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ウォールガイド式 筒内直噴システム事例

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 30-36)

1.7 ガソリン筒内直噴エンジン燃焼システム開発の経緯と現状

1.7.2 ウォールガイド式 筒内直噴システム事例

この近代の筒内直噴ガソリンエンジンの燃焼方式は、1996 年三菱自動車が開発したものを皮切りに 各社が独自の燃焼コンセプトを用いて市場に投入されたもので、第一世代ガソリン直噴エンジンと呼ばれ ウォールガイドによる成層混合気形成が特徴の燃焼システムを使用していた。 三菱自動車の燃焼シス テムは直立吸気ポートが形成する逆タンブル流のガス流動と特徴あるピストン冠面形状に向けて高圧ス ワール噴射弁を用いて、5MPa の吸気行程噴射では均質に近い混合気形成を、圧縮行程噴射では成 層混合気を形成し希薄燃焼を可能とした。(1.27-1.30)

Fig.1-24-1 Mitsubishi GDI Engine (1.30)

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Fig.1-24-2 Mitsubishi Tumble GDI Combustion System (1.30)

Fig.1-24-3 Mixture and Performance of Mitsubishi GDI Engine (1.30) Source: Mitsubishi Motor Corporation Official Website

三菱自動車の GDI(筒内ガソリン直噴)方式エンジンは、図 1-24-1 と図 1-24-2 に示すようにヘッド のカムシャフトよりも点火栓側を通過する特徴あるポートから生み出される逆タンブル流のガス流動と、電 磁駆動式高圧噴射弁からピストン頭頂部にあるキャビティに向けての噴射により、平均当量比 0.37 以 下の希薄燃焼を成功させたことが特徴である。 また、図 1-24-3 に示すように燃費を重視した圧縮行 程中噴射による成層燃焼領域と出力を重視した吸気行程中噴射による均質混合燃焼のふたつの領 域に分類され、実用上その境界領域でふたつの領域をつなぐ均質希薄燃焼も行っている。

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加えて図 1-24-3 にこの GDI 方式エンジンと通常のポート噴射 MPI(Multi Point Injection)方 式エンジンとの出力特性比較を示すが、全域において約10%の出力特性が改善されたと発表資料に て紹介された。(1.27-1.30) この論文の中で筒内直噴による筒内冷却効果が耐ノック性の向上と充填 効率向上をもたらし、希薄燃焼による燃費の改善と出力特性の改善を両立したと報告されている。

ほぼ同時期にトヨタ自動車からもウォールガイド式筒内直噴エンジンが発表された。 トヨタ自動車の直 噴エンジンは D-4 エンジンと呼称され二種類の成層燃焼エンジンが開発された。 その燃焼コンセプトは 第一世代 D-4 と第二世代 D-4 とにそれぞれ分類されている。 図 1-25-1 にトヨタ自動車の第一世代 成層直噴エンジン(3S-FSE)の燃焼コンセプトを示す。(1.31) この第一世代成層直噴エンジンは燃 料を筒内へ直接噴射するシステムを用いてトヨタとして 1996 年初めての成層燃焼(第 1 世代)を実 現したと紹介されている。

特徴は高圧スワール燃料噴射弁、深皿キャビティピストン、スワールコントロールバルブ付独立ポートの 採用で、混合比(含む EGR ガス)が平均当量比 0.29 以下の希薄混合気での安定燃焼を達成した とされる。 排出ガスの浄化のために、電子制御 EGR バルブと NOx 吸蔵還元型三元触媒により、NOx の排出量を抑え CO2 の発生量も 30%以上低減したと報告されている。(1.31)

Fig.1-25-1 Toyota 1st Generation D4-S Engine and Combustion Concept (1.31)

図 1-25-2 にトヨタ自動車の第二世代成層直噴エンジンの燃焼コンセプト進化を示す。 この第二世 代成層直噴エンジンは、1999 年、従来の燃焼コンセプトに対して、排出ガスの低減と出力性能を確保 するため、気流生成機構の力を借りずに成層混合気コアを形成させる第 2 世代成層燃焼をコンセプトと して開発された。 また燃焼特性としては、「成層燃焼」「弱成層燃焼」「均質燃焼」と運転状態に応じた 燃焼を使い分け、低燃費と加速性能をした両立させた。 加えて、スリットノズルによる燃料噴射(ファン スプレー)や点火系の強化により成層燃焼領域を拡大した。

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Fig.1-25-2 Toyota 2nd Generation D4-S Combustion change (1.31)

図 1-25-3 にトヨタ自動車のストイキオメトリ燃焼直噴エンジンの燃焼コンセプトを示す。 このエンジン は、2003 年以降成層燃焼からコンセプトを均質燃焼に変更し、トヨタで初めてのストイキ燃焼直噴エン ジン 1AZ-FSE に投入した。 独立タンブルポートの片側にスワールコントロールバルブを採用し、吸気管 有効径を切り替える可変吸気システムによりガス流動を発生させ燃料の混合を促進し(低温、低回転 高負荷時)、スリットノズル型のインジェクターによる扇型噴霧と浅皿燃焼室の採用で微粒化された燃料 が、タンブル流により均質混合気を生成し燃焼させたと報告されている。(1.32)

Fig.1-25-3 Toyota Stoichiometry D4 Engine and Combustion Concept (1.32)

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図 1-25-4 にトヨタ自動車がストイキオメトリ燃焼コンセプトを改良した D4-S エンジンの燃焼コンセプ トを示す。 3.5L V 型 6 気筒の 2GR-FSE エンジンに搭載し 2005 年に発表された。 2GR-FSE は、排出ガス規制への対応として、直噴噴射弁とポート噴射弁を組み合わせて採用し、混合気の形成 状態を要求に合わせ緻密に制御可能としたことが特徴であり、この燃焼コンセプトを初め、低フリクション 化技術としてピストンリング低張力化、高圧縮比化のためにシリンダヘッド冷却強化等の新技術が投入さ れ大幅な燃費向上と出力性能を両立させた。(1.32)

Fig.1-25-4 Toyota Stoichiometry D4-S Engine Concept (1.31-1.32)

三菱自動車やトヨタ自動車のウォールガイド式成層燃焼直噴ガソリンエンジンが発表された時期とほぼ 同じ時期に日産自動車もウォールガイド式成層燃焼直噴ガソリンエンジンを発表した。 図 1-26-1,1-26-2 に日産自動車の V6 VQ30DD エンジンシステム構成を示す。(1.33-1.35) 独立のタンブル強化型 ポートの片側遮断型スワールコントロールバルブにて筒内ガス流動を確保し、Casting Net(投網)型 高圧電磁駆動弁から筒内の浅皿型ピストンキャビティに向けて圧縮行程中に燃料を噴射し点火栓近傍 に成層化混合気を形成、筒内平均当量比 0.37 の EGR ガスを含んだ希薄混合気による NExT(Ni ssan Exquisitely Tuned)燃焼を可能とした。 図 1-26-3 に圧縮行程中噴射による成層燃焼と、

タンブル流を用いて吸気行程中噴射による均質燃焼を行うシミュレーション解析結果の一部を示す。 な お、このエンジンから日産自動車は成層燃焼、均質希薄燃焼、均質燃焼を切り替時の運転性確保の 目的で ETCV(電子制御吸気絞り弁)を NTD(Nissan Torque Demand)制御を導入し運転性 の向上を果たした。(1.33-1.35)

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Fig.1-26-1 Nissan Neo Di Combustion Concept (1.33-1.35)

Fig.1-26-2 Nissan Di NExTCombustion Structure (1.33-1.35)

:Nissan Exquisitely Tuned

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Fig.1-26-3 Nissan NExT Combustion Simulation (1.33-1.35)

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