博 士 ( 歯 学 ) 北 原 浩 美
学位論文題名
Culture of ES cells and mesenchymal stem cells on carbon nanotube scaffolds
(カーボンナノチューブ上におけるES 細胞,間葉系幹細胞の培養)
学位論文内容の要旨
[緒言]
カ ーポンナノチュープ(CNT)をスカフオールドとして培養し た骨芽細胞様細胞(Saos2)は 強い接 着・ 伸 展性 を示 す事 が知 られ てい る。 しか し、 分化 度の 低い幹細胞やES細胞に及ぽす影 響はま だよく知られていない。本研究 では、マウスES細胞(embryonic stem cell)とラット骨髄由来間葉 系幹細胞(Marrow derived mesenchymal stem cell: MSC)のCNTに対する細胞付着増殖性を調ベ、さ ら にMSCの 伸 展 性 、 ALP活 性 、 石 灰 化 に 及 ぽ す 影 響 を 調 ぺ る こ と を 目 的 と し た 。
[材料および方法]
胚 性 幹細 胞と して マウ スES細胞(EL M3)、 骨髄 由来 間葉 系幹 細胞 としてラットMSCを用いた。
多 層カ ー ポン ナノ チュ ープ(MWCNT:直 径20‑30nm)を 吸引 濾過 法で ポリ カー ポネ ート メン ブレ ン フィ ル ター 上に 高密度に全面コートしたスカフオール ドを作成し、24wellディッシュ上に固定し た。ES細胞は、くD24 wellディッシュ(ゼラチン(‐)ディッシュ)、ES細胞培養で推奨されている
◎ゼラチン・コートディッシュ (ゼラチン(十)ディッシュ)、◎CNT・コートディッシュ(CNTディ ッシ ュ )の3種 の培 養基 盤上 にl05cells/well播 種し 、ES細胞 用 培地 を用いて、37℃、5%C02で 1、3日間、培養した。
MSCは 、5週 齢 ラ ッ ト 大 腿 骨 骨 髄 か らManiatopoulos法 に より 採取 、分 離し 、 24 wellデ ィ ッ シュ(control)、◎CNT. コー トデ ィッ シュ の培 養基 盤にl05cells/well播種 し、aMEM培地 に 10%FBS、1% 抗 生 剤 、 さ ら に 骨 芽 分 化 誘 導 剤DEXお よ び3‑GPを 添 加 し 、37℃ 、5%C02で1 日、2、3、4週間培養した。
DNA量 測 定 は 螢 光 法 、ALP活 性測 定 はKind‑King法、Calcium量 測定 はorthocresolphthalein complexone法、Calcium検 出はAlizarin redS染色を用 いた。培養液中の浮遊細胞数は、血球計算 盤で、細胞数を測定した。
電 子 顕 微 鏡 で 形 態 観 察 を 行 い 、CNT以 外 で は 光 学 顕 微 鏡 で も 形 態 観 察 を 行 っ た 。
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[結果]
1) ES細胞
ES細胞培養1日後 で、ゼ ラチン(+)ディッシュでは、ディッシュ上に、細胞が増殖した集合体が 多数観察され、培養液中には単独での細胞が浮遊しているのが、認められた。ゼラチンコート(‐)
デ ィッシ ュでは、 細胞集 合体が少 なく、 単独での 細胞がみられ、全体の付着細胞数は少なく、培 養 液中に は単独で の細胞 の他にス フェ口 イドが観 察された 。CNTディッシ ュには、付着せず、培 養 液中に は単独細 胞の他 に大きな スフェ 口イドが 観察された。浮遊細胞数を測定すると、ゼラチ ン(十)ディッシュに比ベゼラチンコート(―)ディッシュ、CNTで増加しており、培養液中の細胞観 察の結果と、定性的に一致していた。
3日後、ゼラチン(十)ディッシュでは、細胞が増殖した集合体が、ディッシュ上に一様に多数観 察された。ゼラチンコート(‐)ディッシュでは、細胞数は少なく単独での細胞のほかに、培養時間 の 経過と ともに、 大きく なったス フェロ イドが多 数認めら れた。CNTでは ほとんど細胞がみられ なかった。
このとき の付着細 胞のDNA量はゼ ラチン (十)デ ィッシュで最も多かった。CNTで最も少なかっ た 。 こ の 結 果 は 、 電 位 顕 微 鏡 お よ び 光 学 顕 微 鏡 観 察 の 結 果 と 定 性 的 に 一 致 し て い た 。
2、 MSC
MSC培 養1日 後 、controlで は細胞 間はスベ ースを 置くこと なく、 敷石状に1層で 増殖し たが、
CNTでは 細 胞 数が 少 な く、 細 胞 間の ス ペ ース にCNTが 観 察 され た 。 一部 の 細胞で は、細 胞末端 か ら仮足を 長く伸展 する傾 向が観察 された 。
2週後、contr01で は細胞同 士が上 下に重な って増殖 し、細 胞数は増 加した 。3週 では、細胞の 上 に 、 石灰 化 様 球状 構造物 が現れ 、一部の 細胞では 高密度 に形成さ れてい た。4週では、3週 よ り も さ らに 、 石 灰化 様球状 構造物 が拡大し た。問izar泣redS染色に より、3週、4週と も、カ ル シ ウムが検 出され、 石灰化 が認めら れ、4週では より進展 してい た。
CNT上では 、2週 後、細 胞数は増 加した が、controlのよう なコンフ ルエン トに達し ていなかっ た 。3週 ではコン フルエ ントでな いが、 さらに増 殖し、各 細胞上 には石灰 化様球 状構造物が多数 認 められた 。4週 では、 さらに石 灰化様 球状構造 物が形成 された 領域が拡 大した 。魁izarinredS 染 色により 、3週 、4週とも、 カルシウ ムが検 出され、 石灰化 が認めら れ、4週では より進展して い た。
DNA量 は 、contr01、CNTと も に2週 か ら3週 に か け て 増 加 し 、contr01に比 べ る とCNTでは 少 な か っ た 。 細胞 あ た り のALP活性 は 、con廿01、CNTと も に2週 で 最 高値 を 示 した 後 、3週 で 減 少 し 、controlに比 べCNTで 高い値 を示した 。細胞 あたりの カルシ ウム量はcontr01、CNTとも に2週か ら3週 にかけ て増加し 、contr01に比ベCNTで増 加した。
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[考察]
従来、骨芽細胞様細胞のSaos2ではCNTに対し、強い接着、伸展性が報告されてきたが、本 研 究 に お け る ES細 胞 、 MSCと も に Contr01に 比 べ 低 い 接 着 性 を 示 し た 。 ES細胞では培養に推奨されているゼラチン(十)ディッシュでは、ディッシュに付着する細胞が 多く、培養液中の浮遊細胞は少ないのに対し、CNTではES細胞はほとんど付着せず、かわりに 培養液中に、3次元的に大きなスフェ口イドを形成・増殖する傾向を示した。細胞や臓器の種類 に依存して、スキャフオールドに付着増殖するタイプと、培養液中で浮遊し3次元的に増殖する タイプがあるが、CNTはES細胞に対して後者の非付着性材料として、浮遊液中での3次元増殖・
組織再生に有効であると考えられた。
MSCは、CNT上で十分増殖し、細胞あたりのALP活性、カルシウム量は高い値を示し、石灰 化も進行して高い機能性を発現した。CNTは骨組織再生のためのスキャフオールドとして有効で あると示唆された。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 井上農夫男 副査 教 授 亘理文夫 副査 教 授 鈴木邦明
学位論文題名
Culture of ES cells and mesenchymal stem cells on carbon nanotube scaffolds
( カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ 上 に お け るES細 胞 , 間 葉 系 幹 細 胞 の 培 養 )
審 査 は , 審 査 員 全 員 出 席 の 下 に , 申 請 者 に対 して 提出 論 文と それ に関 連し た学 科目 につ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た , 以 下 に , 論 文 の 要 旨 と 審 査 の 内 容 を 述 べ る .
カ ー ポ ン ナ ノ チ ュ ー ブ(CNT)を ス カ フ オ ー ル ド と し て 培 養 し た 骨 芽 細胞 様細 胞(Saos2)は 強 し ゝ 接 着 ・ 伸展 性 を示 す事 が知 られ てい るが ,分 化度 の低 いES細胞 や幹 細 胞に 及ぼ す影 響 は ま だ よ く 知 ら れ て い な い , 本 研 究 で は , マ ウ スES細 胞 と ラ ッ ト 骨 髄 由 来 問 葉 系 幹 細 胞 (Marrow derived mesenchymal stem cell: MSC)のCNTに対する細胞付着 増殖性を調べ,さらに MSCの 伸 展 性 ,ALP活 性 , 石 灰 化 に 及 ぽ す 影 響 を 調 べ る こ と を 目 的 と し た . [ 材料および方法]
胚 性 幹 細 胞 と し て マ ウ スES細 胞(EL M3), 間 葉 系 幹 細 胞 と し て ラ ッ トMSCを 用 い た , 多 層CNT(直 径20−30nm)を 吸 引 濾 過 法 で ポ リ カ ー ポ ネ ー ト メ ン プ レ ン フ ィ ル タ ー 上 に 全 面 コ ー ト し た ス カ フオ ー ルド を作 成し ,24wellディ ッシ ュ上 に固 定し た,ES細 胞 は, @ゼ ラチ ン
(― )ディッシュ,ES細胞培養で推奨されている◎ゼラチン(十)ディッシュ,◎CNT上で,1,3日 間, 培養した.
MSCは ,5週 齢ラ ット 大腿骨骨髄からManiatopoulos法により採取,分離 し,@control,◎CNT 上 で , 通 常 の 培 地 に 骨 芽 分 化 誘 導 剤DEXお よびp‑GPを添 加し ,1日 ,2,3,4週間 培養 した , DNA量 測定 は螢 光法 ,」 `LP活性測定はKind‑King法,Calcium量測定はorthocresolphthalein complexone法,Calcium検出はAlizarin redS染色を用いた,
電 子 顕 微 鏡 で 形 態 観 察 を 行 い ,CNT以 外 で は 光 学 顕 微 鏡 で も 形 態 観 察 を 行 っ た . [ 結果]
1) ES細胞
培養1日後 で, ゼラ チン (ルディッシュでは,ディッシュ上に,付着増 殖した細胞が多数観察 され ,培養液中には単独での細胞が浮遊しているのが観察さ れた.ゼラチンコート(‐)ディツ シ ュ で は , 付 着細 胞 数は 少な く, 培養 液中 には 単独 での 細胞 の他 にス フェ 口 イド が観 察さ れ
た .CNTデ ィ ッ シ ュ に は , 付 着 せ ず , 培 養液 中に は単 独細 胞の 他に 大き なス フ ェ口 イド が観 察された.浮遊細胞 数を測定すると,ゼラチン(ルディッシュに比ベゼラチンコート(―)ディツ シュ,CNTで増加していた,
3日後,ゼラチン(十)ディッシュでは,細胞 がディッシュ上に一様に広がり増殖していた,ゼ ラチンコート(−) ディッシュでは,細胞数は少なく,培養時間の経過とともに,大きくなったス フ ェ 口 イ ド が 多 数 認 め ら れ た .CNTで は ほ と ん ど 細 胞 が み ら れ な か っ た . こ の と き の 付 着 細 胞 の DNA量 は ゼ ラ チ ン ( ル デ ィ ッ シ ュ で 最 も 多 く ,CNTで 最 も 少 な か っ た . 2) MSC
培 養1日 後 ,controlに 比 べCNTで は 細 胞 数 が 少 な く ,CNTの 一 部 の細 胞で は ,細 胞末 端か ら仮足を長く伸展さ せていた.
2週 後,conrolでは 細胞が多層に増殖し,3週では,細胞上に,石灰化様 球状構造物が現れ,4 週では,さらに球状 構造物が拡大した.
の岬 上で は,2週後 ,細 胞数 は増 加し ,3週 では さらに増殖し,各細胞上には球状構造物が認 め ら れ た .4週 で は , さ ら に 球 状 構 造 物 が 拡 大 し た .contmlと の 灯 と も に 川 泣armredS染 色 によ り,3週,4週 とも ,Caが検 出さ れ ,石 灰化 が認められ,4週ではよ り進展していた.DNA 量 は ,Control,CNTと もに2週 から3週に かけ て増 加し ,controlに比 ベCNTで は 少な かっ た.
細 胞 あ た り の」6凹活 性は ,control,CNTと もに2週で ピー クを 示し ,controlに比 べCNTで高 い 値 を 示 し た , 細 胞 あ た り の Ca量 はcontmLCNTと も に 2週 か ら 3週 に か け て 増 加 し,con伽1に比ベCNTで増加した.
[考察]
Saos2で はCNTに 対 し , 強 い 接 着 , 伸 展 性 が 報 告 さ れ て き た が , 本 研 究 に お け るES細 胞 ,MSCと も にC011tmlに 比ベ 低い 接着 性 を示 した .ES細胞はゼラチン(十)ディッシュでは,
デ ィ ッ シ ュ に 付 着 す る 細 胞 が 多 く , 培 養 液 中 の 浮 遊 細 胞 は 少 な い の に 対 し ,CNTで はES細 胞 はほ とん ど付 着せ ず, 培養 液中 に,3次元 的に 大き なス フェ □イ ド を形 成・増殖する傾向を 示 し た ,CNTはES細 胞 に 対 し て 非 付 着 性 材 料 と し て , 浮 遊 液 中 で の3次 元 増 殖 ・ 組 織 再 生 に 有 効 で あ る と 考 え ら れ た . 一 方 ,MSCは,CNT上 で十 分増 殖し ,細 胞あ たり の心j活性 ,Ca 量 は 高 い 値 を 示 し , 石 灰 化 も 進 行 し て 高し ゝ機 能 性を 発現 した .CNTは 骨組 織 再生 のた めの スカフオールドとし て有効であると示唆された.
以 上 , 論 文 に つ い て 概 要 が 説 明 さ れ た 後 , 各 審 査 員 よ り , 本 研 究の 背景 ,方 法 ,結 果,
考 察 お よ び 関 連 の 研 究 に つ い て 質 問 が な さ れ た . 主 な 質 問 内 容 は , @ 本 実 験 に お け るES 細 胞 の 分 化 能 , ◎Maniatopoulos法 , ◎ ス フ ェ ロ イ ド を 形 成 し たES細 胞 の バ イ オ ビ リ テ ィ ー , @CNTに お け る 種 々 の 細 胞 の 増 殖 特 性な どで あっ た. 論文 提出 者は いず れの 質 問に 対し て も 明 確 か つ 的 確 に 回 答 し , さ ら に 今 後 の 研 究 に つ い て も 発 展 的 な 将 来 展 望 を 示 し た . 試 問 の 結 果 , 本 論 文 は ,CNT上 で はES細 胞 とMSCの 増 殖 様 式 が 異 な り ,MSCに 対 し て は 付 着 増 殖 材 料 と し て , い っ ぽ うES細 胞 に は 非 付 着 性 材 料 と し て 有 効で ある こと を 明ら かに し 。CNTの ス カ フ オ ー ル ド の 特 性 と そ の 有 用 を 示 唆 し た 点 が , 今 後 の 歯 科 医 学 の 発 展 に 大 き く 貢 献 す る も の と 評 価 さ れ た , さ ら に , 学 位 申 請 者 は , 本 研 究 を中 心と した 専 門分 野は
もとより,関連分野についても十分な学識を有していることを審査員一同が認めた.