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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 笠 原 和 恵

学 位 論 文 題 名

加齢 が骨 再生機 序に及 ぼす影 響に関 する 病理組 織学的 研究

一成長期と成熟期のウサギにおける下顎骨骨空洞の治癒過程の比較―

学位論文内容の要旨

  近年、急速に高齢化が進行し、腫瘍や嚢胞性疾患においても、高齢 者の占める割合の増加が予想される。当科では、顎骨内の良性腫瘍や 嚢胞性疾患の治療にあたって、顔貌の変形や口腔機能障害を最小限に するために、病巣摘出後に生じた骨空洞の、周囲骨組織ならびに外骨 膜の骨再生カによる修復を利用した顎骨保存法を、若年者から壮年者 に対して行い、良好な結果を得ている。しかし、この顎骨保存法を高 齢者に適応する場合には、骨再生カの低下が問題となるが、これに関 しては不明な点が多い。そこで本研究では、加齢が下顎骨骨空洞の治 癒過程にどのような影響を及ぽすかを明らかにする目的で、成長期と 成熟期のウサギの下顎骨に実験的に骨空洞を形成し、年齢差による治 癒過程の相違について比較検討した。

【材料および方法】実験動物にはニュージーランドホワイト種の雄の ウサギで、成長期として生後14週齢(平均体重約2.5kg)、成熟期とし て生 後30週 齢( 平均 体重 約3.7kg)を用いた。ベントバルピタールナ トリウムで鎮静させた後、塩酸リドカインを用いて局所麻酔を行い、

右 下 顎骨 体 頬 側 部 に 近 遠 心 距離12mm、 高さ10mm、深 さ(平 均4mm) は舌側皮質骨にまで及ぷ骨空洞を形成し、外骨膜ならぴに同部周囲軟 組織を縫合し閉鎖創とした。骨芽細胞の増殖動態を明らかにするため に、屠殺1時間前に5‑bromo.2′‑deoxyuridine(以下BrdUと略す)を 投与 し、骨 空洞 形成 後3、5、7、14、28日目 に屠 殺し た。摘 出した 下顎 骨は固 定・ 脱灰 後、 パラフ イン包埋し、厚さ4〆mの連続切片を 作 成 した 。 次 い で 、HE染 色 、AM染色な らぴ にBrdU免 疫組織 化学 的 染色を行い、治癒過程を病理組織学的に検索するとともに、新生骨梁 先端 部と外 骨膜 部のBrdU陽性細 胞数ならびに新生骨量を組織計量学

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的に検索した。

【結果 】骨空洞の 治癒過程の 病理組織学的所見:骨空洞形成3日後で は、成長期群、成熟期群とも、骨空洞内は血餅で満たされ、成長期群 では舌側外骨膜部に新生骨の形成がみられたが、成熟期群では新生骨 は認め られなかっ た。5日後には、成長期群では骨空洞内の窩底部に 肉芽組織の増生がみられ、器質化がすすみ少量の新生骨が形成されて いた。成熟期群では、舌側外骨膜部には新生骨が形成されていたもの の、骨 空洞内には 新生骨はほ とんど認められなかった。7日後には、

成長期群では骨空洞内窩底部の新生骨はさらに量を増し、骨梁の幅は 太く、周囲には多数の骨芽細胞がみられた。頬側歯槽部の皮質骨切除 部では、既存皮質骨と連続して頬側外骨膜内面に沿って新生骨が形成 されていた。成熟期群においても、骨空洞内窩底部゛こは新生骨がみら れたが、骨梁は全般に幼若で幅も細く、頬側歯槽部では新生骨はみら れなか った。14日後 には、成長 期群では骨 空洞内の新 生骨は急速に 増加し 、頬舌側幅 の約3/4は 新生骨により満たされ、骨梁は全般に規 則的な配列を示し、窩底部の新生骨梁の周囲には破骨細胞による骨吸 収が認められた。歯槽側からの新生骨は、外骨膜内面に沿ってさらに 増加し、窩底部からの新生骨と癒合していた。成熟期群では、骨空洞 幅の約1/2まで新 生骨が形成 され、頬側歯槽部でも外骨膜内面に沿っ て新生骨の形成がみられたが、骨梁の幅は狭く、その配列は不規則で、

破骨細 胞は認めら れなかった 。21日後には 、成長期群 では、新生骨 は骨空洞をほぽ満たし、骨梁周囲には比較的多数の破骨細胞がみられ、

骨改造が進行していた。歯槽側からの新生骨はその量を増し、頬側外 骨膜側では皮質骨様を呈していた。成熟期群では、骨空洞内は頬舌側 幅の約2/3まで新生骨で満たされ、骨梁の周囲に|よ破骨細胞が認めら れ、歯槽側からの新生骨も増加していたが、皮質骨の形成はみられな かった 。28日後には 、成長期群 では、下顎 骨の外形は 頬側皮質骨の 形成によりほぽ修復され、骨梁の分布は比較的規則的で、その太さも ほぽ均一であった。成熟期群においても、骨空洞は新生骨で満たされ、

頬舌側外骨膜部の新生骨は皮質骨様を呈し、下顎骨の外形はほぼ修復 されたが、皮質骨の幅は狭く、空洞内の骨梁の分布は不規則で、骨梁 の幅も細く、不均一であった。

  BrdU陽性細 胞数の組織 計量学的分 析結果:舌 側外骨膜部 のBrdU陽 性細胞 数は、両群 とも3日後がピークで、その後経時的に漸減してい

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く傾向を示し、全般に明かな差は認められなかった。骨空洞内新生骨 梁 先端部 のBrdU陽 性細 胞数は 、両群とも手術7日後にピークを示し、

以 降28日 まで 減少 傾向 がみら れた が、 全般 に成熟 期群 の方 が有意に 少なかった。頬側歯槽部皮質骨切除部の新生骨梁先端部および外骨膜 内 面部のBrdU陽性 細胞 は、両 群と も28日後 までみ られ たが 、成長期 群 で は14日 後 に 急 増し 、 成 熟 期 群 よ り も 有 意 に多 く 認 め ら れ た。

  新生骨量の組織計量学的分析結果:両群の非手術側の計量部位に相 当する皮質骨および海綿骨の総骨量は、成長期群の方が成熟期群より も 有意に 多か った 。手 術側に おける骨空洞内の新生骨量は、5日後か ら28B後 ま で 、 成 熟期 群 の 方 が有 意に 少な かった 。非 手術 側の 総骨 量 に 対 す る 手 術 側 にお け る28日後 の骨量 は、 成長 期群で は100%以 上 であっ たが 、成 熟期 群では85% に止 まっ ていた 。舌 側外 骨膜部の 新 生骨量 は、3日から14日 後ま で、両群とも増加傾向がみられたが、

成熟期群の方が有意に少なかった。

  【考察】本実験で用いた14週齢成長期のウサギは、ヒトの10歳代思 春 期に相 当し 、下 顎骨 の加齢 変化 がみ られ る30週 齢成 熟期 のウサギ は 、ヒト では56歳 以降 の年齢 に相 当す るも のと考 えら れた 。骨空洞 内の治癒過程において、実験期間中を通して、成熟期群では、新生骨 の形成開始時期と形成速度の遅延、新生骨梁の分布の不規則性、骨量 の 低下、 骨改 造の 遅延 がみら れ、BrdU陽性 細胞数 も有 意に 少なく、

加齢による細胞増殖能の減退による修復の遅延が示された。骨芽細胞 数 の 減 少 は 、 成 長 ホル モ ン 依 存性 のIGF‑Iが加齢 によ り低 下し てい ることと関連しているものと考えられた。頬舌側外骨膜部においても、

成熟期群では新生骨の形成開始時期およぴ皮質骨への骨改造に遅延が み られた が、 外骨 膜内 面部にBrdU陽性 細胞 がみら れ、28日 後には骨 量は少なかったものの、成長期群と同様に皮質骨を形成していた。こ のことは、成熟期群でも外骨膜部の細胞は活発に増殖して骨芽細胞ヘ 分化し、最終的に皮質骨の形成に関与することを示すものであり、高 齢者における顎骨保存法の適応に関して、ーつの条件を示唆したもの Iと考えられた。

  【結論1

  l.成熟期群では、成長期群と比較して、骨空洞内およぴ頬舌側外骨 膜部における新生骨の形成開始時期と形成速度、骨改造に関して、加 齢の影響による修復の遅延が認められた。

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2.骨 空 洞 内 の 新生 骨 梁 先 端 部 のBrdU陽 性 細 胞数 は 、7日 以降28日 まで全般に成熟期群の方が有意に少なく、加齢の影響による骨芽細胞 の増殖能の低下が示唆された。

3.骨空洞内の新生骨量は、成熟期群の方が有意に少ない傾向を示し たも のの 、手 術28日後に は成長期群と同様に、骨空洞内は新生骨で 満たされ、外骨膜部では皮質骨が形成され、下顎骨の外形はほぽ修復 された。このような修復過程で、外骨膜が下顎骨の形態回復に重要な 役割を演じていることが示唆された。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨

学 位 論 文 題 名

加齢が骨再生機序に及ぼす影響に関する病理組織学的研究

ー 成長 期 と 成熟 期 のウ サ ギ にお け る下 顎 骨 骨空 洞 の 治癒 過 程の 比較 ―

  審査 は、審査 担当者全 員の出席の もとに、 論文申請 者に対し 、口頭試 問により 、 提 出 論 文 の 内 容 な ら び に そ れ に 関 連 し た 学 科 目 に っ い て 行 わ れ た 。   本研 究は、加 齢が下顎 骨骨空洞の 治癒過程 にどのよ うな影響 を及ぼす かを明ら か にす る目的で 、成長期 と成熟期の ウサギの 下顎骨に 実験的に 骨空洞を 形成し、 年齢 差 に よ る 治 癒 過 程 の 相 違 に つ い て 比 較 検 討 し た も の で あ る 。   実験 動物は、 ニュージ ーランドホ ワイト種 の雄ウサ ギで、成 長期モデ ルとして 生 14週 齢、成熟 期モデル として生後30週齢の動 物を用い た。ペン トバルビ 夕一ルナ トリ ウムで鎮 静させた 後、塩酸リ ドカイン を用いて 局所麻酔 を行い、 右下顎骨 体頬 側 部 に 近 遠 心 距 離12mm、 高 さ10mm、 深 さ 約4mmの 骨 空 洞 を 形 成 し 、 外 骨 膜 なら び に 周囲 軟 組織 を 縫 合し 閉 鎖創 と し た。 骨 芽 細胞 の 増殖 動 態を明ら かにする ため に、屠殺1時間前に5 bromo‑2‑deoxyuridine(以下BrdUと略す)を投与し、骨空洞形 357142128日後に屠 殺した。摘 出した下 顎骨を固定・脱灰後、パラフィ ン 包 埋 し 、 厚 さ4mの 連 続 切 片 標 本 を 作 成し た 。 次い で 、HE染 色、AM染色 な ら び にBrdU免疫 組 織化 学 的 染色 を 行い 、 治 癒過 程 を病 理 組 織学的 に検索す るととも に、 新生骨梁 先端部と 外骨膜部のBrdU陽性細胞 数ならび に新生骨 量を組織 計量学的 に検 索した。

実 験 結 果 お よ び 結 諭 1. 病 理 組 織 学 的 所 見 1)成 長 期 群 で は 、 骨 空 洞   れ 、5日後 に は 骨空 洞内   されてい た。成熟期群で   認められ 、骨空洞内の新   群では成 長期群と比較し 2)頬 側 歯 槽 側 の 皮 質 骨 切   存皮質骨 と連続して外骨   群 で は、7日 後 では 新生   のように 骨空洞を被覆す   熟期群に 遅延がみられた 3)骨 空 洞 形 成14日 後 に は   く、全般 に規則的な配列   たが、成 熟期群では骨梁   認 め ら れ な か っ た 。

形成3日 後 、舌 側 外 骨膜 部 に反応性 の新生骨 形成がみ ら の肉芽組 織の器質化 がすすみ 、窩底部 から新生 骨が形成 は、 舌 側外 骨 膜 部の 新 生骨 形成は 骨空洞形 成5日後か ら 生骨 は7日 後か ら 形 成さ れ ていた。 このよう に、成熟 期 て 、 新 生 骨 形 成 の 開 始 時 期 の 遅 延 が 認 め ら れ た 。 除部 に おい て 、 成長 期 群で は、骨 空洞形成7日後には 既 膜内面に 沿って新生 骨が形成 されてい た。一方 、成熟期 骨は認め られず、14日 後に新生 骨が形成 されてい た。こ る頬側外 骨膜部の新 生骨の形 成開始時 期におい ても、成

、成長期 群では、骨 空洞内で 形成され た新生骨 梁幅は太 を示し、 骨梁の周囲 に破骨細 胞による 骨吸収が 認められ の幅は狭 く、その配 列は不規 則で、同 時期に破 骨細胞は

則 稔

塚 田

戸 脇

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

4

5

  

に お い て も 下 顎 骨 の 形 態 は ほ ぼ 完 全 に 回 復 す る こ と を 示 レ て い る 。

2

. BrdU陽性細胞数の組織計量学的分析結果

  

骨空洞内新生骨梁先端部の

BrdU

陽性細胞数は、両群とも骨空洞形成7日後にピ―

クを示し、以降28日まで減少傾向がみられたが、全般に成熟期群の方が有意に少な かった。頬側歯槽部皮質骨切除部の新生骨梁先端部および外骨膜内面部のBrdU陽性 細胞は、成長期群では

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日後に急増し、成熟期群よりも有意に多く認められた。こ れらの所見は、成長期群に比ベ、成熟期群では骨芽細胞の増殖能が低下しているこ とを示唆レている。

は100%以上であったが、成熟期群では85%に止まっていた。

論文の審査にあたっ る研究について、主 快な解答がえられ、

。本研究は、加齢に るものの、成熟期以 ことを明らかにした とより、関連領域に ものと認められた。

           

                 

           

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参照

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