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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 西 田    仁

     学位論文題名

    IN/Iicro‑Patterned Immobilization of Cell

    Adhesive Ligands Based on SelfOrganization .

(自己組織化に基づく細胞接着性リガンドのマイクロパターン固定化)

学位論文内容の要旨

【緒言】

  

生物活性を有する分子( ベプチド・夕ンパク質.

 DNA)

の位置を制御した基板表面 へのマイクロパターン固定化堪、診断・パイオセンサー・バイオマテリアルなどの多く の応用が期待される。そして現在までに報告されている固定化法のほとんどは、フエト リソグラフィの手法に基づいている。

  

これに対し本研究では、自己組織化により形成される微細な構造の利用を試みた。高 い湿度下で作製された両親媒性高分子のキャストフィルムは、表面に付着した水滴が鋳 型となり、マイクロヌートルスケールで規則正しいハニカム構造を持つ事が見出されて いる。この手法は特別な設備を必要とせず、かつ簡便であるという利点を持つ。それゆ え、このフィルムへの機能性の付与は、様々なマイクロパターン化表面を作製法する有 用な手法.になると期待される。

  

そこで本研究では、導入するターゲットとして細胞接着性のりガンドを選択し、@予 めりガンドを導入したポリマーを用いる、◎反応性部位を持つパターンフアルムとりガ ンドの縮合反応を利用する、◎ピオチン残基を持つパターンフアルムとの特異的相互作 用を利用する、の三種類の方法によルリガンドのバターン化フィルムヘの導入を行った。

また、導入されたルガンドの認識能についても検討した。

【 実験 ・結 果】

リ ガン ドを 有す る両 親媒性ポリマーを用いたりガンドの バターン固定化

    

アクリル アミドを主鎖骨格とし、側鎖に

りガンドであ るラクトースと疎水性のドデシ ル 基を 有す るポ リマ ーLacPを合成した。得 られたポリマ ーのべンゼン溶液(0. 5mg/ml) を80%の湿度下、200Cでキャストしフィルム を 作 製 し た 。 フ ィ ル ム を 原 子 聞 力 顕 微 鏡

(AFM)

に よ り観 察し た結 果か ら、 こ のキ ャ ストフィルムは穴の直径が弘m、厚みが0. 4ym のハニカム構 造を有することがわかった。次 にハニカムフ ィルム上に固定化されたラクト ースとレクチ ンの相互作用を検討した。ハニ カムフィルム をフルオレセインで螢光ラベル し た エ リ ス リ ナ レ ク チ ン (

FITC

ECA)

O

. 5mg/mlリン酸緩衝溶液(

lOOmM

、pH=7.3) に

30

分 問浸 し、 ルン 酸緩 衝液で洗浄した後

― 289 ‑

IAcP   n: m =6: 94

Rg l  (a) Huorescenceand (b) schematic image of  cast films of bcP af ter immersion into HTC‑Iectin.

(2)

に螢 光頭微鏡で観察した。

FITC

由来の緑色の発光部位

(Fig. l(a)

)がハ二カムパター ン状であることから、バターンフィルム表面にラクトースが存在し、レクチンにより認 識されることがわかった(Fig.1(b))。

反 応 性 部 位 を 持 つ バ タ ー ン フ ィ ル ム 作 製 と 結 合 反 応 に よ る ル ガ ン ドの 固 定 化

  

側 鎖に活性 エステル 基とド デシル基 を有す る両親媒 性ポリマーSucPを合成し、そ のク ロロホルム溶液(lmg/ml)を

80y6

の湿度下、

20

℃でキャストする事によルハニカム フィルムを得た。このフィルムをFH℃→ゼラチンのO.lmg/mlのPBS溶液(lOmM、pH・:7.4冫 に室温で6時間浸漬した。螢光顕微鏡で観察した結果(Fig12)、瑚ぼ

C

−ゼラチンはハニカ ムパターン上に選択的に導入されたことが分かった。そこでこのフィルムの細胞認識能 を調べるため、これを基板としてウシ大動脈由来血管内皮細胞を播種し、無血清条件下 で表面への細胞接着性を検討した。その結果、未修飾のハニカムフィルムでは細胞の接 着が弱く丸い形状であるのに対して、ゼラチンを導入したフィルムではよく接着レて伸 展する事が見出された(FigI)。これはバターン上に固定化されたゼラチンが細胞によ り認識されうる事を示唆する。

■!

Rg. 2 Fluarescence  image cf cast films d SucP after immer‑

 sion into HTC‑gelatin solution

ビオチン残基を持っパターンフイルムの作製とりガンドの固定化

  

活性 エステル 基を有 する両親 媒性ポル マー

SucP

と ピオチンヒドラジドとの反応に よル ピオチン を有する 両親媒 性ポリマ ーBioPを得 た。ポリマー

BioP

のク口口ホルム 溶液 (

Img/ml

冫を

80

%の湿度 下

20

℃で ガラス基 板上に滴 下し、ハニカムフィルムを 作製した。ついで、得られたフィルムをアピジン溶液、ガラクトースとピオチン残基を 有す る水溶 性ポリマ ーGalBioAAm、螢光 ラベルさ れたガラ クトー スを認識 するレ ク チン(FrI℃ー

R

A120

)の溶液に順次浸漬し、洗った後に螢光顕微鏡による観察を行っ た(Fig.4(a))。FrI℃の緑色の螢光発光がハニカムパターン状であることから、この フア ルムは ポルマー

BioP

を鋳型 として、 アピジ ン、水溶 性糖ポ リマーGalBioAAm、 レ ク チ ン が 順 次 結 合 し た 構 造 を 持 つ こ と が 示 さ れ た (

F

瓸 ,

4

b

) ) 。

鹹覊ー

    HOOC

■丶丶′丶丶

l

−一や

    

  l

    n:m:l=79:14:7     BIoP

Rg4(a)Flrnrescenceand(b)f.", ofcastfilmo,

BIoP after immersion into avidin, GaIBIoAAm and FITC‑

RCA120 succesively.

【結諭】

  

以上の結果から、自己組織化に基づく、新しいルガンドのマイクロパターン化が可能 でる事が示された。この手法は、その簡便さ、ならびに自己組織化の特徴から、幅広い 活用が期待される。

‑ 290

せ ぷ         H        

…        

   

   

O J

吋 。

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   西村紳一郎 副査   教授   山岸晧彦

副査   教授   下村政嗣(電子科学研究所)

副査   助教授   門出健次

     学位論文題名

    rvIicro ‐Patterned Immobilization of Cell

    Adhesive Ligands Based on SelfOrganization.

(自己組織化に基づく細胞接着性リガンドのマイクロパターン固定化)

  

生物活性を有する分子(ペプチ ド・夕ンパク質. DNA)の位置を制御した基板表面への マイクロバターン固定化は、診断・バイオセンサー・バイオマテリアルなどの多くの応用 が期待される。現在までに報告されているマイクロバターン化法のほとんどは光リソグラ フイの手法に基づいているが、この手法は加工できる基板に制限がある、非常に煩雑な工 程を必要とする、などの欠点を持 つ。

  

これに対し申請者は、自己組織化により形成される微細な構造の利用を試みた。高い湿 度下で作製された両親媒性高分子のキャストフイルムは、表面に付着した水滴が鋳型とな り、マイクロメートルスケールで規則正しいハニカム構造を持つ事が見出されている。こ の手法は特別な設備を必要とせず、かつ簡便であるという利点を持つ。それゆえ、このフ イルムへの機能性の付与は、様々なマイクロバターン化表面を作製する有用な手法になる と期待される。

  

申請者は、導入するターゲットとして細胞接着性のりガンドを選択し、1)予めりガンド を導入したポリマーを用いる、2)反応性部位を持っバターン化フイルムとりガンドの縮 合反応を利用する、3)ビオチン残基を持っバターン化フイルムとの特異的相互作用を利 用する、の三種類の方法によルリガンドのバターン化フイルムへの導入を行った。また、

導入されたりガンドの認識能につ いても検討した。本論文は5章からなり、その内容は以 下のように要約できる。

  

第1章では、細胞接着性リガンドのマイクロパターン化を行う意義について述べた後、

これまでに用いられている種々のマイクロバターン化法を概観し、ついでこれらの手法が 持 つ 限 界 を 克 服 す る 方 法 と し て 自 己 組 織 化 を 用 い る 方 法 に つ い て 述 べ て い る 。

  

第2章では、リガンドを有する両親媒性ポリマーを用いたりガンドのバターン固定化に ついて述ぺている。アクリルアミドを主鎖骨格とし、側鎖にりガンドであるラクトースと

    

―291―

(4)

疎水性のドデシル基を有するポリマーを合成した。得られたボリマーのべンゼン溶液を高 い湿度でキャストしフイルムを作製した。フイルムを原子間力顕徹鏡(AFM)により観察し た結果から、このキャストフイルムは穴の直径が5叫、厚みが0.4ymのハニカム構造を有す ることがわかった。次にハニカムフイルム上に固定化されたラクトースとレクチンの相互 作用を検討した。ハニカムフイルムをフルオレセインで螢光ラベルしたエリスリナレクチ ンのりン酸緩衝溶液に30分間浸し、リン酸緩衝液で洗浄した後に螢光顕微鏡で観察した。

フルオレセイン由来の緑色の螢光発光がハニカムバターン状に確認されたことから、バタ ーン化フイルム表面にラクトースが存在し、レクチンにより認識されることが見出されて いる。

  

3

章では、反応性部位を持っパターン化フイルムの作製と縮合反応によるりガンドの 固定化について述ぺている。側鎖に活性エステル基とドデシル基を有する両親媒性ポリマ ーを合成し、そのクロロホルム溶液を高い湿度下でキャストする事によルハニカムフィル ムを作製した。このフィルムをフルオレセインで螢光ラベル化されたゼラチンの溶液に室 温で6時間浸涜した。螢光顕徹鏡で観察した結果から、螢光ラペル化ゼラチンはハニカム バターン上に選択的に導入されたことが分かった。さらに、このフイルムの細胞認識能を 調ぺるため、このフィルム上にウシ大動脈由来血管内皮細胞を播種し、無血清条件下で表 面への細胞接着性を検討した。その結果、未修飾のハニカムフイルムでは細胞の接着が弱 く丸い形状であるのに対して、ゼラチンを導入したフイルムではよく接着して伸展する事 が見出された。この結果から、バターン固定化されたゼラチンが細胞接着性を持ち、細胞 培養が可能であることが示された。

  

4

章では、ピオチン残基を持っバターン化フイルムの作製とりガンドの固定化につい て述べている。活性エステル基を有する両親媒性ボリマーとピオチンヒドラジドとの反応 によルピオチンを有する両親媒性ポリマーを得た。得られたポリマーのクロロホルム溶液 を高い湿度下でガラス基板上に滴下し、ハニカムフィルムを作製した。ついで、得られた フイルムをアピジン溶液、ガラクトースとピオチン残基を有する水溶性ポリマー、螢光ラ ペルされたガラクトースを認識するレクチンの溶液に順次浸涜し、洗った後に螢光顕微鏡 による観察を行った。その結果、螢光発光がハニカムバターン状であることから、このフ イルムはボリマーを鋳型として、アピジン、水溶性糖ポリマー、レクチンが順次結合した 構造を持つことが示された。

  

5

章では、本文を総括している。

  

以上のように、申請者は自己組織化に基づいて細胞接着性リガンドのマイクロバターン 化を達成する新規な手法の確立に成功した。この手法は、その簡便さ、加工できる表面の 幅広さ、導入できるりガンドの多様さなどから、細胞と基板の相互作用の研究等に大きく 貢献できるものと考えられる。審査員一同はこれらの成果を高く評価し、申請者が博士(理 学)の学位を受けるに十分な資格を有する者と認定した。

―292―

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