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博士(工学)稲葉博美 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)稲葉博美 学位論文題名

高速・超高速エレベータの省電力・高品質制御に関する研究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  昭 和50年代 から 、た びた び繰 り返 さ れる 石油 危機 の際 に、 ビル 内主要縦交通機関であ るエ レベ ータ システムに対して省電力化の問題が提示 されてきた。この省電力制御技術の 確立 は新 設工 レペ ータ ばか りで はな く 、累 積保 守台 数が35万 台に 達しようとする国内既 設エ レベ ータ の延命・近代化のための更新処理に対し ても向けられている。一方、土地の 有効 活用 をめ ざした近年の超高層ビルラッシュに伴い 、エレベータの一層の高速化や乗り 心地 の向 上、 さらには電源高調波や電動機騒音の低減 が可能な高品質制御の実現も求めら れて いる 。本 研究は、これらの問題点に関して高速・ 超高速エレベータを取り上げ、新た な省電力・高品質制御法を提示している。

  は じめ に、 経年エレベータの性能向上をめざした近 代化更新処理に伴う、省電力・高品 質制 御法 につ いてふれている。っまり、エレベー夕駆 動用電動機として、既設の経年直流 電動 機を 流用 することを前提とし、これに電カを供給 する電力変換器とその制御装置に新 たな 方式 を立 案・適用することにより所要の目標を達 成している。提案する電力変換器と して は、 安価 なサイリスタを用いて有効電カを削減す るサイリスタコンバー夕方式と、自 己消弧素子であるGTO   (Gate Turn Off thyristor)を用いてカ率を向上させることにより無 効電カを削減するGTOコンバー夕方式を提案している。

  サ イリ スタ コンバー夕方式では、界磁電流を定格値 に一定とし、電機子電流を正負両方 向に 切り 換え る従 来の サイ リス タレ オ ナー ド方 式の 問題 点で ある 低トルク領域の無駄な 電力 損失 を低 減しうる方式を提案している。っまり、 トルク指令の小さい領域で、電機子 電流 を定 格値 よりも小さい値に一方向・一定値に制御 し、トルク指令に応じて界磁電流を 正負 両方 向に 制御し、トルク指令の大きい領域では、 界磁電流を正または負の定格値に一 定制 御し 、ト ルク指令の絶対値に応じて電機子電流を 一方向に増減させる銅損低減化方式 を提案している。これにより、近代化更新処理前の電動発電機方式ど比較して26.5〜38.5%、

一 般 的な サイ リ スタ レオ ナー ドに よる 更新 方式 より も約7%程 度有 効電 カを 削減 でき る ことを実験等により確認している。

  GTOコ ン バ ー 夕 方 式 で は 、 従 来 の6個 のGTOを 用 い た フ ル ブ リ ッ ジ 方 式 で 問 題 と な って いた 、最 小パルス幅の制限から生じる低出力時の 跳躍現象によるトルクショックを解 決す る方 式と して、パルス幅制御と位相制御の併用方 式を提案し、エレベ一夕制御への本 方式 の適 用を 可能とした。さらに、変換器のコストア ップを最小限とするため、上側アー ム を3個 のGT O.下 側 ア ー ム を3個 の サ イ リ ス タ で 構 成 す る 混 合ブ リッ ジ方 式と レて 、 シス テム の原 価上昇を抑制している。そして、この提 案方式により、コンバータの円滑な 出力 発生 と高 力率化が達成されることを地上等価装置 で確認している。さらにこの方式を エレ ベー 夕制 御に 適用 し、 階床 間の 往 復運 転実 験に より 約60%の 皮相電カの低減効果が 上げられることを確認している。

  省 電力 化の 検 討と あわ せて 、サ イリ スタ コン バー 夕方 式とGTOコ ンバ ー夕 方式 に対 し

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て高品質制御の検討もそれぞれ行っている。

  サ イリ スタ コンバー夕方式に対しては、 乗りかごの縦振動を回避しうる制御系設計法、

制御 用移 相器 との関係で電動機騒音の抑制 効果を十分に発揮しうるフアルタの設計法、提 案の 制御 方式 に適した流用電動機の諸仕様 、サイリスタの故障モードの如何にかかわらず 故障 を検 出し うる保護回路などを提案する とともに、実機を用いた実験によりその効果を 確認し、高品質制御の可能性を示している。

  GTOコン バー 夕方 式 に対 して は、 自己 消弧 動作 に伴 う過 電圧 の発 生機 構の 解 明と その 抑制 方式 の提 案により、システム自体を実 現可能なものとしている。さらに、高調波抑制 用フ ィル タの 設計 法に つい て吾 及し 、電 源 高調 波を サイ リス タコ ンバー夕方式の約50% へと低減し、公害的な要素の改善を示唆している 。

  次 に、 近代 化更新エレベータにおける直 流電動機の流用という制約をはずし、誘導電動 機を 用い た新 設エレベータに対する省電力 ・高品質制御についても新たな提案を行った。

ここ では 、セ ンサ個数や帰還信号の本数が 少ないことから構造的に本質信頼性の高い電流 型コンバー夕・インバー、夕を取り上げ、エレベ ー夕制御への適用に必須な二項目について 検討を加え、電流型システムの実用化に成功して いる。

  第一は、トランジスタを駆動する正弦波P WM( PulseW―idth Modulation)信号の新たな作 成法 を提 案し た。その他、電源環境に悪影 響を与える高調波電流や、乗り心地を損なうト ルク 脈動 を低 減レうる波高値分配アルゴリ ズム、コンバー夕制御に対して電源位相の推定 値を 補正 する ことにより電源同期を簡便に 行う同期処理アルゴリズム、インバー夕制御に 対して正弦波的にパルスを間引くPF M( PulseF―requency Modulation)制御の併用などの新 手法 を提 案し た。 これ によ り、 電源 高調 波 をサ イリ スタ コン バー 夕方式の約25%に、ト ル ク 脈 動 に よ る 縦 振 動 を 乗 客 が 感 知 で き な い レ ベ ル に ま で 改 善 で き た こ と を 示 す 。   第二は、電源遮断時の過電圧抑制手法の確立で ある。停電等による通電中の電源遮断は、

電力 変換 器を 構成するトランジスタを破壊 するため、これに備える保護回路の実現は電流 型システムの要である。本論文では、中小容量の システムにはアレスタを用いた回路方式、

超高 速工 レベ ータ のよ うな 大容 量シ ステ ム には コン デン サク ラン プ方式による保護方式 を提案し、実験によりその過電圧抑制効果を検証 している。

  さ ら に 、 速 度 が600m丿 分 を 越 え 、 行 程 が500mに 至 る よ う な 超 々 高 速 エ レ ベ ー タ の高 品質 制御 を実現するための電気分野の 重要技術として、乗りかごの新たな振動抑制方 式を提案し、その効果を実験により確認している 。.

  第 一は 、乗 りかごの横振動抑制制御法で ある。ここでは、乗りかご側に取り付けた電磁 石と 走行 案内 レー ルと の間 の空 隙帰 還制 御 と乗 りか ごの 加速 度帰 還制御との融合という 従来 にな い方 式を提案した。そして、シミ ュレータと実規模等価試験装置を用いた実験に よ り 提 案 方 式 が 目 標 で あ る 速 度810m/ 分級 のエ レベ ータ まで 有効 に動 作す る こと 、さ らに 、レ ール の据え付け精度の緩和が可能 であり、工事期間削減などの波及効果を有して いることを示している。

  第 二は 、乗 りかごの縦振動抑制制御法で ある。ここでは、工レベータの行程が長くなる こと によ り、 低周波数化するロープ系固有 振動数と速度制御系との共振回避手法を新たに 提案 して いる 。制御方式として、電気系の みの簡易工レベ一夕モデルを速度制御系内に備 え、 この 出カ と実機から検出レた速度信号 との差信号を振動抑制制御に用いる手法を提案 して いる 。そ レて、シミュレーションと長 いロープをバネで模擬した等価実機試験装置を 用いた実験によりその抑制効果を検証している。

  最 後に 、提 案した種々の技術により構成 される高速・超高速工レベータが日立工レベー タの 主力 機種 として実用化されていること 、超々高速エレベータが他の機械分野の技術開 発 完 了 と と も に 実 用 化 可 能 な 状 況 に あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    土 谷 武 士 副 査    教 授    長 谷 川    淳 副 査    教 授    島    公 脩 副 査    教 授    大 西 利 只

学 位 論 文 題 名

高速・超高速エレベータの省電力・高品質制御に関する研究

  近 年 、 各 種 の 産 業 機器 分野 で省 電力 、高 品質 制御 に関 する 研究 が活 発に 行 われ てい る。

高 層 ビ ル 内 の 重 要 な 縦方 向の 交通 機関 であ るエ レベ ータ にお いて も、 高力 率 でか つ少 ない 有 効 電 カ で 運 転 が 可 能で ある こと 、及 び、 乗客 を快 適に 低公 害な 性能 で目 的 階に 安全 確実 に送 りと どけ る手 法に つい て の検 討が 進め られ てい る。 しかしながら、その現状を見ると、

す で に 稼 働 中 の 十 数 万台 にの ぼる 老朽 既設 エレ ベー タの 近代 化更 新法 への 開 発の 取り 組み は 皆 無 で あ る 。 ま た 、新 設エ レベ ータ にお いて も、 保守 作業 にお ける 制御 技 術の 一元 化を 念 頭 に 置 い た 系 統 的 な開 発や 、将 来シ ステ ムで ある 超高 行程 ビル 向け 超々 高 速エ レベ ータ ヘの 取り 組み につ いて も不 十 分で ある と言 える 。

  本 論 文 は 、 老 朽 エ レペ ータ の近 代化 更新 に関 し、 既設 直流 電動 機の 流用 に 着目 し、 省電 力 ・ 高 品 質 特 性 を 新 たに 付与 しう る電 力変 換器 (コ ンバ ー夕 )と その 制御 装 置を 提案 した 点 、 ま た 、 新 設 エ レ ペー 夕用 イン バー 夕方 式と して 、老 朽エ レベ ー夕 更新 用 コン バー 夕方 式 の 延 長 線 上 に 共 通 技術 とし て位 置付 ける こと がで きる 電流 型イ ンバ ータ シ ステ ムを 実用 化 し た 点 、 さ ら に は 、超 高行 程シ ステ ムに おけ る乗 りか ごの 振動 抑制 に対 し て斬 新な 手法 を提 案し た点 など 極め て技 術 的に 意義 深い もの があ る。

  特 に 、 コ ン バ ー 夕 方式 につ いて は、 従来 のサ イリ スタ レオ ナー ド方 式に 対 して さら に踏 み 込 ん だ 検 討 を 行 い 、エ レベ ータ シス テム に格 好な 低出 力時 の不 要な 損失 を 一層 低減 した サイ リス タコ ンバ ータ シス テ ムを 提案 する とと もに 、あ わせて保護回路、騒音抑制法ナょど も 提 案 し て シ ス テ ム 完成 度を 高め てい る。 さら に、 この サイ リス タコ ンバ ー タシ ステ ムの 一 部 素 子 を 自 己 消 弧 素子 に置 換し 、最 小パ ルス 幅の 制約 を解 消す る新 制御 法 を提 案し 、無 効 電 カ を 半 減 し う る コン バー 夕方 式に まで 議論 を拡 張し 、老 朽エ レベ ー夕 更 新時 の選 択肢 を 広 げ て い る 。 ま た 、新 設エ レベ ータ に適 用す るイ ンバ 一夕 方式 につ いて も 、コ ンバ ー夕 方 式 と 同 類 の 技 術 的 扱い が可 能な 電流 型シ ステ ムを 取り 上げ 、そ の実 用化 上 の最 大課 題と な っ て い た 正 弦 波 入 出力 制御 方式 と停 電時 など に発 生す る過 電圧 の保 護方 式 を提 案し て本 方 式 の 本 格 的 な 実 用 化に 成功 して いる 。更 に、 大深 度地 下利 用や 超々 高層 ビ ル向 けの 超高 行 程 エ レ ベ ー 夕 実 現 の為 の不 可避 課題 であ る乗 りか ごの 横・ 縦振 動抑 制に 対 して 、保 守・

調 整 上 の 波 及 効 果 を も有 する 磁気 ガイ ドと 簡易 モデ ル規 範制 御を 用い たシ ス テム を提 案す る と と も に 実 機 確 認 を 完 了 し 、 実 用 化 可 能 な レ ベ ル に 要 素 技 術 を 到 達 さ せ て い る 。   以 上の こと から 本論 文は 、 エレ ペー タシ ステ ムを 省電 力・高品質制御の観点からとらえ、

老 朽 エ レ ベ ー タ の 更 新処 理か ら、 新設 、さ らに は今 後の 超高 行程 エレ ベー タ に至 る一 連の

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流 れ の 中 で統 一 的に 扱 い 得る 新 た な電 力 変換 器 と その 制 御方 式 を 提案 し てい る 。   これを要するに、著者は、電力変換工学の応用先のーつであるエレベ一夕駆動用電力変 換機器とその制御方式について省電力化と高品質化を実現するための新知見を得たもので あ り 、 電 力 変 換 工 学 の 進 歩 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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