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鈴木

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Academic year: 2021

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氏     名

すずき のぶひろ

鈴木 庸弘

学 位 の 種 類 博士(医学)

学 位 記 番 号 富医薬博甲第 124 号 学位授与年月日 平成 26 年 3 月 21 日

学位授与の要件 富山大学学位規則第 3 条第 3 項該当

教 育 部 名 富山大学大学院医学薬学教育部 医学領域 博士課程 生命・臨床医学専攻

学 位 論 文 題 目 Activated protease-activated receptor-2 up-regulates the sensitivity of transient receptor potential vanilloid 4 function in mouse esophagus

(PAR-2 による食道上皮 TRPV4 感受性の亢進-膵酵素逆流による GERD 症状-)

論 文 審 査 委 員

(主査) 教 授 嶋田 豊

(副査) 教 授 服部 裕一

(副査) 教 授 稲寺 秀邦

(副査) 教 授 木村 友厚

(指導教員) 教 授 杉山 敏郎

(2)

- 1 -

論 文 内 容 の 要 旨

[目的]

胃食道逆流症(GERD)は胃内容物の食道への逆流によって不快な症状が生じる疾患であ る。GERDの中でも非びらん性GERD(NERD)は酸分泌抑制薬の奏功率が50%と低く、そ の病態には膵十二指腸液の逆流の存在や伸展などの機械刺激に対する過敏性が報告されて いる。Transient receptor potential vanilloid 4 (TRPV4)は機械刺激によって活性化する陽 イオンチャンネルで、伸展刺激によって活性化し、Ca2+を細胞内へ流入させ、細胞からATP のエクソサイトーシスを引き起こすことが膀胱上皮細胞で報告されている。上皮下には ATP 受容体をもつ求心性神経が存在しており、ATP は機械刺激受容と神経伝達の仲介役と して働く。さらにG タンパク質共役型受容体Protease- activated receptor-2 (PAR-2)は膵 十二指腸液に含まれる膵酵素のトリプシンなどのプロテアーゼによって活性化し、TRPV4 のセリン残基をリン酸化させ、TRPV4 の感受性を亢進させることが神経細胞で報告されて いる。今回、我々は食道上皮細胞においてPAR-2 およびTRPV4 が発現していて、トリプ シンの逆流によりPAR-2 が活性化することでTRPV4 の感受性を亢進させるのではない かとの仮説を立て、これを検討した。

[方法]

6-8 週令の雄マウス(C57BL/6NCr SLC)(WT)およびTRPV4 ノックアウトマウス (TRPV4KO)の食道上皮細胞を初代培養した。

1.TRPV4 およびPAR-2 の発現をRT-PCR 法、免疫染色、ウエスタンブロットにて解析し た。

(3)

- 2 -

2.TRPV4 の機能評価としてCa2+の細胞内への流入量をFra-2 蛍光を用いたCa2+ imaging 法で計測した。また、細胞からのATP 放出量をluciferin- luciferase 反応を用いて測定し た。

3.PAR-2 活性化によるTRPV4 のセリン残基のリン酸化を免疫沈降法にて解析した。

[結果]

1.RT-PCR 法にてWT の食道上皮細胞にTRPV4 およびPAR-2 のmRNA の発現が認め られた。また、免疫染色およびウエスタンブロットにて同一細胞にTRPV4 およびPAR-2 の蛋白の発現が確認された。TRPV4KO の食道上皮細胞ではTRPV4 の蛋白発現は消失し ていたが、PAR-2 の発現は認められた。

2.シリコンチャンバーに培養したWTの食道上皮細胞を伸展するとTRPV4KO と比較して 有意にCa2+の流入量が増加した。また、WT では伸展することでATP の放出量が増加し た。

3.WT の食道上皮細胞では、PAR-2 活性化ペプチドまたはトリプシンを前処置した後に微 量のTRPV4 アゴニストを投与すると、同量のTRPV4 アゴニスト単独投与と比較して、

Ca2+の流入が有意に増加した。TRPV4KO ではPAR-2 活性化ペプチドを前処置した後に TRPV4 アゴニストを投与してもCa2+の流入の増加は認められなかった。

4.WT の食道上皮細胞では、PAR-2 活性化ペプチドまたはトリプシンを前処置した後に微 量のTRPV4 アゴニストを投与することより、同量のTRPV4 アゴニスト単独投与と比較 して、ATP の放出量が有意に増加することが確認された。

5.PAR-2 活性化ペプチドの投与によりTRPV4 のセリン残基のリン酸化が確認された。こ の反応はprotein kinase C(PKC)阻害剤によって阻害された。また、siRNA にてPAR-2 を ノックダウンするとトリプシンによるTRPV4 のセリン残基のリン酸化が消失した。

(4)

- 3 - [考察]

今回の検討からマウスの食道上皮細胞にTRPV4 およびPAR-2 の発現が確認された。ま た、食道上皮細胞においてトリプシンによりPAR-2 が活性化すると、PKC を介して TRPV4 のセリン残基がリン酸化され、TRPV4 への微量な刺激に対してATP の放出量が 増加することが確認された。食道上皮下の迷走神経終末にはATP 受容体が存在し、ATP は 機械刺激と迷走神経伝達の仲介役として機能しているとされている。本検討から、食道上 皮細胞から放出されたATP の増加は食道の機械刺激に対する異常感覚として伝達される のではないかと推測される。

トリプシンが食道に逆流し、PAR-2 が活性化することでTRPV4 の感受性が亢進すると いう一連の反応は、GERD の病態、特にNERD の食道の過敏性に関与していることが示 唆された。

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- 4 -

学 位 論 文 審 査 の 要 旨

【目的】

胃食道逆流症(GERD)は,胃内容物の食道への逆流によって不快な症状が生ずる疾患であ る。GERDの中でも非びらん性GERD(NERD)は酸分泌抑制薬の奏効率が50%と低く,そ の病態には膵十二指腸液の逆流の存在や伸展などの機械刺激に対する過敏性が報告されて いる。一方,一過性受容器電位V型(transient receptor potential vanilloid; TRPV)の一つ

TRPV4は機械刺激によって活性化する陽イオンチャンネルで,伸展刺激によって活性化し,

Ca2+を細胞内へ流入させ,細胞からATPのエクソサイトーシスを引き起こすことが膀胱上 皮細胞で報告されている。上皮下にはATP受容体をもつ求心性神経が存在しており,ATP は機械刺激受容と神経伝達の仲介役として働くと考えられている。さらにG タンパク質共 役型受容体protease-activated receptor-2 (PAR-2)は膵十二指腸液に含まれる膵酵素のトリ プシンなどのプロテアーゼによって活性化し,TRPV4 のセリン残基をリン酸化させ,

TRPV4の感受性を亢進させることが神経細胞で報告されている。

そこで,鈴木庸弘氏は,食道上皮細胞においてPAR-2およびTRPV4が発現しており,

トリプシンの逆流によりPAR-2が活性化することでTRPV4の感受性を亢進させるのでは ないかとの仮説を立て,これを検証すべく研究を行った。

【方法】

6-8 週齢の雄性マウス(C57BL/6NCrSLC)(WT)および TRPV4 ノックアウトマウス (TRPV4KO)の食道上皮細胞を初代培養した。

1.TRPV4およびPAR-2の発現を RT-PCR法,免疫染色,ウェスタンブロットにて解析し た。

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2.TRPV4の機能評価としてCa2+の細胞内への流入量を,Fura-2蛍光を用いたCa2+imaging 法で測定した。また,細胞からのATP放出量をluciferin-luciferase反応を用いて測定した。

3.PAR-2活性化によるTRPV4のセリン残基のリン酸化を免疫沈降法にて解析した。

【結果】

1.RT-PCR法にてWTの食道上皮細胞にTRPV4およびPAR-2のmRNAの発現が認められ た。また,免疫染色およびウェスタンブロットにて同細胞にTRPV4およびPAR-2 のタン パク発現が確認された。TRPV4KOの食道上皮細胞ではTRPV4のタンパク発現はみられな かったが,PAR-2発現は認められた。

2.シリコンチャンバーに培養したWTの食道上皮細胞を伸展するとTRPV4KOと比較して 有意にCa2+の流入量が増加した。また,WTでは伸展することでATPの放出量の増加が確 認された。

3.WTの食道上皮細胞では,PAR-2活性化ペプチドまたはトリプシンを前処置した後に微量 のTRPV4アゴニストを投与すると,同量のTRPV4アゴニスト単独投与と比較して,Ca2+

の流入が有意に増加した。TRPV4KOではPAR-2活性化ペプチドを前処置した後にTRPV4 アゴニストを投与してもCa2+の流入の増加は認められなかった。

4.WTの食道上皮細胞では,PAR-2活性化ペプチドまたはトリプシンを前処置した後に微量 のTRPV4アゴニストを投与することにより,同量のTRPV4アゴニスト単独投与と比較し て,ATPの放出量が有意に増加することが確認された。

5.PAR-2活性化ペプチドの投与によりTRPV4のセリン残基のリン酸化が確認された。この 反応はprotein kinase C(PKC)阻害剤によって阻害された。また,siRNAにてPAR-2をノ ックダウンするとトリプシンによるPRPV4のセリン残基のリン酸化が消失した。

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【総括】

鈴木氏は本研究によって,マウスの食道上皮細胞にTRPV4およびPAR-2が発現するこ と,また,食道上皮細胞においてトリプシンによりPAR-2が活性化すると PKC を介して TRPV4のセリン残基がリン酸化されTRPV4への微量な刺激に応じてATPの放出量が増加 することを明らかにした。

食道上皮下の迷走神経終末にはATP受容体が存在し,ATPは機械刺激と迷走神経伝達の 仲介役として機能するとされている。従って,トリプシンが食道に逆流しPAR-2が活性化 することでTRPV4の感受性が亢進し食道上皮細胞から放出されるATPが増加するという 一連の反応が,食道の機械刺激に対する異常感覚として伝達され,GERD の病態,とりわ けNERDの食道の過敏性に関与する可能性が推測される。

本研究は、GERD(特にNERD)の病態における膵酵素トリプシンの関与の可能性を示唆し た点において新規性に優れており、医学における学術的意義も大きく、さらには、今後 PAR-2やTRPV4を標的としたGERD(NERD)の新規治療法の開発にも繋がる点が高く評価 される。よって、本審査委員会は本論文を博士(医学)の学位に十分値するものと判定した。

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