカニズムが複雑で、環境データの分析の仕方で その論拠が変わることがあり、諸説存在していることもここに述べておきたい。

Fig.1-6 Global Mean Temperature Trends (1.7)

(15)

7

Fig.1-7 Mean Temperature Rise & Global Warming Prediction 2070-2100 (1.8)

地球温暖化のメカニズムは、図 1-8 に示すように温室効果ガスによって覆われた地球が太陽からの光を 受け、従来 15℃程度でバランスされていた受放熱のバランスが崩れることにより、気温が上昇するもので

ある。(1.9) 図 1-8の左は温室効果ガス濃度が地球の受放熱バランスを崩さない中立点の状態を示し

ており太陽熱を適度に保ち地球の凍結を防止している。 図 1-8 の右側は、人間の経済・工業生産活 動により排出された温室効果ガス濃度が増加することによって受放熱のバランスを崩し、徐々に温度上 昇するメカニズムを示している。(1.9)

Fig.1-8 Global Warming Mechanism (1.9)

(16)

8

図 1-9 に各温室効果ガスの年代別濃度の推移を示す。(1.10) 産業革命以降各温暖化ガスの濃度 は上昇を続けていることがわかる。 この状況を考えると、産業革命以降化石エネルギーを活用して経済 活動の発展を推進してきたが、その経済活動や自動車の普及は温室効果を高めている一因であると思 われる。

Fig.1-9 Main Greenhouse Gases Concentration Trend (1.10)

図 1-10 に1次エネルギー別 CO2 排出量と CO2 の大気中濃度の推移を示す。(1.11) 産業革命以 降の処々に成長した産業・経済活動により主な温室効果ガス濃度は上昇しており、このまま温室効果ガ スの排出抑制を行わない場合、100 年後には大気温度が 1.4~5.8℃上昇すると予測されている。

(1.8)

特にその影響が大きいとされる CO2 については、第二次世界大戦以降燃料エネルギーの燃焼により排 出されるガス量が増大し空気中濃度が上昇していると考えられ、先に述べたように経済活動による発展 は物流と人の移動を伴うため、今後の新興国における、急速な自動車の普及は CO2 排出量と大気中 濃度の変化に大きな影響を与えると考えられる。

(17)

9

Fig.1-10 CO2 Exhaust Emissions of Primary Energy & CO2 Concentration (1.11)

1.5 省エネルギー要請の高まり

1.3,1.4 項で述べたようなエネルギー消費問題と地球温暖化防止に向けた CO2 排出削減に対応 するため、各国は現在の CO2 排出量を 2020 年の目標を定めて削減の活動を監視していくことを合意 している。 この各国・各地域の CO2 排出量削減目標に合わせるように、地球温暖化と燃料エネルギー 消費の削減を目指し、図 1-11 に示すように各国・各地域で自動車の CO2 排出規制が制定される見 込みである。(1.12) この各国の CO2 排出規制は、各国で販売する車両の1[km]当たりの CO2 排 出量の企業平均値によって規制が行われるとともに、その他、規制に加えて各国ごとに CO2 の排出量に より車両取得や維持にかかる税金の負担を変えるなど、CO2 削減の目標に向けて世界的な課題として 動きが活発化しているとともに、自動車産業の将来戦略に重大な影響を与えていると考えられる。

(18)

10

Fig.1-11 Vehicle CO2 Emissions & Future Regulatory Requirement in Global

(1.12)

過去の米国において自動車の増加により自動車から排出される有害ガスの CO、HC、NO、PM

(粒子状物質)などが、人体の健康に影響を与え重大な環境汚染問題が発生した。 以降米国加州 は大気資源局を設立し排出ガス規制を強力に推進してきた。 表1-1に米国加州のGHG(温室効果 ガス)排出規制から検討された企業平均燃費(CAFÉ)規制提案を示す。(1.13) 米国でも地球温暖 化抑制のために、加州が中心となりGHG排出規制を提案し、燃費向上を促している。

Table 1-1 Target for Light-Duty Vehicle gCO2/mile Emission rates (1.13)

(19)

11

地球温暖化に大きな危機感を持つ欧州では、CO2 排出量を企業平均で 95[g/km]の規制目標 を表 1-2に示す有害排出ガス規制と合わせた達成が要求された。(1.14)

Table1-2 European Emission Standards for Passenger Cars (1.14)

図 1-12 に欧州における将来 CO2 企業平均規制の見通しを示す。(1.15) 図 1-13 に将来自動車 用パワーソース販売比率の予測を示す。(1.16) 図 1-12 に示す CO2 排出規制を達成するため、主要 自動車製造者たちは、燃費向上技術の投入を促進すると考えられる。 また、欧州の環境対策に追従 する姿勢を示す中国に代表される新興国でも、今後各国で燃費規制が強化されると考えられるので、

明らかに自動車製造業者は販売車両の動力パワートレインの電動化を進めると予測される。 その一方 でその電動化は、エネルギー供給のインフラ準備に時間を要する課題があるので、急にすべてが BEV(B attery Electric Vehicle)化は不可能である。 そのために図 1-13 の予測が示すように、2035 年 時点でも約 80 %以上の販売される自動車は、電動化と組み合わされながらエンジンを活用する見込 みと推定されている。(1.16) この見地からも全体的なエネルギー枯渇対策や地球温暖化への対応として は、エンジンの熱効率向上による CO2 排出量の削減を推進しないわけにはいかない。

(20)

12

Fig.1-12 Future European CO2 Requirement Prediction (1.15)

Fig.1-13 Automotive Powertrain Sales Outlook in Global Market (1.16)

(21)

13

1.6 ガソリンエンジン技術

ガソリンエンジンはその性能を改善するために多くの技術開発が行われてきた。 図 1-14 に技術開発の 領域別技術進化を示す。

Fig.1-14 Gasoline Engine Technology Development History

エンジンはエネルギー変換装置であるが、その変換過程において様々な損失をともない効率低下するた め、正味として取り出せる動力はガソリンエンジンの場合約38%程度にとどまっていた(2011 年資料よ

り)。(1.18) 燃料の供給についてその進化を振り返ると、キャブレターによる燃料供給の精度により排出ガ

ス規制を満たすとこが難しくなり、1サイクルごとに各シリンダに要求される燃料を正確に供給するために SPFI( Single Point Fuel Injection )や, MPFI(Multi Point Fuel Injection )の燃料噴射装置 へ進化した。 さらに燃焼の制御精度要求が高くなったことから噴射時期と供給噴霧の組み合わせにより 多彩な混合気形成ができる GDI(Gasoline Direct Injection)へとその燃料供給システムは進化 を遂げた。 燃焼混合比も、従来の出力混合比からより熱効率を重視した希薄混合比で運転できるよ うに、要求が変化してきている。 熱効率改善の要求や排出ガス規制への対応のために進化してきた技 術ではあるが、希薄燃焼ガソリンエンジンでも高出力と省燃費を両立するために過給機と組み合わせ使 用される事例が増加した。 図 1-15 にガソリンエンジンのエネルギーバランスを例に示す。(1.17)

(22)

14

Fig.1-15 Energy Balance in An Engine (1.17)

Fig.1-16 The Losses of Engine and Technical Break throughs (1.18) Source: Automotive Technology 2011.01 (Vol.65)

(23)

15

図 1-15 に示すように、熱エネルギーの多くは全負荷においてでも、排気ロス、冷却ロス、メカニカル

(フリクション)ロスとして消費されてしまう。(1.17) 加えて実用走行中には部分負荷も多く含まれ、スロッ トルを絞ることによるポンピングロスが発生する。 部分負荷頻度の大きい一般の自動車においては、自 動車の消費エネルギーの削減、すなわち燃費の向上の目的でポンピングロスを低減するために、エンジン のダウンサイジング化や希薄燃焼あるいは大量 EGR(排気再循環)による改善策が多く研究され開 発された。 燃費向上の目的で研究が進んだ希薄燃焼あるいは大量 EGR 混合状態における燃焼は、

通常の燃焼と比べ、燃焼が緩慢になる傾向があり、燃焼の改善を行わなければ失火ロスが増大してしま う問題があった。 その課題解決に向けた研究の結果燃料噴射装置は、従来の MPI**(ポート燃料 噴射)方式から GDI***(筒内直接燃料噴射)方式 に進化し燃焼を要求に合わせて制御できるように なった。

:Exhaust Gas Recirculation

**: Multi Point Injection

***: Gasoline Direct Injection

図 1-16 にガソリンエンジンの熱効率収支と熱効率改善の技術を示す。(1.18) ガソリンエンジンはその エネルギーの多くを排気ロス・冷却ロス・摩擦ロス・ポンプロスの熱損失により活かすことができないでいる。

一般にオットーサイクルエンジンの熱効率

𝜂 𝑡ℎ

は式(1)で表される。

𝜂 𝑡ℎ =1-(1/CR)

κ-1

(1)

式(1)が示す通り、オットーサイクルの熱効率向上には CR(圧縮比)を高く、かつ κ(比熱比)

を上げることが有効である。 圧縮比を上げるには耐ノック性の改善が求められ、燃焼の急速化と噴射に よる気化潜熱による筒内冷却などが従来からノッキング性能改善に効果があると報告されている。(1.6) ま たκ(比熱比)を上げるには、希薄燃焼(大量 EGR 含む)により作動ガスの κ を空気に近づけるこ とが求められる。 耐ノック性能向上と希薄燃焼の安定の両者に有効である燃焼期間の短縮のためには、

強い乱れと適切な混合気形成など、燃焼を緻密に制御することが要求されるので、制御自由度の高い 筒内直噴技術が活用されている。 筒内乱れの強化は、伝熱特性の変化により壁面への熱損失を増 加させるが、燃焼の急速化を活用した希薄燃焼による熱効率改善がその損失増加を上回るため、筒内 ガス流動と混合気の形成による燃焼改善の研究に各研究機関とも取り組んでいる。 冷却損失ならび に摩擦損失の低減には、摩擦を減少させるための接触面圧低減と潤滑性能の向上が求められ、ダウン サイジング+過給による損失低減効果も研究が進められている。 一般の乗用車用エンジンでは部分負 荷時の吸気絞りによるポンプ損失改善が求められ、メカニカルな空気の移動損失の低減や希薄燃焼に

(24)

16

よる吸気絞り損失低減、動弁駆動制御による吸入空気量の制御等がポンプ損失の低減が研究され、

実用化されている。 それに対し、レース用エンジンでは高負荷使用の頻度が高いために、吸気絞りによ るポンプ損失は大きくないが、吸気や排気がバルブを通過して空気の移動にともなうポンプ損失に着目し て改善が進められている。 さらに排気熱を電気エネルギーとして回収する技術や運転時や減速時に余 剰エネルギーを電気に変換して電池等に蓄積し、そのエネルギーによりモータを駆動して、高効率運転の 平準化が可能となるハイブリッド技術などで、熱効率向上が研究され新技術開発が進められている。 さ らには筒内直接噴射(以下直噴)装置に加えてポートへの水噴射を併用することで、ノッキング発生限 界を高め、熱効率を改善する燃焼制御技術に関しても活発な研究が行われている。

図 1-17 にガソリンエンジンにおける 2 種類の燃料噴射コンセプトについて示す。(1.19) ポート噴射に よる混合気の形成は噴射のポート壁面への付着による応答遅れが機械的に発生しやすい構造であるこ とに加え、圧縮行程中には噴射が不可能なことから燃焼タイミングの制御には自由度がない等の課題は あるものの、均質混合燃焼を行う目的であれば噴射弁の耐熱性やデポジットの生成等の品質課題も少 なく、昨今規制物質として関心が高い微粒子 PN(Particulate Number)の排出素質にも優れ、コ スト競争力も高く従来はこのポート噴射技術が主流を占めてきた。

Fig.1-17 Two Type of Fuel Injection Concepts for S.I. Engines (1.19) Source: Bosch

(25)

17

図 1-18 に典型的な筒内直噴ガソリンエンジンのシステム構成を示す。(1.20) 筒内直噴システムの場 合、高圧の燃料を筒内に直接噴射することで筒内の冷却と筒内容積効率を向上させ、吸気行程中の 噴射による均質混合気形成や、圧縮行程中に噴射による成層混合気形成することで希薄燃焼を可能 にする等、燃料噴射を要求に合わせ緻密に燃焼制御を行うことが可能になる。 この制御能力の高さと 筒内冷却する効果を考えると、燃焼の改善、高圧縮比化、そして希薄燃焼(大量 EGR*下での燃焼 含む)による排気損失と冷却損失低減を利用して熱効率改善が期待できる。 ゆえに過給機付きガソ リンエンジンの熱効率改善にはガソリン筒内直噴技術の活用が必須であると考えられる。 次項にてその ガソリン筒内直噴エンジン燃焼システムの開発の経緯と現状について、詳細に述べる。

* Exhaust Gas Recirculation

Fig.1-18 Typical GDI Engine System Layout (1.20)

(26)

18

1.7 ガソリン筒内直噴エンジン燃焼システム開発の経緯と現状

1.7.1 初期の直噴ガソリンエンジン

ガソリン筒内直噴エンジンは、第二次大戦中の航空機用 BD601 への採用以降 1954 年にメルセデ ス・ベンツの Formula1 W196 と市販車 300SLR に戦後初めて採用された。 図 1-19 に BENZ W196 Formula 1 のエンジン断面図 (1.21-1.22)、図 1-20 にメルセデス・ベンツ 300SLR のエンジン 写真を示す。(1.23)

Fig.1-19 BENZ W196 Desmo Formula 1 Engine Direct Injection (1.22)

(27)

19

Fig. 1-20 Engine Picture in Benz 300 SLR (1.23)

ガソリンエンジン用として歴史的に認識されているガソリン直噴システムは、第二次世界大戦下での直 噴式ガソリンエンジンの開発と採用はドイツに気化器技術がないことへの対応策として Diesel 用噴射ポ ンプを活用したもので戦時用航空機エンジンに用いるために開発された。 その後自動車用としてメルセ デス・ベンツが競技用車両の高性能化の目的で、同じく列型の噴射ポンプから各気筒の噴射弁に供給 するようなシステムで開発され、出力性能優先型の燃焼コンセプトであった。(1.20) 図 1-21 に Texaco TCCS エンジン(1.24)、 図 1-22 に Ford PROCO エンジン(1.25)の構造図を示す。

上記メルセデス・ベンツによる出力重視型直噴ガソリン燃焼とは違う目的の燃焼研究の過程で多くの直 噴システムを用いた燃焼システムが提案されたが、有名な Texaco の TCCS や Ford の PROCO の各 燃焼システムにおいても成層燃焼は可能となったものの、混合気の形成や燃焼のためのガス流動や燃焼 室形状による損失が大きかったため、燃費率で当時の通常のポート噴射型ガソリンエンジンよりも勝ること ができなかった結果が報告されている。

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Fig.1-21 Texaco TCCS Engine Combustion Concept (1.24) Source: Emission Control of Engine Systems (1974) US EPA

Fig.1-22 Ford PROCO Engine Combustion Concept (1.25) Source: Emission Control of Engine Systems (1974) US EPA

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Texaco TCCS エンジンの燃焼システムは、燃料を燃焼室キャビティの接線方向に噴射し、燃焼室 内に形成する渦の影響を用いて、点火栓近傍に可燃混合気を形成する考え方で、Diesel 用高圧噴 射装置を用い 2MPa の圧力を用いていた。(1.24) また、Ford PROCO エンジンの燃焼システムは、ピ ストン燃焼室内に強い渦を形成し、可燃混合気濃度を維持しているところに、2 つの点火プラグにより点 火して燃焼期間を短縮する考え方であった。(1.25) これらの燃焼システムはピストン内のキャビティに向け て噴射された燃料の直接の衝突により混合気を形成し成層燃焼させるものであるが、当時の混合気形 成技術や点火部品の能力を考えると結果的に燃費率の改善を見いだせず出力が低下したのも現在の 見地からは当然のことであったと思われる。

その後長い年月を経て、1996 年には ウォールガイド式による成層燃焼システムが次々と発表された。

この 1996 年以降に発表される筒内直噴ガソリンエンジンシステムにおいて成層混合気を形成する方 式は、上記 ウォールガイド式に加え、エアガイド式、スプレーガイド式の三種類に分類されており、図 1-2 3 にその混合気形成差異の概念図を示し説明する。(1.26)

Fig.1-23 Three types of Direct Injection Mixture Formation (1.26) Source: Basic Concepts on GDI Systems (Springer Link)

ウォールガイド式は主にピストン冠面形状の特徴を活用し、筒内ガス流動と噴霧の特性を利用して点 火栓近傍に成層混合気を形成することが特徴で、平均当量比 0.37 程度の希薄混合比下でも点火 栓近傍を可燃混合比として燃焼可能とするもので、希薄燃焼により通常の排出ガス浄化装置である、

3元触媒が機能しないために、低い NOx(窒素酸化物)の発生が求められ大量 EGR や点火栓近 傍混合気の過濃化で燃焼速度を調整することにより NOの排出を抑制した。 さらに排出ガス後処理 装置としては、NO吸着・吸蔵触媒を用いるなどして吸蔵された NOを後処理する技術も用いて市販 化された。

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エアガイド式筒内直噴ガソリンエンジンは特徴的な吸気システムとピストン冠面により構成される気流を 利用して成層混合気を形成するものであり、ウォールガイド式のように噴霧が壁に直接衝突することを回 避しているのが特徴である。

スプレーガイド式はピストン冠面の形状を活用せず、気流からの影響を大きく受けにくい噴霧を活用す ることで運転条件にかかわらず、同じ噴霧パターンの維持により形成される点火栓近傍の成層混合気を 用いて燃焼させるシステムである。 スプレーガイド方式は、気流による混合を積極的に活用する方式で はないため、自らの噴霧で気化促進し混合気を形成する必要があり、高圧の噴射を用いることが特徴で あるため、均質混合と成層混合の相反する噴霧特性を同一の噴射弁で供給する難しさを伴う。

1.7.2 ウォールガイド式 筒内直噴システム事例

この近代の筒内直噴ガソリンエンジンの燃焼方式は、1996 年三菱自動車が開発したものを皮切りに 各社が独自の燃焼コンセプトを用いて市場に投入されたもので、第一世代ガソリン直噴エンジンと呼ばれ ウォールガイドによる成層混合気形成が特徴の燃焼システムを使用していた。 三菱自動車の燃焼シス テムは直立吸気ポートが形成する逆タンブル流のガス流動と特徴あるピストン冠面形状に向けて高圧ス ワール噴射弁を用いて、5MPa の吸気行程噴射では均質に近い混合気形成を、圧縮行程噴射では成 層混合気を形成し希薄燃焼を可能とした。(1.27-1.30)

Fig.1-24-1 Mitsubishi GDI Engine (1.30)

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Fig.1-24-2 Mitsubishi Tumble GDI Combustion System (1.30)

Fig.1-24-3 Mixture and Performance of Mitsubishi GDI Engine (1.30) Source: Mitsubishi Motor Corporation Official Website

三菱自動車の GDI(筒内ガソリン直噴)方式エンジンは、図 1-24-1 と図 1-24-2 に示すようにヘッド のカムシャフトよりも点火栓側を通過する特徴あるポートから生み出される逆タンブル流のガス流動と、電 磁駆動式高圧噴射弁からピストン頭頂部にあるキャビティに向けての噴射により、平均当量比 0.37 以 下の希薄燃焼を成功させたことが特徴である。 また、図 1-24-3 に示すように燃費を重視した圧縮行 程中噴射による成層燃焼領域と出力を重視した吸気行程中噴射による均質混合燃焼のふたつの領 域に分類され、実用上その境界領域でふたつの領域をつなぐ均質希薄燃焼も行っている。

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加えて図 1-24-3 にこの GDI 方式エンジンと通常のポート噴射 MPI(Multi Point Injection)方 式エンジンとの出力特性比較を示すが、全域において約10%の出力特性が改善されたと発表資料に て紹介された。(1.27-1.30) この論文の中で筒内直噴による筒内冷却効果が耐ノック性の向上と充填 効率向上をもたらし、希薄燃焼による燃費の改善と出力特性の改善を両立したと報告されている。

ほぼ同時期にトヨタ自動車からもウォールガイド式筒内直噴エンジンが発表された。 トヨタ自動車の直 噴エンジンは D-4 エンジンと呼称され二種類の成層燃焼エンジンが開発された。 その燃焼コンセプトは 第一世代 D-4 と第二世代 D-4 とにそれぞれ分類されている。 図 1-25-1 にトヨタ自動車の第一世代 成層直噴エンジン(3S-FSE)の燃焼コンセプトを示す。(1.31) この第一世代成層直噴エンジンは燃 料を筒内へ直接噴射するシステムを用いてトヨタとして 1996 年初めての成層燃焼(第 1 世代)を実 現したと紹介されている。

特徴は高圧スワール燃料噴射弁、深皿キャビティピストン、スワールコントロールバルブ付独立ポートの 採用で、混合比(含む EGR ガス)が平均当量比 0.29 以下の希薄混合気での安定燃焼を達成した とされる。 排出ガスの浄化のために、電子制御 EGR バルブと NOx 吸蔵還元型三元触媒により、NOx の排出量を抑え CO2 の発生量も 30%以上低減したと報告されている。(1.31)

Fig.1-25-1 Toyota 1st Generation D4-S Engine and Combustion Concept (1.31)

図 1-25-2 にトヨタ自動車の第二世代成層直噴エンジンの燃焼コンセプト進化を示す。 この第二世 代成層直噴エンジンは、1999 年、従来の燃焼コンセプトに対して、排出ガスの低減と出力性能を確保 するため、気流生成機構の力を借りずに成層混合気コアを形成させる第 2 世代成層燃焼をコンセプトと して開発された。 また燃焼特性としては、「成層燃焼」「弱成層燃焼」「均質燃焼」と運転状態に応じた 燃焼を使い分け、低燃費と加速性能をした両立させた。 加えて、スリットノズルによる燃料噴射(ファン スプレー)や点火系の強化により成層燃焼領域を拡大した。

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Fig.1-25-2 Toyota 2nd Generation D4-S Combustion change (1.31)

図 1-25-3 にトヨタ自動車のストイキオメトリ燃焼直噴エンジンの燃焼コンセプトを示す。 このエンジン は、2003 年以降成層燃焼からコンセプトを均質燃焼に変更し、トヨタで初めてのストイキ燃焼直噴エン ジン 1AZ-FSE に投入した。 独立タンブルポートの片側にスワールコントロールバルブを採用し、吸気管 有効径を切り替える可変吸気システムによりガス流動を発生させ燃料の混合を促進し(低温、低回転 高負荷時)、スリットノズル型のインジェクターによる扇型噴霧と浅皿燃焼室の採用で微粒化された燃料 が、タンブル流により均質混合気を生成し燃焼させたと報告されている。(1.32)

Fig.1-25-3 Toyota Stoichiometry D4 Engine and Combustion Concept (1.32)

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図 1-25-4 にトヨタ自動車がストイキオメトリ燃焼コンセプトを改良した D4-S エンジンの燃焼コンセプ トを示す。 3.5L V 型 6 気筒の 2GR-FSE エンジンに搭載し 2005 年に発表された。 2GR-FSE は、排出ガス規制への対応として、直噴噴射弁とポート噴射弁を組み合わせて採用し、混合気の形成 状態を要求に合わせ緻密に制御可能としたことが特徴であり、この燃焼コンセプトを初め、低フリクション 化技術としてピストンリング低張力化、高圧縮比化のためにシリンダヘッド冷却強化等の新技術が投入さ れ大幅な燃費向上と出力性能を両立させた。(1.32)

Fig.1-25-4 Toyota Stoichiometry D4-S Engine Concept (1.31-1.32)

三菱自動車やトヨタ自動車のウォールガイド式成層燃焼直噴ガソリンエンジンが発表された時期とほぼ 同じ時期に日産自動車もウォールガイド式成層燃焼直噴ガソリンエンジンを発表した。 図 1-26-1,1- 26-2 に日産自動車の V6 VQ30DD エンジンシステム構成を示す。(1.33-1.35) 独立のタンブル強化型 ポートの片側遮断型スワールコントロールバルブにて筒内ガス流動を確保し、Casting Net(投網)型 高圧電磁駆動弁から筒内の浅皿型ピストンキャビティに向けて圧縮行程中に燃料を噴射し点火栓近傍 に成層化混合気を形成、筒内平均当量比 0.37 の EGR ガスを含んだ希薄混合気による NExT(Ni ssan Exquisitely Tuned)燃焼を可能とした。 図 1-26-3 に圧縮行程中噴射による成層燃焼と、

タンブル流を用いて吸気行程中噴射による均質燃焼を行うシミュレーション解析結果の一部を示す。 な お、このエンジンから日産自動車は成層燃焼、均質希薄燃焼、均質燃焼を切り替時の運転性確保の 目的で ETCV(電子制御吸気絞り弁)を NTD(Nissan Torque Demand)制御を導入し運転性 の向上を果たした。(1.33-1.35)

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Fig.1-26-1 Nissan Neo Di Combustion Concept (1.33-1.35)

Fig.1-26-2 Nissan Di NExTCombustion Structure (1.33-1.35)

:Nissan Exquisitely Tuned

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Fig.1-26-3 Nissan NExT Combustion Simulation (1.33-1.35)

1.7.3 エアガイド式筒内直噴システム事例

エアガイド式筒内直噴ガソリンエンジンでは特徴的な吸気システムとピストン冠面により構成される気流 を利用して成層混合気を形成するものであり、ウォールガイド式のように噴霧が壁に直接衝突することを 回避しているので、理論的には排気中ガス中の HC(未燃分炭化水素)を削減できる大きな長所を持

つ。(1.36) この直噴システムは、2000 年 VW Lupo 1.4L 用として開発し市販化以降 AUDI/VW グ

ループの主要なガソリンエンジンすべてに採用されているもので2リットル 直列 4 気筒のエンジンの例では PFI(ポート燃料噴射)仕様に対し、トルクと出力が向上するとともに、燃料消費率も15[%]改善さ れたと報告されている。

従来のウォールガイド式ではガス流動形成とピストン冠面形状が高出力化の妨げとなっていた。 それに 対し本直噴システムはルマン 24 時間耐久レースで AUDI R8 車に採用するために開発された基本シ ステムで、タンブル流れを積極的に活用しながら高負荷高回転における出力と燃費向上を考慮したもの で、タンブル流制御弁から作り出されるタンブル流れとマルチホール型筒内直噴弁の組み合わせにより構 成されることが特徴であり、ウォールガイド式の特徴であるピストンキャビティ形状に大きく頼ることで発生す る微粒子 PM(Particulate Matter)等の課題に対処しながら成層燃焼による部分負荷燃費の向 上と出力向上を両立可能とした。(1.36-1.37) 図 1-27-1 に AUDI 筒内直噴方式エンジンの成層希薄 燃焼と均質燃焼の各燃焼の差異を示す。(1.37) また、図 1-27-2 に均質燃焼時の混合気形成のイ メージ図を示す。(1.37) 均質混合に効果があると報告されているマルチホール直噴弁に加えて、高負荷

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高回転時には吸気抵抗の少ないポートのガス流動を活用し良好な混合気を形成できたために、出力向 上が得られ、燃費も含めた競争となったルマン 24 時間耐久レースにて優勝したと報告されている。 この 時期から筒内直噴方式ガソリンエンジンは、過給機と組み合わされることも増えダウンサイジング化にも大 きな影響を与えた。

Fig.1-27-1 AUDI 2.0 FSI Engine Combustion Mode Comparison (1.37)

Fig.1-27-2 AUDI FSI Homogeneous Operation with Multi Hole Injector (1.37)

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1.7.4 スプレーガイド式筒内直噴システム事例

スプレーガイド式はピストン冠面の形状を活用せず、気流からの影響を大きく受けない噴霧を活用する ことで運転条件にかかわらず、同じ噴霧パターンにより形成される点火栓近傍の成層混合気を用いて燃 焼させるシステムであり、ガソリンエンジン用直噴システムとしては最新鋭のシステムと考えられる。

Renault 社 IDE 燃焼、メルセデス・ベンツ社、FORD 社、BMW 社のガソリン筒内直噴方式エンジン がスプレーガイド方式を採用した。 これはスプレーガイド方式が噴霧の燃焼室への干渉を少なくできるこ とで PM(Particulate Matter)質量や PN(Particulate Number)で規制される微粒子の排出量 低減に有利なためである。 しかしながらこの噴射システムは、噴霧そのものの進行により混合気を形成し 点火栓で点火する構造であるために、噴射してから点火するまでの期間が短い特性から高い燃料の微 粒化と、背圧が一定でない筒内条件でかつガス流動が残存する条件下で噴霧の分散と到達距離の安 定化が噴霧に要求される。 このことからスプレーガイド式で採用される燃料圧力は高く(一般に 20MPa 以上)、この燃料圧力下でも微小流量制御を行うため、ホールタイプ噴射弁やピエゾアウトワー ド噴射弁が使われている。 BMW 社の直噴ガソリンエンジンを図 1-28 に示す。 また、図 1-29-1 から 図 1-29-3 にメルセデス・ベンツ社の Blue Direct 希薄燃焼エンジンを示し紹介する。

Fig.1-28 BMW Di Gasoline Engine (1.38) Source: MTZ

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図 1-28 に示す 4 気筒、6 気筒用で開発された BMW スプレーガイド式直噴ガソリンエンジンはピエゾ アウトワード式噴射弁を用い、本来スプレーガイド式が持つ成層燃焼時の安定燃焼領域が狭くなる欠点 を補い 2 回あるいは 3 回の噴射に分割して混合気を形成する方法が特徴であり、圧縮行程中の噴射 による混合気形成柔軟性を高めた。(1.38)

BMW にて採用されたスプレーガイド式直噴エンジンシステム市販化と同時期にメルセデス・ベンツ社の 希薄燃焼エンジンにも類似のシステムが採用された。 ピエゾアウトワード型高応答、高分解能型噴射 弁は点火栓近傍の燃焼室中央に配置され、従来マルチホールにより筒内に分散させて均質混合を生 成したものに対し、貫徹力の弱い高圧噴射により混合に時間差を与えて筒内に分散させることと、初期 燃焼の安定性を確保するために点火直前の 2 回の噴射により成層混合気の形成によって、超希薄燃 焼を実現したことが特徴である。(1.40) この燃料供給方式は、特に PM 削減の重要な方策として採用す る例が多くなった。

Fig1-29-1 Mercedes Benz Blue Direct Engine Picture (1.40)

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Fig.1-29-2 Mercedes Benz Blue Direct Mixture & Injection Operations (1.40)

Fig.1-29-3 Mercedes Benz Blue Direct Piezo Injector (1.40)

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スプレーガイド式直噴エンジンのさらなる進化として期待が持たれる、水噴射機能付きスプレーガイド式 直噴システムが研究されている。 BMW 他のメーカーでは、このスプレーガイド式のガソリン直噴装置にさ らに高負荷時ノッキング発生を防止するために、ポートから水を噴射して燃焼温度の制御によってノッキン グ発生を防止し、圧縮比をさらに上げて熱効率向上をさせるシステムがすでに報告されている、 今後の Euro6排出ガス規制と CO2 規制の両者を満足するシステムの候補として、研究が進んでいる。 図 1- 30-1、図 1-30-2 に水噴射も含めた燃焼概念図を示す。

Fig.1-30-1 Spray Guide Type Gasoline Di System + Water Injection Source: Bosch

Fig.1-30-2 BMW M4 DI Water Injection Engine Source: General News Mar.05 2018 Posted Lewis Kingston

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1.7.5 混合比率と排出ガスの関係

NOx、HC、CO の三種類の排出ガスと混合気濃度との関係を示す図 1-31 では、適切な 希薄燃 焼を行うことにより、NOx は増加するが、CO、HC は大幅に減少することになる。 また、前述したように、

直噴方式希薄燃焼エンジンは燃料消費率と出力を向上することができる。 言い換えれば、直噴システ ムにより排気性能、経済性能、動力性能を向上する可能性がある。 しかし、混合気濃度が小さくなる とともに、点火も難しくなる。 希薄混合気の濃度が燃焼限界 を超えると、高エネルギー点火装置でも 点火することができなくなる。 そのため点火装置は希薄燃焼を可能にする強いガス流動と乱れの中でも 確実な点火が可能となる能力が必要であるが、 成層燃焼は希薄燃焼を実現する有効な方法だと考え られる。 最近の動向では点火栓の近傍に点火しやすい濃混合気を形成し、その他の領域に希薄混合 気を形成する方法が活用されている。 このとき、筒内全体として混合気は希薄混合気とすることが可能 でガソリン筒内直噴エンジンは、精密な燃料噴霧、特定な筒内気流運動と燃焼室形状を利用し、エン ジンの性能を向上する成層混合気が形成できる。 NOx については吸蔵型触媒を活用した後処理や 排気ガス再循環による発生の抑制を用いて処理が検討されている。

Fig.1-31 Exhaust Emissions characteristics vs Mixture Ratio Source: Toyota Motor Sales Literature

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1.8 レース用エンジン規則と競争の変化

モータースポーツ競技は参加する企業の技術力向上や企業イメージの向上、加えて市販される商品 である自動車のマーケティングの意味合いが強い。 その結果 F.I.A(国際自動車連盟)が司るレース 競技規則も社会情勢と企業の進むべき道を考慮したものが制定される。 第一章の前半に述べた自動 車や内燃機関を取り巻く社会情勢と将来技術の要請からもわかるように、自動車レース競技規則を取り 囲む環境も大きく変化した。 従来は出力性能だけを重視して競争が行われていたために、その競技規 則は出力性能を吸入する空気量にて制限する方式がとられ、エンジン排気量の制限や、吸入空気量制 限用リストリクターの採用が主であった。 一方、昨今のエネルギー危機や地球温暖化という社会的問題 提起を受け、自動車レース競技規則も燃料消費の最大流量やピットインごとの給油量制限、サーキット 周回ごとの使用燃料量あるいはエネルギー量の制限を行う方法に変化してきた。 図 1-32-1 にレース 用エンジン出力制限方式の変化を示す。 図 1-32-1 に示すように、従来空気流量制限による出力規 制であるため、熱効率は悪化しても過濃混合気により出力を最大化する開発が行われてきた。 それに 対し、燃料流量制限方式を採用した新しい競技規則対応には、空気量を増やして規定される燃料流 量で最大の熱効率による出力の最大化を求めて、希薄燃焼を用いるようになった。

Fig.1-32-1 Change of Racing Engine Power restriction

Source: Nismo Presentation at Internal Combustion Engine Symposium Dec 2017

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表 1-3-1 に 2016 年の世界耐久選手権シリーズでのルマン 24 時間耐久レースのエネルギー消費規 制を示す。 このようにエンジン仕様は排気量、過給機の有無、ガソリンエンジンかディーゼルエンジンかな ど、幾多にわたる設計条件で自由度が高いが、瞬間最大燃料消費流量、サーキット周回当たりの燃料 エネルギー使用量、ハイブリッドによるエネルギー蓄積と放出量について細かく規制されている。 この規則 により各競技参加車両はエンジン熱効率向上を果たすべく、種々の内燃機関仕様を選定するに至った。

なお、2018 年においては、ハイブリッド搭載車両がトヨタ社1社だけになったために、LMP1(ルマンプロ トタイプ車両カテゴリー1)車両の規則は従来の包括的な熱効率競争を求めた 2016 年の規制に対 し、細かな制約が増加した形となったが、本研究の中では説明を省略する。

Table 1-3-1 Energy Consumption Requirement in WEC LM24H 2016 LMP1 Class Source: ACO/FIA 2016 LM24H

世界耐久選手権の走行中の燃料流量のモニターにより、規制値内運航されているか確認される方式 に対し、日本における Super GT500 シリーズ選手権においては、機械式燃料流量制限装置が装着さ れている。 低回転域はカムシャフトによる高圧ポンプの吐出量制限とし、高回転側は高圧ポンプに充填 される低圧側燃料流量を機械的流量制限装置により規制するものであり、レース中はその流量をモニタ ーすることは許されない規制方式である。 ただし、このレースシリーズにおいては、エンジンの仕様もある程 度制限され、近似的な仕様の中での熱効率競争が行われている形をとっており、4 気筒 2 リットル過給 機付き筒内直噴ガソリンエンジンで競争が行われている。 図 1-32-2 に日本の Super GT 500 シリー ズレース選手権における燃料流量制限装置を、表 1-3-2 に同 GT500 シリーズ燃料流量規制の各シ ーズン比較を示す。

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Table 1-3-2 Japan Super GT 500 Champion Series Fuel Restriction Source: GTA Super GT Sporting Regulation Data

Fig.1-32-2 Japan Super GT500 Racing Engine Fuel Flow Restrictor Source: GT Association NRE Engine

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1.9 レース用筒内直噴過給機付きガソリンエンジンのシステムとその構成

本項ではレース用筒内直噴過給機付きエンジンのシステム構成とその現状の性能について述べる。

例として図 1-33-1 は NISSAN/NISMO 製 WEC(世界耐久選手権)シリーズ用 V 型 6 気筒エ ンジンの外観を示す。 競技規則の制約は先の項に述べた燃料並びにエネルギー使用量制限はあるも のの、気筒配列や排気量等に制約はない状態の競技規則に対応するように設計されている。 基本的 に熱効率が高く同一燃料消費量での出力性能が高いことが性能への要求である。

本研究で用いている燃焼研究用直列3気筒エンジンは、上記世界耐久選手権や日本におけるスー パーGT500選手権でのエンジン性能向上のために、準備されたものである。

このエンジンを参考にシステムの構成を解説すると、各左右バンクにターボ型過給機が装着され、希薄 燃焼運転のために必要な十分な吸入空気を中間冷却器により冷却し供給している。 燃料の供給は 動弁駆動用カムシャフトにより2個の高圧ポンプを駆動し、約2[MPa]の 圧力で燃料をコモンレールに 蓄圧し電子制御式直噴噴射弁を制御し、高負荷の希薄燃焼運転を可能にしている。 非常に強いガ ス流動による乱れを希薄燃焼に活用している関係で点火エネルギーの要求は非常に高い。

Fig.1-33-1 NISSN/NISMO VRX30A-Evo Engine

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図 1-33-2 には、典型的な筒内直噴過給機付きガソリンエンジンの燃料供給系統システム図を示す。

このカムシャフト駆動のプランジャ式高圧燃料ポンプへの供給燃料量をメカニカルに制限するリストリクタ ー方式とリアルタイムで燃料流量計測をモニターして制限内で運転制御を行う方式がある。 図 1-33-3 にターボ過給機と中間冷却器を装備したシステム図を示す。 この両システムが組み合わされて、レース 用筒内直噴過給機付きガソリンエンジンは設計されており、規定内燃料流量でいかに出力を発生させる かでエンジンの競争は行われている。

Fig.1-33-2 Typical Racing Gasoline Direct Injection Fuel system Diagram Source: Ford 3.5L Eco-Boost Fuel System

Fig.1-33-3 Typical Turbo Charged Gasoline Engine System Diagram

Source: Turbo3geclipse

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1.10 レース用筒内直噴過給機付きガソリンエンジン開発前性能と目標設定

本項では、本研究における供試エンジンの初期性能計測データを提示し、その燃焼改善目標を提示 する。 表 1-4 にテストに用いるエンジンの緒元を示す。 開発に用いるエンジンは 3 気筒で行程容積は 0.5L/気筒の筒内直噴過給機付きガソリンエンジンである。 初期性能は従来のレースエンジンで通常 用いられていた、出力混合比である当量比約 1.2 の条件で計測したものであり、試験においては RON100、低位発熱量 42.4[MJ/kg]、理論混合比は A/F 14.4 の無鉛ハイオクガソリンを用いた。

Table 1-4 Test Engine Spec

Fig.1-34 Test Engine Initial WOT Performance Data

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図 1-34 の初期性能は、最高出力点 8000rpm において BMEP(正味平均有効圧力)は 2314 [kPa]で、BSFC(正味燃料消費率)は 268.3[g/kWh]、ηthb(正味熱効率)は 31.6[%]であった。

この状態で 71[kg/h]の規制燃料消費量で 337[kw]の出力を発生するように熱効率の改善を行う と、その目標設定は 8000[rpm]の条件下で正味熱効率 39.4[%]以上、BMEP 3313[kPa]以 上、BSFC 215[g/kWh]以下の性能が要求される。 レース用エンジンの開発に当たっては、レースカ テゴリにより規定ガソリンの質が異なり、例えば世界耐久選手権用ガソリンでは、RON106 であることから、

通常の RON100 ガソリンと比較し、使用できる圧縮比と当量比の差から約 2.5[%]熱効率の差が発 生するデータがある。 しかしながら、本研究においては取り掛かりとして上記目標達成に向けて、RON1 00 燃料で燃焼改善をすすめることとした。

オットーサイクルを用いたガソリンエンジンにおいてその理論熱効率は、第一章1.8項にも示したが、

圧縮比を高く、比熱比を大きくすなわち空気サイクルに近くすることである。 図 1-35 に理論熱効率と圧 縮比、比熱比の関係を示す。 このエンジン熱効率の改善要求に対応する方策としては、ノッキング発生 を抑制して圧縮比を向上する事と、希薄混合気で燃焼を安定させることであるが、両者ともに燃焼を急 速化させる必要がある。 このオットーサイクルエンジンで、熱効率向上のための熱損失改善領域について 整理した結果を図 1-36 に示す。 そして、さらにレース用直噴過給機付きガソリンエンジンにおける、熱 効率を改善する燃焼改善要素、の関係とその研究対象の項目について、図 1-37 にそのアイテム一覧 を示し整理した。

Fig. 1-35 Theoretical thermal efficiency vs Compression ratio

& Specific Heat ratio

Source: Internal Combustion Engine Sankaido

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Fig. 1-36 Thermal Efficiency Loss Improvement Structure

Fig.1-37 Thermal Efficiency Improvement Items

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1.11 本文の目的と内容構成

本研究では燃料消費量規制下でのレース用ガソリンエンジンの出力性能向上の目的で、ガソリン筒 内直噴過給機付きエンジンの熱効率向上のために、燃焼改善と安定性確保できるガス流動と混合気 形成および燃焼の解明を数値シミュレーションと実機エンジンでの検証により行う。 本研究におけるシミュ レーションは、市販されているソフトウェアの STAR CD/es-ICE を基本として用いている。

本論文の目的は、レース用高負荷運転時における希薄燃焼での熱効率向上を広範にわたる燃焼要 素をシミュレーションにより仮説だてを行い、その要素技術の関連性を実機エンジンで検証を行い、ガス流 動と混合気形成の適正化の可能性を確認することと、設計段階で部品仕様が燃焼とその結果得られる 熱効率、すなわちレース用エンジンにとっては出力の向上を予測する手法確立することである。 このよう な目的から、本論文は以下のような構成としている。

研究の第一段階として、ガス流動、混合気形成、燃焼の各シミュレーションモデルの精度と実機との整 合性確認により数値流体解析(CFD)活用の妥当性を検証しまとめた。

第二段階として、ガス流動の燃焼と混合気形成への影響を調査し、希薄燃焼が可能なガス流動特 性を明確化し、その構成についてまとめた。

第三段階として、混合気が燃焼に与える影響を解析し混合気の形成過程を仮想可視化して燃焼を 促進する混合気状態とその制御因子から混合気形成方法を示した。

第四段階として、燃焼シミュレーションと実機の整合性確認を行い熱効率向上による出力向上を検 証するとともにレース用直噴過給機付きガソリンエンジンの希薄燃焼設計手法についてまとめた。

第五段階として、本研究を総括し結論をまとめた。

(52)

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参考文献

1.1 Euromonitor International from International Civil Aviation Authority/national statistics 1980-2014

1.2 Available from http://www.soumu.go.jp/. 2018

1.3 Available from http://www.jccca.org/chart/. 2018 EDMC/ Energy Economics Statistics 2013

1.4 Available from http://www.bp.com. BP Energy Outlook 2017 Data Pac 1.5 Available from IEA Report

1.6 村瀬英一ほか、ガソリンエンジン技術の現状と今後の動向 日本自動車技術会論文集 63(1).2009

1.7 Available from http://www.data.jma.go.jp. 2018fro 1.8 Available from http://jp.wikipedia.org/wiki/.2009 1.9 Available from https://e-arancia.net/save-the-earth/.

1.10 Available from

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/chishiki_ondanka/p06.html.IPCC Rt5 Report

1.11 Available from https://www.jnfl.co.jp/recruit/energy/warming.Nuclear Power Energy 2010

1.12 Available from http://www.pecj.or.jp/japanese/jpecnews/.2014 1.13 Available from http://www.dieselnet.com/standards/.2009

1.14 Available from https://blogpuneet.wordpress.com/2013/09/25/emission- standards.

1.15 News Source https://www.globalfueleconomy.org News 11.10.2017

1.16 日本経済産業省 自動車産業戦略 2014

1.17 Available from http://www.mazda.com

1.18 自動車技術 2011.01 Vol.65

1.19 Gasoline Engine Management. R. Bosch /SAE

1.20 Preussner C, Dōring C, Fehler S, Kampmann S ” GDI: Interaction Between Mixture Preparation, Combustion System and Injector Performance.” SAE Paper 980498, (1998)

図 1-2に各地域別人口の推移予測を示す。 (1.2) 21世紀初頭には約61億人であった世界人 口が2050年には50年間で約1.5倍に増加し93 億人を突破すると予測されている。  特に 欧州、北米等の先進諸国では安定して著しい増加は見られない状況に対し、アフリカ、アジアオセアニア、 中南米諸国等の新興国では増加を続けると予測され、世界的には今後も人口の増加が続くものとみら れる。  この将来にむけた人口増加に合わせ経済も発展すると予測されるので、図 1-1 に示した新興国の経 済的発展にともなう移動の
図 1-9 に各温室効果ガスの年代別濃度の推移を示す。 (1.10) 産業革命以降各温暖化ガスの濃度 は上昇を続けていることがわかる。  この状況を考えると、産業革命以降化石エネルギーを活用して経済 活動の発展を推進してきたが、その経済活動や自動車の普及は温室効果を高めている一因であると思 われる。
Table 1-1 Target for Light- Duty  Vehicle gCO2/mile Emission rates  (1.13)
図 1-12 に欧州における将来 CO2 企業平均規制の見通しを示す。 (1.15) 図 1-13 に将来自動車 用パワーソース販売比率の予測を示す。 (1.16) 図 1-12 に示す CO2 排出規制を達成するため、主要 自動車製造者たちは、燃費向上技術の投入を促進すると考えられる。  また、欧州の環境対策に追従 する姿勢を示す中国に代表される新興国でも、今後各国で燃費規制が強化されると考えられるので、 明らかに自動車製造業者は販売車両の動力パワートレインの電動化を進めると予測される。  その一方 でそ
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