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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 ) 松 浦    徹

     学 位 論 文 題 名 Topological rigidity    (トポロジカル剛性)

学位論文内容の要旨

  秩序にとって、その秩序が張る空間のトポロジーは重要である。をぜ教ら、トーラスや向き付け 不能をメビウスの帯のようをトポロジー的に非自明を(単連結でをい)空間上では、部分的秩序は できるが大域的秩序が出来るかどうかわからず、秩序形成自体が自明ではをくをる可能性があるか らである。(これまでの秩序を扱う物理では、熱力学的極限系を考えており、無限系を扱うので境 界条件や有限サイズ効果といった問題は陽に議論されてこをかった。)

  さらに秩序に伴う一般化された剛性は、空間のトポロジーに大きく影響を受ける可能性がある。

一般化された剛性とは、秩序状態が秩序パラメータの位相部分を空間的に変化させをいようにする 性質である。トポロジー的に非自明を空間上においても、秩序はその空間上で最もェネルギーが低 く誼るように形成されるため、空間のトポロジーを変化(トポロジーチェンジ)させた場合に、秩序 自身がもともとの空間のトポロジーの情報を記憶していて、そのトポロジーを維持しようとする剛 性が内在している可能性がある。以上のよう誼通常の一般化された剛性とは異誼る、トポロジー的 に非自明を空間上の秩序に新しい剛性(トポロジカル剛性)が存在することを提案し、その仮説を 実証することが、本研究の目的である。

  本論文は全四章から構成される。

  第一章では、序論として、研究の背景とトポロジカル剛性の提案を行った。さらに、今回用いた りング 結晶とト ポロジ ーチェ ンジの 手法に ついて の導入を行った。本研究では、NbSe3、Tse3の りング結晶上に張るニつの秩序、結晶と電荷密度波(CDW)のトポロジカル剛性を実験的に研究し た。トポロジカル剛性は系の空間のトポロジーを変えたときに現れる時に顕著に現れると考えられ るため、リング結晶を切断し、リングからりングではをい両端の存在する空間にトポロジーチェン ジさせ ることで 、結晶 とCDWの トポロジ カル剛 性を調べた。切断には収束イオンピームを用いる ことで、微小をサイズのりング結晶を切断のダメージを最小に抑えた。

  第二章では、結晶のトポロジカル剛性をトポロジーチェンジの手法を用いて調べた。結晶の一般 化された剛性は、結晶の体積を変えをいように加えたひずみ(せん断ひずみ)に対し応カが生じる性 質である。通常の結晶では、ひずみがをい状態が安定であるが、リング結晶を始めとするトポロジ カル結晶は、そのトポロジーの拘束条件のため、内部にトポロジー的に決まるひずみェネルギーや トポロジカル欠陥を蓄えていると考えられる。収束イオンピームによる切断(トポロジーチェンジ)

は結晶を拘束条件から開放し、結晶は最も安定を形状に変化する。切断後の結晶がどういう形状を 採る かを 観察し 、トポ ロジカ ル剛性 の存在 可能性 を調べ た。厚み1pm以上 のりン グでは、 切断 して も平 均曲率 半径は ほとん ど変ら をいが 、厚み1pm以下で は劇的 に開く ことを 発見した 。し かし、完全に針状結晶のよう誼直線形にをった結晶はをかった。そのため、リング結晶には有限な

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曲率を維持しようとする性質が内在していると言える。細いりングの形状解析から、切断後の曲率 は一定ではをく場所に依存していること、また切断したりングがサイクロイド曲線にをることを発 見した 。さら に、〇 をせん 断ひず みとし て、曲 率x cose=const.が一定値とをっている事がサイ クロイドになる条件であることがわかった。この結果は、リング結晶において曲率X cos〇=const.

が新しくトポロジカルを項として系を記述していると考えられる。

  第 三 章 では、CDWのト ポロジカ ル剛性 につい て調べ た。CDWは 低次元 電子系 におい て波数2kF の電子 密度の 疎密波 を形成 する秩 序状態 である 。CDWに空間的を位相差を与えると、それを打ち 消 すよ う にCDWのス ラ デ ィ ング 伝 導( 集団並 進運動 )が生 じる。 すをわ ちCDWの一 般化さ れた 剛性は スライ ディン グ伝導 である ため、CDWのトポ ロジカル剛性は電気伝導測定により調べられ る と考 え ら れ る。 本 研 究 では 、 ト ポ ロジ カ ル な 空間 上 のCDWと して、典 型的をCDW導体NbSe3 リング 結晶上のりングを用いた。リング結晶においても、通常の針状結晶と同じく低温で2回の金 属‑ CDW転 移 を 示 す(Ta 145K、TC2 57 K)。CDWの ス ラ イ デ ィ ン グ は 結 晶 の 不純 物 や 境 界によ ってピ ン止め される ため、 低電場 ではCDW系 は絶縁体(強誘電体)のように振舞う。した が って 、 交 流 伝導 度 の 測 定がCDWの剛 性を調 べる上 で有用 である と考え 、CDWの分 極が観 測で きるラジオ周波数領域での電気伝導測定を行った。トポロジー依存性のみを観測するために、まず りング で交流 電気伝 導を測 定してから、収束イオンビームでりングを切断して再び同じ測定を行 い、両者を比較した。その結果、電気伝導度の周波数依存性に差が生じていること、その原因はり ングの 方が切 断リン グのCDWの ピン止 め効果 が小さ くをっていることがわかった。この結果は、

リング を単を る並列 回路と みをす モデル や、CDWの ひずみェネルギーを取り入れたモデルでは説 明 が っ か ず 、 リ ン グ に お い て はCDWの 環 流 が 誘 起 さ れ て い る こ と を 示 し て い る 。   閥 値 以 上 の直 流 バ イ アス 下 で 、ピ ン止め がはず れCDWがス ライデ ィング してい るとCDWの コ ヒーレ ントが より高 くをる ので、 環流の 効果を 顕著に 観測できる可能性がある。そこで、CDWの スライディングに伴う狭帯域ノイズ(信号)と外部交流電場との干渉により直流電流電圧特性に現 れ るス テ ップ 構造(Josephson接合のShapiroステ ップと 形式的 に同じ誼 ので、CDWのShapiroス テップと呼ばれる)を、リング結晶と通常の針状結晶で比較した。ラジオ周波数領域の交流電場と 直流電 場を同時にりング結晶に印加し電流電圧特性を測定した結果、通常のShapiroステップと、

Shapiroステップとは異なる緩やかをステップを観測した。さらに交流電圧が直流しきい電圧より 十分高い場合、緩やかをステップが直流電流の正負に対して非対称にをることを発見した。また、

Shapiroステップの形状が非対称になっていることも発見した。緩やかなステップと非対称性は、

通常の 針状結 晶では 見られ をい。 この結 果は、 磁場0の 測定に もかかわ らず、CDW環流の右回り と左回りのカイラル対称性か破れていることを示している。

  以上 のりン グの測定 は全て2端子測 定を行 ってお り、端子間に印加された電場は環流を流す方 向を向いていをいにもかかわらず、リングに環流が流れている可能性が示された。環流の発生は、

CDWにり ングの トポロ ジーを維 持した まま流 れよう とするトポロジカル剛性の存在によるもので あると考えられる。

  第四 章では、結晶とCDWの実験結果により得られたトポロジカル剛性に関する知見をまとめた。

以上、 トポロ ジーチ ェンジ の方法を用いた実験により、リング結晶上の秩序(結晶とCDW)におい て、リ ングト ポロジ ーのト ポロジ カル剛 性が存 在する ことを示した。この概念は、結晶やCDWだ けでをく液晶、超伝導、.強磁性をどの他の秩序にも普遍的に適用可能であると考えられる。また、

このトポロジカル剛性の概念は、秩序パラメータが定式化されていをい宇宙や生命などの非平衡で の秩序においても、一般的に使える有用を概念である可能性がある。

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学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査

教 授 教 授 助 教 授

丹田 折原 小田

     学 位 論 文 題 名 Topological rigidity    (トポロジカル剛性)

聡 宏

研(理学研究院)

  秩序にとって、その秩序が張る空間のトポロジーは重要である。誼ぜをら、トーラスや向き付け 不能をメピウスの帯のようをトポロジー的に非自明教(単連結でをい)空間上では、部分的秩序は できるが大域的秩序が出来るかどうかわからず、秩序形成自体が自明ではをく顔る可能性があるか らである。(これまでの秩序を扱う物理では、熱力学的極限系を考えており、無限系を扱うので境 界条件や有限サイズ効果といった問題は陽に議論されてこをかった。)

  さらに秩序に伴う一般化された剛性は、空間のトポロジーに大きく影響を受ける可能性がある。

一般化された剛性とは、秩序状態が秩序パラメータの位相部分を空間的に変化させないようにする 性質である。トポロジー的に非自明を空間上においても、秩序はその空間上で最もエネルギーが低 くをるように形成されるため、空間のトポロジーを変化(トポロジーチェンジ)させた場合に、秩序 自身がもともとの空間のトポロジーの情報を記憶していて、そのトポロジーを維持しようとする剛 性が内在している可能性がある。著者は、以上のようを通常の一般化された剛性とは異をる、トポ ロジー的に非自明を空間上の秩序に新しい剛性(トポロジカル剛性)が存在することを提案し、そ の仮説を実証することを目的に研究を行った。

    著者 は、ト ポロジ カル剛性が発現する系としてNbSe3、TaSe3のトポロジカル結晶に着目し、

トポロジカル結晶上で定義される結晶と電荷密度波の2つの秩序に対して、その剛性を実験的に研 究した。結晶の剛性では、リング結晶を切断し、リングからりングではをい両端の存在する空間に トポロジーチェンジさせることで、トポロジカル剛性を調べた。切断には収束イオンビームを用い て、微小をサイズのりング結晶を切断のダメージを最小に抑えた。通常の結晶では、ひずみがをい 状態が安定であるが、リング結晶を始めとするトポロジカル結晶は、そのトポロジーの拘束条件の ため、内部にトポロジー的に決まるひずみエネルギーやトポロジカル欠陥を蓄えていると考えられ る。収束イオンビームによる切断(トポロジーチェンジ)は結晶を拘束条件から開放し、結晶は最 も安定を形状に変化する。切断後の結晶がどういう形状を採るかを観察し、トポロジカル剛性の存 在可 能性を 調べた 。厚み1pm以上の りング では、 切断し ても平 均曲率 半径は ほとんど 変らを い が、 厚み1  pm以 下では 劇的に 開くこ とを発 見した。細いりングの形状解析から、切断後の曲率 は一定ではをく場所に依存していること、また切断したりングがサイクロイド曲線にをることを発 見し た。さ らに、eをせん断 ひずみ として 、曲率X cose=const.が 一定値とをっている事がサイ

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クロイドに をる条件であることがわか った。この結果は、リング結晶において曲率x cos8=const.

が新しくト ポロジカルを項として系を 記述していると考えられる。

  さら に電 荷 密度 波(CDW)のト ポロ ジカ ル 剛性 につ いて 調べ た 。CDWは 低次 元電子系において 波 数2kFの 電子 密度 の疎 密 波を形成する秩序状 態である。CDWに空間的を位 相差を与えると、そ れ を打 ち消 す よう にCDWの スラ ディ ング 伝 導( 集団 並進 運動 ) が生 じる 。す をわちCDWの一般 化 された剛性はス ライディング伝導であるため 、CDWのトポロジカル剛性は 電気伝導測定により 調 べら れる と 考え られ る。 本研 究 では 、ト ポロ ジカ ル を空 間上 のCDWと して 、典型的をCDW導 体NbSe3リング結晶 上のりングを用いた。リン グ結晶においても、通常の針 状結晶と同じく低温 で2回 の 金 属‑ CDW転 移 を 示 す(Ta゜145K、TC2 57 K)。CDWの ス ラ イ デ ィ ン グ は 結 晶の 不 純 物や境界によっ てピン止めされるため、低電 場ではCDW系は絶縁体(強誘 電体)のように振舞 う 。し たが っ て、 交流 伝導 度の 測 定がCDWの剛 性を 調べ る上 で 有用 であ ると 考え、CDWの分極 が観測でき るラジオ周波数領域での電気伝導測定を行った。トポロジー依存性のみを観測するため に、まずり ングで交流電気伝導を測定してから、収束イオンピームでりングを切断して再び同じ測 定を行い、 両者を比較した。その結果、電気伝導度の周波数依存性に差が生じていること、その原 因 はりングの方が 切断リングのCDWのピン止め 効果が小さくをっていること がわかった。この結 果 は、リングを単 をる並列回路とみをすモデル や、CDWのひずみエネルギー を取り入れたモデル で は 説 明 が っ か ず 、 リ ン グ に お い て はCDWの 環 流 が 誘 起 さ れ て い る こ と を 示 し て い る 。   閲値 以上 の 直流 バイ アス 下で 、 ピン 止め がは ずれCDWがス ラ イデ ィン グし ているとCDWのコ ヒ ーレントがより 高くをるので、環流の効果を 顕著に観測できる可能性が ある。そこで、CDWの スライディ ングに伴う狭帯域ノイズ(信号)と外部交流電場との干渉により直流電流電圧特性に現 れ るス テッ プ 構造(Josephson接 合 のShapiroス テッ プと形式的に同じをの で、CDWのShapiroス テップと呼 ばれる)を、リング結晶と通常の針状結晶で比較した。ラジオ周波数領域の交流電場と 直流電場を 同時にりング結晶に印加し 電流電圧特性を測定した結果、通常のShapiroステップと、

Shapiroス テップとは異をる緩やかをス テップを観測した。さらに交流電圧が直流しきい電圧より 十分高い場 合、緩やかをステップが直流電流の正負に対して非対称にをるてとを発見した。また、

Shapiroス テップの形状が非対称にをっ ていることも発見した。緩やかをステップと非対称性は、

通 常の 針状 結 晶で は見 られ をい。この結果は 、磁場0の測定にもかかわら ず、CDW環流の右回り と左回りの カイラル対称性が破れてい ることを示している。

  以上のりングの 測定は全て2端子測定を行っ ており、端子間に印加された 電場は環流を流す方 向を向いて いをいにもかかわらず、リングに環流が流れている可能性が示された。環流の発生は、

CDWにりングのトポ ロジーを維持したまま流れ ようとするトポロジカル剛性 の存在によるもので あると考え られる。

  これを要 するに、著者はトポロジカルに非自明を空間における秩序の新しい性質、トポロジカル 剛性を提案 し、結晶、電荷密度波の秩序において、新しい剛性の性質が現れることを実験的に示し た。この成 果は、秩序の概念の拡張に大きく寄与すると考えられる。よって著者は、北海道大学博 士(工学) の学位を授与される資格あ るものと認める。

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参照

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