博 士 論 文 概 要
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(2) 超高齢社会の到来による高齢者の増加に伴い,患者の増加が予想される整形外 科領域では,術後早期にリハビリを開始することが,早期回復,早期退院,さら には医療費の削減につながるとされている.しかし,整形外科疾患患者が行う歩 行訓練の現状として,患側の脚へかける荷重量を患者自身が感覚的に調節するこ とが多く行われており,術後間もなく術部の回復が進んでいない早期訓練の場合, 過負荷の危険性があるという問題がある. 一方で,近年,歩行訓練時の定量的な荷重調整が可能となる体重免荷装置を用 いた歩行訓練を行うアプローチが注目されており,関連する医学分野・工学分野 の研究開発も行われている.しかし,現在主流となっている,ハーネスによる吊 り上げ型の体重免荷装置は,身体の一部を拘束し,健側・患側によらず一様に免 荷している.そのため,自然歩行と比較した場合,歩行において重要な役割を果 たしている骨盤の運動が阻害されているという課題がある.そこで,体重免荷装 置の身体を支持する機構や体重の免荷制御の観点から,骨盤運動の阻害を低減す る技術が必要となる. 本研究では特に免荷制御の部分に焦点を当て,骨盤を支持しながらその運動に 追従でき,同時に計測も行える機構を用いて,患側立脚期・健側立脚期などの歩 行相を推定し,推定した歩行相に応じて免荷量を調節することが可能な可変免荷 システムの構築を目的とする.そのために,支持している骨盤の運動を連続的に センシングすることで歩行相を事前に推定する手法を構築すること,また,推定 した歩行相に応じて免荷力の目標値を切り替える制御手法を構築することを技術 課題とする.まず,歩行相を推定するための特徴点を選定するために,歩行時の 骨盤運動の解析を行った.その後,選定した特徴点から歩行相を事前に推定し, その推定した歩行相に応じて位置と力を制御するための免荷制御手法を構築した. 最後に,構築した歩行相の事前推定手法と免荷制御手法を可変免荷システムとし て統合し,歩行時の患脚と健脚の垂直床反力の大きさで評価することで,その有 効性を示した. 本論文は1章から8章で構成される. 第1章では,本研究の対象とする整形外科疾患患者の歩行訓練における体重免 荷装置の必要性について述べた.また,従来の体重免荷装置の課題は,身体を拘 束する装置の機構,健側・患側によらず一様に免荷している免荷制御により歩行 において重要な役割を果たしている骨盤の運動を,阻害していることであると論 じた.そして,体重を骨盤で支え,かつ,運動に追従する機構を有するという装 置の開発コンセプトのもと,制御の観点から骨盤運動の阻害を低減するために, 脚にかけられる荷重に制限のある患側は免荷し,健側は骨盤運動に追従する,可 変免荷システムを提案した.そのシステムを実現するために,骨盤運動からの歩 行相の事前推定と免荷制御の目標値の時間的切り替えの2つを技術課題として挙 2.
(3) げ,先行研究との比較から本論文の位置づけを示した. 第. 2. 章では,提案する可変免荷システムの要求仕様について整理した.まず,. 免荷制御の目標値を整形するために必要なパラメータとして,患側免荷量の目標 値,健側免荷量の目標値,そして目標値を切り替える際の応答時間の3つを挙げ ている.次に,第5章で構築する免荷制御の応答性の要求仕様として,目標値を 切り替えた際の応答時間が,第3章で計測する骨盤運動が特徴点もつタイミング から歩行相が切り替わる瞳接地のタイミングまでの時間差より小さい必要がある とした.また,第6章で検証する歩行相の事前推定手法の要求仕様として,踵接 地のタイミングを事前に推定する時間が,第5章で決定する免荷の目標値の切り 替え時間より. も大きい必要があると. した.. 第3章では,歩行相を事前に推定するために,骨盤運動の特徴点を選定する実 験を行った.また,第4章において設計方法を論じるハードウェアの要求機能と, 第2章で言及した応答時間の要求仕様を導出した.まず,歩行時の骨盤運動の計 測・解析を行い,骨盤の揺動がピーク値を取るタイミングを特徴点として選定し, 開発するハードウェアは,骨盤の揺動を計測できる機能が必要であることを論じ た.次に,骨盤の揺動と歩行周期の対応づけを行い,骨盤の揺動がピーク値を取 るタイミングから,左右の脚の瞳接地のタイミングまでの時間差を計測し,第2 章で言及した応答時間の要求仕様を導出した. 第4章では,第1章で定義した装置の開発コンセプトを実現するハードウェア の設計方法について論じた.まず,歩行中の骨盤運動の自由度・可動域について 調査し,骨盤運動に追従でき,運動を阻害しない自由度構成を検討した.また, 第3章で導出した要求機能を満たすために,骨盤の揺動が計測できる機構を提案 した. 第5章では,免荷制御手法の構築方法について論じた.まず,力制御の方式に ついて分類を行い,安全性の観点から位置指令型インピーダンス制御を選定した. 次に,制御対象である歩行運動のモデリングを行い,体重免荷装置と人の接触面 である背部とクッションの特性から,制御パラメータを決定した.そして,静止 立位の状態で,免荷制御の目標値を切り替えるステップ応答を行い,その応答時 間が,第3章で導出した要求仕様を満たしていることを示した. 第6章では,第3章で言及した骨盤運動情報から歩行相を事前に推定する手法 が,体重免荷時の歩行においても適用できることを示した.第4章で開発した体 重免荷装置を装着して免荷歩行を行い,装置上のセンサにより計測された骨盤の 揺動が特徴点を取ってから瞳接地に至るまでの時間差である事前推定時間が,第 5. 章で決定した免荷制御の切り替え時間より大きいことから,要求仕様を満たし. ていることを論じた.このことから,体重免荷時において,提案した歩行相の事 前推定手法が有効であることを示した.. 3.
(4) 第7章では,第5章で論じた免荷制御手法と第6章で論じた歩行相の事前推定 手法を統合して構築した可変免荷システムの評価を行なった.若年健常者を被験 者とし,患側・健側の垂直床反力や骨盤位置について,従来の定荷重免荷の場合 と提案する可変免荷の場合で比較した実験の結果から,提案手法が患側・健側に 応じて体重免荷をするために有効であることを示した. 第8章では,本研究で得られた成果をまとめるとともに,残された課題につい て述べた.また,展望として臨床応用および提案した方法のその他の分野に対す る応用事例,応用するための課題や解決指針に関して示した. 以上より,本論文では,整形外科疾患患者の歩行訓練を対象として,骨盤運動 情報から歩行相を事前推定し,歩行相に応じて体重免荷の免荷量の目標値を整形 する可変免荷システムを提案した.また,提案したシステムを,試作した体重免 荷装置に組み込んで動作させ,若年健常者による評価試験によりその有効性につ いて明らかにした.そしてその結果より,既存の機器による体重免荷関連技術に は存在しない,患側・健側に応じて体重免荷の免荷量を調節する技術であること を示した..
(5) N o.1. 早稲田大学 博士(工学) 学位申請 研究業績書 (2012年2月 題名、 論文○. 発表・発行掲載誌名、. 発表・発行年月、. 連名者(申請者含む). [1]TakaoWatanabe,YoKobayashi,EiichiOhki,Fujie,M.G., Control. forBodyWeight. Proceeding of. Support. byGait. Cycle. 現在). Estimation. Leg−dependentForce. fromPelvic. Movement. ,. 20101EEEInternational Conference on Robotics and Automation,. pp.2235−2240,2010. 論文○. [2]TakaoWatanabe,YoKobayashi,MasakatsuG.Fujie,. PelvisMotionAnalysisfor. GaitPhaseEstimationTowardLeg−DependentBodyWeightSupportatDifferentWalking Speed. ,33rdAnnualInternationalConferenceoftheIEEEEMBC2011,pp.1590−1593,. 2011. 論文○. [3]TakaoWatanabe,YoKobayashi,MasakatsuG.Fujie,. PelvicMotionAnalysisfor. Gait Phase Estimation during Gait Training with Body Weight SupportM,in Proceedingsof20111EEEInternationalConferenceonSystems,Man,andCybernetics, pp.3219−3223,2011. [4]T.Watanabe,K.Kawamura,K.Harada,E.Susilo,A.Menciassi,P.Dario,and M.G.Fujie,. A. evaluationofits. reconfigurable feasibility. master. device. for. a. modular. surgical. ,Proceedingof20101EEEInternational. robot. and. Conference. on Biomedical Robotics and Biomechatronics,pp.114−119,2010. [5]T.Watanabe,E.Ohki,T.ANDO,andM.G.Fujie, controlmethod. for. pelvis−SuppOrting. bodyweight. Fundamental. support. system. study. of. force. ,inProceeding. of the20081EEEInternational Conference on Robotics and Biomimetics(ROBIO O8), pp.1403−1408,2008. [6]渡連峰生,高橋利史,安藤健,藤江正克, 片麻痺者を対象とした歩行支援ロボ ットの開発〜立位時及び歩行時の安定性向上を目的とした介助力制御〜 ,第7回生活 支援工学系学会連合大会予稿集,pp.183,2009 [7]渡連峰生,二瓶美里,藤江正克, 歩行時の骨盤保持による体重免荷装置の開発一 骨盤の回転を阻害しないヒトと機器のインタフェース部の開発− ,第4回生活支援工学 系学会連合大会予稿集,pp.129,2006 その他 (論文). [8]YoKobayashi,TakaoWatanabe,TakeshiAndo,MasatoshiSeki,MasakatsuG.Fujie, SoftInteraction Impedance. その他 (論文). Control. between. Body. ,Advanced. Weight. Support. System. and. Human. using. Fractional. Robotics,aCCepted,2012. [9]Yo Kobayashi,Takeshi Ando,Masatoshi Seki,Takao Watanabe,Masakatsu G. Fujie,. Muscle. and. FractionalImpedance. Control. for. Reproducing. the. Material. Properties. of. ,Proceedingsof2010IEEEInternationalConferenceonIntelligentRobots. Systems(IROS. 10),pp.5498−5504,2010.
(6) L. N o.2. 早稲田大学 博士(工学) 学位申請 研究業績書 種類別 その他 (論文). 題名、. 発表・発行掲載誌名、. 発表・発行年月、. 連名者(申請者含む). [10]Yo Kobayashi,Takao Watanabe,Takeshi Ando,Masatoshi Seki,Masakatsu G. Fujie, Muscle. FractionalImpedanceControl andits. Applicationin. forReproducing. aBodyWeight. Support. theMaterialProperties. System. ,Proceeding. of. of2010. IEEEInternational Conference on Biomedical Robotics and Biomechatronics, pp.553−559,2010. その他 (論文). [11]小林洋,安藤健,関雅俊,渡連峰生,藤江正克, 筋肉の粘弾性特性を再現した分 数次微分を用いたインピーダンス制御 ,日本機械学会2010年度年次大会講演論文集, pp.353−354,2010. その他 (講演). [12]東野達也,渡連峰生,川村和也,井上淳,中島康貴,貴嶋芳文,東祐二,湯地忠彦, 藤元登四郎,藤江正克, 片麻痺患者の骨盤動作アシストを行う歩行訓練ロボットの開 発〜理学療法士が行うハンドリング動作の計測〜 ,生活生命支援医療福祉工学系学会 連合大会,投稿済,2011. その他 (講演). [13]西尾直樹,関雅俊,渡連峰生,井上淳,藤江正克, 傾斜歩行シミュレーションか らの膝関節アシストロボットのパラメータ検討 ,日本機械学会ロボテイクス・メカトロ ニクス講演会講演論文集,Vol.2011,2P2−EOl. その他 (講演). [13]山田和世,安藤健,西尾直樹,井上淳,渡連峰生,藤江正克, 脳卒中における利 き手側麻痺疾患の歩行訓練支援を目的としたロボット杖の開発 ,日本機械学会ロボテ イクス・メカトロニクス講演会講演論文集,Vo1.2011,2P2−EO2. その他 (講演). [14]東野達也,渡連峰生,藤江正克, 歩行に同調した骨盤動作アシストのための制御 アルゴリズムの構築 ,生活生命支援医療福祉工学系学会連合大会2010,pp.532−535, 2010. その他 (講演). [15]高橋利史,渡連峰生,安藤健,藤江正克, 片麻痺患者を対象とした歩行の安定制 御を行う介助マニピュレータの開発 ,第6回生活支援工学系学会連合大会予稿集, pp.192,2007. その他 (特許). [16]発明者:藤江正克,高橋利史,渡連峰生, 歩行補助装置 ,特願2009−218252特 開201卜067227.
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