博 士 ( 医 学 ) 花 田 太 郎
学位論文題名
Intra‑cellular Accumulation of Thallium asa Marker of Cisplatin Cytotoxicity
‑An ApphcadonofInductivdy の upledPla 蜘 a 眦鴎 S .pectr011net サ (シスプラチン感受性の評価法としての細胞内夕1J ウム取り 込みに 関する 研究― ICP 質量 分析装 置を用 いての 検討一)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
I背景と目的
タリウム ー201 (20'T1)シ ンチグ ラフィは 各種悪 性腫瘍の 検出、 特に甲状腺癌、
肺癌の検 出に優 れており 、その腫 瘍細胞 への取り込みのメカニズムはNaーKATPaseを 介すると 考えら れている 。腫瘍細 胞にお ける細胞膜のNaーKATPase活性は種々の作用 を持ち、 細胞膜 のNa―KATPase活性が 腫瘍の転移能と関係があるとの報告がある。ま た、細胞 内への シスプラ チン(CDDP)取 り込みにはNa―KATPaseが必要であり、一方、
腫瘍細胞 のCDDP取り 込み低下 がCDDP耐性 の大きな要因のーっであることから、Na―K ATPaseはCDDP耐性 に関与し ている 可能性が ある。これらを基に、我々は既にzoITlシ ンチグラ フィを 行った肺 腺癌患者 におい て、原発 巣のタ リウム取 り込みが増大して いる症例では、有意にりンパ節転移陽性であること(TakekawaH,etal.Br.J.Cancer, 1994; 70: 315‑318)、肺小細胞癌患者において、201T1の腫瘍内取り込み量とCDDPを含む プラチナ化合物による化学療法の治療効果とが相関したこと(TokuchiY,etaI.Br.J. Cancer,1998; 77: 1363‑1368)を報告した。本研究ではin‑vitroにおける腫瘍細胞のタリ ウムとCDDPの 取り込 み量の基 礎的検 討をおこ なった 。すなわ ち、非小 細胞肺癌培養 細胞株を用いて、タリウムとCDDPの取り込み量をICP質量分析装置(ICP―MS)を使用し て測定し 、それ ぞれの取 り込み量 の相関 の有無、 さらに 取り込み 量とCDDP感受性の 相関を検討した。
u対象と方法
使用した非小細胞肺癌培養細胞株は、腺癌5種(A549、PCー3、RERF一LC←MS、RERF― LC―OK、VMRC−LCD),扁平上皮癌3種(EBC―1、LK−2、PCー10)である。対数増殖期にある 各 細 胞 株5.0X l06個 を シ ャ ー レ に 播 種 し 、10pg/mlのCDDPも し く は20pg/mlの Thallium chlorideを含んだ 培養液 にて1時間培養 した後 、Rubber scraperにて細胞 を剥離 し、PBSにて2回細胞 を洗浄、 ベレッ 卜を0.1N HNOユにて加熱酸分解し滅菌蒸 留水を 加え試料 を作成 した。ICP‑MS (SPQ6500,SEIKO Co. LTD.)による細胞内プラ チナ、 もしくは タリウ ム濃度の 測定で は、プラチナ、タリウムのstandard solution を用い4点(0,10,50,100pg/ml)にて検量線を作成し、試料内のプラチナ、タリウム
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濃 度を 直 接測 定し た。 尚、 各細 胞のCDDPに対 する 感受性はXTT assayを用い、IC00 (50% inhibitory concentration)に て算 出し た。 蛋白 定量 はBicinchoninic acid assayを用いた。CDDP取り込み、 タリウム取り込み、CDDP感受性それぞれの相関は回 帰係 数の検定を行い、p<0. 05を 有意とした。
皿結果
薬剤 感受性は、いずれの細胞株もCDDPのIC00は2.8uMから21. 8uMの範囲内であっ た。ICP‑MSの検量線は相関係数がいずれも0.999と直線性は良好であり。細胞内CDDP、 タリ ウム の測 定は 、一 回の 検量線 作成にて全ての細胞株の濃度が迅速に測定可能で あっ た。 細胞 内CDDP及 びタ リウム を測定した結果、細胞株問のCDDP、タリウム取り 込み 量に 差違 をみ とめ た。CDDP取 り込みとタリウム取り込みの間には有意な相関は なかったが、CDDP取り込みとCDDP ICso(r=0. 731、p<0. 05)、またタリウム取り込み とCDDP ICso (r=0. 714、p<0. 05)の 問 に は 有 意 な 逆 相 関 を み と め た 。 IV考案
CDDPは種 々の 固形 腫瘍 にお いて抗腫瘍効果を示すが、腫瘍 細胞のCDDP自然耐性、
獲得 耐 性は その 治療 にお いて 大きな障害となる。今回我々は 非小細胞肺癌培養細胞 株を 用い、1n‑vl troにおいてのタリウム取り込みとCDDP感受 性を検討したが、その 取り 込み量の測定に比較的新しい 測定機器であるICPーMSを用 いた。現在まで細胞内 CDDP濃度、タリウム濃度の測定 には原子吸光法、ラジオアイソトープ標識したCDDP、 タリ ウ ムを 使用 する のが 一般 的であった。しかしながら原子 吸光法はその測定にか なり の 時間 を要 し、 ラジ オア イソ卜ープは測定者の被爆の危 険性を有するというデ メリ ットをそれぞれ抱えている。ICP―MSは試料中に含まれる 各種元素を10・'2g/ml (ppt)からl0‑6g/ml (ppm)まで同時に測定可能であり、試料中 に含まれる濃度レベル の大 き く異 なる 元素 を希 釈を 繰り返すことなく一点検量線法 で一度に定量可能であ る。本研究ではICP−MSを使用することにより、迅速、且つ正確、安全に細胞内CDDP、 タリ ウ ム濃 度の 測定 が可 能と なった。実際の測定の結果、細 胞内CDDP取り込みとタ リウ ム 取り 込み に関 して は、 以前に行った臨床研究から相関 があることが予想され たが 、 有意 な相 関は 得ら れず 、その理由として細胞内CDDP, タリウムの代謝経路の 違い に よる こと が示 唆さ れた 。一方、細胞内CDDP取り込みとCDDP感受性は有意な相 関を み とめ 、細 胞内 タリ ウム 取り込みとCDDP感受性について も有意な相関をみとめ たも のの、その相関はいずれも比 較的弱いものであった。今回使用した8種の細胞株 のCDDP耐性 度に 大き な差 異が なかったことが、その要因のー っと思われるが、弱い なが らもタリウムの細胞内取り込 みとCDDP感受性に相関を認めたことより、201T1の 細胞 内取り込みを反映している20IT1シンチグラフィがCDDP感 受性の予測に利用でき る可 能性が示唆された。本研究の 成績は非小細胞肺癌患者の20rTlシンチグラフィが 腫瘍 の 存在 診断 のみ なら ず、 患者のCDDP感受性の予見、nonーresponderに対しての CDDP治 療回 避や 治療 中の 耐性 獲得の予見に応用可能であるこ とが明らかになった。
V結語
非 小 細胞 肺癌 培養 細胞 株において、細胞内タリウム取り 込みはシスプラチン感受 性の 指 標と なり うる 。
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学位論 文審査 の要旨 主査 教授 細川真澄男 副 査 教 授 玉 木 長 良 副 査 教 授 川 上 義 和
学位論文題名
Intra‑cellular Accumulation ofTh 甜 1iumaSa MarkerofCiSplatinCytotoxiCity
‐AnAppHC ぬ onofInduCdvelyCOupledPlasma 眦騷 SpeCtromet サ (シスプラチン感受性の評価法としての細胞内夕リウム取り 込みに関する研究ー ICP 質量分析装置を用いての検討ー)
夕リウムー201(201TI) シンチグラフィは各種悪性腫瘍の検出に優れており、その腫瘍細 胞 への 取り 込み のメ カニズ ムは Na‑K ATPase を介 すると 考え られ てい る。 また 、細胞内 へ の シ ス プ ラ チ ン (CDDP) 取 り 込 み に も Na‑K ATPase が必 要 で あ り 、 腫 瘍 細 胞 の CDDP 取 り 込 み 低 下 が CDDP 耐 性 の 大 き な 要 因 の ー つ で あ る こと か ら 、 癌 細 胞 に お け る Na‑K ATPase 活 性 は CDDP 感 受 性 にも 関与 して いる 可能 性が ある。 そこ で、 申請 者は 、非 小細 胞 肺癌 培養 細胞 株の タリウ ムと CDDP との 取り 込み 量の相関の有無、さらにそれら取り込 み 量 と CDDP 感 受 性 と の 相 関 と 検 索 し 、 201T1 シ ン チ グ ラフ イの 成績 から CDDP 感受 性を 推察する可能性を検討した。
実 験 に 使 用 し た 非 小 細 胞 肺 癌 培 養 細 胞 株 は 、 腺 癌 5 種 (A549 , PC‑3 , RERF‑LC‑MS , RERF‑LC‑OK , VMRC‑LCD ) 、 扁 平 上 皮 癌 3 種 ( EBC‑1 , LK‑2 , PC‑10 ) で あ る 。 対 数 増 殖 期 に あ る 各 細 胞 株 5.0 x106 個 を シ ャ ー レ に 播 種 し 、 10 yg/ml の CDDP も し く は 20 u,g/ml の Thallium chloride を含んだ培養液にて1 時間培養した後、Rubber scraper に て 剥 離 し た 細 胞 の 加 熱 分 解試 料を 作成 した 。ICP‑MS (SPQ6500 ,SEIKO Co. LTD.) によ る 細胞 内プ ラチ ナ、 もしく はタ リウ ム濃 度の 測定 では、プラチナ、夕リウムのstandard solution を用い4 点(0 ,10 ,50 ,100lLg/ml )にて検量線を作成し、試料内のプラチナ、夕リ ウ ムを 直接 測定 した 。また 、各 細胞 のCDDP に 対す る感 受性 はXTT assay を 用い て検索し た。
実験 の結 果、 薬剤 感受性 すな わち 用い た細 胞株 のCDDP の IC50 は2.8 VM から 21.8 いM の
範 囲 内 で あ っ た 。 細 胞 株 間の CDDP 、夕 リウ ム取 り込 み量に 差異 があ り、 CDDP 取り 込み
と タ リ ウ ム 取 り 込 み と の 間 に は 有 意 な 相関 は な か っ た が 、CDDP 取 り込 みと CDDP IC50
(r〓0.731,pく0.05)、またタリウム取り込みとCDDP IC50(r=0.714,pく0.05)の間には有 意 な 逆相 関 をみ と め た。 . すな わ ちCDDP感受性 はCDDP細胞内 取り込み のみならず タリウ ム 取 り込 みとも よく相関 した。そ の相関は いずれも 比較的弱 いものであ ったが、201T1の 細 胞 内取 り 込み を 反 映し て いる2 01T1シ ンチグラ フィがCDDP感 受性の予 測に利用で きる 可能 性が示唆 された。 本研究の成 績は非小 細胞肺癌 患者の2 01T1シ ンチグラフィが腫瘍の 診 断 の み な ら ず 、 そ の 患 者 の 癌 細 胞 のCDDP感 受性 を 予 見し 、non‑responderに 対し て のCDDP治 療回 避 や治 療 中 の耐 性 獲得 の 予見に応 用可能で あること を明らかに している 。 公開 発 表に あ た り、 副 査 玉木 長 良教 授 よ り1)夕 リ ウム 取 り 込み とCDDP取り 込みが相 関 し ない ことに 対する考 えられる 理由、2) 細胞内夕 リウム取 り込みの時 間的経過 を検討 す る 必要 性 、3)夕 リ ウ ム取 り 込み と 薬 剤排 泄 機構 で あ るP‑glycoprotein発 現との関係 な ど に つ い て 、主 査 細川 真 澄 男教 授 よ り、1)CDDP細 胞内 取 り込 み 推 察す る の に201T1 シ ン チ グ ラ フ イで な けれ ば な らな い 理 由、2) 直 接CDDP感 受 性検 査 と201T1チ グラ フ イ 検 査 とど ちらが 実際には 簡便で、 判定はし やすいか 、3)夕リ ウム取り込 みの高い 癌でも CDDPに て 治 療 が 困 難な も のが あ る 理由 な ど、 副 査 川上 義 和 教授 よ り1)201T1シン チ グ ラフ ィあるは タリウム 細胞取り込 み時間的 差異を利 用するこ とにより腫瘍病変と非腫瘍性 病 変 を 鑑 別 で きる 可 能性 、2) 夕 リウ ム とCDDPの 排 泄 機構 の 違い 、3) 本 研究 成 果を 実 際に 臨床応用 する可能 性などにつ いて質問 があった が、申請 者は永年の実験経験に基づき 適切 な回答を なし得た 。最後に、 フ口アの 国立札幌 病院磯部 博士、副査玉木教授がそれそ れ専 門の立場 より、本研究のさらなる進展を望むコメントがあり公開発表を締めくくった。
本研 究 は、 非 小 細胞 肺 癌 にお け るシ ス プ ラチ ンCDDP感受 性 が 、201T1シンチグラ フイ の 検 査 に よ り 推察 で きる 可 能 性を 明 ら かに し たも の で あり 、 さら に 、 個々 の 患者 で 、 2 01TIシ ン チ グ ラフ イ の成 績 とCDDPによ る 治療 成 績 、あ る い は摘 出 した 癌 細 胞のCDDP 感 受 性と を 照合 す る こと に より 、 臨 床応用 が可能と なり、CDDPに よる化学療 法の成績 の 向上させうることが期待される。
審査 員一同は 、これら の研究成果 を高く評価し、申請者がf専士(医学)の学位を受ける のに充分な資格を有するものと判定した。