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第1章 緒 論

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(1)

界面要素を用いた FEM による

溶接高温割れに関する理論的研究

平成 14 年 1 月

(2)
(3)

目 次

第一章 緒 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.1 本研究の背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 既往の研究および現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.2.1 冶金学的な研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.2.2 力学的な研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 1.3 本論文の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第二章 温度依存型界面要素を用いた溶接高温割れ解析法の開発・・ 9 2.1 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2.2 温度依存型界面要素を用いた高温割れ解析法 ・・・ 10 2.2.1 高温割れの発生および進展のモデル化 2.2.2 温度依存型界面ポテンシャルを用いた ・・・ 10 高温脆化の力学的モデル化 ・・・・・・・・・・ 11 2.2.2.1 高温脆化のモデル化 ・・・・・・・・・・ 11 2.2.2.2 界面ポテンシャルエネルギー関数 ・・・ 12 2.2.3 界面要素の剛性行列と荷重ベクトル ・・・ 13 2.3 ルートギャップおよび仮付けのモデル化 ・・・ 15 第三章 静的-動的混合解法の開発とその応用 ・・・・・・・・・・ 17 3.1 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

(4)

3.2 界面要素を用いて表された力学系の安定性 ・・・ 17 3.3 静的解析と動的解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 3.3.1 陽解法による動的理論 ・・・・・・・・・・ 21 3.3.2 中央き裂を有する弾性板のき裂進展解析 ・・・ 21 3.4 静的-動的混合解法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 3.4.1 静的-動的混合解法のアルゴリズム ・・・・・・・・・・ 24 3.4.2 質量マトリックス・減衰マトリックスの最適化 ・・・ 25 3.5 静的-動的混合解法の応用例 ・・・・・・・・・・ 28 3.5.1 中央き裂を有する弾性および弾塑性板 におけるき裂進展への応用 ・・・・・・・・・・ 28 3.6 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 第四章 溶接始端割れ試験とその解析 ・・・・・・・・・・ 37 4.1 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 4.2 溶接始端割れ実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 4.2.1 実験装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 4.2.2 入熱条件および試験片寸法 ・・・・・・・・・・ 39 4.2.3 実験結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 4.3 提案手法による溶接始端割れ試験の解析 ・・・ 42 4.3.1 解析モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 4.3.2 解析結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 4.4 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 第五章 2 種類の Houldcroft 試験への提案手法の応用 と割れ発生メカニズムの検討 ・・・・・・・・・・ 53 5.1 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 5.2 Reverse Type Houldcroft試験 ・・・・・・・・・・ 54

(5)

5.2.2 実験結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 5.3 Reverse Type Houldcroft試験の解析 ・・・・・・・・・・ 56 5.3.1 解析モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 5.3.2 溶接速度および入熱量の影響 ・・・・・・・・・・ 57 5.3.3 諸パラメータが高温割れに及ぼす影響 ・・・ 59 5.3.3.1 寸法パラメータ r0の影響 ・・・・・・・・・・ 61 5.3.3.2 BTRにおける降伏応力/界面強度比の影響 ・・・ 61 5.3.3.3 BTR幅の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 5.3.4 要素分割の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 5.4 Conventional Type Houldcroft試験の解析 ・・・・・・・・・・ 65 5.4.1 溶接速度および入熱量の影響 ・・・・・・・・・・ 65 5.5 高温割れ進展、停止の材料力学的メカニズム ・・・ 66 5.5.1 入熱分布の単純化による割れ先端における曲率の導出 66 5.5.2 Houldcroft試験に関する力学的検討 ・・・ 68 5.6 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 第六章 基礎試験に基づく提案手法の定量化 ・・・・・・・・・・ 73 6.1 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 6.2 提案手法による Trans-Varestraint 試験の解析 ・・・ 74 6.2.1 解析モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 6.2.2 解析結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 6.2.2.1 割れ進展のシミュレーション ・・・・・・・・・・ 77 6.2.2.2 割れに及ぼす諸パラメータの影響 ・・・ 80 6.2.3 Ductility Curveとの比較 ・・・・・・・・・・ 82 6.3 Trans-Varestraint試験による寸法パラメータ r0の同定 ・・・ 85

6.4 Conventional Type Houldcroft試験による

寸法パラメータ r0の同定 ・・・・・・・・・・ 87

6.4.1 実験結果および解析結果 ・・・・・・・・・・ 88 6.5 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90

(6)

第七章 レーザー溶接時における横断面内の高温割れ問題への応用 91 7.1 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 7.2 任意の場所に発生する割れのモデル化 ・・・・・・・・・・ 92 7.3 解析結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95 7.3.1 溶け込み形状の影響 ・・・・・・・・・・ 95 7.3.2 BTR幅の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 7.3.3 寸法パラメータ r0の影響 ・・・・・・・・・・ 98 7.4 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 第八章 板継溶接時における溶接変形および始終端割れに及ぼす ルートギャップや仮付けおよびタブ板の影響 ・・・101 8.1 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 8.2 ルートギャップおよび仮付けを考慮した溶接変形解析 ・・・103 8.2.1 溶接時におけるルートギャップの挙動 ・・・103 8.2.2 横収縮およびルートギャップの発生メカニズム ・・・106 8.2.3 横収縮量に及ぼす仮付け間隔の影響 ・・・109 8.3 仮付けおよびルートギャップを考慮した高温割れ解析 ・・・110 8.4 板継溶接時の始終端割れの解析 ・・・・・・・・・・111 8.5 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・117 第九章 総 括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120 謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 本研究に関連した発表論文 ・・・・・・・・・・・・・・・・・137

(7)

第一章

緒 論

1.1

本研究の背景と目的

大量生産、大量消費の現代において、諸外国に比べて人件費が非常に高 い日本の製造業が、国際社会で発展し続けるためには、新しい生産技術の 開発および製品の高品質化等を行うことで、国際競争力を強化する必要が ある。 近年、製品の高品質化を目的として、加工性、耐食性、軽量化という観 点から、アルミニウム合金が幅広く使用されるようになってきた。その用 途は、自動車のボディや船舶の船殻・プロペラなど多岐にわたる。生産技 術の開発という面では、アルミニウム合金等の用途を拡大するために、レ ーザー溶接を用いた接合が試されるようになってきた 1,2)。レーザー溶接で は、入熱密度の高い溶接が可能となるため、アルミニウム合金などの熱拡 散率が大きい材料を加工する際に有効であるほか、小入熱での溶接が可能 となるため、変形も小さく抑えることができる。一方、レーザー溶接の導

(8)

入に伴う溶接条件の変化や用途の拡大に伴う材料組成の変化が原因となり、 微細割れ等の高温割れが発生する場合がある。高温割れを始めとする溶接 割れは、製品の品質を低下させるばかりではなく、構造強度を損なうとい う危険性を有している。このような溶接割れに関しては、その発生メカニ ズムを十分に理解し、事前に回避する方法について検討する必要がある。 高温割れの研究は、Fig.1.1.1 に示すように、力学的な立場からの研究と 冶金学的な研究の 2 つに大別され、前者は割れにくい最適溶接条件の決定 や構造設計を目的としているのに対し、後者は割れにくい材料開発を目的 としている。 既往の高温割れの研究は、冶金学的な立場からのものが多数を占めてお り、具体的には、含有元素が割れの発生に及ぼす影響や溶け込み形状の影 響などについて実験を中心に検討を行い、各種合金の割れ感受性を評価3-6) している。具体的には、各種高温割れ試験を用いて材料組成や溶接条件等 が高温割れに及ぼす影響を相対的に評価し、割れに影響を及ぼす元素や組 織等を明らかにしている。しかし、このような冶金学的な手法のみでは、 実際の構造物における高温割れの発生位置や進展状況を定量的に予測する

Fig.1.1.1 Two aspects of hot cracking investigation.

・Optimization of

Welding condition

(

Heat input, Welding Speed

)

・Modeling of

Crack Formation

・Improvement of

Chemical Composition

・Modeling of

Solidification

Mechanics

Metallurgy

(9)

ことはできず、力学的な研究との融合が期待される。 逆に、力学的な立場の研究としては、ひずみを割れ発生の指標とした研 究がいくつか存在し7-9)、板継溶接時の終端割れ問題などに適用され、割れ 発生の可能性について、実験や FEM 解析を用いて検討を行っている。その 際に問題となるのは、全ひずみや塑性ひずみなどの、幾つかのひずみ成分 が存在する中で、どの成分を割れ発生の指標とするのが妥当であるのかと いう点であり、明確な結論が未だ得られていない。これは、熱弾塑性力学 に基づく従来の FEM においては、高温割れという現象自体が、直接的な形 でモデル化されていないためであると考えられる。そこで本研究では、複 雑な構造物を溶接する際に発生する高温割れの可能性を事前に予測するこ とを目的として、割れの発生および進展を表面の生成という観点からとら えた新しい高温割れ解析法の開発を行った。

1.2

既往の研究および現状

溶接高温割れの研究は、冶金学的な研究と力学的な研究に大別される。 ここでは、それぞれの研究の歴史と現状について述べる。

1.2.1 冶金学的な研究

高温割れの研究は、高温割れの発生状態により、凝固割れ、HAZ の粒界 液化割れおよび延性低下割れの研究に大別することができる。研究の内容 は、材料組成と高温割れ感受性の関係を調べたものが多く、対象となる材 料は、アルミニウム合金10)、ステンレス鋼 11,12)、炭素鋼13,14)、Ni 基耐熱合 金 15-22)など多数存在する。 仙田・松田らは、割れの発生をその時の温度を用いて整理を行い、Fig.1.2.1 に示す高温延性曲線を提案した 23)。この曲線から、高温割れ(凝固割れ)を支 配するパラメータとして、BTR(Solidification Brittleness Temperature Range, 高 温 脆 化 温 度 域 )や 限 界 ひ ず みεmin、 そ れ ら を 組 み 合 わ せ た CST(Critical

(10)

割れ感受性の評価パラメータとして用いられている。荒田・松田ら24,25,40,42)、 松田・中田ら 26-42)および松田・中川ら 41,43)は市販されているアルミニウム

合金 24-39)やステンレス鋼 40-42)および炭素鋼 43)等を対象に Houldcroft 試験

28-35,43)

や Spot Crater 割れ試験 33,34)、Trans- Varestraint 試験24-27)等を実施する ことにより、高温割れ感受性の評価を行っている。また、セル状樹枝状晶 の 2 次元成長モデルを用いた BTR の数値解析法を提案 44-46)し、実験と計算 結果との間に良好な一致 45)を得た。一方、松田・中川ら 43)および荒田・松 田ら 47)は、限界ひずみεminと限界ひずみ速度ε&minの関係を実験により明ら

かにした。この他にも、松田・中川ら49-55)、V. Shankar・T. P. S. Gill ら56)、 S. Missori・C.Koerber ら57)、M. J. Cieslak58)、小川・三浦ら 59)および益本・ 篠田ら 60)は、ステンレス鋼を対象に、また、片山・小島ら 61)および金・黄 ら 62)は、アルミニウム合金を対象に基礎試験を実施し、含有元素量等の影 響について検討を行っている。 1990 年代後半から、西本・禹ら63,64)、篠崎・羅ら65)、羅・吉原ら 66)らおよ び茅野・石黒ら67)は、ガスタービン部材やロケットエンジンの主要構成材料 である Ni 基耐熱合金をレーザー溶接した際に発生する HAZ の粒界液化割 れを対象に、拘束緩和式 U 型試験 63-65)や Trans-Varestraint 試験 66)を実施す

Fig.1.2.1 High temperature ductility curve proposed by Senda and Matsuda et al.

Higher

Temperature (℃)

Lower

St

ra

in

BTR

ε

min

CST

T

L

T

s

(11)

ることにより、割れ感受性を評価している。また、西本・禹ら67)、S. A. David68) および中尾・篠崎ら 69)も、同様の基礎試験を実施し、含有元素量の影響に ついて検討を行っている。 また細見・篠崎らは、Thermo-calc を用いて BTR を予測する方法により、 実験結果と計算結果を比較することで、母材の固相-液相線間の温度領域 と溶接時の BTR との関係について検討を行っている 70)。一方、西本らは、 粒界液化割れは Laves cluster の液化に伴う粒界液化が主たる原因であると 考え、HAZ の粒界液化の数値シミュレーションを実施し、凝固過程で粒 界上に生成した Laves cluster 量や結晶粒径、加熱速度等が高温割れ発生の 主要支配因子であることを示した 67)。 以上で示した冶金学的な研究は、材料組成や組織等が高温割れに及ぼす影 響を相対的に評価しているものがほとんどであり、実際の構造物における高 温割れの発生を定量的に予測するには至っていないのが現状である。

1.2.2

力学的な研究

佐藤・上田らは、大型鋼板の片面自動溶接を対象に、実験および FEM 解析を実施することにより、仮付けや溶接条件等が終端割れに及ぼす影響 71,72) について詳細に検討を行った。その結果、溶接終端部での BTR 内にお ける引張りひずみを低減することで、割れ発生を抑制できることを示した 73) 。これは、仙田・松田らが提案している高温延性曲線の概念 23)を考慮に 入れたものであり、BTR 内におけるひずみが限界ひずみεmin より大きく なった場合に割れが発生すると考えている。また溶接条件が変化しても、 限界ひずみεminはほとんど変化しないことを実験により明らかにした73)。 この他にも、シーリングビードを残さず最終端部まで溶接すると確実に割 れが発生すること72)等の多くの知見を得ている。藤田・寺井らも大型鋼板 の片面自動溶接を対象に、溶接条件や仮付け間隔、タブ板の種類等が高温 割れに及ぼす影響について検討を行い、多電極を用いてビード形状を改良 することで、割れの発生を防止できること74)や、Arc 直前の引き裂き力が 高温割れに及ぼす影響について詳細に検討を行った 75,76)。顧・村川らは、

(12)

板継溶接時の終端割れ問題を対象に FEM 解析を実施することにより、終 端における塑性ひずみの挙動を調べ、溶接速度や入熱量が終端部における 塑性ひずみに及ぼす影響について詳細に検討を行った 77)。辻、吉村は、終 端割れとの 関係が予 想される最 終端部に おける仮付 けに発生 する引き裂 き力と、溶接条件との関係について、実験と FEM 解析により検討を行っ ている 78-80)。 しかし、造船所においては、溶接のさらなる高速・高エネルギー化によ る施工時間の短縮を模索しているために、現在でもなお終端割れの問題は 解決しておらず、溶接終了後に超音波や X 線などを用いて非破壊検査を実 施し、割れが発生した場合には補修溶接を行うという事後処理により解決 を図っている。このことは、生産コストの上昇や生産効率の低下につなが るので、事前に割れの発生を抑制する方法が望まれるところである。 一方、井元・金らは、変動荷重下にある橋梁の、溶接による補修・補強 工事を対象に高温割れ発生の条件式を提案81,82)し、それを用いて溶接施工 の可否判定法83)を示し、実工事にも適用している。 1990年代後半から、西本・禹ら 84)、篠崎・羅ら 85,86)は、Ni 基耐熱合金 をレーザー溶接する際に発生する HAZ の粒界液化割れの発生メカニズム を解明するために、溶接速度および入熱量や溶け込み形状が割れに及ぼす 影響について、実験や熱弾塑性理論に基づく FEM 解析により検討を行っ ている。その際に、溶け込み形状を N、W、Y の三つのタイプに分類し、 Y、W、N の順に割れが発生しやすいことを実験により明らかにした17,84,85) また篠崎らは、溶け込み形状がネイル状の場合には、そのネック部の曲率 半径ρがあ る限界値 より大きい ときに割 れが発生す ることを 実験により 明らかにした 3,21,85,86)。一方、FEM 解析においては、第一主塑性ひずみ量 を割れ発生の指標とし、評価を行っている20,86)。 H. W. Bergmann1・R. M. Hilbinger は、高温割れの発生を BTR における ひずみ量の大きさにより判断し、発生すると判断した場合には、ヤング率 をほぼゼロとすることで割れの進展解析を行っている 87)。

このほかにも、FEM を用いている解析例としては、Sigma Jig Testing を 解析対象としている Z. Feng の報告 88)や、Varestraint 試験を対象としてい

(13)

る A. Fontes・I. Tosello の報告89)、PVR 試験や板継溶接を対象としている H. Herold・M. Streiternberger らの報告 90,91)、強制曲げ変形による高温割れ 試験を対象としている R. M. Hilbinger・H. W. Bergmann らの報告92)が挙げ られる。 以上のように、既往の高温割れの研究は、主としてひずみを指標として 割れの発生を予想するものであるが、割れの発生・進展およびその長さを も含めて定量的に再現した報告は見あたらない。

1.3

本論文の構成

本研究の主たる目的は、複雑な構造物を溶接する際に発生する高温割れ の可能性を、事前に予測できる解析法を開発することである。 本論文は全体として 9 章から成っており、各章の主な内容は次の通りで ある。 緒言である本章に続き第 2 章では、高温割れの発生および進展を解析す るために、割れ表面の生成を温度依存型界面要素の形で直接解析に導入し た高温割れ解析法の開発について述べる。この手法においては、BTR 内の 領域が開口変位を受けることにより高温割れが発生すると考えている。ま た、任意の場所に発生する高温割れのモデル化およびルートギャップを考 慮した高温割れ解析のモデル化についても述べる。 第 3 章では、FEM 静的-動的混合解法の開発とその応用例について述べ る。割れの発生・成長は静的平衡状態を維持しながら安定に進行するとは 限らず、状況によっては割れが不安定となり現象が動的になる場合も考え られる。このような場合には、もはや静的解析で解を追跡することは不可 能であり、動的解析が必要となる。そこで本研究では、FEM 静的-動的混 合解法の開発を行う。本章ではその概要について述べ、有用性について検 証を行う。 第 4 章では、提案手法を矩形平板の始端割れ試験に応用し、実験結果と

(14)

比較することで、提案手法の妥当性について検証を行う。 第 5 章では、提案手法を Houldcroft 試験に応用し、実験結果と比較する ことで、提案手法の妥当性について検証を行う。Houldcroft 試験では、溶 接方向が異なる一見互いに矛盾した 2 種類の試験法が存在する。その試験 法に提案手法を応用することで、力学的な視点から 2 種類の Houldcroft 試 験の割れ発生メカニズムについて検討を行う。 第 6 章では、提案手法を用いて定量的な解析を行うために、解析結果に 影響を及ぼすパラメータについて検討を行う。影響が大きいパラメータに ついては、その決定法について、Trans-Varestraint 試験を用いる方法およ び Houldcroft 試験を用いて決定する方法について具体的に検討を行い、両 試験法により決定されたパラメータの妥当性について検証を行う。 第 7 章では、溶接横断面内における溶け込み形状が高温割れに及ぼす影 響について検討を行う。この問題では、割れの発生する場所や進展方向は 事前に予想できないために、全ての通常要素間に温度依存型界面要素を挿 入し解析を行う。 第 4、5 章では高温割れ感受性試験法を対象に提案手法の妥当性を検討 するが、第 8 章では実施工時における高温割れの代表的な例である板継溶 接時の端部割れ問題を対象に実施工に対する応用について検討する。その ために、提案手法に対し、新たにルートギャップおよび仮付けモデルを組 み込むことにより、ルートギャップや仮付けを考慮した解析法を提案する。 この問題に関しては、特に、タブ板や仮付け位置および溶接条件の影響に ついても明らかにするとともに、新たに提案されたモデルの有用性につい て検討を行う。 第 9 章では、第 2 章から第 7 章までに得られた主な結果を総括する。

(15)

第二章

温度依存型界面要素を用いた

溶接高温割れ解析法の開発

2.1

緒 言

本章では、微小ひずみ熱弾塑性理論に基づいた有限要素法(FEM)に温度依 存型界面要素(Temperature Dependent Interface Element)を導入した高温割れ 進展解析法について述べる。 従来の有限要素法を用いた高温割れ解析の多くは、ひずみを割れ発生の 指標とし、BTR 内において限界ひずみεmin以上のひずみが負荷された場合 に割れが発生するという、仙田・松田らが提案した高温延性曲線の概念 22) を導入したものである。この概念を高温割れの進展問題にまで拡張したの が H. W. Bergmann らであり、FEM 解析において、要素のひずみが限界ひず みεmin よりも大きくなった場合に割れが発生・進展すると考え、割れが発 生した要素のヤング率をほぼゼロとすることにより割れの進展をモデル化 している 87)。この手法の最大の利点は、汎用ソフトにより計算できること

(16)

が挙げられる。しかし、割れの発生は、表面の生成であり、単純な応力、 ひずみにより記述できるとは考えにくい。そこで本研究では、高温割れ表 面の生成を界面要素という形で直接モデル化する新しい方法を考えた。

2.2

温度依存型界面要素を用いた高温割れ解析法

2.2.1

高温割れの発生および進展のモデル化

本研究では、高温割れの発生を、BTR における界面の結合強度の低下と してとらえ、表面エネルギーγと界面強度σcrの温度依存性により表わすこ とを考えた。このモデルを村川らにより開発された界面要素 93)に組み込む ことにより、温度依存型界面要素を新たに開発し、それを用いて高温割れ 解析法を実現した。この解析法では、割れ表面間の結合応力σcrと新しい表 面の生成に必要な表面エネルギーγの両者をパラメータとして含むポテン シャル関数に基づき導かれた界面要素を用いて、割れ表面の生成をモデル 化する。そして、この界面要素を高温割れ進展経路に配置することで、高 温割れの発生および進展の解析を行う方法である。したがって、割れが発 生あるいは進展するか否かを計算ステップごとに判断する必要はなく、割 れは、荷重や変位の増加に従って自然に、しかも表面エネルギーに相当す るエネルギーの散逸を伴いながら進展するという点が本解析法の特徴であ る。なお、高温割れは複雑な物理現象であり、凝固現象をはじめ結晶粒径 や粒界への固溶元素の析出、さらには相変態等の多様な影響を一般に受け るが、本研究ではこれらを無視し、パラメータγおよびσcrは温度のみに依 存すると仮定した。

(17)

2.2.2

温度依存型界面ポテンシャルを用いた

高温脆化の力学的モデル化

2.2.2.1 高温脆化のモデル化 割れの問題は、本質的にバルクとしての材料の変形および界面生成の二 つの現象を含んでいる。バルク材の変形特性は、降伏応力やヤング率によ って支配されると考えられる。一方、高温割れは粒界割れであり、割れが 発生する結晶粒界の特性は、割れ界面強度σcr、表面エネルギーγ、これら と従属関係にある限界変位δcrによって表されると考える。ここで、応力σ が割れ界面強度σcr より大きく(σ>σcr)、限界変位δcr以上の開口変位が生 じる時に割れが発生すると考える。一方、高温割れは BTR 内で発生すると 考え、Fig.2.2.1 に示すように、BTR と想定した高温域において、降伏応力 が界面強度よりも大きくなると仮定する。また、割れの進展についてはき 裂進展の場合 93)と同様、単位面積当たり 2γなる表面エネルギーを消費し ながら進展すると考える。以上のような高温割れの特性を温度依存型界面 要素の形に理想化し、これを通常の熱弾塑性有限要素法に導入した新しい

Fig.2.2.1 Temperature dependent yield stress and interface strength.

σ

Y

cr

Temperature

Interface

strength (σ

cr

)

Yield stress (σ

Y

)

B T R

T

S

T

L

(18)

溶接高温割れ解析法を開発した。 2.2.2.2 界面ポテンシャルエネルギー関数 前節で示したように、高温割れ解析において、割れが発生あるいは進展 し、新しい表面が形成される時には、表面エネルギー:2γに相当するエネ ルギーが消費され、なおかつこれが温度の関数であるようなポテンシャル 関数が必要となる。そのようなポテンシャルは無数に考えられるが、本研 究においては、Lennard-Jones 型ポテンシャル関数を用いた。この場合、単 位面積あたりの界面ポテンシャルエネルギーφは次式で表される。               δ + −       δ + = δ φ n 0 0 n 2 0 0 r r 2 r r ) T ( 2 ) T , ( γ (2-2-1) ただし、 γ:表面エネルギー r0 :寸法パラメータ n:形状パラメータ ここで、δは割れの開口変位量であり、φに含まれる定数γ、n及び r0は ポテンシャルを規定するパラメータである。特に、γは単位面積の新しい 割れ表面を生成するのに必要な表面エネルギーである。本研究では、パラ メータγ、つまり表面エネルギーのみが温度依存性を有すると仮定し、温 度上昇に伴う割れ表面の結合強度(界面強度)の低下を、FEM 解析におい て考慮できるようにした。なお、各パラメータの力学的意味に関する説明 は、文献93)に詳しく示されているので、ここでは割愛する。 一方、ポテンシャルφの割れ開口変位量δに関する微分∂φ/∂δ、すなわち、               δ + −       δ + γ = δ ∂ φ ∂ = σ + + 2n 1 0 0 1 n 0 0 0 r r r r r n 4 (2-2-2) は、割れ表面に作用する結合応力を表わし、開口変位量δがδcr、すなわち、 1 1 n 1 n 2 r n 1 0 cr −      + + = δ (2-2-3) の時に次式で示される最大値σcrとなる。

(19)

                + + −       + + γ = σ + + n 1 n 2 n 1 n 0 cr 1 n 2 1 n 1 n 2 1 n r n 4 ) T ( (2-2-4) ここで、σcrはその温度における限界強度を表し、これを割れ界面強度と呼 ぶことにする。なお、式(2-2-4)から明らかなように、σcrはγに比例する形 で温度依存性を示す。Fig.2.2.2 に示す図は、割れ界面強度σcrを一定とし、 寸法パラメータ r0を 3 通りに変化させた時の界面結合応力-開口変位量曲線 である。この図から、開口変位量δの小さい間は、その増加と共に結合応 力は増加するが、最大値σcrを超えて開口変位量が増加すると、結合応力は 急激に減少し、最終的には結合応力がほぼゼロになり、界面が分離した状 態になる。また、寸法パラメータ r0が大きいほど、限界変位量δcrが大きく なることが分かる。

2.2.3 界面要素の剛性行列と荷重ベクトル

本研究で用いた解析法は、通常の有限要素法に対し、高温割れのモデルと Fig.2.2.2 Stress-displacement curves of interface element。

In

te

rf

ac

e b

on

ding

s

tr

es

s

σ

cr

Opening displacement δ

σ

cr

:Interface strength

r

0

:Larger

r

0

:Smaller

1.0

0.0

(20)

して、温度依存型界面要素を導入したものである。したがって本節では、新 しく導入された温度依存型界面要素の荷重ベクトルおよび剛性行列の導出 を行う。 温度依存型界面要素のポテンシャルエネルギーは、次式で与えられる。 Use(u0e,T)=

φ(δ,T)dSe (2-2-5) ただし、u0eは節点変位、Tは温度、δは開口変位である。次に、時刻 t か ら微小時間 t∆ 後のt+∆tにおけるポテンシャルエネルギーUse (u0e+∆u0e, ) t T+∆ を考える。ここで、∆u0eおよび T∆ は、 t∆ 間に生じた節点変位増分 および温度増分である。t+∆tにおけるポテンシャルを増分∆u0eおよび T∆ についてテーラー展開すると、次式が得られる。 e e 0 e 0 e s (u u ,T T) ( ,T T)dS U +∆ +∆ =

φ δ+∆δ +∆ e T e0 e 0 2 T e 0 e dS } u { ] T } u { T } u { [ dS ∆ ∆ ∂ δ ∂ ∂ δ ∂ φ ∂ + ∂ δ ∂ δ ∂ φ ∂ + φ =

e T e0 e 0 e 0 T e 0 2 3 2 2 dS } u { } u { } u { } u ){ T T ( 2 1 ∆ ∂ δ ∂ ∂ δ ∂ ∆ ∆ ∂ δ ∂ φ ∂ + δ ∂ φ ∂ +

+H.O.T. (2-2-6) ここで、節点変位増分{∆ue0}に関する一次項と二次項をそれぞれ次のように まとめると、 T e0 e 0 2 T 0 dS } u { ) T } u { T } u { ( ∆ ∆ ∂ δ ∂ ∂ δ ∂ φ ∂ + ∂ δ ∂ δ ∂ φ ∂

=−{f}T{∆ue0} (2-2-7) e e 0 T 0 0 T e 0 2 3 2 2 dS } u { } u }{ u { } u ){ T T ( 2 1 ∆ ∂ δ ∂ ∂ δ ∂ ∆ ∆ ∂ δ ∂ φ ∂ + δ ∂ φ ∂

=1/2{∆ue0}T[K]{∆ue0}(2-2-8) 温 度 依 存 型 界 面 要 素 の 荷 重 ベ ク ト ル {f}と 剛 性 行 列 [K]は 、 節 点 変 位 増 分 } u {∆ e0 の一次項および二次項の係数として求められる。すなわち、 T e 0 2 T 0 dS ) T } u { T } u { ( } f {

∆ ∂ δ ∂ ∂ δ ∂ φ ∂ + ∂ δ ∂ δ ∂ φ ∂ − = (2-2-9) e 0 T 0 2 3 2 2 dS } u { } u ){ T T ( ] K [

∂ δ ∂ ∂ δ ∂ ∆ ∂ δ ∂ φ ∂ + δ ∂ φ ∂ = (2-2-10)

(21)

2.3

ルートギャップおよび仮付けのモデル化

現実の溶接の問題では、開先のルートギャップや仮付け等を考慮する必 要がある。そのため、界面要素の力学的な特性を状況に応じて定義するこ とで、ルートギャップおよび仮付けのモデル化を行った。具体的には、界 面ポテンシャルに対し、新たにルートギャップ量δGをパラメータとして 導入することで、ルートギャップを考慮した。一方、仮付けは、ルートギ ャップ量δG をゼロに固定することによりモデル化を行った。これらのポ

(a) potential type- I (before welding)

δ

σ=

δ

φ

(b) potential type- II (during and after welding) Fig.8.2.1 Stress- displacement curve of interface element.

δ

δ

G σ=

δ

φ

δ

G

0

0

δ

G

:Fixed

δ

G

≧0

r

0

≒0

γ≒0

r

0

≒0

γ:large

(22)

テ ン シ ャ ル に 対 応 し た 界 面 要 素 の 結 合 応 力 - 開 口 変 位 曲 線 を そ れ ぞ れ Fig.2.3.1 に示す。解析に用いたポテンシャルはタイプⅠ(溶接前)とタイプ Ⅱ(溶接後)の 2 種類である。各界面要素ごとにいずれかのポテンシャルが 定義され、ポテンシャルφを開口変位量δで微分した界面結合応力σと開 口変位量δの関係は次式で表される。               δ − δ + −       δ − δ + γ = δ ∂ φ ∂ = σ + + 1 n 2 G 0 0 1 n G 0 0 0 r ( ) r ) ( r r r n 4 (2-2-11) ただし、 δG:ルートギャップ量 タイプⅠのポテンシャルは、未溶接部に生じるルートギャップをモデル 化したものである。具体的には、開口方向の変位に対しては、ほとんど応 力を発生せず、接触に対しては大きな反力を発生するポテンシャルである。 一方、タイプⅡのポテンシャルは、溶接後、すなわちルートギャップ量δ G が決定した後の界面結合応力-開口変位挙動をモデル化したものである。 具体的には、正負両方の変位に対して抵抗するポテンシャルを基本として、 ルートギャップ量δG の分だけ釣り合い位置を補正したものである。解析 においては、溶融温度に達した界面要素が、冷却過程に入る瞬間まではタ イプⅠのポテンシャルを用いる。そして、その時点でのルートギャップ量 δG を固定し、冷却過程における挙動を解析するためにタイプⅡのポテン シャルを用いる。こうすることで、ルートギャップや仮付けを考慮した溶 接高温割れおよび変形の解析が可能となる。

(23)

第三章

静的-動的混合解法の開発とその応用

3.1

緒 言

割れの発生・成長は静的平衡状態を維持しながら安定に進行するとは限 らず、状況によっては割れ進展状態が不安定となり現象が動的に移行する ことがある。このような場合には、もはや静的解析で解を追跡することは 不可能であり、動的解析が必要となる。しかし、全過程を動的問題として 解析するためには莫大な計算時間が必要となる。そこで本研究においては、 常に解を得ることができる解析法として、静的-動的混合解法を開発する とともに、通常の動的解析と比較して大幅な計算時間の短縮を実現するた めに質量マトリックスおよび減衰マトリックスの最適化を行った。

3.2

界面要素を用いて表された力学系の安定性

界面要素を用いた解析法は、破壊現象を統一的に解析するための手段と して、弾塑性板のき裂進展問題 93)、複合材料のき裂進展問題 94)、シャル

(24)

Fig.3.2.1 2 springs model consist of linear and nonlinear spring.

Fig.3.2.2 Load-displacement curve of serial springs. 2 2

δ

φ

Linear

spring

Nonlinear

spring

f

K

A

0

5

10

15

20

25

30

35

0

0.001

0.002

0.003

0.004

Lo

ad

(

kg

f)

Displacement (mm)

case-3 r 0=0.0075(mm) 2γ=0.09(kgf・mm) case-2 r0=0.0050(mm) 2γ=0.06(kgf・mm) case-1 r0=0.0025(mm) 2γ=0.03(kgf・mm)

(25)

ピー衝撃試験などに代表される動的き裂進展問題95)に応用されている。 この解析法の長所として、破壊現象をき裂表面の生成としてとらえ、き 裂先端や割れ界面での応力-開口変位挙動をマクロ的に直接モデル化でき る点が挙げられる。一方、短所としては、界面ポテンシャルが強非線形性 を有するために、解の収束性が低い点が挙げられる。このことを Fig.3.2.1 に示す直列に連結された線形バネと非線形バネのモデルを例に説明する。 具体的には、線形バネの剛性を K=21000 kgf/mm とし、非線形バネのポテ ンシャルを界面要素で用いている Lennard Jones 型のポテンシャル93)とし、 次式を用いる。               δ + −       δ + = δ φ n 0 0 n 2 0 0 r r 2 r r 2 ) ( γ (3-2-1) Fig.3.2.2に、荷重を負荷した場合の荷重-変位曲線を示す。材料定数は n=6 とし、γと r0を図中に示す 3 通りに変化させて計算を行った。なおγと r0 は、非線形バネの強度σcr が一定となるように定めた。この図から、r0 が 0.0025 mm の case1 の場合に、系が不安定状態になっていることがわか る。不安定状態とは、ある一つの変位に対して、平衡条件を満足する荷重 が複数存在する状態である。このような現象が、界面要素を用いた FEM 解析を行う際にも発生する。つまり、FEM により case-1 の系を解く場合 には、荷重制御・変位制御のどちらを用いたとしても、A 点付近で解が発 散し、解析が止まってしまう。したがって、割れの発生のみならず進展を 解析するためには、単純な静的解析以外の解法を用いて、不安定状態以後 の解析を続ける必要がある。そこで本研究においては、動的 FEM を併用 する解析法の開発を行った。

3.3

静的解析と動的解析

力学的な問題は、静的、動的という観点から Fig.3.3.1 に示すようない くつかのタイプに分類することができる。

(26)

Type-aは微小変形弾塑性変形問題を表しており、この場合には、全過程 を通して静的である。一方、Type-b に示す図は、シャルピー衝撃試験の 例のように、ハンマーが試験片に接触してから試験片が破断するまで動的 現象が続く場合に相当する。また、Type-c は、き裂の進展停止問題を表し ている。この場合、き裂が発生するまでは静的現象であり、き裂の発生後 にき裂は動的に進展し、停止後に再び静的平衡が得られるので、図のよう に表すことができる。Type-d は、脆性破壊の場合を示している。この場 合には、き裂の発生から破断に至るまでの進展過程が不安定な動的現象な ので図のように表される。以上のように動的現象を含む問題では、静的解 析のみでは現象を追従することはできず、動的解析を実施する必要がある。 最後に Type-e は、本研究の主題である高温割れ問題を例に表している。 この場合には、現象自体は静的現象であるが、解析中に数値的な不安定が

Fig.3.3.1 Classification of various types of static and dynamic problems.

Type-a

Static

Dynamic

Static (Stable)

Static

Dynamic

Dynamic

Type-b

Type-c

Static

Dynamic

Static

Static

Static

Dynamic

Type-d

Static

Dynamic

Static

Dynamic

Static

Type-e

Static

Dynamic

Static

Static Static

Static

(27)

発生する。そのために、単なる静的解析のみの計算では、最終段階まで解 析することができない場合がある。

3.3.1 陽解法による動的理論

動的問題の解析法は、連立方程式を解く必要がある陰解法と、その必要 がない陽解法に二分されるが、本研究では、比較的計算時間が短いと言わ れている陽解法を採用した。 陽解法では、加速度および速度を次式で示す中心差分を用いて近似する。

{ }

U&& t =

(

{ }

U tt −2

{ } { }

U t + U t+t

)

/

( )

∆t 2 (3-3-1)

{ }

U& t =

(

{ }

U tt +

{ }

U t+t

)

/

( )

2∆t (3-3-2) これらの式を運動方程式、

[ ]

M

{ }

U&& t +

[ ]

C

{ }

U& t +

[ ]

K

{ } { }

U t = F t (3-3-3) に代入することにより、次式を得る。

[ ]

[ ]

{ }

t t 2 2 t C U 1 M t 1 ∆ +       ∆ + ∆

{ }

t

[ ]

2

[ ]

{ }

t 2

[ ]

[ ]

C

{ }

U t t t 2 1 M t 1 U M t 2 K F       ∆ − ∆ −       ∆ − − = (3-3-4) ここで、質量マトリックス[M]および減衰マトリックス[C]が節点集中型、 つまり、対角成分のみが存在するマトリックスであれば、節点変位増分を 求めるために構造全体の変位について連立方程式を解く必要がなく、個々 の自由度ごとに作成された運動方程式を独立に解くことにより節点変位

{ }

U t+∆tを求めることができる。したがって、3次元解析などのように、バ ンド幅が大きくなるような解析においては、陰解法と比較して大幅な計算 時間の短縮が期待できる。

3.3.2

中央き裂を有する弾性板のき裂進展解析

ここでは、例題として、界面要素を用いた静的 FEM解析と動的FEM解 析を用いて、中央き裂を有する弾性板のき裂進展解析を実施した。対象試 験片寸法を Fig.3.3.2 に示し、解析で用いた要素分割を Fig.3.3.3 に示す。 ヤング率を 210 GPa、ポアソン比を 0.3、界面要素に含まれる材料定数で

(28)

Fig.3.3.2 Schematic illustration of tensile test specimen with initial center crack.

Fig.3.3.3 FEM mesh division for tensile test.

200

mm

200mm

Initial crack

40mm

y

x

Initial crack

Interface element

(29)

ある表面エネルギーγを4.0 kN/m、寸法パラメータ r0を60 μmとした。 また、動的解析時の密度を7.82×103 kg/m3、負荷速度を 1.0×10-6 m/secと し、減衰は無いという仮定の下で解析を行った。解析結果を Fig.3.3.4 に 示す。実線は動的解析の結果を示し、破線は静的解析の結果を示している。 図中の A 点において、系が不安定になり静的解析のみでは解析続行不可 能になった。一方、動的解析においては、A点以降、つまり破壊発生以降 の状態まで、解析が可能である。しかし、ここに示したような静的解析と 同様な動的計算を行う場合には、計算ステップが最低でも20000ステップ 程度必要となり、計算に膨大な時間がかかる。

3.4

静的-動的混合解法

静的解析のみでは、不安定状態以降の解析は不可能である。一方、動的 解析のみでは、静的不安定状態以降の解析が可能であるが、その反面、膨 大なステップ数つまり計算時間が掛かってしまうために現実的ではない。 Fig.3.3.4 Schematic illustration of tensile test specimen with initial center crack.

-150

-100

-50

0

50

100

150

200

0

0.0005

0.001

0.0015

0.002

Static analysis

Dynamic analysis

No

mi

na

l st

re

ss

(

MP

a

)

Nominal strain

A

(30)

そこで、両者の短所を補う静的-動的混合解法の開発を試みた。

3.4.1

静的-動的混合解法のアルゴリズム

Fig.3.4.1の解析アルゴリズムが示すように、この解析法の特徴は、静的 不安定状態になるまでは静的解析を行い、不安定状態の間の1ステップだ け動的解析を実施する点にある。具体的には、動的解析の第1段階として、 最初の数百ステップで荷重増分に相当する負荷を行う。負荷終了後に次の 段階として、荷重を保持した状態で減衰計算を行う。そして、速度および 加速度が十分に減衰した後に動的解析を終了し、静的解析に戻り解析を続

Fig.3.4.1 Flowchart of static-dynamic hybrid method.

No

Yes

Static FEM

Advancing load step

Yes

Convergence is attained.

To next step

Dynamic FEM

Advancing time step

No

To next step

(31)

行する。これを繰り返すことにより、割れやき裂の不安定進展の解析にお いても常に解が得られることになる。ただし、この場合の動的解析は、静 的解析において不安定と判定された1ステップ分の変化を、動的に求める 便宜的な方法であり、解析で用いている質量マトリックスや減衰マトリッ クスは、物理的な値には対応していない。次に、それらの定め方について 説明する。

3.4.2 質量マトリックス・減衰マトリックスの最適化

動的解析において、比較的計算時間が短いといわれている陽解法を用い たとしても、時間増分の制約ゆえに、膨大な計算時間が必要である。しか も、溶接変形解析や溶接高温割れ解析のように、現象の持続時間が長く、 要素の大きさが非常に小さい場合にはなおさらである。よって、質量マト リックスや減衰マトリックス、および時間増分の最適化を行い、動的解析 をより少ない計算回数で行うことができるような方法を考える。 例としてFig.3.4.2に示される1自由度の力学系を取り上げて考えると、 運動方程式は次式で与えられる。

m

u

&&

+

c

u

&

+

k

u

=

F

(3-4-1) ここで、良く知られているように、k、c、mの値によって、次のような関

Fig.3.4.2 System consisting of mass, dumping and spring.

M

f

K

C

(32)

係が得られる。 mk 2 c< の時 振動減衰 (3-4-2) mk 2 c> の時 過減衰 (3-4-3) mk 2 c= の時 臨界減衰 (3-4-4) 一般的に、cが2 mk より小さいときには、振動のために多くの計算ステ ップが必要となる。また、cが2 mkより大きいときには、振動によるス テップ数の増大は避けられるが、減衰するまでの時間が大きくなる分、多 くの計算ステップが必要となる。よって、その両者の中間的な特徴をもつ 臨界減衰の時、つまりc=2 mkという関係を用いれば、計算時間の短縮 が期待できる。 次に、初期値ut=0=0、u&t=0=0、F=f の下で式(3-4-1)を解くと、変位は次 式で与えられる。         + − = −2mt c e ) t m 2 c 1 ( 1 k f u (3-4-5) この解の変位と時間の関係を図示したのがFig.3.4.3である。ここで、95%、 90%、80%程度収束する、つまり、u が 0.95(f/k)、 0.90(f/k)、 0.80(f/k)と

Fig.3.4.3 Responses of critical damping, under damping and over damping systems consisting of mass, dumping and spring.

0

0.5

1

1.5

0

5

10

15

20

Time : t/(2m/c)

Di

sp

la

ce

me

nt

:

u/(

f/

k)

Over damping

Critical

damping

Under damping

(33)

なるときの無次元化時間t/(2m/c)の値は、それぞれ、 t/(2m/c)=4.744 (u=0.95(f/k)) (3-4-6) t/(2m/c)=3.896 (u=0.90(f/k)) (3-4-7) t/(2m/c)=2.992 (u=0.80(f/k)) (3-4-8) となり、c、m、k の値に依存せずに決まる。ここで、式(3-4-4)の関係を用 いて式(3-4-6)を変形し、その時のtをt95%とおくと、 k m 744 . 4 t95% = (3-4-9) となる。ここで、 α = k / m (3-4-10) と定義すると、式(3-4-4)、(3-4-9)、(3-4-10)より、次の関係が導かれる。 t95% =4.744 α (3-4-11) c=2 αk (3-4-12) m=αk (3-4-13) よって、t95%、 c、 mは、材料の剛性kとパラメータαを用いて表される。 また、時間増分Δt は、解が 95%収束するまでに、例えば 1000 ステップ 必要であると仮定し計算すると、 ∆t= t95%/1000 (3-4-14) となる。次に、式(3-4-12)、(3-4-13)の関係を FEM に適用すると、質量マ トリックス[Me]および減衰マトリックス[Ce]は、剛性マトリックスの対角 成分kiiとパラメータαを用いて次式で与えられる。 (3-4-15)

[M

e

]=

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

αk

e ii

Sym.

(34)

(3-4-16) なお、このような操作を行うことで、対象となる1ステップだけ実現象とは異なった 擬似的動的解析を行っていることになるが、現象自体が準静的である場合には、 解析の途中で生じる数値的な不安定を乗り越える手段として有効と言える。

3.5

静的

-

動的混合解法の応用例

3.5.1

中 央 き 裂 を 有 す る 弾 性 お よ び 弾 塑 性板

におけるき裂進展問題への応用

前節において示した静的-動的混合解法を、中央き裂を有する弾性板お よび弾塑性板のき裂進展問題に適用した。解析モデルは Fig.3.3.2 に示す ように初期き裂40mmを有する一辺が200mmの正方形板とし、端部に強 制変位を与えた。界面要素は、き裂が初期き裂の方向に進展すると仮定し て、初期き裂の延長上に配置した。ヤング率は 210 GPa、き裂面の特性を 示す界面要素に含まれるパラメータは、弾性板の場合には2γ=4.0 kN/m、 r0=60μm、 n=6.0とし、弾塑性板の場合は2γ=15.0 kN/m、 r0=60μm、 n=6.0とした。また、弾塑性板の降伏応力をσY=250 MPa、加工硬化を線 形硬化とし、硬化係数をH=2.1 GPaとした。

次に、解析結果を Fig.3.5.1 からFig.3.5.6に示す。Fig.3.5.1および 3.5.2 に示す図は、荷重-変位曲線をそれぞれ弾性板、弾塑性板について示して 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

[C

e

]=

Sym.

k

α eii 2

(35)

いる。またFig.3.5.3には弾性板のy方向応力分布の履歴、Fig.3.5.4には弾 塑性板のy方向応力分布の履歴、Fig.3.5.5には弾塑性板のy方向塑性ひず み分布の履歴を示している。弾性板の場合はFig.3.5.1の点A1、A2および A3、弾塑性板の場合は点 B1、B2 および B3 における分布を示している。 なお、静的のみで解析を行うならば、弾性板の場合には Fig.3.5.1 におけ る点A4 で、弾塑性板の場合にはFig.3.5.2における点B4 で計算は停止す るが、提案手法を用いることで、計算が停止する安定限界以後の状態につ いても、解析することが可能となる。図中の矢印は、計算が発散し、動的 解析を行った時を示している。なお、この計算例では、動的解析時の最初 の1ステップで荷重を負荷し、その後、減衰計算を行っている。そのため、 動的解析時の負荷速度が大きいことにより、解析誤差を生じる可能性が考 えられるので、Fig.3.5.6には動的解析時の荷重負荷速度を2通りに変えた 場合の解析結果を示している。Fig.3.5.2 で示した負荷速度が 1.9×10-2の 場合と、負荷速度を1/400とした4.7×10-5の場合の2通りについての比較 を示している。この結果から、負荷速度が 1.9×10-2 程度で十分静的に近 い解が得られることが分かり、ここで示した程度の負荷速度では、解析結 果に与える影響は小さいことが分かる。

(36)

Fig.3.5.1 Nominal stress-strain curve for tensile test of elastic plate with initial crack using static-dynamic hybrid method.

Fig.3.5.2 Nominal stress-strain curve for tensile test of elastic-plastic plate with initial crack using static-dynamic hybrid method.

0

50

100

150

200

0

0.0005

0.001

0.0015

0.002

No

mi

na

l

st

re

ss

(

MP

a)

Nominal strain

Elastic plate

:Dynamic

analysis

A1

A2

A3

A4

0

50

100

150

200

250

300

0

0.005

0.01

0.015

0.02

0.025

No

mi

na

l

st

re

ss

(

MPa)

Nominal strain

B3

B1

B2

B4

:Dynamic

analysis

(37)

Fig.3.5.3 Distribution of σy in elastic plate with initial center crack.

ε

n

=0.00060

ε

n

=0.00094

ε

n

=0.00100

(Mpa)

300

270

240

210

180

150

120

90

60

30

0

(38)

Fig.3.5.4 Distribution of σy in elastic-plastic plate with initial center crack.

ε

n

=0.012

ε

n

=0.018

ε

n

=0.024

(Mpa)

600

540

480

420

360

300

240

180

120

60

0

(39)

Fig.3.5.5 Distribution of εpy in elastic-plastic plate with initial center crack.

ε

n

=0.012

ε

n

=0.018

ε

n

=0.024

0.050

0.045

0.040

0.035

0.030

0.025

0.020

0.015

0.010

0.005

0.000

(40)

3.6

数値的不安定が予想される界面要素を用いた解析法において、常に解を得 ることを目的として、FEM 静的-動的混合解法を開発した。その際に用いら れる動的解析においては解析時間短縮のために陽解法を採用した。さらに、 質量マトリックス、減衰マトリックスおよび時間増分に関しても、最適化を 行うことにより解析時間短縮を図った。この手法を、弾性および弾塑性板の き裂進展問題に応用することにより、提案手法の有用性について検討を行っ た結果として、次の結論を得た。 1. 本来は、静的問題である延性き裂の進展解析において、不安定状態 により解が発散していた例に対して静的-動的混合解法を用いること により、不安定点を含めてそれ以降の解析が可能になることを確認 した。

Fig.3.3.6 Effect of load speeds in dynamic analysis of static-dynamic hybrid method on nominal stress-strain curve.

0

50

100

150

200

250

300

0

0.005

0.01

0.015

0.02

0.025

1.9×10

-5

(/sec)

4.7×10

-5

(/sec)

No

mi

na

l

st

re

ss

(

MPa)

Nominal strain

Load speed in

dynamic analysis:

(41)

2. 静的-動的混合解法を用いた解析における動的解析において、負荷速 度を十分小さくすることにより、静的に近い解が得られることを具 体的な計算例により示した。

3. 静的-動的混合解法による解析は、全ての計算を動的陽解法で行った 場合と比較して、計算時間が大幅に短縮される。

(42)
(43)

第四章

溶接始端割れ試験とその解析

4.1

緒 言

大型鋼板の FCB 板継溶接中に発生する端部割れは、高温割れが原因であ る。一般に、高温割れ感受性が低いと考えられる軟鋼でも、溶接条件およ び部材の形状寸法によっては端部割れが発生する場合がある。そこで、本 章では、まず、矩形平板の溶接始端割れ試験を実施することにより、入熱 量、溶接速度および試験片の板幅が溶接高温割れの発生に及ぼす影響につ いて検討を行った。さらに、提案手法による高温割れ解析法を用いて、溶 接始端割れ試験に対応した解析を実施し、割れが進展する時の応力、変位、 温度について詳細に調べ、提案手法の有用性について検討を行った。

4.2

溶接始端割れ試験

矩形平板の溶接高温割れを考えたときには、溶接終端部に発生する終端 割れと、溶接始端部に発生する始端割れが考えられるが、本章では始端割 れに絞って、溶接高温割れの発生および進展過程について検討した。その

(44)

際、 ・ 拘束を決めるパラメータである板幅が、割れ発生に及ぼす影響 を明らかにする。 ・ 入熱量や溶接速度等の溶接条件が、割れ発生に及ぼす影響を明 らかにする。 ・ 次章で示す計算シミュレーションの妥当性を定性的に裏付ける ための比較データを得る。 ということを目的として実験を実施した。

4.2.1

実験装置

Fig.4.2.1に示すように試験片を地面から 20mm 離した状態で水平に保ち、 終端部を万力により固定し、その上を図中の矢印の方向にビード溶接を行 い、溶接終了後、カラーチェックにより始端割れの有無を調べた。なお、 溶接始端部を含め、溶接線上での入熱状態をほぼ等しくするために、始端 部に 20mm のタブ板をつけて実験を行った。溶接時にはタブ板と母板との 境界部が溶接により溶融するので、タブ板は溶け落ちることになる。この

Fig.4.2.1 Schematic illustration of experiment

Restraint with

a vise

Moving direction

of welding torch

(45)

実験で用いた試験片形状等の詳細を Fig.4.2.2 に示す。

4.2.2

入熱条件および試験片寸法

実験で用いた試験片寸法は、板厚および長さを 2mm および 200mm で一定 とし、板幅を 20、40、60、80、100mm の5通りに変化させた。また、溶接 速度は、500 mm/min と 770 mm/min の2通りに設定し、電流値および電圧 値を変化させることにより、単位溶接長当たりの入熱量を変化させた。詳 細な試験片寸法および溶接条件を表1に示す。なお、入熱量 Q/h は、TIG 溶接で一般的に用いられる入熱効率 0.6 を乗じて算出した。すなわち、 60/2 v VI 6 . 0 h / Q = × × (4.2.1) ただし、 Q : 単位長さ当たりの入熱量 (J/mm) V : 溶接電圧 (V) I : 溶接電流 (A) v : 溶接速度 (mm/min) h : 板厚 (mm)

4.2.3

実験結果

実験終了後の状態を、割れが発生した例について示した写真が Fig.4.2.3 で Fig.4.2.2 Shape and size of test specimen

20 mm

120 mm

30 mm

Transient

torch position

Starting point

End line

of welding

30 mm

Cuttings

W

idt

h of

p

la

te

Restraint part

x

(46)

ある。溶接線上中央部に割れが発生していることが分かる。Fig.4.2.4(a)は、 実験結果を v=770 mm/min について整理した図である。同様に、Fig.4.2.4(b) は v=500 mm/min について整理した図である。溶接速度が比較的大きな v=770 mm/minの場合は、入熱量が大きく板幅が小さい場合に割れが多く確

(a) overall picture

(b) zoomed picture

(47)

60

70

80

90

100

110

120

130

140

0

20

40

60

80

100

120

with crack

no crack

Hot cracking zone

Safe zone

He

at

i

np

ut

Q

/h

(

J/m

m

2

)

Width of plate (mm)

(a) in case of v=770 mm/min

(b) in case of v=500 mm/min

Fig.4.2.4 Effect of heat input and width of plate on hot cracking (experiment)

60

70

80

90

100

110

120

130

140

0

20

40

60

80

100

120

no crack

He

at

i

np

ut

Q/

h

(J/

mm

2

)

Width of plate (mm)

(48)

認され、入熱量の小さな場合には割れない傾向にある。また、溶接速度の 比較的小さな v=500 mm/min の場合では全ての場合において、割れは確認で きなかった。 実験結果を力学的な観点から説明すると、溶接速度が大きく、入熱量が 大きい、つまり、溶接中における溶接線方向の力学的溶融長さが比較的大 きく、なおかつ板幅が小さく面内回転変形に対する剛性が小さい時に、割 れが発生しやすい。このことは、溶融部が凝固する時に、熱膨張により回 転変形が生じ、そのために溶接線上に発生した引張りひずみが、溶接高温 割れの原因であると理解できる。

4.3

提案手法による溶接始端割れ試験の解析

4.3.1 解析モデル

溶接高温割れの解析に使用した試験片寸法等を Fig.4.3.1 に示す。前節で 示した実験で見られるような、溶接線上の割れを解析対象とするために、 温度依存型界面要素を溶接線上に配置した。解析では、問題の対称性を考 慮し、Fig.4.3.2 に示す 1/2 モデルを用いた。図中の A1から A4はそれぞれ Fig.4.3.1中に示した位置に対応している。また、解析において溶接高温割れ

Fig.4.3.1 Model for analysis

120 mm

30 mm

温度依存型界面要素を配置

Temperature dependent

interface element

B

End of

welding

A2 A1 A4 4 A3 3

(49)

発生を支配する重要なパラメータであるσcrの温度依存性を、降伏応力と比 較する形で Fig.4.3.3 に示す。すなわち、BTR を 1200℃から 1450℃であると 仮定し、この温度領域で降伏応力σYが割れ界面強度σcrよりも大きくなる と仮定した。一般に、溶接条件が変化すると凝固組織の種類が変化する。 したがって、界面ポテンシャルに含まれる寸法パラメータ r0および形状パ ラメータ n はその影響を受けて変化すると考えられるが、今回の解析では、 影響を受けないものと仮定して以下の値を用いた。 r0 =25μm , n = 6.0 (4-3-1)

Fig.4.3.2 FEM mesh division (half model)

Fig.4.3.3 Temperature dependent yield stress (σY) and critical stress of

interface (σcr)

0

5

10

15

1100

1200

1300

1400

1500

1600

σ

Y

cr

(

MP

a)

Temperature (℃)

Interface

strength (σ

cr

)

Yield stress (σ

Y

)

B T R

T

S

T

L A2 A1 A4 A3

(50)

とした。その他の材料定数の温度依存性は、Fig.4.3.4 に示すように、一般的 な軟鋼材のデータを用いた。なお、本章以後の計算において、不安定とな り解が発散してしまう場合には、前章で開発した静的-動的混合解法を用い ることにより不安定状態以降の解析を行った。

4.3.2

解析結果

前節で示した モデルに対す る計算結果を、板幅 で整理したものが Fig. 4.3.5(a)(b)である。(a)は、溶接速度が 1500 mm/min の場合であり、(b)は 1000 mm/minの場合である。この結果から、比較的入熱量が大きく、板幅が小さ い場合に割れの発生が多くみられる。なお、極端に入熱量が大きく板幅が 小さい場合には、割れは発生しないが、これは、板幅全体の平均温度上昇 が非常に高い溶接条件での現象であり、現実の現象には対応していない。 また、溶接速度については、これが大きいほど割れやすくなる傾向がわず かにみられる程度である。Fig.4.3.6(a)(b)には、溶接中における過渡変形お

Fig.4.3.4 Temperature dependent material constants.

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

0

500

1000

1500

Ma

te

ri

al

P

ro

pe

rt

ies

α(℃-1)×10-5 ρ(g/mm3)×10-3 λ(J/mm/sec/℃)×10-2 γ(J/mm2/sec/℃)×10-5 c(J/g/℃)×10-1 E(MPa)×105

Temparature(℃)

σY(MPa)×102

参照

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