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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博士 ( 地 球 環 境科学 )黒沢 令子

Disturbance‑induced biodiversity and niche relationships in bird communities inhabiting early successional habitats,       with implications for conservation

( 遷 移初 期 環境 の 鳥 類群 集 にお い て撹乱が もたらす 種多様性 と     ー ッ チ関 係 ,お よ び 保全 上 の意 義 )

学位論文内容の要旨

中規模 の自然撹 乱は、一方的に進む植生遷移に作用して一時的に開削地を作ることによっ て、遷移初期およぴ中途群集の存立を可能にさせ、その結果生物多様性をもたらすことが知ら れている。この概念は、生態学に韜いては1980年代にはすでに提唱されていたものだが、一 般社会における認識度はまだ低く、行政の施策に活かされているとはいえないのが現状である。

日本などの湿潤温帯地域では、洪水などの自然撹乱は陸上において開削地をもたらす最も大 きな撹乱因だと考えられるが、現在、洪水が人為的に抑止されるようになってきた。その結果、

河川敷などでも植生遷移が進み、開けた空間が維持されなくなっている。そこで、遷移初期環 境のような一時的な生息環境に適応した生物群集があるかどうかを確認し、またその共存の様 式を知ることは、その地域に特有の生物多様性を保全・維持する上で、重要と考えられる。そこ で、本研究では移動能カに富み、新しく出現した環境にいち早く反応を示す可能性のある鳥 類群集について、環境撹乱の意義と資源利用様式の生息環境ごとの違いを明らかにすること を目的として調査を行った。

まず、 北海道の 石狩低地帯と近傍で河川敷や火山の噴火口などの自然撹乱を被っていると 考えられる生息環境において、鳥類が繁殖期に利用しているハビタットの種類とそれぞれに特 有な鳥類群集を区分した。ハビタットの利用様式の違いにっいては、なわばり行動と採食行動 の両面から検討した。また、群集内の種間で資源利用の様式を比較するために、水平方向と 垂直方 向におけ る採食空間の違い、およぴ採食行動様式と採っていた食物内容の違いのニ っの側面からニッチ幅とニッチ重複度を比較した。

その結 果、遷移 初期段階の裸地、草原、低木林にそれぞれ適応した特長的な鳥類群集の存 在が確認された。草原では同一のハビタット空間でなわばりをもち、採食する種が多かったが、

低木林では、樹上でなわばり行動を行うが、採食は地上で行う種も含まれていた。裸地では地 表面に専門化した群と空中に専門化した群という空間の高さ方向にすみわけて利用する方式 が見られた。  ―1325ー

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生 息 環 境の 維持 に撹 乱体 制が 関 与し てい るこ とが 認め られ 、撹 乱体 制の 違い によ り鳥 類 群集 の構成も異なっていた。裸地依存群は、セキレイ科とシギ・チドリ類で、ユーラシアに広く分布す る種によって構成されていた。洪水がおきてから10年 前後経った場所は草原もしくは、ヨシ・ヤ ナ ギ の 低層 湿原 にな り、 草原 性 鳥類 の種 多様 性が 最も 高か った 。低 層湿 原を よく 利用 す る種 は、 極東 地域 に狭 い分 布を 示す 種を 含ん でお り、 固有性が高かった。また、まばらな植生が風 衝 に よ って 維持 され てい る海 浜 植生 でも 裸地 と草 原性 の多 様な 鳥類 によ る群 集が 成立 し てい た。 火山 活動 と地 殻変 動は 乾性 ブッ シュ の種 と、 樹洞性の種の多様性に寄与していた。大陸の 乾燥 地域 では 野火 によ って 維持 され る生 態系 のあ ることが明らかになっているが、火山地帯で は、 噴火 とそ れに 伴う 地殻 変動 など の撹 乱に よっ て維持される生態系の存在が示唆された。ま た、ブッシュ一低木に依存性の高い種群(ベニマシコ、モズ、コムクドリ、ヒヨドリ)が認められた。

これ らは 従来 、低 木依 存種 群と して 認知 され てこ なかったが、いずれも極東地方に狭い分布を もつ 種で あり 、こ の地 域の 種多 様性 を維 持す る上 で重要な指標となる可能性がある。今後の詳 しい 生態 研究 が期 待さ れる 。ま た、 草食 動物 によ る喫食は草原の草丈を短く保つ可能性がある ことから、大型動物による撹乱が開削環境を維持する機能として重要とされている地域もあるが、

本 調 査 地域 の鳥 類多 様性 には 寄 与し てお らず 、む しろ 負の 影響 を与 えて いた 。お そら く 当地 域 で は 、生 態系 にお いて 大型 草 食哺 乳類 が大 きな 役割 を演 じて こな かっ たの で、 それ に 適応 した鳥類が進化しなかったのではないかと考えられる。

裸 地 や 空 中 な ど の 食 物 の 少 な い 生 息 環 境 を 利 用 す る 群 集 で は ニッ チ幅 が狭 く、 空間 あ るい は食 物ニ ッチ 軸の うち いず れか にお いて 資源 を分 割をしている状態が見られた。一方、草原や 低 木 林 のよ うに 植生 が豊 かで 食 物の 量や 多様 性が 多い 所で は、 群集 内の 種は 似た よう な 食物 を同 じよ うな 空間 で採 食し て共 存し てい た。 食物 資源の量と多様性が多ければ、ニッチを細分 化することなしに、ジェネラリスト同士による共存が可能だが、食物資源の量・質ともに制限のあ る 環 境 で は 、 生 息 す る 種 は 狭 い ニ ッ チ に 専 門 化 す る し か な い の か も し れ な い 。 こ の よ うに 遷移 初期 の開 けた 環 境の 鳥類 群集 では 、資 源の 量と その 存在 様態 によ って 、 ジェ ネラリストの共存とスペシャリストの共存というニつ の群集成立機構が見られたが、生息環境が 縮 小 す ると 、前 者で は種 問競 争 が、 後者 では 種内 競争 が激 化し て、 群集 の多 様度 が低 下 する 可 能 性 が示 唆さ れる 。そ こで 、 開け た環 境に 依存 する 種の 生物 多様 性の 維持 のた めに は 、適 度の 自然 撹乱 を許 容し て、 洪水 や噴 火跡 をそ のま まに保存したり、もしくはそれを模した人為 的管 理に よっ て開 けた 生息 環境 を維 持す る方 法が とられる必要があると考えられる。本研究で 明らかになった一連のハビタットを異にする鳥類群を 指標として、その生息環境の現状を把握、

船よ ぴモ ニタ リン グし てい くこ とで 、遷 移初 期段 階に紹ける鳥類の種多様性を維持する実践的 な方向性が開けるものと期待される。

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学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査   教授   戸田正憲 副査   教授   日浦   勉 副査   助教授

  

露崎史朗

副査   教授   樋口広芳(東京大学大学院農学

    

生命科学研究科)

Disturbance‑induced biodiversity and niche relationships in bird communities inhabiting early successional habitats,        with implications for conservation

(遷移初期環境の鳥類群集において撹乱がもたらす種多様性と     ーッチ関係,および保全上の意義)

  中規模の自然撹乱は、一方的に進む植生遷移に作用して一時的に開放地を作ることによ って、遷移初期および中途群集の存立を可能にさせ、その結果、生物の生息空間の複雑性,

ひいてはその種多様性を促進・維持することが知られている。この生態学上の概念は、

1980年代に提唱されたものだが、一般社会における認識度はまだ低く、自然保護行政等 の施策に活かされているとはいえないのが現状である。日本などの湿潤温帯地域では、洪 水などの自然撹乱は陸上において開放地をもたらす最も大きな撹乱因だと考えられるが、

現在では、洪水が人為的にかなりの程度抑制されるようになってきている。その結果、河 川敷などでも植生遷移が進み、開けた空間が維持されなくなっている。そこで、遷移初期 環境のような一時的な生息環境に適応した生物群集の存在を確認し、またその共存の様式 を知ることは、その地域に特有の生物多様性を保全・維持する上で、重要と考えられる。

申請論文は、移動能カに富み、新しく出現した環境にいち早く反応を示す可能性のある鳥 類群集について、環境撹乱の意義と資源利用様式の生息環境ごとの違いを明らかにするこ とを目的としたものである。

  成果として、まず、河川敷や火山の噴火口などの自然撹乱を被っていると考えられる生 息環境において、鳥類が繁殖期に利用しているハピタットの種類とそれぞれに特有な鳥類 群集を明示的に区分した点が挙げられる。生息環境の維持に撹乱体制が関与していること が認められ、撹乱体制の違いにより鳥類群集の構成も異なっていた。荒地依存群は、セキ レイ科とシギ・チドリ類で、ユーラシアに広く分布する種によって構成されていた。洪水 後の草原やヨシ・ヤナギの低層湿原では、草原性鳥類の種多様性が最も高かった。低層湿 原をよく利用する種は、極東地域に狭い分布を示す種を含んでおり、固有性が高かった。

また、まばらな植生が風衝によって維持されている海浜植生でも、荒地と草原性の多様な

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鳥類に よる群集 が成立し てい モズ、 コムクド リ、ヒヨ ドり れてこ なかった が、いず れも 維持す る上で重 要な指標 とな 地帯で は、噴火 と地殻変 動な 持され る生態系 の存在が 示唆 には負 の影響を 与えてい た。

た。また 、ブッシ ュ一低木に

)が認め られた。 これらは従 極東地方 に狭い分 布をもつ種 る可能性 がある。 今後の詳し どの撹乱 によって 乾性ブッシ された。 また、大 型動物によ

存性の高い種群(ベニマシコ、

、 低 木 依存 種 群として認 知さ あ り 、 この 地 域の種多様 性を 生 態 研 究が 期 待される。 火山 や 枯 死 木の あ る生息環境 が維 撹 乱 は この 地 域の鳥類多 様性

  ハビタ ットの利用 様式の違 いについ ては、な わばり行 動と採食 行動の両面から検討し、

群集内 の種問で資 源利用の 様式を比 較するた めに、水 平方向と 垂直方向における採食空間 の 違い 、 およ び 採 食行 動 様式 と 採 って い た食物内容 の違いの ニつの側 面からニ ッチ幅と ニッチ 重複度を比 較してい る。荒地 や空中な どの食物 の少ない 生息環境を利用する群集で は、二 ッチ幅が狭 く、空間 あるいは 食物二ッ チ軸のう ちいずれ かにおいて資源を分割をし ている 状態が見ら れた。一 方、草原 や低木林 のように 植生が豊 かで食物の量や多様性が多 い 所 で は 、 群 集内 の 種 は似 た よ うな 食 物を 同 じ よう な 空間 で 採 食し て 共存 し て いた 。   このよ うに、遷移 初期の開 けた環境 の鳥類群 集では、 資源の量 とその存在様態によって ジェネ ラリストの 共存とス ペシャリ ストの共 存という ニつの群 集成立機構が見られたが、

生息環 境が縮小す ると、前 者では種 間競争が 、後者で は種内競 争が激化して、群集の多様 度が低 下する可能 性が示唆 される。 そこで、 申請論文 は、開け た環境に依存する種の生物 多様性 の維持のた めには、 適度の自 然撹乱を 許容して 、洪水や 噴火跡をそのままに保存し たり、 もしくはそ れを模し た人為的 管理によ って開け た生息環 境を維持する方法がとられ る必要 があると提 言してい る。また 、本研究 で明らか になった 一連の生息環境を異にする 鳥類群 を指標とし て、その 生息環境 の現状を 把握、お よびモ二 夕リングしていくことで、

遷移初 期段階にお ける鳥類 の種多様 性を維持 する実践 的な方向 性が開けるものと期待され る。以 上のように 、本研究 は、植生 遷移初期 の鳥類群 集の特長 とその成立様式を明らかに すると ともに、生 物多様性 保全上の 意義を生 態学の概 念に則っ て考察し、自然保護・生物 多様性 保全に向け た具体的 提言をし ている点 で、生態 学の基礎 研究としてのみならず応用 面でも大きな意義があると思われる。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、大学院課 程における研鑽や取得単位なども併せ、申請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるのに充 分な資格を有するものと判断した。

依 来 で い ユ る

参照

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