博 士 論 文 概 要
4
0
0
全文
(2) 近年,限られた用地の高度利用や都市基盤の構築を目的とした都市交通や上下 水道の整備に伴い,鉄道下や道路下を横断する立体交差構造物が計画される事例 が増えている.また,都市部では,地域を分断する鉄道や交通渋滞を発生させる 踏切が,都市活動に著しい支障をきたしている. このような踏切のうちで,ピー ク 時 の 交 通 を 遮 断 す る 時 間 が 4 0 分 以 上 ,ま た は , 踏 切 に よ っ て 交 通 を 遮 断 す る 台 数 が 5 万 台 時 /日 以 上 に な る 踏 切 は , ボ ト ル ネ ッ ク 踏 切 と 呼 ば れ て い る .ボ ト ル ネ ッ ク 踏 切 は ,全 国 に 約 1 0 0 0 箇 所 程 あ り ,そ の う ち の 約 3 6 0 箇 所 程 が 首 都 圏 に 集 中 している. こ の よ う に 踏 切 で の 交 通 渋 滞 が 社 会 問 題 化 し ,そ れ に 伴 い 立 体 交 差 構 造 物 の 計 画 件数が増加する中で,横断する長さにあまり制限を受けず,施工時に交差上の構 造物への影響が少なく,さらに経済的で施工が容易な立体交差構造物の新しい構 築 工 法 の 開 発 が 求 め ら れ て い る . 従 来 の 交 差 構 造 物 の 構 築 工 法 は ,防 護 工 と し て 鋼 管などを推進し防護ルーフを設置した上でその中に構造物を構築する工法,また は,防護ルーフを押し出しながら構造物を推進またはけん引する工法しか存在し な か っ た .し か し ,こ れ ら の 工 法 は ,あ る 程 度 以 上 の 土 被 り を 必 要 と し ,横 断 す る 長 さ が 制 限 さ れ る 上 に ,施 工 時 に 陥 没 や 軌 道 の 狂 い な ど が 発 生 す る 可 能 性 が 高 く , また,施工期間が長くなるなどの課題があった. こ れ ら の 課 題 を 踏 ま え ,新 し い 交 差 構 造 物 を 構 築 す る 工 法 が 開 発 さ れ た .こ の 工 法は,先行して施工した角型の鋼製エレメントの継手に沿わせて,後行のエレメ ントを順番に地中へ掘進し,その後,そのエレメント内をコンクリートで充填し て 構 造 物 を 構 築 す る も の で あ る .こ の 工 法 は ,エ レ メ ン ト を け ん 引 す る 工 法( HEP 工 法 と 呼 ぶ )と エ レ メ ン ト で 構 造 部 材 を 構 築 す る 工 法( J E S 工 法 と 呼 ぶ )の 組 み 合 わ せ で , HEP&JES 工 法 と 呼 ば れ て い る . HEP&JES 工 法 は , 鋼 製 エ レ メ ン ト を 施 工 時 の防護ルーフと構造物の本体に兼用するため,従来工法に比べて鉄道下や道路下 の掘削や推進などの回数を少なくすることができ,施工期間の大幅な短縮と施工 時の安全性や経済性の向上が大いに期待できる工法である.この工法は,鋼製エ レメントを順番につなぎ合わせ,最後に閉合部の構築を行い構造物を完成させる 工法であるが,この最後に施工される閉合部の構造をどのようにするかが大きな 課題であった. 本 研 究 は ,実 施 工 に お い て 計 測 さ れ た 結 果 を 詳 細 に 分 析 し 評 価 す る こ と に よ っ て , 合理的な閉合部の構造を確立するとともに,その設計手法に検討を加えたもので あ る .閉 合 部 の 構 造 は , 当 初 は 鋼 製 エ レ メ ン ト の フ ラ ン ジ 部 分 の 鋼 板 を ボ ル ト や 溶 接でつなぎ合わせるなどの構造を検討していた.しかし,鋼板をボルトによって つなぎ合わせる構造では,ボルトの本数が多くなり,溶接によってつなぎ合わせ る 構 造 で は 狭 隘 な 箇 所 で の 長 い 作 業 時 間 を 必 要 と す る こ と か ら ,こ れ ら の 構 造 は , 施 工 性 や 経 済 性 に 問 題 が あ っ た .検 討 の 結 果 , 鋼 製 エ レ メ ン ト を 用 い ず に 特 殊 な 鉄 筋の重ね継手を用いる鉄筋コンクリート構造が,最適な構造であるとの結論に達. 1.
(3) した.次に,閉合形状に曲げ加工した鉄筋を重ね合わせる継手(以下,閉合形状 の 重 ね 継 手 と 呼 ぶ ) を 考 え た .こ の 構 造 で は , 鉄 筋 の 重 ね 継 手 長 が 閉 合 部 の 寸 法 に 制約されるため,一般的な長さよりも大幅に短くなること,閉合形状の重ね継手 の耐力が明らかでないことが課題であった. 閉合部の継手鉄筋は,施工上の制約から,鉄筋籠に組まれた後にけん引され, 所定の位置に移動されて設置されるため,鉄筋籠として組み上がった状態でその 形状を保持できなければならない.このことから,鉄筋籠はその形状を保持しや すいように,あらかじめ閉合形状に曲げ加工された鉄筋を用いて組み上げること が有効であると判断された.一方,曲げ加工部を含まない閉合形状の重ね継手の 継手長は,エレメントとの連結用の特殊な継手と鉄筋をフレア溶接するための接 合長さ,および特殊な継手の長さを考慮すると,一般的な重ね継手長に比べて相 当に短くなり,耐力の検討が必要となった. 鉄筋継手に関する既往の類似の研究としては,比較的薄い床版の接合構造とし て,半円形に閉合したループ状の重ね継手に関する研究がある.ループ状の重ね 継手も,プレキャストの床版を一断面でつなぐこと,継手長を短くすることを目 的として用いられている.この研究では,実物大の試験体を用いた実験を行い, 鉄筋が降伏するまでは継手の定着部が破壊しないことを確認しているが,定着部 の破壊時の耐力算定方法は明らかにされていない.ループ状の重ね継手の定着力 は,一般的な重ね継手と同様に継手部の鉄筋の付着力のみに期待して継手長を算 出している.また,その他の継手に関連する研究として,半円形に曲げ加工した 鉄筋の定着力に関する研究がある.これは,半円形に曲げ加工された鉄筋の両端 部に等しい引張力が作用した時の曲げ加工部の定着力を検討したものである.こ れらの類似の研究では,継手部に配置された補強鉄筋の補強効果を帯鉄筋と同様 に付着力の補強効果で評価している.これに対して,本研究で考えた閉合形状の 重ね継手は,曲げ加工部と直線部が連続した「コの字」の形状となる鉄筋の重ね 継手であり,重ね継手としての耐力は曲げ加工された隅角部の定着力と曲げ加工 部につながる水平部の定着力とで発揮されるものと考えられる.そこでまず,継 手部の要素に関する基礎的な研究として,曲げ加工した部分の鉄筋の定着に関す る 試 験 を 実 施 し ,次 に ,実 証 的 な 研 究 と し て , こ の 継 手 を 有 す る 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 梁 の 試 験 体 を 用 い た 曲 げ 試 験 を 実 施 し た .そ し て ,こ れ ら の 試 験 結 果 に 基 づ き , 閉 合形状の重ね継手の耐力の発生機構を明らかにし,耐力の定量的な評価手法に検 討を加えた. 本 論 文 で 取 り 扱 っ た 閉 合 形 状 の 重 ね 継 手 は , 20cm 程 度 の 比 較 的 薄 い 床 版 か ら 1m を 越 え る よ う な 厚 い 床 版 ま で を ,主 鉄 筋 径 の 1 0 倍 程 度 の 短 い 継 手 長 で 接 合 す る 場 合を対象としている.接合部に用いる閉合形状の重ね継手は,継手部の曲げ加工 された鉄筋の隅角部,および曲げ加工部につながる直線部のそれぞれの定着力に 着目していることから,ループ状の重ね継手に関する既往の研究とは異なり,厚. 2.
(4) い床版の接合などに適用した場合には,大幅に継手長を短くすることができる点 に特徴がある. 本論文は,5章より構成されており,その概要は以下のとおりである. 第1章は序論であり,既往の研究や関連する技術などの背景を紹介するととも に,本研究の目的や構成について記述している. 第2章は,鋼製エレメントをつなぎ合わせて構築するJES工法の基本技術に ついて,既往の研究成果を述べた章である.まず,JES工法で構築される構造 は,鋼製エレメント内にコンクリートを充填するだけのせん断伝達機構を有しな い構造であるため,一般の鉄筋コンクリート構造の部材と比べて曲げ耐力,せん 断耐力,疲労耐力,および変形特性が異なることを述べている.次に,この工法 を 可 能 と し た 特 殊 な エ レ メ ン ト 間 の 継 手( J E S 継 手 )の 静 的 耐 力 お よ び 疲 労 耐 力 な どの力学的な特性についても紹介している. 第3章は,JES工法で構築される構造物の閉合部における要求性能を明らか にする目的で,実施工からその施工性や耐力などを分析し検討した章である.す なわち,実際の鋼製エレメントの施工において閉合部に発生する施工誤差を計測 し,その施工誤差を吸収することができ,かつ施工性がよく,また,部材として の十分な耐力を有する構造およびその施工方法を詳細に検討している. 第4章は,提案した閉合部の構造の耐力を評価する手法を検討した章である. 閉 合 部 の 構 造 は ,閉 合 形 状 の 重 ね 継 手 を 有 す る 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 構 造 と し ,ま ず , この重ね継手の継手長に応じた破壊形態を分類するために予備試験を行った.予 備試験の結果から,継手長が短い場合には,継手部の曲げ加工した鉄筋の隅角部 の支圧耐力で耐力が決まることを確認した.次に,隅角部の補強鉄筋の有無,重 ね継手の継手長と鉄筋径,曲げ加工形状などが継手の耐力に与える影響を定量的 に評価するために,継手部の要素に関する2つの基礎試験と閉合形状の重ね継手 を有した梁形状の曲げ試験を実施した.基礎試験は,鉄筋をコンクリートブロッ クに押し付けて支圧力を作用させる支圧試験と曲げ加工された鉄筋をコンクリー トブロックに定着させて引き抜く引張試験とである.この 2 つの試験結果から, 支圧耐力の算定式を導いている.一方,梁形状の試験体を用いた曲げ試験の結果 から,本論文で提案している閉合形状の重ね継手の継手耐力が定量的に評価でき ることを示した.最後に,これらの試験結果をもとに,閉合形状の重ね継手の耐 力の算定式を提案している. 第 5 章 は ,本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 を ま と め た 結 論 で あ る .J E S 工 法 を 実 現 す る 上 で必要不可欠であった閉合部の合理的な構造を確立できたこと,その力学的特性 を明らかにしたことなどを述べるとともに,この新しい重ね継手の発展性につい ても述べている.なお,第5章の後には,本研究成果を適用した技術基準の抜粋 と 基 準 の 根 拠 を 示 し た 付 属 資 料 が 添 付 さ れ て い る .基 準 は ,東 日 本 旅 客 鉄 道 ㈱「 J E S 工 法 設 計 の 手 引 」と「 付 属 資 料 − 6 」で あ り ,す で に 数 多 く 工 事 に 適 用 さ れ て い る .. 3.
(5)
関連したドキュメント
Heywood(Ind iana Un iv. ,29, No .5 ,1980) にある un i form doma in と同様に境界の点の取り方にらず一様な球で領域を覆うことができるとい
第4章 「不完備市場均衡の非効率性 Ⅰ」
木造軸組構法住宅は、社会的要求の変化や自然災害あるいは環境の変化に、材料
消費論の脱社会階層化というもうひとつの傾向性は、この脱道徳化の流れにおいて派生し
近年,人間の視覚や聴覚機構の巧みな情報処理に学び,これらを利用した信号処理が着目 されている。身近な例としては,動画を対象とした MPEGMoving Picture
2012 年に生誕 150 周年を迎える新渡戸稲造 (1862-1933) は、アカデミズムの内外を問わ ず、『武士道』 Bushido, the Soul of Japan (1900)
通信網技術の進展や情報蓄積やコンピュータ関連技術の進展,そしてディジタル高能率
近年、MEMS や NEMS と呼ばれる微細な機械技術に対して政策的な投資と技術革新が行われており、こ れらの機器を応用して、温度や湿度、加速度、明度、風流量、音声、におい、味といった情報