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総 括

ドキュメント内 第1章 緒 論 (ページ 125-146)

本研究の主たる目的は、複雑な構造物を溶接する際に発生する高温割れ の可能性を、事前に予測できる解析法を開発することである。高温割れの 発生および進展を解析するために、割れ表面の生成を温度依存型界面要素 の形で直接解析に導入した高温割れ解析法の開発を行い、その妥当性およ び現実の工学的問題に対する有用性を示した。

本研究では、提案手法の開発とその応用に関して、以下に示すような具 体的な研究を実施した。

(1) 割れ表面の生成を温度依存型界面要素の形で直接解析に導入した 高温割れ解析法の開発

(2) 任意の場所に発生する高温割れのモデル化およびルートギャップ を考慮した高温割れのモデル化

(3) 不 安 定 なき 裂 進展解 析 に おい て も、 常に 安 定 な解 を 得る ため の FEM 静的-動的混合解法の開発とその有用性についての検討 (4) 矩形平板における始端割れ実験結果との比較に基づく提案手法の

有用性についての検討

(5) Houldcroft試験およびその解析結果に基づく提案手法の有用性につ

いての検討

(6) 界面要素に含まれるパラメータが解析結果に及ぼす影響について の検討

(7) 2種類のHouldcroft試験における割れ発生メカニズムに関する材料

力学的な考察

(8) Tran-Varestraint 試験の解析に対する提案手法の有用性についての

検討

(9) Tran-Varestraint 試験および Houldcroft試験の両者を用いた BTR 幅 および寸法パラメータ r0の決定法についての検討と決定されたパ ラメータの妥当性についての検証

(10) 溶接横断面内における任意の場所に発生する高温割れを解析す

るための解析モデルの提案と、溶け込み形状や諸パラメータが高 温割れに及ぼす影響についての検討

(11) ルートギャップや仮付けおよびタブ板を考慮することのできる

解析法の提案と、板継溶接時の端部割れ問題に応用することによ る現実の工学問題に対する有用性についての検討。

以上の研究で得られた主な結論は、各章において詳細に述べられているが、

成果として得られた主な知見は下記の通りである。

第一章では、高温割れの研究は、冶金学的な研究および力学的な研究の二つ に大別され、これら二つの観点から総合的に現象を捉える必要性について述べ た。一方、高温割れの発生および進展を、FEM解析により事前に予測するため には、現象を直接モデル化する必要があることを述べた。

さらに、既往の研究を冶金学的および力学的な研究に分類し総括するととも に、本論文の学問的位置付けについても述べた。

第二章では、温度依存型界面要素を用いて高温割れのモデル化を示した。す なわち、高温割れの発生を、BTR における界面の結合強度の低下としてと らえ、表面エネルギーγと界面強度σcrの温度依存性により表わすことを提 案した。このモデルを界面要素に組み込むことにより、温度依存型界面要

素を新たに開発し、これを高温割れ進展経路に配置することで、高温割れ の発生および進展の解析を可能にした。また、板継溶接時の始終端割れと の関係が予想されるルートギャップの過渡変化および仮付けについても、

界面要素の力学的な特性を状況に応じて定義することでモデル化できるこ とを示した。

第三章では、数値的不安定が予想される界面要素を用いた解析法において、

常に解を得ることを目的として、FEM 静的-動的混合解法を開発した。その 際に用いられる動的解析においては解析時間短縮のために陽解法を採用し た。さらに、質量マトリックス、減衰マトリックスおよび時間増分に関して も、最適化を行うことにより解析時間の短縮を図った。この手法を、弾性お よび弾塑性板のき裂進展問題に応用し、提案手法の有用性について検討を行 った結果として、次の結論を得た。

1. 静的解析において、不安定状態により解が発散していた問題に対し て静的-動的混合解法を用いることにより、不安定点を含めてそれ以 降の解析が可能になる。

2. 静的-動的混合解法を用いた解析における動的解析において、負荷速 度を十分小さくすることにより、静的に近い解が得られることを具 体的な計算例により示した。

3. 静的-動的混合解法による解析は、全ての計算を動的陽解法で行った 場合と比較して、計算時間が大幅に短縮される。

  第四章では、矩形平板の溶接始端割れを対象に、入熱量や溶接速度およ び試験片の板幅が溶接高温割れに及ぼす影響について、実験に基づく検討 を行った。さらに、提案手法による高温割れ解析法を用いて実験に対応し た解析を実施し、割れが進展する時の応力、変位、温度について詳細に調 べ、提案手法の有用性について検討を行った結果、次の結論を得た。

1.トーチの後を追う形で溶接高温割れが進展する現象を解析において 再現できた。

2. 解析結果から得られた結論は、実験において観察された現象と良い

一致を示すことが確認できた。すなわち、

      溶接速度:大  溶接入熱:大  板幅:小

    の時に割れが発生しやすい。

3. 提案手法は、溶接高温割れ発生・進展のみならず冷却後の始端部の 接触も含めた多様な界面現象のシミュレーションに対し、有効な手 段と成り得ることが分かった。

第五章では、提案手法をHourdcroft試験に適用し、現象の系統的解明に対 する有用性について検討するとともに、提案手法による解析結果を支配す る諸因子について検討した。また、材料力学的な観点から 2 種類存在する

Houldcroft 試験における割れ進展および停止のメカニズムについて検討し

た結果、次の結論を得た。

  まず、従来の研究で既に明らかにされている点に関して、

1. BTR幅が大きいほど、割れ易いことが解析においても確認された。

2. Reverse typeの場合に、入熱量および溶接速度が大きくなるほど、高

温割れ長さが長くのに対して、Conventional typeでは、これらの傾 向が全く逆になる。

  また、温度依存型界面要素を用いた提案手法による解析に関して次の事 項が明らかになった。

3. BTRにおける降伏応力σYと界面強度σcrの比σYcr、および溶接

線方向の要素分割が割れ長さに与える影響は小さい。

4. 割れの発生および進展を決める重要なパラメータは、BTR幅と寸法 パラメータr0の 2つに絞られる。

材料力学的な観点から割れ発生メカニズムについて検討した結果、次の 事項が明らかとなった。

5. Houldcroft 試験における割れの進展・停止のメカニズムについて検

討し、高温割れ感受性の高い材料の場合には Conventional type、

低い場合には Reverse type Houldcroft試験を用いるのが合理的で あることを示した。

第六章では、提案手法を Trans-Varestraint試験に適用し、高温割れを支配 すると考えられる諸パラメータの影響について検討した。さらに、既往の 実験結果と解析結果を比較することにより、定量的な予測手段としての提 案手法の有効性について検討した結果、次の結論を得た。

1. 高温割れ感受性評価に用いられる限界ひずみεmin、および割れ発生 温度域 BTR という点から、実験値と計算値を比較した結果、両者 は定性的のみならず定量的に良好な一致を示した。

2. 限界ひずみεminは主として寸法パラメータr0に支配される。

また、Trans-Varestraint試験および Conventional type Houldcroft試験に提案手 法を応用し、提案手法の定量化の方法について検討した結果、次の結論が 得られた。

3. アルミニウム合金 A5052 材の寸法パラメータ r0の値を 2 種類の試 験法に基づき推定した結果、両者共に、20〜30 μm 程度であるこ とが分かった。このことから、寸法パラメータ r0は第一近似的に、

試験法に依存しない材料固有の値であると考えることができる。

第七章では、溶接横断面内における任意の場所に発生する高温割れを解 析するために、界面要素を通常の有限要素間に格子状に配置した解析法を 新たに提案した。この手法をレーザー溶接時における溶接横断面内の高温 割れ問題へ応用し、次の結論を得た。

1. 提案手法を用いた解析により、溶接横断面内における高温割れの発 生・進展および停止をシミュレートすることができた。

2. しかし、実際の割れにみられるような、割れの進展方向が変化する ような結果は得ることができなかった。これは、界面要素が格子状 に配置されていることが原因と考えられ、この点を改良するために は、結晶粒の成長方向などを考慮に入れた高温割れ進展モデルの開 発が必要である。

3. 溶け込み形状は主として割れの発生位置を支配し、BTR幅や寸法パ

ラメータ r0 は割れの長さや発生の有無を支配するという傾向が得 られた。

第八章では、ルートギャップの過渡変化や仮付けの影響を考慮すること ができる解析法を提案した。この手法を現実の工学的問題である板継溶接 に適用し、溶接条件や仮付け間隔、タブ板等が横収縮と始終端割れに及ぼ す影響について検討した結果、次の結論を得た。

1. 高速溶接の場合にはルートギャップが開き、低速溶接の場合には閉 じるメカニズムを、提案手法を用いた解析により明らかにした。

2. 安定した横収縮分布を得るためには、仮付け間隔を小さくする必要 があることを示した。

3. 溶接開始位置や、終了位置および溶接条件が端部割れに及ぼす影響 について、提案手法を用いた解析により明らかにした。その結果、

始端および終端割れの間には、それらの発生条件に本質的な差があ ることが明らかとなった。すなわち、始終端部の最高温度と割れ発 生条件には密接な関係が認められるが、始端割れの場合には BTR

(1200℃)以上、終端割れの場合には力学的溶融温度(約 750℃)以上の

場合において割れが発生することが分かった。

4. 提案手法を用いることで、溶接高温割れの発生を予測することがで きる。さらに提案手法は、仮付け間隔、タブ板の寸法等の適正選択 による割れ防止対策を検討するための有効な手段となる。

ドキュメント内 第1章 緒 論 (ページ 125-146)

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