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博士(農学)鈴木卓弥 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)鈴木卓弥 学位論文題名

難消化性糖類によるカルシウム吸収促進作用機序の解析 学位論文内容の要旨

  日 本 の 食 文 化 に お い て 、 カ ル シ ウ ム(Ca)は 非 常 に 摂 取 し に く い 栄 養 素 の1っ で ある ( 栄 養所 要 量600 mg/日 、平 均 摂 取量546 mg/日、 平 均 充足 率91ワ 。 ) 。高 齢 化 社会 を 迎 える 日本 に お い て 、Ca摂 取 不 足 は 、 増 加 の 一 途 を 辿 る 「 骨 粗 鬆 症 」 の 主 要 因 と さ れ 、 十 分 な 骨 量 の 維 持 の た め に は 、Ca摂 取 量 の 増 加 と と も に 、 そ の 生 体 利 用 性 を 高 め る こ と が 重 要 で あ る 。 本 研 究 は 、 そ のCa不 足 を 軽 減 し 、 骨 粗 鬆 症 を 予 防 す る 機 能 性 食 品 に 関 す る 研 究 と い う一面を持つ。

  本 研 究 の 目 的 は 、 難 消 化 性 糖 類 に よ る カ ノ レ シ ウ ム(Ca)吸 収促 進 作 用機 序 を 解 明す る こ と で あ る 。 な か で もCa吸 収 促 進 作 用 が 強 い こ と が 示 さ れ た 難 消 化 性 ニ 糖 類difructose anhydride III (DFAIII,di−D―fructo‑furanose1,2 :2,3 dianhydride)を中心的な研究素材として使 用し た 。 「難 消 化 性」 と は 、「 ヒ ト の消 化 酵 素 に対 し て 抵抗 性 を 有す る こ と」 を 意 味し、 摂 食 さ れ た 難 消 化 性 糖 類 は 、 小 腸 で は 消 化 も 吸 収 も され ず 、 大腸 に 定 着す る 腸 内微 生 物 に よ り 代 謝 さ れ る 。 本 研 究 は 、 ラ ッ ト を 用 い たin vivo系 に よ る 実 験 を 起 点 に 、 摘 出 小腸 、 培 養 細 胞 を 用 い た 実 験 へ と 展 開 し 、 特 に 小 腸 で のDFAIIIの 作 用 に注 目 し 、研 究 を 実 施し た 。

川 ラ ッ トに お け る難 消 化 性糖 類 に よ るCa吸 収促 進 作 用

  3種の 難 消 化性 糖 類DFAIIIfructooligosaccharides、お よびraffinoseを含 む飼料(30 g/kg feed)を ラ ッ ト に 摂 食 さ せ 、Ca吸 収 促 進作 用 を 評価 し た 。飼 料 中 に非 吸 収 性 マー カ ーCr20ヨ を 添 加 し 、 消 化 管 各 部 位 の 内 容 物 お よ び 糞 中 のCa:Cr比 を 算 出 す る こ と に よ り 、 難 消 化性 糖 類 がCa吸 収 を促 進 す る消 化 管 部 位を 特 定 した 。

  3種 の 難 消 化 性 糖 類 は 、Ca吸 収 促 進 作 用 を 示 し 、 な か で もDFAIIIは 最 も 強 い 作 用 を 認 め た 。DFAIIIは 小 腸 と 大 腸 の 両 方 でCa吸 収 を 促 進 し た 。 大 腸 で のDFAIIIに よ るCa吸 収 促 進 作 用に は 、DFAIIIの 発 酵 によ り 生 成す る 有 機酸 の 関 与が 示 唆 され た 。 小腸 で は 、DFAIII は 消 化 も 吸 収 も さ れ な い こ と か ら 、 小 腸 上 皮 細 胞 に 直 接 作 用 し て 、Ca吸 収 を 促 進 し て い る こ と が 提 案 さ れ た 。 小 腸 に お け るDFAIIIの 直 接 的 な 作 用 は 、 ラ ッ ト 小 腸 反 転 サ ッ ク 法 に よ り 裏付 け ら れた 。

2] ヒ ト 小 腸 上 皮 細 胞 モ デ ル Caco2に お け る DFAIIICa吸 収 促 進 作 用   小 腸 に お け るDFAIIIに よ るCa吸 収 促 進 作 用 の 詳 細 な 作 用 機 序 を 解 析 す る た め 、 培 養 細 胞Caco2を用 い た 実験 系 に 展開し た。2つのCa吸 収経路、transcellular Ca transport(能 動 輸 送 、 細胞 内 経 路) とparacellular Ca transport( 受動 輸送、 細胞間経 路)へ のDFAIIIによ

(2)

る影響を評価した。

  Caco

2

細胞刷子縁膜側への

DFAIII

の添加(O ―

100 mmol/L)

は、濃度依存的にparacellular

Ca transport

を高めた。一方、transcellular Ca transport には影響しなかった。また、DFAIII を基底膜側ヘ添加した場合、paracellular Ca transport 促進作用は非常に弱かった。これらの 結 果 か ら 、

DFA

川 と

Caco

2

細 胞 刷 子 縁 膜 に 局 在 す る 何 ら かの 分 子と の 相 互作 用 が 、

paracellular Ca transport

促進に関与することが示された。

[3] DFAIII

paracellular Ca transport

促進作用に関する細胞内シグナリング経路と

TJ

構成 タンパク質の変化

  

細胞間 吸収経路は 、種々の 細胞内シ グナリングを介し、細胞間接着構造を形成する複合 タンパク質tight junction (TJ) の透過性によって調節されている。そこで、各種のシグナリ ングブロッカーを用いて、DFAIlI による

paracellular Ca transport

促進作用に関する細胞内 シ グナ リ ング経路 を解析し た。また 、

TJ

透過性 の変化は、

TJ

構成タン パク質の 変化によ り引き起こされることから、DFAIII によるTJ 構成タンノくク質(occludin 、

claudin

1

、ZO‑1 、

JAM

1

、actin filament) の変化を免疫染色法により観察した。

  DFAIII

を作用させたCaco ー

2

細胞において、actin filament およびclaudin‑l の変化が認め られたが、各種のシグナリングブロッカーは、DFAIII による

paracellular transport

促進作 用に影響しなかった。これらの結果から、DFAIII は、細胞内シグナリングを介さず、Caco −2 細胞刷子縁膜の性質や状態の変化を引き起こし、claudin −1 、

actin filament

の変化を介して、

paracellular Ca transport

を促進していることが示唆された。

[4] DFAIII

によるCaco −

2

細胞膜の流動性、水分子浸透性への影響

  DFAIII

によ り変化し た

claudin

1

は、

TJ

透過性に中心的役割を担う細胞膜貫通型タンパ ク質である。よって、その機能は細胞膜の性質に影響されると考えちれる。そこで、Caco ―2 細胞 膜の性質 として、 膜流動性と 水分子浸透性に着目し、

DFAIII

による影響を解析した。

細胞 膜流動性 プローブ を用いた螢 光偏光解 消法では 、

DFAIII

による

Caco

2

細胞膜流動性 の変化は認められなかった。一方、laurdan (6 −dodecanoyl −2 −dimethylaminonaphthalene) を用 いた 水分子浸 透性の評 価により、

DFAIII

Caco

2

細胞 膜の水分 子浸透性を低下させてい る傾 向が認め られた。 溶液中の糖 類は、水分子と相互作用し、クラスターを形成する(水 和特´陸)ことから、DFAIII によるparacellular Ca transport 促進作用に、

DFAIII

の持つ水和 特性が重要である可能性が提案された。

5

] 難消化性糖類による細胞間吸収経路促進作用と、その水和特性・構造との相関関係の 解析

  

種々 の難消化性糖類、

polyethylene glycol

による細胞間吸収経路促進作用と、これら物 質の持つ水和特性を評価し、それらの相関関係を解析した。水和特性を表す ̄70‑ Ti 緩和時 間

(NMR

に より 測 定) と 細 胞間 吸 収 経路 の指標で あるTER に強 い正の相 関が認め られた。

難 消 化性 糖類は 、その水 和特性によ り、刷子 縁膜ある いは

TJ

周囲 の水分子 を構造化 し、

膜脂質分子やTJ タンパク質に変化を引き起こし、paracellular transport を促進することが

提案された。

(3)

    

総 括 す る と 、

DFAIII

は 小 腸 と 大 腸 の 両方 で

Ca

吸 収 を促 進 し た。 大 腸 では

DFAIII

の 発酵 により生 成した有 機酸を介 して

Ca

吸収 を高めるの に対し、 小腸では

DFAIII

が上皮

細胞に直接的に作用して、

paracellular Ca transport

を促進した。小腸でのDFAIII による直

接作用は、

TJ

構成分子である

claudin

―1 、actin filament の変化を介しており、DFAIII の有

する水和特性がその作用に関与する可能性が提案された。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

難消化性糖類によるカルシウム吸収促進作用機序の解析

  本 論 文 は 、148頁 か ら な る 和 論 文 で あ り 、 図36と 表29を 含 み 、 参 考 論 文10編 が 添 え ら れ て い る 。

  本 論 文 の 研 究 目 的 は 、 難 消 化 性 糖 類 に よ る カ ル シ ウ ム(Ca)吸 収 促 進 作 用 機 序 を 解 明 す る こ と で あ る 。 な か で も 、Ca吸 収 促 進 作 用 が 強 い こ と が 示 さ れ た 難 消 化 性 二 糖 類 difructose anhydride IIエ(DFAIII,di―D−fructoーfuranose1,2 :2,3 dianhydride)を中 心 的 な 研 究 素 材 と し て 使 用 し て い る。 「難 消化 性」 と は、 「ヒ トの 消化 酵素 に対 して 抵抗 性 を 有 す る こ と 」 を 意 味 し 、 摂 食 さ れ た 難 消 化 性 糖 類 は 、 小 腸 で は 消 化 も 吸 収 も さ れ ず 、 大 腸 に 定 着 す る 腸 内 微 生 物 に よ り 代 謝 さ れ る 。 本 論 文 は 、 特 に 小 腸 で のDFAIIIの 作 用 に 注 目 し 、 ラ ッ ト を 用 い たin vivo系 に よ る 実 験 を 起 点 に 、 摘 出 小 腸 、 培 養 細 胞 を 用 い た 実 験 へ と展開し、 次のような知見を得ている。

[1] ラ ッ ト に お け る 難 消 化 性 糖 類 に よ るCa吸 収 促 進 作 用

  3種 の 難 消 化 性 糖 類DFAIII、fructooligosaccharides、 お よ びraffinoseを 含 む 飼 料 を ラ ッ ト に 摂 食 さ せ 、 正 味 の 、 お よ ぴ 各 消 化 管 部 位 で のCa吸 収 促 進 作 用 を 評 価 し た 。3種 の 難 消 化 性 糖 類 は 、Ca吸 収 促 進 作 用 を 示 し た 。 な か で もDFAIII゛ は 最 も 強 い 作 用 を 示 し 、 そ の 作 用 は 小 腸 と 大 腸 の 両 方 で 発 現 し た 。 ま た 、DFAIIIのCa吸 収 促 進 作 用 は 、 小 腸 反 転 サ ッ ク 法 で も 確 認 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、DFAIIIは 、 大 腸 で は 発 酵 を 介 し て 、 小 腸 で は 粘 膜 細 胞 に 直 接 的 に 作 用 し て 、Ca吸 収 を 促 進 す る 。

[2]ヒ ト 小 腸 上 皮 細 胞 モ デ ル Caco− 2に お け る DFAIIIの Ca吸 収 促 進 作 用   小 腸 に お け るDFAIIIに よ るCa吸 収 促 進 作 用 の 詳 細 な 作 用 機 序 を 解 析 す る た め 、 培 養 細 胞Caco―2を 用 い た 実 験 系 に 展 開 し た 。2つ のCa吸 収 経 路 、transcellular Ca transport

( 能 動 輸 送 、 細 胞 内 経 路 ) とparacellular Ca transport( 受 動 輸 送 、 細 胞 間 経 路 ) へ の DFAIIIに よ る 影 響 を 評 価 し た 。DFAIIIは 、paracellular Ca transportを 促 進 し た が 、

博 潤

博 敏

   

   

   

   

端 井

原 川

松 石

授 授

授 師

教 教

教 講

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

transcellular Ca transport

には 影響しなかった。また、基底膜側へのDFAIII の添加に よ る作 用は、非常に弱かった。これらの結果から、DFAIII はCaco ―2 細胞刷子縁膜に局在 す る 何 ら か の 分 子 と の 相 互 作 用 し 、

paracellular Ca transport

を 促 進 す る 。

[3] DFAIII

paracellular Ca transport

促進作用に関する細胞内シグナリング経路とTJ 構成タンパク質の変化

  

細胞間吸収経路は、種々の細胞内シグナリングを介し、複合タンパク質tight junction

(TJ)

によ って 調節 され ている。そこで、DFAIII によるparacellular Ca transport 促進作 用に関するTJ 構成タンパク質(occludin 、claudin ―1 、ZO ―1 、JAM ー1 、actin filament) の 変化 、細 胞内 シグ ナリ ング経路を解析した。DFAIII を作用させたCaco ―2 細胞において、

actin filament

およびclaudin ―1 の変化が認められた。しかしながら、各種の細胞内シグ ナリングブロッカーは、DFAIII の作用に影響しなかった。これらの結果より、DFAIII は細 胞内 シグ ナリ ング を介 さず 、Caco ―2 細胞 刷子 縁膜 の性 質や 状態の 変化 を引 き起 こし、

claudin

−1 、actin filament の変化を介して、paracellular Ca transport を促進している。

[4] DFAIII

に よ る

Caco

2

細 胞 膜 の 流 動 性 、 水 分 子 浸 透 性 へ の 影 響

  DFAIII

によ るparacellular Ca transport 促進作用に関する刷子縁膜の変化を調べるた め、DFAIII による膜流動性と水分子浸透性への影響を解析した。DFAIII は、細胞膜の流動 性に影響しなかったが、膜の水分子浸透性を低下させる傾向が認められた。溶液中の糖類 は、 水分 子と 相互 作用 し、 クラ スタ ーを形 成す る(水和特性)ことから、DFAIII による

paracellular Ca transport

促進作用に、DFAIII の持つ水和特性が重要である可能性があ る。

[5]

難消 化性 糖類 によ る細 胞間吸収経路促進作用と、その水和特性・構造との相関関係の 解析

  

種々 の難 消化 性糖類 、polyethylene glycol による細胞間吸収経路促進作用と、これら 物質の持っ水和特性を評価し、それらの相関関係を解析した。水和特性を表す ̄

O

―五緩和 時 間(NMR に より 測定) と細 胞間吸収経路の指標であるTER に強い正の相関が認められた。

難消化性糖類は、その水和特性により、刷子縁膜あるいはTJ 周囲の水分子を構造化し、膜 脂 質 分 子 や

TJ

タ ン パ ク 質 に変 化を 引き 起こ し、

paracellular transport

を 促進す る。

  

本論文は、難消化性糖類が小腸上皮細胞に直接的に作用し、糖類が持つ水和特性により、

細胞機能を調節するとぃう独創的な作用機序を明らかにした。本研究により得られた知見 は、今後も解析が進むと考えられる難消化性糖類の研究に、新たな見方と展開を提案しう るものであり、高く評価できる。

  

よって、審査員一同は、鈴木卓弥が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有す

るものと認めた。

参照

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