.博士(工学)稲川 学位論文題名
清
弾性表面波すだれ状電極の励振特性解析法の開発と その弾性表面波デバイス低損失化への応用に関する研究
学位論文内容の要旨
弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)デバイス は,現在,オーディオ・ビ デオ 機器や移動体通信機器にお いて,フアルタ,発振子など に応用され,その使用周波 数帯 は 数 十MHz帯 か ら 数GHz帯 に 及 び ,10G FIz帯 での 応用 も研 究 され てし 、る . 特に 最 近は ,移 動体 通信 第2世代 の ディ ジタ ル携 帯電 話,PHS用のデュプレクサ, フアルタ,
CDMA用 の マ ッ チ ド フ ィ ル 夕 , コ ン ボ ル バ と し て 用 い ら れ て おり |第3世 代で あるW
‑CDMAで の 応 用 も 含 め て , 移 動 体 通 信 機 器 に お け る キ ー デ バ イ ス と な っ て い る . こ のよ うな 状況 下 で,SAWデバイスはより一 層の高性能化,特に低損失化 ,小型化,
高安定化が望まれている. このため,電気機械結合係数 が大きく,温度特性に優れ た基 板の 探索 や,SAWを一 方向にのみ励振するすだ れ状電極(InterdigitalTransducer:ID T) の 開 発 も 活 発 化 し て き て い る . な か で もNSPUDT(Natural Single Phase UnidirectionaJ Transducer)と呼ばれる,電極形状が正規型でありながら伝搬方位と電極幅・
膜厚 を適 当に 選ぷ こ とで 一方 向性 が 得ら れるIDTは, 電極 構造 が 簡単で, 高周波化に 有 利 な こ と か ら , 注 目 さ れ て お り .NSPUDT動 作 可 能 な 圧 電 結 晶 ,NS PUDTと 逆 の 方 向 性 を 実 現 す る 方 向 性 反 転 電 極 の 検 討 が 活 発 に 行 わ れ て い る . さ て , こ れ ら のSAWデ バ イ ス を 設 計 す る た め に は , そ の 構 成要 素 であ るIDTや グ レーティング反射器の諸特 性を調べておく必要があり,そのための代表的な方法として,
等価回路法とモード結合理 論に基づく方法が挙げられる ,等価回路法は,電気系技 術者 にとっての扱い易さ,工学 的見通しの良さを特徴とする .一方,モード結合理論は ,そ の適 用範 囲の 広さ , 特に ,複 雑な 構 造のIDTの 勁 作記 述の 簡便 さ から,最 近,特に広 く用いられている,
と ころ で, 等価 回 路法 ある い6よモ ード 結合 理論を用いてIDTの特性解析 を行う場合 には,等価回路法において は等価回路定数,モード結合 理論においてはモード結合 方程 式中のパラメータをあらか じめ決定しておく必要がある.しかしながら,基板の異方性,
電極による電気的摂動およびj!ト性的摂勁,電極端部における非放射バルク波に起因する エネルギー蓄積効果などを すべて考慮して,これらの諸 パラメ一夕を決定すること は容 易ではない.
本 論 文 は , こ の よ う な 状 況 の も と で , 双 方 向 性 正 規 型IDT,ダ ブ ル電 極型IDT, NS PUDT, 方 向 性 反 転 電 極 と い っ た 広 範 囲 に わ た るIDTに つ いて ,基 板の 異 方性 , 電気的摂動効果,弾性的摂 動効果 工ネルギー蓄積効果 などをすべて考慮して等価 回路 パラ メー タや モー ド 結合 パラ メ一 夕 を理 論的 に決 定し |SAWデ バ イスの特 性を精度良 く評価することが可能な方 法についての研究結果をまと めたものである,具体的に は,
等価回路法と有限要素法(Finite Element .Method:FEM)を組み合わせた方法,モ ード 結 合 理 論 とFEMを 組 み 合 わ せ た 方 法 モ ー ド 結 合 理 論 と ハ イ ブリ ッ ドFEMを 組み 合 わせ た方 法を 開発 し ている,これらの方法ではI等価回路パラメー夕,ある いはモード 結合 パラ メー タを ,lDTの 電 気端 子を 短絡 ある い は開 放と した 場 合に対応 する無限長 グ レ ー テ ィン グの ス トッ プバ ンド の上 下 限の 周波 数と 電位 定 在波 分布 ,1DT1対当 り
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の静電 容量を有限要素法を用いて求 め,それらを等価回路,あ るいはモード結合方程式 から求 まる分散方程式および電位定 在波分布に適用することで 決定している.また,従 来 から 用 いら れて いる 代表 的 な双 方向 性基 板上 のSAWデ バ イス, および最近特に注目 さ れ て い るNS PUDT基 板 上 のSAWデ バ イ ス に 対 し て , 設 計 に 有 用 な 多 く の デ ー タ を提供 している.以下に本論文の概 要を示す.,・
第1章 で は , 本 論 文 の 背 景 , 目 的 , お よ び 構 成 に つ い て 述 べ て い る . 第2章 では ,双 方 向性 正規 型IDTの 励振 特性 を 精度 良く 評価 する こ とが 可能 な方 法 を開発 することを目的として,等価回路法と有限要素法を組み合わせた解析法を提案し,
そ の定 式 化を 行っ てい る. 実 際に ,代 表的 なSAW圧 電基 板 につい て特性評価を行い,
実験値 との比較から本手法の妥当性 ,有用性を確認レている.
第4章 で は , ビ ル デ ィ ン グ ・ ブ ロ ッ ク 法 を 用い て,SAW共振 器 のー つで ある1ポ 一 卜 キャ ビテ ィ型 共振 器 につ いて ,共 振特 性 ,お よびIDTとグ レ― ティ ン グの 結合長の 共 振 特 性 へ の 影 響 を 調べ てい る,1ポ ート キャ ビ ティ 型共 振器 で 用い るIDTに は正 規 型,およびダブ ル電極型を,また,グレーテ ィング反射器としては短絡グレーティング,
正 負反 射型 反射 器,SOMSA (split open metal strip array)を取り上げ ,第2章,第3 章 で導出した等価 回路をビルディング・ブ口 ック法に応用し,共振特性に ついて実験値 と良く一致する 結果を得てし、る.
第5章 で は ,SAWデ バ イ ス 低 損 失 化 の 鍵 を 握 る 一 方 向 性IDTの ー つ で あ るNSP UDTにつ いて ,Adlerら の考 察に 基づ く等 価 回路 を提 案し , 第2章 で開 発 した 手法を基 に ,有限要素法を 用いてその等価回路定数を すべて理論的に決定する方法 の定式化を行 っ て い る . 実 際 に ,STカ ッ ト25゜X伝 搬 水 晶 基 板 上 のNS PUDTに つ い て特 性 評価 を 行っている,
第6章 で は ,NSPUDTお よ び 方 向 性 反 転 電 極 の 励 振 特 性 を 精 度 良 く 評 価 す る こ と が 可能な方法を開 発することを目的とレて, モード結合理論と有限要素法 を組み合わせ た 解 析 法 を 提 案 し , そ の 定 式 化 を 行 っ て い る . た だ し ,NSPUDT基 板 にお い ては , 基 板内の電位定在 波分布に深さ方向の依存性 があるため,無摂勁状態にお ける電位の基 板 の深さ方向の分 布関数をモード結合理論に 組み込み,基板内部の電位定 在波分布を基 に モード結合理論 で必要な基板表面での電位 定在波分布を決定している. 実際に,新し い 圧 電 基 板 と し て 注 目 さ れ て い るIAGa5Si014基 板 上 のNSPUDTお よ び 方向 性 反転 電 極 について特性解 析を行い,それらの最適動 作を実現するための電極膜厚 に関する設計 指針を与えてし 、る,
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
弾性表面波すだれ状電極の励振特性解析法の開発と その弾性表面波デバイス低損失化への応用に関する研究
弾性表面波(SurfaceAcousticWave:SAW)デバイスは,現在,ディジタル携帯電話,
PHS(PeBonaJHmdyphoneSystem)など ,移動体通信機器のキーデバイスとして多用 されてい るが, 最近ではCDMA(のdeDivisionMuniplexingAcc髑)やW(Wide)―C DMAといった次世代移動体通信への応用も活発化している.
このため,SAWデバイスは,より一層の高性能化,特に低損失化が望まれており,電 気機械結合係数が大きく,温度特性に優れた基板の探索や,SAWを一方向にのみ励振す るすだれ状電極(Interdigit甜Tr郷ducer:IDT)の開発が急務となっている.なかでもN SPUDT(Natura亅SinglePh謎eUnidぬdion甜Tramducer)と呼ぱれる一方向性IDTは,
電極構造 が簡単で,高周波化に有利なことから注目されており,NSPUDT動作可能な 圧電結晶 ,NSPUDTと逆の方向性を実現する方向性反転電極の検討が活発に行われて いる.
本論文は,このようナょ状況のもとで,双方向性正規型IDT,ダプル電極型IDT,N SPUDT,方 向性反 転電極と いった 多岐にわ たるIDTに対し て,基板 の異方性,電気 的摂動効果,弾性的摂動効果,エネルギー蓄積効果をすべて考慮し,SAWデバイスの特 性を精度良く評価することが可能な解析法にっいての研究結果をまとめたものである.ま た,従来から用いられている代表的な双方向性基板上のSAWデバイスはもちろんのこと,
最近 特 に 注目 されて いるNSPUDT基板 上のSAWデパイ スに対 して,設 計に有 用な多 くのデータを提供している.以下に本論文の構成を示す.
第1章 で は , 本 論 文 の 背 景 . 目 的 , お よ び 構 成 に つ い て 述 ぺ て い る . 第2章では,双方向性正規型IDTに対して,等価回路法と有限要素法を組み合わせた 解析法を提案し,代表的なSAW圧電基板について励振特性評価を行い,実験値との比較 から本手法の妥当性,有用性を確認している.
第3章では,第2章で開発した手法をダプル電極型IDTに応用し,その等価回路定数
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小
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授
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査
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主
副
副
副
を理論的に決 定する方法について述べて いる.等価回路定数の決定に おいては,まず,等 価回路パラメ ータのーつである特性アド ミタンスの不整合量について ,同じ電極幅の正規 型IDTの 値 を 用 い る 根 拠 を 示 し , こ れ を 基 に 残 る 回 路 パ ラ メ ー タ を 決 定 し て い る . 第4章 で は , ビ ル デ ィ ン グ ・ プ 口ッ ク法 を用 い て,SAW共振 器の ーつ であ る1ポー ト キ ャビ ティ 型共 振 器の 共振 特性 ,お よ びIDTと グレ ーテ ィン グと の 間の結合長の共振特 性 へ の 影 響を 調べ てい る,1ポ ート キ ャビ ティ 型共 振器 で 用い るIDTに は正 規型 およ び ダプル電極型 を,またグレーティング反 射器としては短絡グレーティ ング,正負反射型反 射 器,SOMSA (Split Open Metal Strip Array)を 取り 上げ ,第2章 ,第3章で導出した 等価回路をビ ルディング・プ口ック法に 応用し,得られた共振特性が 実験値と良く一致す ることを示し ている.
第5章 で は ,SAWデ バ イ ス 低 損 失 化 の 鍵 を 握 る 一 方 向 性IDTの ー つ で あ るNSPU DTの 等 価 回路 定数 をす べて 理 論的 に決 定す る方 法 につ いて 述べ る とと もに ,STカッ ト 25゜X伝 搬 水 晶 基 板 上 のNS PUDTに つ い て , そ の 励 振 特 性 を 詳 細 に 調 査 し て い る . 第6章 で は ,NSPUDTお よ び 方 向 性 反 転 電 極 に 対 し て , モ ー ド 結 合 理 論 と 有 限 要 素 法を組み合わ せた解析法を提案し,新しい圧電基板として注目されているLa3 Gas.i014基板 上 のNSPUDTお よ び 方 向 性 反 転 電 極 の 特 性 解 析 を 行 い , 最 適動 作 実現 のた めの 電極 膜 厚に関する設 計指針を与えている.
第7章 で は, 第6章の 方法 では 対応 が 困難 な実効的電気機械結合 係数の大きな基板上の NSPUDTや 方 向 性 反 転 電 極 に 対 し て , モ ー ド 結 合 理 論 と ハ イプ リ ッド 有限 要素 法を 組 み合わせた解 析法を提案している.また ,Iち蝕声i014基板,あるいはbQ5.5Nb015014基板 上 のNSPUDTお よ び 方 向 性 反 転 電 極 に つ い て , そ れ ら の 諸 特性 の 電極 形状 依存 性を 詳 細 に調 査し ,よ り 低損 失な 方向 性反 転 電極 構造 を見 い 出す など ,SAWデパイス低損失化 に有用な知見 を得ている.
第8章では ,本研究で得られた成果の総 括を行っている.
これを要す るに,著者は,移動体通信 機器のキーデパイスになって いる弾性表面波すだ れ状電極の励 振特性を高精度かつ高効率 で評価することが可能な解析 法を開発するととも に,双方向性 のみならず一方向性の電極 も含めて,弾性表面波デバイ スの低損失化を図る うえで有益な 新知見を得たものであり, 情報通信工学の分野に貢献す るところ大なるもの がある.よっ て著者は,北海道大学博士 (工学)の学位を授与される 資格あるものと認め る,
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