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博 士 論 文 概 要

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Academic year: 2022

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早稲田大学大学院 理工学研究科

博 士 論 文 概 要

論 文 題 目

極値統計を用いた給湯用銅管の孔食寿命予測

Corrosion Life Prediction of Copper Tubes for Hot Water Supply Systems by Extreme Value Statistical

Analysis on Pitting Corrosion

申 請 者

小向 茂

Shigeru Komukai

環境資源及材料理工学専攻 物質材料理工学分野 環境材料学研究

2008 12

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温水が常時循環し必要な時すぐ温水を使用できる集中給湯システムは、ホテルのみならず集 合住宅、オフィスビル、病院等に広く使用されている。この給湯システムの給湯用配管には り ん 脱 酸 銅管が 多 く 用いら れ て きたが 、 近 年、首 都 圏 におい て 銅 管に孔 食が発生することが経 験されるようになった。こ れ を 契機 に 、 わが国 で は 給湯用 銅 管 の孔食 に 関 する研 究 が 実施さ れ 、 そ の発生 原 因 、発生機構の解明が進み、インヒビターを用いた孔食防止方法が提案され た。しかし安全性・経済性の観点からその適用例は少なく、新設時の温水配管材料は銅管に代 えてステンレス鋼管を採用する例が増えてきた。

一方、既設給湯システムの銅配管の孔食対策としてはステンレス鋼管による既設配管系の部 分的取り換えは困難であり、銅系配管による孔食寿命延長対策などを含む既存システムの孔食 寿命延長を可能とするシステムの維持管理技術の研究開発が強く望まれている。孔食による漏 水は最も深い孔食によって生じるので、問題となるのは孔食深さの平均値ではなく最大の孔食 深さと最大の孔食成長速度である。孔食等の局部腐食の寿命予測には極値統計の適用が国内外 で試みられてきた。しかしこれらの適用例はすべてステンレス鋼、アルミニウムなどの薄い不 動態皮膜を有する材料であり、腐食機構の異なる厚い沈殿皮膜を有する銅管の孔食に関しては、

極値統計の適用は報告されていない。本論文は、銅管の孔食寿命予測への極値統計の適用性の 検証とその解析方法の確立、実際の銅管の孔食対策のための耐孔食銅合金管および表面被覆処 理の耐孔食特性の定量的評価、既設システムの維持管理のクライテリアとして用いる孔食電位、

孔 食 成 長 停 止 の 目 安 と な る 孔 食 再 不 動 態 化 電 位 の 決 定 へ の 極 値 統 計 の 適 用 に 関 す る も の であ る。これらの結果をまとめた本論文は、以下の7章で構成される。

第一章「序論」では、給湯・給水銅管の腐食事例、給湯用銅管の孔食に関する従来研究、孔 食対策の課題、孔食問題への極値統計の適用、研究目的、論文の構成について述べた。

第二章「給湯用銅管の孔食発生条件の解析」では、孔 食 発 生 条 件 を 水 質 と 電 位 の 関 係 で 明 確 に し た 。 東 京 都 お よ び 神 奈 川 県 の 集 中 給 湯 シ ス テ ム 銅 管 で は 、 東 京 都 の 水 道 水 を 使 用 す る シ ス テ ム に お い て 孔 食 に よ る 漏 水 が 経 験 さ れ る が 、 神 奈 川 県 の 水 道 水 を 使 用 す る シ ス テ ム で は 孔 食 の 発 生 が 未 だ 無 い と い う 、 明 確 な 違 い が あ る 。 両 者 は 同 じ 給 湯 シ ス テ ム と 銅 管 を 使 用 し て い る こ と か ら 、 こ の 差 は 水 道 水 の 水 質 に 起 因 し て い る と 考 え ら れ る た め 、 孔 食 発 生 条 件 を 明 確 に し て 孔 食 発 生 の ハ イ リ ス ク 地 域 を 特 定 し 、 孔 食 対 策 が 必 要 な 建 物 数 を 見 積 も る 必 要 が あ る 。 そこで、首 都 圏 の 主 な 浄 水 場 の 給 水 系 統 毎 に 、 使 用 年 数 3~ 6年 の 東京都11棟 と神奈川県4棟合わせて15棟の集合住宅の給湯銅管の孔食実態調査を行うとともに、水質の特徴、

銅管の腐食電位の時間変動・年間変動を水質に対応させて解析し、孔食の発生条件の明確化を図った。

また孔食の形態的特徴、腐食生成物、被膜組成の解析などを実施した。その結果、東京都の集 1

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合住宅10棟には孔食が発生しており、神奈川県の集合住宅4棟と地下水を水源とする東京都の1 棟には、孔食が発生していなかった。東京都の集合住宅の給湯用銅管の1日の腐食電位は、湯 を使用する時間帯(夜9時頃がピーク)のみ、給湯量の増加に連れて貴方向に大幅にシフトす ること、この時溶存酸素濃度は変化しないが、給湯水中の残留塩素(R-Cl)濃度が電位の貴化 と対応して増加していることが分かった。1年間の銅管の腐食電位は、孔食発生システム>孔 食未発生のシステムとの有意差があった。水道水質と腐食電位との関係で孔食発生の有無を整 理すると、孔食発生条件は水道水質でR-Cl>1ppm、HCO3-/SO42-<1、銅管の年間の平均腐食電位>

157mV(vs. Ag/AgCl)であった。調査した東京都の集合住宅は11棟のうち10棟はこの条件に当て はまるが、神奈川県の集合住宅4棟はこの条件から外れていた。これらの結果から、東京の水 道水では孔食発生が避けられず、孔食防止対策が必要になること、神奈川県の水道水では孔食 発生の可能性が小さいことが明らかになった。また、孔食発生には給湯水中の残留塩素濃度が 大きく影響しており、残留塩素の除去が孔食防止に有効であることを示した。

第 三 章「給湯用銅管の最大孔食深さ推定への極値統計の適用と実機サンプリング基準の最適化」で は 、 給 湯用銅 管 の 孔食深 さ 分 布と最 大 孔 食深さ 推 定 に極値 統 計 が適用 で き ること を 明 らかに し 、 そ の解析 方 法 を提示 し た 。銅管 を 使 用した 集 中 給湯シ ス テ ムを備 え た 集合住 宅 は 膨大な 数 に 上 る。こ れ ら の建物 に 孔 食防止 対 策 を実施 し よ うとす る 場 合、孔 食 深 さと孔 食 寿 命の定 量 的 評 価に基 づ い て優先 順 位 を決定 す る ことが 求 め られて い た 。実際 の 銅 配管で は 孔 食深さ の 非 破 壊検査 方 法 が開発 さ れ ていな い こ とから 、 銅 管を採 取 し て孔食 深 さ を測定 し 評 価する こ と に なる。 こ の 時、ど の 位 の長さ を 採 取して 解 析 すれば 、 最 も経済 的 に 精度良 く シ ステム 全 体 に 存在す る 最 大孔食 深 さ を予測 で き るかが 課 題 となっ て い た。そ こ で 、集合 住 宅 で実際 に 使 用 されて い た 給湯用 銅 管 を出来 る だ け多く 回 収 し、長 さ 1cm区 分 で 全 て の 最 大 孔 食 深 さ を 測 定 し 、最 大 の 孔 食 深 さ を 確 定 し た 。こ の デ ー タ を 用 い て こ の 配 管 に 実 在 し た 最 大 孔 食 深さ を 極 値 統計法 に よ って推 定 す る場合 の 、 単位測 定 区 画の大 き さ と解析 に 用 いる測 定 区 画数の 合 理 的 な決定 方 法 につい て 、 Gumbel分 布 の標準 偏 差 σを分 布 の 最頻値 λ の1mに した い ( あ る い はλ=mσ は 1、2・・整数 )と い う制 限 か ら求め た 測 定区画 数 と 単 位測 定 区 画の大 き さ ( ま たは 再 帰 期間

m N

s T)の 最適 組み 合 わ せを用 い て 検討し た 。そ の結 果 、実 際に 使 用 され て い た 給湯用 銅 管 の孔食 深 さ はGumbel分 布に適 合 し、最大 孔 食 深さの 実 測 値0.452mmに対し て 、 一 区 画 の長さs=20mm、測 定 区 画数N=12個 のサン プ ル 数で解 析 す ると最 大 孔 食深さ の 推 定値 は 0.478mmと な り、銅管 全 長 の2.5%以 上 の長さ の サ ンプル を 採 取して 解 析 すれば 実 測 最大 値 に 近 い 推 定値を 得 る ことが 出 来 ること が 判 明し、 定 量 的な孔 食 診 断が可 能 と なった 。

第四章「既設給湯用銅管の孔食寿命予測と耐孔食銅合金管の孔食寿命予測モデル」で は 、銅 管 に 代 2

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わ る 耐 孔 食 配 管 材 料 と し て 開 発 され た 耐 孔食銅 合 金 管につ い て 、孔食 深 さ の時間 変 化 から孔 食 成 長 速度式 を 作 成し、 従 来 使用の 銅 管 と比較 し て 孔食寿 命 を 定量的 に 評 価した 。 孔 食成長 速 度 促 進腐食 試 験 におけ る 銅 管の孔 食 成 長速度 と フ ィール ド に おける 銅 管 の孔食 成 長 速度と の 関 係 から促 進 試 験の加 速 倍 率を確 定 し 、次い で 促 進試験 に お ける耐 孔 食 銅合金 管 の 孔食成 長 速 度 を測定 し て 、耐孔 食 銅 合金管 の フ ィール ド で の孔食 寿 命 を予測 し た 。その 結 果 、耐孔 食 銅 合 金管の 孔 食 寿命は 約 5900日と 予 測 され、 現 状 使用し て い る銅管 の 孔 食寿命 約 3900日よ り お よ そ1.5倍 寿 命が延 び て いるが 、大 幅な寿 命 の 改善が 期 待 できな い こ とが分 か り 、開 発 銅 合 金 管 は採用 で き ず、さ ら な る孔食 対 策 技術の 開 発 が必要 で あ るとの 結 論 を得た 。

第 五 章 「 表面被覆技術による銅管の孔食寿命延長」 で は 、 耐 孔 食 銅 合 金 管 に 引 き 続 い て 銅 管 よ り も 耐 孔 食 性 の 改 善 を 期 待 し て 開 発 さ れ た 銅管内面にSnを被覆した内 面 Sn被 覆 銅 管 に つ い て 、促 進 腐 食 試 験 に よ り 銅 管 と 比 較 し て 孔 食 寿 命 を 求 め た 。最 大 孔 食 深 さ の 推 定 に は 極 値 統 計 法 を 用 い 、孔 食 深 さ の 時 系 列 変 化 か ら 孔 食 成 長 速 度 を 求 め て 、銅 管 と 内 面 Sn被 覆 銅 管 の 孔 食 寿 命 を 定 量 的 に 評 価 し た 。 そ の 結 果 、 内 面 Sn被 覆 銅 管 は 銅 管 の お よ そ 2.5倍 ( 約 30年 ) の 寿 命 が あ る と 推 定 さ れ 、 銅 管 に 代 わ る 配 管 材 料 と し て 使 用 で き る こ と が 確 認 で き た 。

第 六 章 「既設給湯システムの孔食対策のためのメンテナンスクライテリアの確立」 では 、実 際 の 給 湯 シ ステム で 給 湯用銅 管 の 孔食発 生 の 可能性 や イ ンヒビ タ ー による 防 食 措置の 防 食 効果を モ ニ タ リング す る ために 必 要 となる 、 孔 食電位 と 孔 食再不 動 態 化電位 を 明 らかに し た 。こ れ ま で の 研 究 で は 、銅 管 の 孔 食 電 位 は 192mV(vs. Ag/AgCl)で あ る と 言 わ れ て い た が 、こ れ は 新 管 を 用 い て 測 定 さ れ た デ ー タ で 、実 際 の フ ィ ー ル ド の 銅 管 は 厚 い オ ル ト け い 酸 銅 の 皮 膜 が 生 成 す る た め 、実 際 の 配 管 と 同 様 な 皮 膜 が 生 成 し た 条 件 で 測 定 す る こ と に よ り 実 用 的 に 役 立 つ よ う に す る 必 要 が あ っ た 。そ こ で 、厚いオルトケイ酸銅の皮膜を形成させた銅管の孔 食 電 位 を 定 電 位 分 極 法 に よ っ て 測 定 し た 。次 い で 、こ の 孔 食 電 位 で 孔 食 を 十 分 成 長 さ せ た 後 、種 々 の 電 位 に 定 電 位 保 持 し 、孔 食 の 成 長 の 有 無 を 極 値 統 計 法 に よ っ て 解 析 し て 、孔 食 が 停 止 す る 電 位 を 再 不 動 態 化 電 位 と し た 。そ の 結 果 、孔 食 電 位 は 210mV、孔 食 再 不 動 態 化 電 位 は 190mVで あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 これにより腐食電位を測定することにより孔食の発生、成長、停止状況を モニタリングできる。

第 七 章「 総 括 」で は 、給 湯 用 銅 管 の 孔 食 寿 命 予 測 へ の 極 値 統 計 の 適 用 に つ い て 、本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 の 総 括 を 行 っ た 。孔 食 は そ の 最 大 の 腐 食 深 さ と 成 長 速 度 が 問 題 と な り 、こ れ の 定 量 的 評 価 に 関 す る 報 告 が 必 要 で あ る と の 要 請 に 応 え 、孔 食 寿 命 予 測 へ の 極 値 統 計 の 適 用 性 を 検 証 し 解 析 方 法 を 確 立 し た 。 こ れ に よ り 、 実 際 の 建 物 へ の 孔 食 対 策 を 可 能 に し た 。

参照

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