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博 士 ( 工 学 ) 名 村 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 工 学 ) 名 村 学 位 論 文 題 名

有道床軌道の繰返し変形特性と評価法に関する研究 学位論文内容の要旨

  鉄道における軌道構造は,道床バラストと呼ばれる単粒度砕石を用いた「有道床軌道」になって い る場合が 多い. 有道床 軌道材 料としての道床バラストは,稜角に富み適度な剛性を保持してい る,しかし,多いところでは年間数百万回にも達する列車走行による繰返し荷重を受けることによっ て,道床バラストの摩耗や破砕による細粒化が生じ,さらには側方への移動などにより,軌道に不 同沈下をもたらす.これを,軌道狂いと呼んでいる.軌道狂いが進行すると,車両の走行安定性は 損なわれ,車体動揺が増加して乗客の乗り心地は悪化する,また,軌道狂いがある限度を超えると,

車体の動揺に伴う慣性カの増大により列車脱線の危険性も生じることになる,このため,従来から 軌 道狂いの 管理・ 修復基 準等が 考案され,定期的なモニタリングによって軌道狂いが一定の値を 超えていることが明らかになった場合には,その修復が行われてきた.

  こ のよう な状況 の中で,1997年1月 より, 現用線 路の大 部分(JR全 線の約90%)を占める有道 床 軌道に対 しては 軌道部 材個々 の部分 的な改 良や保 守方法 の改善に より軌 道の破壊・劣化の進 行 を抑制化 しうる 有道床 軌道の 設計標 準が試 行され ている .この設 計標準 では,車両走行特性

( 走行安全 性およ び乗り 心地) や軌道整正周期等の条件設定に基づく軌道狂い進みの許容値と,

軌道構造と車両・運転条件から得られる軌道狂い進みの推定値とを比較検討することにより,想定 した軌道構造の妥当性を判断する方法を採ることとしており,これが本設計標準のーつの特徴とな っている.

  有 道床 軌 道 の 設計 標 準 の 策定 に あたっ ては,JR在来線 の直線 部で標 準的に 使用さ れている PCま くらぎ につい て,実物 大軌道による道床バラストの繰返し変形特性に関する系統的な試験と して,最大荷重に着目して行われた.このため,本設計標準では,この試験結果に基づき定められ た 道床部沈 下量の 予測式 の適用 範囲は ,厳密 には本 試験条 件と類似 した荷 重条件・軌道構造に 限定されることになる.従って、荷重条件・軌道構造が多様化し,よルフレキシブルな軌道構造のパ フ オーマン スが望 まれる 現状に おいて合理的な軌道構造設計を行うには,種々の設計条件に対し て道床部の沈下量を精度よく推定する手法の確立が必要不可欠となる.

  このような背景から,本研究では,まず種々の設計条件のうち走行荷重列およびまくらぎ形状に 着目して上下方向の繰返し載荷試験を行い,道床バラストの繰返し変形特性を詳しく調べている.

さらに,まくらぎと道床間の接触条件の相違が道床バラストの繰返し変形特性に及ぼす影響を明確 にしている,  .

  本研究は,全7章から構成され,各章の概要は以下のとおりである.

  第1章 では ,鉄道線 路の現 状と研 究の背 景につ いて述 べ,本 研究が 地盤工学 や鉄道 工学に 果     ―37―

(2)

たす役割と意義について論じている.そして,研究の目的とその内容・構成について概説している   第2章では,軌道破壊 理論,道床バラストの石質基 準および軌道構造設計手法 に関する従来の 研究動向を紹介している.

  第3章 では ,実 軌道 に おけ る列 車通 過時 の 荷重―変位関係からもとめ られた走行荷重列下の 繰返し載荷試験を行い, 道床バラストの繰返し変形 特性を調べている.その結果,くD実際の2軸 台車 毎の 荷重 列 を想 定した場合,前軸除荷 ・後軸載荷による荷重・変位 振幅は荷重列間隔が短 いため僅かなものとなる,◎荷重は前後軸間で完全には除荷されないことから,まくらぎ/道床間 に隙間が生じにくいため ,これによる道床沈下量の 増分は極めて小さい,◎道床沈下量の大半は 台車単位の載荷によるも のであり,まくらぎ/道床 間の一部に微小な隙間が生じた状態から顕著 になる,等の事実が明らかにされている.ここで,少ない荷重繰返し数の載荷試験結果に近似式を 適用して道床沈下量をも とめる場合,従来用いられ てきた算定式では所定の予測精度が得られな い可能性があり,べき乗則にもとづく算定式の方が合理的であることを指摘している.さらに,荷重 列間 隔が 短い 場 合に 想定される最小荷重が 大きい場合についても,荷重 振幅および荷重繰返し 数 の 関 数 と し て 道 床 沈 下 量 を 式 示 す る と と も に , そ の 有 用 性 を 明 ら か に し て い る .   第4章 では ,実 物大 模型軌道のまくらぎ下 面に2方向ロードセルを配置 して,一連の繰返し載 荷試験を実施し,まくらぎ下面応カと繰返し変形特性の関係を調べている.その結果,現行まくら ぎ軌道の沈下機構は,拘 束圧の低いまくらぎ端部に 大きな下面直応カとまくらぎ端部方向への下 面せん断応カが作用するため,まくらぎ端部下の道床部が局所的に降伏することによるとして説明 を試みている.また除荷時には,まくらぎ/道床間に隙間が生じるようになるとともに,道床部の剛 性低下も生じるため繰返し荷重による沈下が進行することになるとしている,このことはさらに,試作 した下面の摩擦係数を増加させたまくらぎについて繰返し載荷試験を行いに,道床バラストの繰返 し変形特性に及ばす影響 を明示することにより検討 している,その結果,微小ひずみレベルの繰 返 し 変 形 特 性 に 及 ば す ま く らぎ 下 面の 粗滑 の影 響 は極 めて 小さ ぃこ と が実 証さ れて いる .   第5章では,数値解析 を進め,道床バラスト内の応 力分布に及ぼすまくらぎの 形状の影響を考 察している.その結果,たわみ性まくらぎの場合,まくらぎ長さを長くしても道床内最大せん断応カ は常にレール直下に生じ るため,道床内最大せん断 応カを減少させる効果はほとんどなぃことを 見出している.しかし,まくらぎにある程度の剛性が確保されている場合には,道床内最大せん断 応カはまくらぎ端部下に生じるため,まくらぎ長さを長くすることにより道床内最大せん断応カを減 少させることができることを明示している.

  第6章では,第5章の解析結果にもとづき数種類の試験用まくらぎを製作し,道床バラストの繰返 し変形特性を調べている,その結果,現行まくらぎ(長さ2.Om)と比較した場合,長さを2.6mとする ことにより,平均沈下量 が46%に,不同沈下量が9%に減少しており,大きな沈下抑制効果が得ら れることを明らかにしている.さらに道床突固め範囲を最適化することにより,長さ2.3mのまくらぎ でも,同等の沈下抑制効果が得られることを示している.

第7章 で は , 各 章 で 得 ら れ た 知 見 を 総 括 し , 今 後 の 課 題 と 展 望 を 述 べ て い る .

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学位論文審査の要旨 主査    教授    三浦清一 副査    教授    石島洋二 副査   教授   三田地利之

学 位 論 文 題 名

有道床軌道の繰返し変形特性と評価法に関する研究

  

鉄 道で は 、 一般 に 単 粒度砕石 を主体 とした道 床バラ スト上に 軌道を 設けるい わゆる「 有 道 床 軌 道」 構 造 を採 用 す るこ と が 多い 。 た とえ ば

JR

関係 で は 、保 有 施 設の 約

90

%を占 め て い る 。こ の よ うな 有 道床軌 道材料 としての 道床バ ラストに は、稜角 に富み 適切な剛 性を 保 持 し てい る こ とが 求 められ ている 。しかし 、多い ところで は年間数 百万回 にも達す る列 車 走 行 によ る 繰 返し 荷 重は、 道床バ ラストの 摩耗や 破砕によ る細粒化 を生じ せしめ、 さら に は 側 方へ の 移 動な ど により 、軌道 に不同沈 下をも たらす。 これは、 「軌道 狂い」と 呼ば れ て い る。 こ の 現象 が 進行す ると、 車両の走 行安定 性は損な われ、車 体動揺 の増加に より 乗 り 心 地は 悪 化 し、 さ らに軌 道狂い がある値 を超え ると、車 体の動揺 に伴う 慣性カの 増大 に よ り 列車 脱 線 の危 険 性も生 じるこ とになる 。この ため、従 来から有 道床軌 道の管理 ・修 復 基 準 等が 考 案 され 、 定期的 なモニ タリング によっ て軌道狂 いに対応 してき ているが 、具 体 的な標準 値の設 定など検 討すべき 事項は 少なくな い。

  

こ のよ う な 背景 か ら 、本研究 では、 まず種々 の設計 条件のう ち走行 荷重列お よびまく ら ぎ 形 状 を変 化 さ せて 一 連の繰 返し載 荷試験を 行い、 道床バラ ストの変 形特性 とその評 価法 を 詳 し く調 べ て いる 。 さらに 、まく らぎと道 床間の 接触条件 の相違が 道床バ ラストの 繰返 し カ学特性 に及ば す影響を 明確にす ること を目指し た。

  

本 論 文 は

7

章 か ら 構 成 さ れ 、 各 章 の 概 要 と 主 た る 結 論 は 以 下 の と お り で あ る 。

  

1

章 で は 、本 研 究 の目 的 と その 工 学 的な 背 景 とと もにその 内容・ 構成につ いて概説 し て い る 。特 に 、 鉄道 線 路の現 状と研 究の背景 につい て詳述し 、本研究 が地盤 工学や鉄 道工 学 に果たす 役割と 意義を論 じている 。

  

2

章 で は 、軌 道 破 壊理 論 、 道床 バ ラ スト の 石 質基 準および 軌道構 造設計手 法に関す る 従 来の研究 動向を 紹介して いる。

  

3

章 で は 、実 軌 道 にお け る 列車 通 過 時の 荷 重 ―変 位関係か らもと めた走行 荷重列下 の 繰 返し載荷 試験を 実施し、 道床バラ ストの 沈下挙動 を調べ ている。その結果、@前軸除荷・

後 軸 載 荷に よ る 荷重 ・ 変位振 幅は荷 重列間隔 が短い ため僅か なものと なる、 ◎荷重は 前後 軸 間 で 完全 に は 除去 さ れない ため、 道床沈下 量の増 分は極め て小さぃ 、◎道 床沈下量 の大 半 は 台 車単 位 の 載荷 に よるも のであ り、まく らぎ/ 道床間の 一部に微 小な隙 間が生じ た状 態 か ら 顕著 に な る、 等 の事実 が明ら かにされ ている 。ここで 、列車荷 重の繰 返し数が 少な い 場 合 にお い て 道床 の 沈下量 が問題 になるよ うなケ ースでは 、従来用 いられ てきた算 定式 は 所 定 の予 測 精 度を 保 持でき ない可 能性があ ること を指摘し ている。 これら の事実に 基づ

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いて、新たにべき乗則による算定式を提示し、予測精度の向上を図っている。荷重振幅お よび荷重繰返し数の関数として式示された道床沈下予測式は、荷重列間隔が短い場合に想 定される最小荷重が大きい場合についても、実挙動を良く説明することができることを明 らかにしている。

  

第4 章では、実物レベルの模型軌道において、一連の繰返し載荷試験を実施し、まくら ぎ下面応カと繰返し変形特性の関係を調べている。その結果、現行まくらぎ軌道の沈下機 構は、拘束圧の低いまくらぎ端部に大きな下面直応カとまくらぎ端部方向への下面せん断 応カが卓越するため、まくらぎ端部の道床部が局所的に降伏することによるものとして説 明できるとしている。また除荷時には、道床部の剛性低下も生じるため、繰返し荷重によ る沈下が進行することになることを見出している。さらに、試作した下面の摩擦係数を増 加させたまくらぎについての繰返し載荷試験から、道床バラストの繰返し変形特性に及ば す影響を明示することに成功している。その結果、微小ひずみレベルの繰返し変形特性に 及 ば す ま く ら ぎ 下 面 の 粗 滑 の 影 響 は 極 め て 小さ く なる こ と を明 確 に して い る。

  

第5 章では、道床バラスト内の応力分布に及ばすまくらぎ形状の影響について、数値解 析を展開している。その結果、たわみ性まくらぎの場合、まくらぎ長を大きくしても道床 内の最大せん断応カは常にレール直下に生じることになるため、その最大せん断応カを減 少させる効果はほとんどないことを見出している。一方、まくらぎにある程度の剛性が確 保されると、まくらぎ長を長くすることにより道床内最大せん断応カを減少させることが できることを示している。

  

第6 章では、第5 章の解析結果にもとづぃて数種類の試験用まくらぎを製作し、まくら ぎの形状差による道床バラストの繰返し変形特性の変化を調べている。その結果、まくら ぎ長の適切な選択と道床突固め範囲の最適化により、顕著な沈下抑制効果が得られること を実証するとともに、前章の解析結果の妥当性を示している。

  

7

章 で は、 各 章で 得 ら れた 知 見を 総 括 し、 今 後 の課 題 と展 望 を 述べ て いる 。

  

これを要するに、著者は、これまで未解明であった列車走行による道床バラストの繰返 し変形特性を一連の実験と解析によって明らかにするとともに、実用的な道床の沈下予測 式の提案を行い、さらにはまくらぎと道床間の接触条件の相違が道床バラストの変形特性 に及ぼす影響について貴重な知見を得ており、地盤工学および鉄道工学の発展に貢献する ところ大なるものがある。

  

よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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