博 士 ( 情 報 科 学 )
中 野 基 輝
学 位 論 文 題 名
操作性向上のための上腕筋骨格モデルを用いた
パワーアシストバルブの制御
(A Control of Power Assist Valve Based On Musculoskeletal Models of
Upper Arm For ImprovlngItSManeuVerability)
学位論文内容の要旨
近年、筋特性お よび筋骨格モデルを 取り入れたロボット研究がぃくっも顔されている。それらの 研究は操作性解析 や人間の特性を調べ るためのものが主である。筋収縮の数理モデルや、人間の手 先速度に関するモ デルは過去に研究さ れて来たが、それらは積極的に人間機械系へと応用されては こをかった。しか し教がら近年にをり ニつの関節に跨り機能する二関節筋への注目が高まってきて いる.をぜをらぱ 、二関節筋によって 四肢先端の安定的かつ平滑を運動が実現できることが明らか にをったからであ る。熊本らは二関節 筋を含む筋骨格モデルを提唱し,そのモデルにより筋特性を 考慮した四肢先端 の出力特性を明らか にした.人間の四肢先端やロボットのエンドエフェクタの出 力特性は性能評価 等を目的として研究 されてきたが、従来の研究では四肢先端の出力特性に筋特性 が考慮されておら ず、ロポットマニピ ュレータと同じ扱いがされていた。しかし、筋特性を考慮し た こ と で 出 力 特 性 に は ロ ボ ッ ト と 人 間 で 大 き を 差 が あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 これらに対し我 々は人間機械協調系 として人間の筋収縮特性および筋骨格特性を制御則の中に組 み込む事を目的と している。これらの 特性を人間機械系に盛り込むことで、より人間の動作特性に 適したシステムを 構築することが出来 る。二関節筋モデルを元に考えると、人間が対象物を操作す る際の筋負担に関 する問題が浮き彫り にをる。ある対象物に人間が上腕で一定のカを加えるとした 場合、その上腕姿 勢に応じて三対六筋 の負担が変化する。これは姿勢によって大きを筋負担を強い られることを意味 している。
従来の一般的を パワーアシストとは 、機械と人間との接点に発生するカを増カするものであった が人間の姿勢を考 慮していをいことで 、アルゴリズムの 中で想定した負担 軽減率が得られていを いと考えられる。 我々はこの問題点に 注目し、姿勢によらず手先カに対する筋負担を一定にする手 法 、 姿 勢 考 慮 補 償 を 提 案 し 、 一 例 と し て 消 防 車 用 放 水 バ ル プ ヘ の 応 用 を 行 っ た 。 我々は生物の筋 が運動開始時に瞬発 的にカを発揮する際の特性から最適を固有角周波数および減 衰係数を推定し自 動調整する手法を提 案し、従来手法と比較し高速顔インピーダンスマッチングを 実現した。本手法 は操作者が操作対象 物にカを加える際、そのトルク曲線が筋特性数理モデルで表 現されることに着 目している。操作者 がどれだけ急激にトルクを加えたかをトルク勾配と定義し、
その勾配がバルプ の開作業にかかる時 間と相関があることを明らかにした。これにより初動時のト ルクの様子からバ ルプの開時間を予測 する事を可能にし、この開時間に最適をインピーダンスパラ メータを調整して いる。
さらに、人間の 手先速度が躍度最小 モデルに従うことに着目し、リアルタイムにインピーダンス パラメータを調整 する手法を提案した 。これは逐次バルプの回転速度を計測し、躍度最小とをる軌 道とマッチングさ せることにより開時 間を予測している 。
姿勢によらず手 先カに対する筋負担 を一定にする手法、姿勢考慮補償を提案した。第一に、我々
−674―
は上腕 筋骨格シミュレー タにより操作者の 腕の姿勢をりアルタイムに計測した。第二に、手先カが 姿勢に よってどれだけ低 下したかを出カレ ベルとして定量的に表現した。最後に、最大出カレベル で正規 化することによっ て補償量を決定し た。本研究ではパワーアシストシステムを組み込む対象 として 、放水用バルプを 用いるが、これは 刻々と変化する上腕の姿勢によっては、バルブレパーに 対して カを出しづらぃ状 態にをることが考 えられる。我々は姿勢に応じて先に述べたトルク勾配が 変化す ることを突き止め 、それを定量評価 した。腕が伸びるほどバルブを開ける際のスピードが早 く をる。これはA.V.Hillの提唱し た筋収縮カ・速度の 関係に基づぃてい る。この関係性か らどの 程度筋 収縮スピードが上 腕姿勢によって変 化するかのモデルを構築した。パワーアシストでは広く 用いら れているインピー ダンス制御に、姿 勢考慮補償を施した場合と施さをい場合とで比較実験を 行った 。
本研 究では従来特性の 解析が主であった 筋肉モデルおよび筋骨格モデルをパワ―アシストシステ ムヘ応 用させることで、 各筋肉の負担まで 考慮したことにその新規性がある。人間が対象物を操作 する際 、その動きに必要 教手先カは一意的 に求めることが可能であるが、上腕の姿勢に応じて各筋 の発揮 するカには差が生 じてしまう事を明 らかにしている。また、筋肉の負担が異をれぱ手先特性 が変化 してしまうことも 実験的に証明した 。これはパワーアシストシステムの増力比を単純に大き くする ことでは解決でき 誼い。我々は筋の 発揮カが上腕姿勢によらず常に一定にをるよう姿勢を考 慮した 補償を行う手法を 提案した。
本研 究で提案したパワ ーアシスト手法は 単に操作カを軽減するだけではをく、人間の特性に即し たアシ ストを実現して操 作性向上を図って いるところにその有効性がある。本研究で提案手法の応 用対象 の‑fiiJとして使用している 消防車用放水バルプは、その開閉作業に伴い上腕姿勢が大きく変 化する 。その操作性を向 上させるには操作 カの低減だけでは不十分である。上腕姿勢が大きく変化 する動 作では手先特性の 変化に伴い操作性 も変化する。本研究で注目したトルク勾配も操作性を評 価する ーつの指標であり 、それを姿勢によ らず一定に出来たことで操作性を保つことに有効である ことが 証明された。
―675 ‑
学 位 論 文 審 査 の要 旨 主 査 副 査
准教授 教授 副 査
教 授
田 中 孝 之 金 子 俊 一 小野里雅彦
学 位 論 文 題 名
操 作 性 向 上 の た め の 上 腕 筋 骨 格 モデ ル を 用 いた パ ワ ー ア シ ス ト バ ル ブ の 制 御
(A Control of Power Assist Valve Based On Musculoskeletal Models of Upper Arm For Improving Its Maneuverability)
近年,筋特性 および筋骨格モデ ルを取り入れたロボット研究がぃくっもをされている.それらの研 究は操作性解析 や人間の特性を調 べるためのものが主である.筋収縮の数理モデルや,人間の手先速 度に関するモデ ルは過去に研究さ れて来たが,それら は積極的に人間機 械系へと応用されてはこを かった.しかし をがら近年にをり ニつの関節に跨り機能する二関節筋への注目が高まってきている,
をぜをらば,二 関節筋によって四 肢先端の安定的かつ 平滑を運動が実現 できることが明らかに橡っ たからである.
本研究では従 来特性の解析が主 であった筋肉モデル および筋骨格モデ ルをパワーアシストシステ ムヘ応用させる ことで,各筋肉の 負担まで考慮したことにその新規性がある.人間が対象物を操作す る際,その動き に必要を手先カは 一意的に求めることが可能であるが.上腕の姿勢に応じて各筋の発 揮するカには差 が生じてしまう事 を明らかにしている.また,筋肉の負担が異をれぱ手先特性が変化 してしまうこと も実験的に証明し た.これはパワーア シストシステムの 増力比を単純に大きくする ことでは解決で きをい.我々は筋 の発揮カが上腕姿勢 によらず常に一定 にをるよう姿勢を考慮した 補償を行う手法 を提案した.
本研究で提案 したパワーアシス ト手法は単に操作カ を軽減するだけで はをく,人間の特性に即し たアシストを実 現して操作性向上 を図っているところ にその有効性があ る.従来の一般的をパワー アシストとは, 機械と人間との接 点に発生するカを増 カするものであっ たが人間の姿勢を考慮して い顔いことで, アルゴリズムの中 で想定した負担軽減 率が得られていを いという課題があると考え られる.また従 来のパワーアシス ト研究における問題点として,あくまで手先カのアシストに留まる ことがあげられ る.人間機械協調 系において,人間の骨格シミュレータや筋電位計測装置等を用いを ければ,人間か らの操作カの印加 をカセンサ等で計測する以外方法が無い.あくまでその操作カが軽 減されたか,操 作性が改善された かが評価対象であった.しかしをがら人間を動かしているのは筋肉 であ り,そ の筋負担が想定通り 低減されているか どうかは別の話で ある.確かにパーセ ントMVC等 を用いて筋負担 の軽減が評価され るものも多いが,あくまで評価用の計測が主である.これは機械が 人間機械協調系 において「人間の 手先しか見えていをい」と言い換えることが出来ると考えられる.
人間にとって使 いやすい協調系を 目指すのであれぱ, 最低限操作に寄与 する人間の部位を見渡せる システムを構築 するべきである,
我々はこの問 題点に注目し,こ れまでの研究をさらに発展させた,姿勢によらず手先カに対する筋
―676―
負担を一定にす る手法である姿勢 考慮補償を提案する .ここではー例と して省力化が求められる消 防車用放水バル ブへの応用を行っ た.本研究で提案手 法の応用対象の一 例として使用している消防 車用放水バルブ は,その開閉作業 に伴い上腕姿勢が大きく変化する.その操作性を向上させるには操 作カの低減だけ では不十分である .上腕姿勢が大きく 変化する動作では 手先特性の変化に伴い操作 性も変化する. 本研究で注目した トルク勾配も操作性を評価するーつの指標であり,それを姿勢によ らず一定に出来 たことで操作性を 保つことに有効であることが証明された.これにより。人間の筋収 縮の特性および 筋骨格モデルを導 入することがパワー アシストシステム を構築する上で.より人間 の動きに即した ものにすることを 実現できた.
以上を要する に,著者は,筋骨 格モデルをパワ―アシストに応用し操作性を高めるための新知見を 得たものであり ,人間機械協調系 分野に対しより人間 の特性に沿わせる 研究の発展に貢献するとこ ろ大をるものが ある,よって著者 は,北海道大学博士(情報科学)の学位を授与される資格あるもの と認める.
‑ 677−