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博 士 ( 理 学 ) 花 村 幸 生 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 理 学 ) 花 村 幸 生

学 位 論 文 題 名

A Revision of Littoral Mysids of the Genus Archaeomysis (Crustacea : Mysidacea) in the North Pacific Ocean

( 北 太 平 洋 産 浅 海 性 アミ 類4 rchaeom ysis属 (Crustacea:Mysidacea)の 分 類 学 的 研 究 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  節 足 動 物 甲 殻綱 ア ミ目 (My sidacea) の仲 間は 、雌 の成 体 が育 房を 持っ こ とか ら、

端 脚 類 ( ヨ コ エピ 、 ワレ カラ )や 等脚 類 (フ ナム シ、 ダン ゴ ムシ )な どと 共 に嚢 工ビ 上 目に 分 類さ れる 。外 見 上は エピ 、オ キア ミ (ホ ンエピ上目 )に酷似するが、分類学上 は 遠 縁 で あ る 。 ア ミ 自 に は6科7亜 科 が 含 まれ 、 本研 究の 対象 群Arcカaeomysis属 は、

Gas trosaccus属 な ど7属 と 共 に ア ミ 科 (My sidae) 、Gas trosaccinae亜 科 に 含 ま れ る。

  Archaeomysisは 北 太平 洋に 固有 の群 で 、特 に亜 寒帯 沿岸 域 で極 めて 個体 数 が多 く、

生 態 学 的 に 重 要な 位 置を 占め てい ると 考 えら れる 。し かし 、 その 分類 学的 研 究は 今な お 不十 分 であ り、 特に 西 部太 平洋 にお いて は 限ら れた報告が なされているにすぎない。

  Archaeomysis属 は 、 属 の 基 準 種 で あ るA.ぎrebロitzkii Czerniavsky,1882 とA. koよuboi Ii.1964の2種 の み を 含 む 小 群 で あ る と こ れ ま で 考 え ら れ て き た

(Mauchline&Murano,1977; Mau chline,1980) 。  A. grebnitzkiiは 原 記 載

( ペ ー リ ン グ 海 ) 以 後 、 北 米 西 岸 の 試 料 つ い てBan ner(1947,1954a,b) 、 Tat ters all(1951) 、Holmquist(1975,1982) に よ っ て 研 究 さ れ た 。 ー 方 、Ii

(1964) は 日 本沿 岸 での 本種 の出 現を 記 録し たが 、本 邦産 の 個体 は原 記載 及 び北 米産 の も の と は 形 態 上 若 干 の 差 が 認 め ら れ 、 別 種 の 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。A.女 〇kuboi は 本 邦 産 の 標 本を も とにIi(1964)に よ って 創設 され た。 し かし 、そ の後 信 頼で きる

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載以後そ の実体 が明確でないぱかりでなく、A.よokuboiとの間で分類上の混乱を引 き起こしていた。これらに加え、北海道からは既知種の何れとも異なる標本が多数採 集されていた。

  以上の様 な背景 から、本研究はArchaeomysis属アミ類の分類学の確立を目的とし た。本属の個体は外部形態が非常によく似ている。従って、種の実体を把握するため には、従来あまり触れられぃなかった個体変異及び各形質の変異幅についても十分把 握する必要がある。こうした点を踏まえ、本研究では、基産地あるいはそれにできる だけ近い 地域を 含む北太 平洋の 各地から10000個体を超える標本を収集した。この うち特に成体について個体群間で詳細な比較検討を行った。その結果、今まで重要と されてきた雄第3腹肢内肢の節数に加え、従来殆ど注目されていなかった尾節の相対 長、側棘 数及ぴ その長さ、隣片の相対長、雄の第2腹肢内肢、雄第3腹肢外肢は有用 な種の判別形質となり得ることを確認した。これらの点を考慮し多数の標本を比較検 討した結果、北太平洋において形態的に識別可能な6種の存在を明かにした。以下、

それぞれの種の特徴を簡単にのぺる。

  1)A.ぎrebnitzkiiはこ れまで日 本を含む 北太平洋一円に分布するとされてきた がぺールング海から中部カリフォルニア沿岸にかけてのみ生息することが確認された。

ただし、べーリング海産の雄は他海域のものに比べて第3腹肢外肢の節数が多いこと、

ブリテイシュ・コロンビア産の個体は尾節が短いこと等の地理的変異が見られた。こ のことか ら幾っ かの地域個体群の存在が示唆される。2)本邦からA.ぎrebnitzよハ として報告されていた種は非常に身体が細長く、雄の第3腹肢が短いなどの特徴を持 ち、べーリング海およぴ東部大平洋産のものとは別種であることが判明した。この種 は本邦亜熱帯海域の固有種とみられ、新種A.  japonican.sp.として記載した。3)   A.kokuboiは原 記載どお り尾節 側面に7棘、 雄第3腹肢内肢が1節の特徴を持つ。

本種は本邦東北を中心に生息する種であることが判明した。これにより、中国沿岸で 報告 さ れ たA. kokuboiは 別 種と 判 断 され た 。3)Nakazawa(1910) が 報告 した G.vu]ぎarisは 尾節が細長く、側面に8棘有し、雄第3腹肢外肢は特異な形態を示す ことから その実 在が確認され、併せてA.kokuboiとの違いを明確にした。さらに本 種におい ては、 雌の第2〜5腹肢にArchaeomysisと同様 の微小な 外肢を 持っことか ら、従来 認識さ れていたGas trosaccusではなく、新たにArcカaeomysisに属するこ

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が 明 ら か に な っ た 。  5) 北 海 道 中 央 部 か ら 道 北 の 砂 浜 海 岸 に 生 息す る 個 体 群はA.

kokuboiに 極 め て 近 い 形 態 を 有 し て い る が 、 雄 の 第2、3腹 肢 内 肢 の 節 数 な ど 幾 つ か の 形 質 の 詳 細 な 比 較 検 討 の 結 果 、 別 種 で あ る と 判 断 し 、 こ れ をA.articu lata n.sp. とし て 記 載 した 。6) 北 海 道オ ホ ーツ ク沿岸 からA.grebni tzよ川 の近似 種A. ocカotensis n. sp.が採集された。

  こ れ らの 結 果 に 基ず き 、 全6種 の形 態 特 質 を明 確 に し 、種 の 確 立 を行 い 、 そ れを 基 にArchaeomysis属の定義を明確にした。

  一 方 、 胸 肢 基 部 の 乳 頭 状 突 起 の有 無 か ら 、上 記 の6種 は 以下 に 示 し た2群 に分 け ら れ る :  1)  乳 頭 状 突 起 を 有 す る グ ル ー プ (A. grebnitzたHグ ル ー プ ;  A. ぎrebロitzk ii‑A.   och ot ensis ‑A.   japon ica)。このうち、A. japonicaは形態的に前 二 者 と は 幾 分 特 化 し た 形 質 を 有 し て い る 。  2)  乳 頭 状 突 起 を持 た な い グル ー プ   てA.  vulgar isグループ;  A.vu]ぎar isーA.koたuboi‑A,articulata)。このうち、

A.  vulgar isは 二・ 三 の 重 要な 形 質 に おい てA.kokuboi及 びA.  articu lataとは明 ら か に 異 なる た め 、 この グ ル ー プは さ ら に2小 群と し て 認 識で き る 。 なお 、 こ の 突起

| よ 、 その 出 芽 場所か らみて 副肢(epipod)起 源の形質 とは考 えられ ず、派 生形質 と判 断 さ れ たが 、 こ のこと は、今 後本群 の系統 関係を 考える 上で最重 要であ ると思 われる 。   さ らに 、 本 邦 産種 に 限 り 、そ れ ら の 分布 範 囲 や 生息 域 に 関 する より 詳しい情 報を提 供 し た 。A.  articulata‑A.kokuboi‑A. vulぎarisの3種は 砂 浜 海 岸性 種 で あ り、 波 打 ち 際 汀 線付 近 に 高 密度 で 見 ら れ通 常 水 深1乃 至2mを 越 えて 深 所 で 採集 さ れ る こと は め っ た に ない 。 こ れ ら3種は 先 に 述 べた よ う に 主分 布 域 を 異に し て い るが 、 各 々 の分 布 域 の 縁 辺部 で は 分 布の 重 な り がみ ら れ た 。即 ち 、A.koたuboiは 、 北 海 道中 央 部 で A. ar凵cu Iataと 、 ま た 東 北 南 部 で はA.  vulぎarisと 共 存 し て い た 。 他 方 、A.

japonicaとA. ochotensisは 亜 潮 間 帯 種 で あ り 、 汀 線 に は 出 現 し な い 。 従 っ て 、 先 の3種 と は 水平 的 分 布 域が 重 複 し ても 、 鉛 直 的方 向 で は っき り と し た生 活 圏 の 隔離 がなされていた。この2種の水平分布域は重複しなかった。

  以 上 述 べ た よ う に 本 研 究 は 、Archaeomysis属 に は 従 来 知 ら れ て い た よ り も さ ら に 多 く の種 が 存 在 し、 ま た 日 本沿 岸 に 於 て種 分 化 が 著し い こ と を明ら かにし た。な お Archaeomysis属 の 種 間 の 系 統 関 係 解 明 は 今後 の 課 題 とし て 残 さ れた 。 こ の 解明 に は Gas trosaccinae亜科の近縁他属の分類学的再検討が必須である。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    馬 渡 駿 介 副 査    教 授    久 田 光 彦 副 査    教 授    戸 田 正 憲 副査    助教授    片倉晴雄

          

A Revision of Littoral Flysids of the Genus Archaeornysis (Crus tacea:  l'Iysidacea)  in  the  North  Pacific  Ocean

( 北 太 平 洋 産 浅 海 性 ア ミ 類Archae omys is (CrustaceaHysidacea)の 分 類 学 的 研 究 )

陸 上 生 物 に 比 べ て 海 産 生 物 の 研 究 が 遅 れ て い る 理 由 は ,  言 う ま で も な く 人 間 が 海 水 中 で 生 存 で き な ぃ 故 に , 生 物 の 棲 息 状 況 の 把 握 が き わ め て 困 難 で あ る か ら で あ る ,   類 学 に お ぃ て ,  こ の 不 利 な 条 件 を 克 服 し ,  信 頼 に た る 結 果 を 得 る た め に は ,  多 数 の 場 所 か ら 得 た 多 数 の 標 本 に も と づ ぃ て 研 究 す る 他 に な ぃ .  し た が っ て 海 産 無 脊 椎 動 物 の 分 類 学 的 研 究 は 多 大 な 労 カ と 時 間 を 必 要 と し ,  な か な か 実 行 さ れ な ぃ .  こ の こ と は 研

究の遅れに輸をかけるとともに,  少数の標本に基づく安易な報告がまかり通ることを 許し   多くの分類群におぃて分類の混乱を助長してきた.

  北部太平洋の沿岸に広く,  また多数個体が分布し,水産重要魚類の餌としてあるい 強生態学的に興味深いアミ類Archaeouysis属の分類学的研究も例外ではなぃ,  この属

は モ の 分 布 域 の 広 さ や 棲 息 個 体 数 の 多 さ に も か か わ ら ず ,  2種 の み を 含 む 小 属 と 認 識 さ れ て き た .  し か し 近 年 の い く っ か の 分 類 学 的 報 告 は こ の 属 内 の 種 分 類 に 疑 問 を 投 げ か け る も の で あ っ た .  申 請 者 は 10年 以 上 に 渡 一 っ て こ つ こ っ と 収 集 し て き た 合 計10000個 体 を 越 え る ア ミ 類 の 標 本 に 基 づ き ,  足 掛 け3年 を か け てArchaeomysis属 の 実 体 の 一 部 を 解 明 し .  本 論 文 を ま と め た

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  申請者はまず形貫の袞異の研究を行い,  分類形貫を再吟味した.  その結果,  これま で 用 い られて きた雄 第3腹肢 内肢の節 数に加 えて尾 節のプ ロポー ション および 側競の 数 と 長 さ , 雄第2腹肢 内 肢 と 第3腹肢外 肢など の新しい 形買が 分類に 有用で あるこ とを明 か とした ,  モれ ちの新 形貫を 含めて 最終的 には合計15の形貫の岨台せでArchaeomヱsis 属に6種を識別することに成功、した.  すなわち,  基準種tlrQhaeornysisぢrebnjtzkjiおよ び矗,kQE塑bQiの既知2穐に加えて,  これまでeastrosaccus vki!garisとされていたもの を新たに本農ヘ移し,  さらにA. japanica,A−・articulata A―.ochotensisの3新種を 報告した.

  これらの 種は形 慧形貫 のみな らず生 態学的 にも異 なって おり,  それぞれの種として の 実体が 明かと なった .  例え ぱ,  申 請者はこれら6種の水平分布を明らかにした.A.

Srebnitzkiiはべ ーリング 海から カリフ ォルニ ア中部 まで,  その他の5種は日本沿岸に 分布していた.  さらに日本産種5種の水平および垂直分布を詳しく調べたところ,  A―.

articulata,A−.La聖HbQ!,A−.vulgarisの3種は砂浜海岸性種で,  分布の重なりこモ見 られるが,  北から南へと種が置き変わることが明かとなった,  一方,  A−.ochotensisと A― .japonicaは 亜瀬間 帯種で あり, 前者は オホーツク海,後者はそれより南の暖流域に 棲み,  分布の重なりは兒られなかった,

  以上の結 果によ り,ArohaeoIヱsis属に おぃては標本による種の同定が可能となった.

こ の こ と は ア ミ 類 の 今 後 の 研 究 に 大 き く 貢 献 す る も の と 考 え ら れ る ・   本研究は いわゆ るロ分 類学の 範一に はいる 研究で ある.  ば分類 学とは自然の中に種 を 区別し それを 記戴す る学問 分野で あり,  自然を 体系化 して理解 しようとする分類学 の 基礎を なす分 野である.  ロ分類学なくして自然の体系化も進化の理解も有り得ない・

も しa分 類の結 果が信 頼でき なけれぱ ,  モ のグルー プの生 物学は 根拠を 失うこ とにな る.  申請者の行った本研究,  すなわちArchaeoiysis属のロ分類は,  多数の地域から得 ら れた多 数の標 本に基 づいて いるこ と,  個 体変異 および 個体群間 変異に適切な考慮を 払 ってい ること ,  分類に用いた15形質の選定はきわめて妥当と考えられること,  など か らきわ めて信 頼性の 高い研 究であ ると判 断され,  高く 評価され る。審査員一同は、

参 考 強 文 内容 と 最 終 試験 結 果 を含め て、申 請者が 博士( 理学) の学位 を受け るに十 分 の資格があるものと認めた。

参照

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