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特殊な気管支腺型腺癌の1例 : その細胞像と組織像 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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特殊な気管支腺型腺癌の1例 ―その細胞像と組織像― 山梨県立中央病院

病理科 井上智美 小山敏雄 木村正博

原仁 石井恵理 中川美紀 外科 千葉成宏 はじめに  気管支腺細胞への分化を示す腺癌は、切除された肺腺癌中の約7%を占め、他の腺癌に 比べやや少なく、若年者に多い傾向がみられる1)。今回我々は、細胞診で組織型の鑑別に 苦慮した特殊な気管支腺型腺癌を経験したのでその細胞像と組織像を報告する。 症例  66歳男性。既往歴は10年来高血圧・痛風にて本院専門外来に通院していた。 喀疾過多を主訴として、平成7年1月喀疾細胞診施行し、classV早期扁平上皮癌の疑い 精査目的で気管支鏡施行し、左B6のbrushingで扁平上皮癌、 TBLBで腺癌と診断された。 胸部X線及び、CTは異常を認めなかった。同年4月左S6模状部分切除術を施行した。 細胞学的所見  喀疾細胞診:背景に、中等度∼高度の異型化生上皮細胞が散在性に認められた(図1)。 その他に小型でN/C比が非常に高く、核型不整・核縁肥厚し核小体の目立っ細胞も認め られた(図2)。また数個だが、細胞質がライト・グリーン好性、核偏在傾向があり、核 型不整、核クロマチンは粗頼粒状で、核小体が小型だが目立っ細胞が認められた(図3)。 これらの所見より、異型化生上皮細胞を伴って、数個のN/C比の高い明らかに悪性と考 えられる細胞を認めたため、classV、早期扁平上皮癌の疑いと報告した。  retrospectiveには、高度異型化生上皮細胞と思われた細胞の中には腺癌細胞が喀疾中 で変性したものも含まれると思われる。  気管支擦過細胞診:背景はきれいで、悪性と思われる細胞は、結合性・重積性の強い集 塊状で出現していた。集塊に接して気管支線毛上皮細胞が見られる部分も認められた。集 塊には、はっきりした腺腔構造や粘液空胞は認められなかった(図4)。細胞は隣接して いる気管支上皮と比較してもわかる通り、小型で、N/C比が非常に高く、細胞質は不明 瞭であった。核は円∼楕円形で、大小不同が軽度に認められ、核型不整・核縁肥厚も一部 に認められた。核クロマチンは濃染し、粗穎粒状で、小型だが明瞭な好酸性核小体が、1

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平成8年4月1日 ∼2個認められた(図5)。  細胞が小型でN/C比が高い点で、小細胞癌も鑑別にあがったが、クロマチンパターン が粗穎粒状で、好酸性の核小体が目立つことから除外できた。しかし、腺癌との鑑別は困 難で、腺腔構造や粘液空胞などの腺癌的特徴がなく、喀疾で扁平上皮癌と診断していたた め最終的に扁平上皮癌と報告した。 病理学的所見  切除標本は左肺下葉のS6よりなり、腫瘍はB6の区域気管支から亜区域気管支のab cの3枝にかけて存在し、大きさは1.5×1×1㎝で気管支壁内に腫瘍が限局していた(図 6)。組織学的にも腫瘍は、肺胞領域に浸潤していなかった。腫瘍細胞は間質にscirrhous に浸潤し(図7)、所々で導管内にも浸潤が認められた(図8)。気管支では壁に沿って 上皮内進展をしており、強拡大で観察すると既存の線毛円柱上皮下に腫瘍細胞の浸潤が認 められた(図9)。これは気管支擦過細胞診で、腫瘍細胞の周辺に線毛円柱上皮細胞が見 られたのに一致した所見である。細胞は小型でN/C比は高く、クロマチンは粗穎粒状で 核小体が目立ち、低分化腺癌と考えられた(図10)。  アルシアン青一PAS重染色では腫瘍細胞に粘液は全く陰性で、腺房細胞への分化には 乏しいと考えられる。免疫組織化学的検索では腫瘍細胞と導管上皮細胞が、EMA・CAM− 5.2がともに陽性で、S−100は不一致であったが、その他は陰性であることから両者は類似 した染色結果と考えられた(表1)。一般的に気管支腺型腺癌は腺房細胞への分化が多く 見られるが、本例の組織構築、免疫染色の結果から、腫瘍細胞は導管上皮への分化傾向が あると考えられた。 表1 免疫組織化学的検索の結果

CEA

iA5B7)

EMA

高分子

Pラチン

CA甘5.2 i低分脅分ン) S−100 HHF−35

腫瘍細 胞

一 十 一 十 一 一

導管上皮細胞

一 十 一 十 十 一 気管支腺房細胞 一 一 一 一 一 一

筋上皮細胞

一 一 一 一 十 十 気管支線毛細胞 十 十

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考察  細胞診と組織診で組織型が不一致であったが、その理由は腺腔・粘液など腺癌的特徴の 乏しかった為に組織型の鑑別が困難だったと思われる。しかし、伊藤ら2)は、気管支腺型 腺癌の細胞学的形態として細胞集塊の結合性の強さや、重積性の深さをあげており、本例 も一致した所見であった。  気管支腺型腺癌は肺腺癌の中では比較的頻度は少なく、その組織発生から考えても比較 的太い気管支に発生すると考えられる。また、通常の気管支腺型腺癌は、気管支腺への分 化を特徴とする3)ことから、本例のように粘液をもたない症例は、かなり稀と考えられる 。免疫組織化学的に腫瘍細胞が導管上皮と類似した染色性を示したので、導管上皮への分 化があると推測される。また、導管内への浸潤も目立つ所見であった。さらに、発生部位 から考えると低分化扁平上皮癌との鑑別も問題になったが、角化傾向、細胞間橋を全く見 ないことから否定された。 結語  1.特殊な気管支腺型腺癌を経験した。  2.細胞診では、一般的な気管支腺型腺癌の特徴である腺腔構造や細胞粘液空胞    の所見はみられないが、細胞集塊の重積性・結合性の強さや細胞が小型とい    う特徴は共通していた。  3.癌はB6の気管支壁に限局していた。  4.組織学的には低分化腺癌で、scirrhousな浸潤と、気管支上皮内及び気管支    腺内の進展を特徴とした。  5.免疫組織化学的に導管上皮に類似した染色性を示した。  最後に、この腫瘍の診断と適切なアドバイスを頂いた、国立癌センター臨床検査部長の 下里幸雄先生に深謝致します。 文献 1)下里 幸雄:肺癌の生検と細胞診、医学書院、35−39、1988、東京 2)伊藤 正美他:肺腺癌の細胞型別分類と気管支擦過による細胞形態像の関係にっいて   日臨細胞誌、24:475−462、 1985. 3)下里 幸雄他:気管支腺由来と考えられる腫瘍の形態;特に腺癌にっいて、   癌の臨床、19:170−177、 1973.

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平成8年4月1日 図1 喀疲細胞診:中等度∼高度異型化生上皮紬胞。   (左右「:Papanic【エlauuma  ×600) 図2 喀疲細胞診’小型でN/C比の高い細胞。   悪性細胞が疑われる。   (祐  Papanlcolaou雑  x600) 図3 喀庇細胞診:悪性と考えられた細胞。   (Papanicolaou絶  ×600) 匂.1 簿 饗琴鞭 崔 撫鯵バ・

1灘

難鱗獅

潴 繕 図4 気管支擦過細胞診:結合性・重1資性の   強い集塊。(矢印:気管支線;tt皮細胞)    (Papanioolaou絶  ×600) ’ t 募 [,」5   ^ [,

懲嚢麟薫 懸

  図5 気管支擦過細胞診      (PapanicoIaou絶  x 500) ttllll・,.1il.f.lllllll 漁i∴i, 』i珍

羅難

(5)

講、 図6 腫瘍割面の全スライス  図7 間質にscirrhovsに浸潤する鵬細胞。    (llEma  ×400)    図8 腫瘍細胞の導管内浸潤。     (HE絶  ×200)  図9 既存の線毛円柱」波下に腫瘍細胞の    浸潤がみられる。 (IIE染色 ×400)   図10低分化腺癌の気管支腺内浸潤。     (HE絶  x 400)

参照

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