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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 工 藤 康 生

学 位 論 文 題 名

様相論理および可能性理論に基づく 知識ベース管理の定式化に関する研究

学位論文内容の要旨

    情報 処理 技術 の高 速化 に伴 って ,大 量の 情 報を 蓄積 ,処 理す る技 術の 必要 性が 高 ま って いる 。蓄 積さ れた 情報 を知 識ベ ース と して 扱う ため には ,知 識ベ ース を管 理 す る機 能が 必要 とな るが ,知 識ベ ース およ び その 管理 シス テム に関 する 研究 は理 論 的 定式 化と 実用 的応 用の 両面 から 行わ れて い る。 知識 ベー ス管 理に 関す る問 題の ー っ とし て, 知識 ベー スに 対し て情 報の 追加 , 削除 など の操 作を 施し た場 合に ,い か に して 知識 ベー スの 整合 性を 保っ かが 挙げ ら れる 。所 有す る情 報の 整合 性に 関す る 議 論は 論理 学や 哲学 ,人 工知 能な どの 分野 で 行わ れて いる が, この 問題 を論 理や 確 率 ,フ んジ ィ測 度な どの 枠組 で定 式化 し, そ の理 論的 性質 を扱 う研 究は 信念 変更 の理論と 呼ばれている。

  論 理 的 枠 組 に お け る 信 念 変 更 は , 信 念 修 正 と 信 念 更 新 と に大 別さ れる 。信 念修 正 は ,得 られ た新 情報 が所 有す る情 報と 論理 的 に矛 盾す る場 合に ,所 有す る情 報に 間 違 いが ある とみ なし て, その 誤り を新 情報 に 基い て訂 正し ,論 理的 整合 性を 保と う と する 操作 であ る。 これ に対 して 信念 更新 は ,現 実世 界が 動的 に変 化し たこ とに よ っ て, 現実 世界 の状 況と 所有 する 情報 とが 食 い違 うよ うに なっ たと みな して ,そ の よ うな 世界 の変 化を 所有 する 情報 に反 映さ せ る操 作で ある 。し かし ,こ れら の方 法 は 本質 的に 異な る操 作と みな され てお り, 信 念修 正と 信念 更新 を統 一的 に扱 った 研 究 は行 われ てお らず ,こ れら の操 作に つい て の関 連性 は明 らか にさ れて いな い。

    数値 的な 枠組 での 信念 変更 の定 式化 とし て は, フん ジィ 測度 の一 種で ある 可能 性 理 論の 枠組 での 定式 化が 試み られ てい る。 可 能性 理論 の枠 組で は, 所有 する 情報 を可能な 状況の集合から閉区間[0,1]への可能性分布と呼ばれ る関数で数値的に表現 す る 。従 来の 研究 では ,信 念修 正の 操作 と, 信 念更 新の 操作 の一 部が 定式 化さ れて い る 。し かし ,信 念更 新の 従来 の定 式化 には 不 十分 な点 が多 く, また ,信 念更 新の 他の操作 についてはまだ定式化されていない。

    本論 文で は, これ らの 問題 に基 いて ,信 念 修正 と信 念変 更の 操作 を統 一的 な枠 組 で 扱い ,こ れら の操 作の 関連 性を 明ら かに す る。 また ,信 念変 更を それ ぞれ 様相 論 理 と 可 能 性 理 論 に 基 い て 定 式 化 し , そ の 性 質 に つ い て 考 察 す る 。     第1章 で は , 序 論 と し て 研 究の 背景 と本 研 究の 位置 づけ およ び目 的に つい て述 べている 。

    第2章 で は , 本 論 文 の 数 学 的準 備と して , 様相 論理 とフ んジ ィ測 度の 一種 であ る 可 能性 理論 につ いて 概要 をま とめ てい る。 ま ず, 様相 論理 の証 明論 と可 能世 界に

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基づく意味論,特にクリプキ・モデルについて説明する。次に,フんジィ測度に二二冫 い て 述 ベ , そ の 特 別 な 場 合 で あ る 可 能 性 理 論 に つ い て 説 明 す る 。     第3章では,Alchorronらが提案した信念修正とKatsuno and Mendelzonが提案 した信念更新について,その関連性を明らかにする。まず,信念修正と信念更新に ついて概略を述べ,Katsuno and Mendelzonによる更新と消去の操作について,こ れらの操作を特徴づけるメ夕論理的な公準に不十分な点があることを指摘し,その 不備を補う。次に,更新から消去を定義する同ー性と消去から更新を定義する同一 性をそれぞれ提案し,不備を補った公準に基づ<更新と消去について,相互に定義 可能な性質が成り立つことを示す。更に,修正および縮小から消去を定義する同一 性を提案し,これらの同一性に基づく相互定義について,可換な性質が成り立つこ とを示す。相互定義に関する可換性は,信念変更を行う種々の操作間の関連を明ら かにする6

  第4章では,信念変更の操作の中で特に更新と消去に着目し,これらの操作を様 相論理,具体的にはVakarelovが提案した矢印の様相論理を,矢印の間の順序関係 について扱えるように拡張した順序を持つ矢印の様相論理に基いて定式化する。ま ず,有向グラフの構造的な性質と矢印の間の順序関係を表現する,順序を持つ矢印 の様相論理のフレームとモデル(以下,OAモデル)を提案する。また,順序を持つ 矢印の様 相論理体 系OAL(ordered arrow logic)を提案し,OALはすべてのOAモ デルのクラスに対して健全かつ完全であることを示す。次に,更新と消去の操作を,

所有する情報を表す論理文の集合のそれぞれのモデルwに対して.りにおいて最も

「起こりやすい」状態遷移を選択する操作に基づぃて定義すると,それぞれKatsuno and Mendelzonの更新の性質および消去の性質を満たすことを示す。更に,更新と 消去の操作およびそれぞれの操作が満たすべき性質は,OALの論理文として明示的 に表現できることを示す。このことは,更新と消去の操作はOALにおける論理演算 として表現できることを意味する。

  第5章では,可能性理論の枠組における信念更新の厳密な定式化を行う。まず,

Dubois and Pradeによる可能性理論における更新の定式化では,更新の結果が常に 構成できるとは限らないことを指摘し,可能性理論における更新の操作を正確に再 定式化することでこの問題を解決する。また,論理的枠組における消去の操作およ び対称的消去の操作を可能性理論の枠組で新たに定式化し,その性質について考察 する。更に,不確実な情報に基づく信念更新を提案し,その性質について考察する。

特に,不確実な情報に基づく信念更新は,特殊な場合として確実な情報に基づく信 念修正と信念更新,および不確実な情報に基づ<信念修正を含んでおり,より一般 的な信念変更の枠組であることを示す。

    第6章では,結論として,本論文で得られた結果について考察し,今後の研究 の方向性と課題を示す。また,本論文での主な定理および補題,命題について,証 明を付録として添付している。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授   伊 教 授   新 教 授   宮 助 教 授  村

達    惇 保    勝 腰 政 明 井 哲 也

学 位 論 文 題 名

様相論理および可能性理論に基づく 知識ベース管理の定式化に関する研究

  知 識 ベ ー ス に 含 ま れ る 情 報 を 変 更 し た 場 合 に 知 識 ベ ー ス の 整 合 性を 保っ とい う 問 題 は , 人 工知 能の 分野 で基 礎的 理論 と 工学 的応 用の 両面 から 研究 され てい る。 こ の 問 題 を 論 理, 確率 およ びフ んジ ィ測 度 に基 づぃ て定 式化 し, その 性質 を扱 う研 究 は 信 念 変 更 の理 論と して 扱わ れて おり , これ は新 たに 得た 情報 に基 いて 知識 ベー ス に 論 理 矛 盾 が生 じた 場合 に訂 正を 行う 信 念修 正と いう 課題 と, 現実 世界 の動 的な 変 化 を 知 識 ベ ー ス に 反 映 さ せ る 信 念 更 新 と い う 課 題 の ニ つ に 分 か れ る 。   論 理 的 枠 組に 基づ く従 来の 研究 では , これ らニ つの 課題 は本 質的 に異 なる 操作 と み なさ れて おり ,両 者の 関連 性は 追究 されていな かった。これは確率およびファシィ 測 度 に 基 づ く研 究に おい ても 同様 であ り ,可 能性 理論 を用 いた 信念 修正 と信 念更 新 の 操 作 の 一 部が 構築 され てい るが ,こ れ らニ つの 課題 を包 括的 に扱 うに は至 って お ら ず , こ れ らの 操作 は知 識ベ ース 管理 に 関す る応 用研 究に おい て活 用さ れる 段階 に 至 って いな い。

  本 論 文 は ,知 識ベ ース の整 合性 を保 つ 様々 な操 作の 統一 的な 取り 扱い と情 報工 学 に お け る 応 用を 目的 とし て, 知識 ベー ス 管理 にお ける 信念 変更 を記 述す る公 準を 定 式 化 し , そ れぞ れの 操作 の関 連性 を明 ら かに して いる 。第 一段 階と して ,古 典命 題 論 理 に 基 づ ぃて ,知 識ベ ース の整 合性 を 保つ 様々 な操 作の 関連 性を 明ら かに し, 第 二 段 階 と し て, 従来 の研 究で 一部 が構 築 され てい る可 能性 理論 に基 づく 信念 変更 の 厳 密 な 定 式 化を 行い ,統 一的 な枠 組の 構 築を 行っ てい る。 第三 段階 とし て, 様相 論 理 に 基 づ く 知 識 ベ ー ス 管 理 の 定 式 化 お よ び 統 一 的 な 枠 組 の 構 築 を 行 っ て い る 。     第1章 で は , 本 論 文 の 背 景 , 目 的 お よ び 構 成 に つ い て 述 ぺ て い る 。     第2章 で は , 様 相 論 理 お よ び 可 能 性 理論 につ いて ,本 研究 に用 いる 成果 を抽 出 し て 整 理 す る と と も に , 信 念 変 更 に 関 す る 従 来 の 研 究 の 概 要 を 述 ぺ て い る 。     ‑ 698―

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    第3章では,古典命題論理に基づぃて,知識ベースの整合性を保つニつの課題 である信念修正および信念更新の関連性を明らかにしている。まず,信念更新の操 作の一部である更新操作および消去操作について,消去操作を記述する既存の公準 の不備を解消し,それらニつの操作を相互に定義することが可能であることを証明 した。更に,信念修正の操作である修正操作および縮小操作を用いて,更新操作お よび消去操作を構成することが可能であることを証明し,知識ベースの整合性を保 つ様々な操作の関連性を明らかにしている。

  第4章では,様相論理に基づく知識ベース管理の定式化および統一的な枠組の構 築を行っている。まず,状態遷移図の構造を表現する矢印の様相論理について,状 態遷移の発生に関する選択の順序を与えて論理を拡張し,この論理に意味論を与え るモデルを考案して,それを詳述している。この拡張した論理が全てのモデルのク ラスに対して健全かつ完全であることを証明するとともに,知識ベースの整合性を 保つ操作を統一的に扱う枠組を構築している。

  第5章では ,従来の 研究で一 部が構築 されていた可能性理論に基づく信念変更 の厳密な定式化を行い,それらを統一的に扱う枠組を構築している。まず,可能性 理論における更新操作について,従来の定式化の不備を解消し,消去操作と対称的 消去操作を新たに考案している。更に,不確実な情報に基づく信念更新という概念 を創出し,可能性理論に基づく信念変更のそれぞれの操作はその新しい概念に基づ いて取り扱うことができることを論じている。

    第6章では,本論文のまとめおよび今後の課題について述べている。また,本 論文で示 されている定理および補題について,証明を付録として添付している。

    これを要するに,著者は,知識ベースの整合性を保つ様々な操作の関連性を明 らかにし,様相論理および可能性理論に基づぃてそれらの操作を統一的に扱う枠組 を構築し,知識ベース管理への応用に関する新知見を得たものであり,情報工学の 発展に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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