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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 林 田 京 子

    学位論文題名

Studies on the molecular mechanlSmSunderlying

hOStlymphOCyte― tranSformationby7協 ¢Zた ダ 励 ウ ロ ケ ル ロ

(勵¢沈〆なゥロ〆ぴロ感染による宿主リンパ球トランスフオーメーションの     分子機構解明に関する研究)

学位論文内容の要旨

  Theiler‑ia parvaは ウ シ 、 ア フ リ カ 水 牛を 宿主 とし マダ ニに よっ て媒 介され る 細 胞 内 寄 生 原 虫 で あ り 、 ア フ リ カ諸 国 で の 家 畜 生 産 に 与 え る 本 原 虫 感 染 の 被 害 は 甚 大 で あ る 。 し か し 現 在 の と ころ 実 施 可 能 な 予 防 、 治 療 対 策 に は 様 々 な 制 約 が あ り 、 よ り 実 行 可 能 な 対 策 の 確立 が 望 ま れ て い る 。 そ の 基 盤 と な る タ イ レ リ ア 原 虫 の 生 物 学 的 特 性 、 特 に 病 態形 成 に 重 要 な り ン バ 球 内 寄 生 ス テ ー ジ の 研 究 は 有 効 な 治 療 、予 防 法 を 開 発 す る 上 で 重 要 で あ る 。

  本 原 虫 感 染 に よ る 死 因 は り ン パ球 増 多 症 に よ る 多 臓 器 障 害 で あ る が 、 こ れ は シ ゾ ン ト 期 夕 イ レ リ ア 原 虫 が 寄 生し た り ン バ 球 が 不 死 化 し 無 限 増 殖 能 を 獲 得 、 あ た か も 癌 化 細 胞 の 様 に 分 裂 増 殖を 繰 り 返 す 事 に 起 因 す る 。 夕 イ レ リ ア 原 虫 は 細 胞 に 侵 入 し た 後 は 寄 生 虫 胞 か ら 脱 出 し て 直 接 宿 主 細 胞 質 に 接 し て い る こ と か ら 、 宿 主 細 胞 ト ラ ン ス フ オ ー メー シ ョ ン に 寄 与 す る 分 子 は 、 虫 体 の 膜 表 面 に 局 在 す る 蛋 白 質あ る し ゝ は 分 泌 蛋 白 質 で ある 事が 予想 され てい るが 、未 だ宿主 細 胞 に 作 用 を 及 ぼ す 原 虫 分 子 は 同 定 さ れ て い な か っ た 。 本 研 究はF parva原 虫 感 染 で 見 ら れ る 特 徴 的 な 細 胞 ト ラ ン ス フ オ ー ヌ ー シ ョ ン 機 構 を 解 明 す る こ と を 目 的 に 実 施 し た。

  第 一 章 では シゾ ント 期蛋 白質TpSCOP( アparva schizont‑derived cytoskeleton binding protein)の 発 現 が 宿 主 細 胞 シ グ ナル 伝達 系に 及ぽ す影 響に つい て解析 を 行 っ た 。TpSCOPは 、 良 性 夕 イ レ リ ア で あ るrorientalisとFparvaの 比 較 ゲ ノ ム 解 析 を 行 う 過 程 に お い てF orientalisの メ 口 ゾ イ ト 期 蛋 白 質 と し て 知 ら れ る ToMRPの オ ル ソ 口 グ と し て 同 定 さ れ た 。TpSCOPはZparvaの シ ゾ ン ト 期 で 原 虫 膜 表 面 に 局 在 し て い た 事 、 お よ び オ ル ソ 口 グ で あ るToMRPが 赤 血 球 膜 骨 格 系 蛋 白 質 で あ るBand3へ の 結 合 性 を 示 す 事 か ら 、TpSCOPも 宿 主 細 胞 質 に 直 接 作 用 し て い る 可 能 性 が あ る と 推 測し た 。 ま ず 、 免 疫 沈 降 法 に よ り 本 分 子 と 相 互 作 用 す る 宿 主 分 子 の 同 定 を 試 み た 結 果 、 ア ク チ ン 分 子 と の 結 合 能 が 確 認 で き た 。 さ ら に 、TpSCOPを 強 制 発 現 さ せ た マ ウ スT細 胞 株(3A9/TpSCOP)を 作 製

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し、本細胞株が Fas および TCR 刺激誘導性アポトーシスに抵抗性を示すこと、

また細胞内 で MAPK 群および NF‑KB 経路活性化が起きており、最終的にNF‑KB が活性化されていることを明らかにした。夕イレリア感染細胞では原虫周囲に アクチンが集積していること、およびサイトカラシンによるアクチン処理によ り抗アポトーシス経路であるNF ー KB 経路が活性化することが報告されており、

感染細胞内におけるアクチン分子の変化と感染細胞不死化との関連性が近年 指摘されてきている。これらの結果から、 TpSCOP は宿主アクチンに作用する 事で、NF‑KB 経路の活性化を誘導している事が示唆された。一方、TpSCOP を 発現させたIL ー2 依存性細胞株CTLL‑2/TpSCOP ではIL ― 2 に対する反応性は高ま ったものの、完全には非依存性とはならなかった。この事から感染細胞の無限 増殖能としゝう現象に、NF‑KB 活性化による刺激誘導性アポトーシス抑制機構が 関与しているが、この機構とIL‑2 非依存性増殖とはそれぞれ独立した細胞現象 である事が考えられ、夕イレリア感染による宿主細胞トランスフオーメーショ ン機構の全体像の把握には TpSCOP と共同して機能する原虫分子のさらなる探 索が必要であると考えられた。

   第二章ではアparva 感染細胞においてその増殖を制御しているシグナル分子

を同定する目的で、抗癌作用を有する190 種類の阻害剤のスクリーニングを行

い、MDM2 に対する阻害剤が極めて高い特異性で増殖を阻害することを明らか

にした。 MDM2 は p53 に結合してプロテアソーム依存性の分解を引き起こす事

で、 p53 誘導性のアポトーシスを抑制するとされている。また、 MDM2 は多く

の癌細胞で過剰発現している事が知られていることから、夕イレリア感染細胞

にお い ても MDM2 の異 常 発現 や MDM2‑p53 経路の破 綻が起きている と推測し

た。そこで、夕イレリア感染細胞における MDM2 の発現動態の解析を行ったと

ころ、夕イレリア感染細胞において mdm2 遺伝子の転写の亢進、 mdm2 の異常ス

プライス mRNA 産物 の出現、およ び MDM2 蛋白の過剰発現が起こっている事を

明らかにした。また、 DNA 障害によるp53 誘導性アポトーシスをZparva 感染細

胞に誘導したところ、感染細胞ではp53 蓄積が認められず、p53 誘導性アポトー

シスが抑制 されていた。 一方では MDM2 阻害剤を添加する事により細胞内に

p53 蛋白が蓄積される事が示された。これらの結果から、アparva 感染細胞では

正常なMDM2 分子の過剰発現あるしゝは異常構造を持つ MDM2 発現によりp53 蛋

白質 が 分解 さ れ、 ア ポト ー シスが抑制され ている可能性 が示唆された 。

   上 述 のよ うに 本 研究 で は@ Z parva 原 虫 シゾ ン ト期 の膜 蛋 白質であ る

TpSCOP が宿主 NF‑KB 経路を活 性化し宿主リン バ球の細胞死 を抑制している

事、および◎夕イレリア感染細胞内においてMDM2 の異常発現が起こっており

p53 経路による細胞死が抑制されている事を明らかにした。これらの研究の成

果はタイレリア原虫による宿主細胞トランスフオーヌーション機構の解明に

重要な知見を提供するものである。

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学位論文審査の要旨

    学位論文題名

Studies on the molecular mechanlSmSunderlying

hOStlymphOCyte‐tranSformationby7協 ビ ZZ¢ ダ 励 ウ 口 ダ ぴ 口

(勵¢Zたァ勿ウロ朋ロ感染による宿主リンパ球トランスフオーメーションの     分子機構解明に関する研究)

  Theileria parvaはウシ、アフリカ水牛を宿主としマダニによって媒介される細胞内寄生 原虫であり、アフリカ諸国での家畜生産に与える本原虫感染の被害は甚大である。しか し現在のところ実施可能な予防、治療対策には様々な制約があり、より実行可能な対策 の確立が望まれている。その基盤となるタイレリア原虫の生物学的特性、特に病態形成 に重要なりンパ球内寄生ステージの研究は有効な治療、予防法を開発する上で重要であ る。本原虫感染による死因はりンパ球増多症による多臓器障害であるが、これはシゾン ト期タイレリア原虫が寄生したりンパ球が不死化し無限増殖能を獲得、あたかも癌化細 胞の様に分裂増殖を繰り返す事に起因する。タイレリア原虫は細胞に侵入した後は寄生 虫胞から脱出して直接宿主細胞質に接している事から、宿主細胞トランスフオーメーシ ヨンに寄与する分子は虫体の膜表面に局在する蛋白質あるいは分泌蛋白質である事が予 想されているが、未だ宿主細胞に作用を及ばす原虫分子は同定されていなかった。本研 究はァparva原 虫感染で見られる特徴的な細胞トランスフオーメーション機構を解明す る事を目的に実施した。

  第ー章ではシゾント期蛋白質TpSCOP(fparva schizont‑derived cytoskeleton binding protein)の発現が宿主細胞シグナル伝達系に及ぼす影響にっいて解析を行った。まず、免 疫沈降法により本分子と相互作用する宿主分子の同定を試みた結果、アクチン分子との 結合能が 確認でき た。さら に、TpSCOPを強 制発現させ たマウスT細胞株(3A9/TpSCOP) を作製し、本細胞株がFasおよびTCR刺激誘導性アポトーシスに抵抗性を示す事、また細 胞内でMAPK群 およびNF‑KB経 路活性化 が起きて おり、最終的にNF‑KBが活性化されてい る事を明らかにした。これらの結果から、TpSCOPは宿主アクチンに作用する事で、NF‑KB 経路の活性化を誘導している事が示唆された。一方、TpSCOPを発現させたIL‑2依存性細 胞株CTLL‑2/TpS COPではILー2に対する反応性は高まったものの、完全には非依存性とは

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尋 賢

彦 文

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ならなかった。この事から感染細胞の無限増殖能という現象に、NF‑KB活性化による刺 激誘導性アポトーシス抑制機構が関与しているが、この機構とIL‑2非依存性増殖とはそ れぞれ独立した細胞現象である事が考えられ、タイレリア感染による宿主細胞トランス フオ ーメ ーション機構の全体像の把握にはTpSCOPと共同して機能する原虫分子のさら なる探索が必要であると考えられた。

  第二章ではF parva感染細胞においてその増殖を制御しているシグナル分子を同定す る日的で、抗癌作用を有する190種類の阻害剤のスクリーニングを行い、MDM2に対する 阻害剤が極めて高い特異性で増殖を阻害する事を明らかにした。MDM2はp53に結合して プロテアソーム依存性の分解を引き起こす事で、p53誘導性のアポトーシスを抑制すると されている。また、MDM2は多くの癌細胞で過剰発現している事が知られている事から、

タイ レリ ア感 染細 胞に おい てもMDM2の異 常発 現やMDM2‑p53経 路の 破綻が起きている と推 測し た。そこで、タイレリア感染細胞におけるMDM2の発現動態の解析を行ったと ころ 、タ イレリア感染細胞においてmdm2遺伝子の転写の亢進、mdm2の異常スプライス mRNA産物 の出 現、 およ びMDM2蛋 白の 過剰 発現 が起こ って いる 事を 明らかにした。ま た、DNA障害によるp53誘導性アポトーシスをァparva感染細胞に誘導したところ、感染 細胞 ではp53蓄積が認められず、p53誘導性アポトーシスが抑制されていた。一方では MDM2阻害剤を添加する事により細胞内にp53蛋白が蓄積される事が示された。これらの 結果 から 、F parva感染 細胞 では 正常 なMDM2分子の過剰発現あるいは異常構造を持つ MDM2発現によりp53蛋白質が分解され、アポトーシスが抑制されている可能性が示唆さ れた。

  上 述の よう に本 研究 では ◎アparva原虫シゾント期の膜蛋白質であるTpSCOPが宿主 NF‑KB経路を活性化し宿主リンパ球の細胞死を抑制している事、および◎タイレリア感 染細 胞内 にお いてMDM2の異 常発 現が 起こっておりp53経路による細胞死が抑制されて いる事を明らかにした。これらの研究の成果はタイレリア原虫による宿主細胞トランス フ オ ー メ ー シ ョ ン 機 構 の 解 明 に 重 要 な 知 見 を 提 供 す る も の で あ る 。   よって、審査委員一同は、上記博士論文提出者林田京子君の博士論文は、北海道大学 大学院獣医学研究科規程第6条の規定による本研究科の行う博士論文の審査等に合格と 認めた。

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