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噴射弁特性差による混合気形成と燃焼への影響

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 125-135)

第四章 高負荷希薄燃焼を可能とする混合気の形成とその制御

4.4 混合気形成シミュレーション結果と実機実験による比較

4.4.4 噴射弁特性差による混合気形成と燃焼への影響

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続いて、ガス流動から生成される筒内の乱れの状態についても CFD 解析を行い図 4-11-2 に示す。

図 4-11-3 に 20[°BTDC]における乱れ強さコンター図詳細を示す。 圧縮行程中の乱れの生成も 非常に類似のものであるが、6 穴仕様は中央部の下向きに噴射する噴霧を備えているため、点火栓近 傍の乱れ強さは 5 穴仕様に対し、1%ほど強い傾向を示した。 乱れ中心の Offset は、6 穴仕様でわ ずかに減少した。 これはアンチスラスト方向を排気側から吸気側への流れが強くなったわけではなく、圧 縮行程中噴霧による流動エネルギーが 5 穴仕様よりも強いことに起因して、変化したと考える。

Fig.4-11-2 Injector Spray Pattern Impact to CFD Turbulence Simulation

Fig.4-11-3 20[°BTDC] Turbulence of Injector Spray Form

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続いて筒内混合気形成の状況について CFD シミュレーションを行い図 4-11-4 に噴射弁噴霧特性の 差の混合気形成に与える影響を確認した。 参考に図 4-11-5 に噴射弁違いによる点火栓近傍の混 合気の当量比の推移を示す。 噴射弁の筒内中央部噴霧分散の比が高くなり圧縮行程後半の点火 栓近傍の混合気は大きく成層化した。 これだけ成層化すると、筒内平均当量比で 0.9 以下の希薄混 合気としなければ点火栓近傍が過濃となり、初期燃焼が遅くなることが懸念された。

Fig.4-11-4 Injector Spray Pattern impact to CFD Mixture Form Simulation

Fig.4-11-5 Equivalence Ratio Shift by Injector Spray Form Multi times Injection

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筒内平均当量比 0.95 時における 20[°BTDC]時点での亜成層化シフト率 X は、1.21 と解析された ので、筒内平均当量比 0.79 時の 20[°BTDC]の点火栓近傍当量比は、式(24)にて推定され、

推定点火栓近傍当量比

φ Plug = 亜成層シフト率𝑋 x予測用筒内平均当量比𝜑 𝐶𝑦𝑙.

𝐶𝐹𝐷筒内平均当量比 𝜑𝐵𝑎𝑠𝑒

(24)

0.96 と予測できる。 以上のような混合気特性を与えた時の燃焼への影響を実機確認に先駆け、燃焼 シミュレーションにて確認した。 図 4-11-6に 5 穴と 6 穴仕様の噴射弁で 2 回噴射により混合気を形 成した場合を CFD 解析により燃焼シミュレーションを行い、質量燃焼率の推移を示す。 6 穴仕様噴射 弁は 2 回噴射において点火時期における点火栓近傍当量比が濃くなり、初期燃焼期間が 5 穴仕様 噴射弁よりも短いことがわかる。 しかしながら、後期燃焼期間は 6 穴仕様噴射弁が長い期間かかってお り、混合気の状態が熱発生に影響すると考えられた。 この噴射弁仕様の違いを比較した場合、従来の 噴射弁よりも点火時期における点火栓近傍の当量比が大きくなる亜成層状態が強化されるので、ガス 流動による乱れの核の Offset は存在し吸気側を排気側よりも少しだけ早期に燃焼させる特性を維持し ているが、図 4-11-3 に示した、燃焼室排気側への混合気の偏在が認められ、結果濃い混合気による 従来の噴射弁と比較すると排気側燃焼室への燃焼の進行が早いことが観察されるがその燃焼期間の差 異は小さいものであった。 同じく図 4-11-7 には、上記 2 回噴射による混合気形成を前提とした場合 の噴霧形態の違いによる質量燃焼率推移の拡大図を示す。

Fig.4-11-6 Multi Times Injection Injector Spray Form Comparison

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Fig.4-11-7 Injector Spray Form Combustion CFD Analysis Mass Burned Rate & Remaining Gas Equivalence Ratio

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同じく噴射弁違いの燃焼について火炎面密度の進行状態についても CFD シミュレーションにより比較し 図 4-11-8に示す。 また図 4-11-9 にはその拡大図を示す。 筒内平均当量比0.79を想定し た火炎の進行は、圧縮行程中の第二噴射による成層化効果で混合気偏在が筒内の火炎伝播に影響 を与え、筒内の乱れ中心は点火栓中心から吸気弁側に Offset することにより吸気弁側の燃焼室への 火炎の展開を早期化するのと同時に、排気弁側燃焼室内に形成される濃い混合気の燃焼促進が釣り 合うことで、ノッキングの発生を抑制できると推定された。 ただし、図 4-11-9 の排気弁側の燃焼の進展 において 20[°ATDC]にて観察される火炎面の進展が遅れる排気弁下部 A のノッキング発生への影響 は確認が必要と考えられた。

Fig.4-11-8 Multi Times Injection Injector Spray Form Comparison Flame Density CFD Simulation

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Fig.4-11-9 Injector Spray Form Combustion CFD Analysis Flame Density Σ Progress

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この筒内平均当量比0.79 の希薄燃焼が実機での燃焼と熱効率に与える影響を全負荷の特性で機 関回転速度を 7000[rpm]から 8500[rpm]まで変化させ確認し図 4-11-10に示す。 圧縮行程 中の 2 回目噴射により点火栓近傍混合気は成層化するため、今回比較した噴射弁ではどちらも初期 燃焼期間は約 16[°CA]で燃焼期間も短く安定している。 詳細には 6 穴仕様の噴射弁によって混合 気の状態は 5 穴仕様よりも成層化するため、初期燃焼期間に有意差が発生すると想定されるがその差 は層流燃焼の当量比感度ほどの差は発生していない。 なお、亜成層シフト率は平均当量比 0.95 に おいては点火栓近傍が 1.21 シフトすると推定されるので、筒内平均当量比 0.79 の条件では、20°B TDC における点火栓近傍当量比が 0.96 になると推定され、主燃焼期間(MB10-90%)が 5 穴仕 様に対し全回転速度域で約 1[°CA]短縮した。 8000[rpm]を代表として効果をみると、IMEP、ISF C で 1.4[%]向上し、図示熱効率も 0.6[%]向上ししたため 44.7[%]に達した。 なお、全負荷の 8 000[rpm]においては、希薄燃焼による吸気の損失や機械損失等により、BMEP(正味平均有効圧 力)は IMEP(図示平均有効圧力)に対し、約 12[%]の損失が確認されており、正味熱効率 39.4 [%]であった。

Fig.4-11-10 Injector Spray Form on Multi Injection Mixture Equivalence Ratio φ=0.79 Constant

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参考に今回の燃焼改善による希薄燃焼状態での燃費率向上とノッキング余裕代、熱発生重心の変 化について実機 8000[rpm]全負荷条件での変化を図 4-11-11 に示す。 燃焼シミュレーションで懸 念されたノッキング発生についても、火炎伝播の排気弁下部の懸念された遅れは許容されるノッキング発 生にとどまったと考察できる。なお、正味燃費率は開発当初の出力当量比に対し 15.7[%]向上し、ノッ キング余裕代は 2.6[°CA]改善、熱発生の重心位置は 1.6[°CA]遅れる形となった。

Fig.4-11-11 Lean Combustion Knock Margin & BSFC

以上に噴射弁の特性変化が燃焼とエンジン性能に与える影響を本節にて述べた。 参考として異なる 噴射弁特性を用いたものではあるが、2 回目噴射の時期を変化させた場合の CFD シミュレーションによ る点火栓近傍当量比と亜成層化シフト率 X の推移を検討し図 4-12 と図 4-13 にそれぞれ示す。 点 火栓近傍当量比の筒内平均当量比に対する割合である、亜成層シフト率 X で比較した表 4-3 でわ かるように、2 回目噴射の時期を制御することにより、点火時期における点火栓近傍当量比を目標に制 御できることがわかる。

Table 4-3 Sub Stratified Shift Ratio X of Injector Form & 2nd Injection Timing

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Fig.4-12 Equivalence Ratio Plug of 2nd Injection timing *

*Inj. Off 60:Spark Ignition Timing+60[° BTDC] Injection End

Fig.4-13 Sub Stratified Shift Ratio of each 2nd Injection timing

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