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修 士 学 位 論 文

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修 士 学 位 論 文

MALDI法 にお け る定 量 分析 お よび 分 子 構 造 選 択 的イ オ ン化 法 の実 現

指 導 教 員 竹 川 暢 之 教 授

平 成30年1月9日 提 出

首都大学東京大学院

理 工 学 研 究 科 分 子 物 質 化 学 専 攻

学修番号16880328

藤 井 洋 佑

(2)

学位 論 文 要 旨(修 士(理 学))

論文著者名 藤井 洋佑 MALDI法 にお ける定量分析お よび分子構造選択 的イオ ン化法 の実現

【緒 言 】

マ ト リ ク ス 支 援 レ ー ザ ー 脱 離 イ オ ン 化(MALDI)法 は 、 試 料 に 対 し マ ト リ ク ス 分 子 を 過 剰 に 混 合 し紫 外 パ ル ス 光 を 照 射 す る こ と で 、生 体 試 料 な ど の 高 分 子 を非 破 壊 に イ オ ン 化 す る こ と が 可 能 で あ る た め 広 く普 及 し て い る が 、そ の 一 方 で 課 題 も 多 く存 在 して い る。

課 題 の 一 つ と し て 再 現 性 が 低 い こ と が 挙 げ られ る 。MALDI法 で は 試 料 と マ ト リ ク ス の 混 合 状 態 が 常 に 均 一 で は な い た め 、そ の 時 の 混 合 状 態 に よ っ て 得 られ る結 果 が 変 わ っ て し ま う。 そ の た め 再 現 性 が 低 く 、 定 量 分 析 を 行 う こ と が 困 難 で あ る。

そ こ で 構 造 中 に ナ ノ ス ケ ー ル の 細 孔 を 持 つ ゼ オ ラ イ トを 利 用 す る こ と で マ ト リ ク ス を 細 孔 中 に 取 り込 み マ トリ ク ス が 均 一 に 分 散 し た 状 態 を 作 り、再 現 性 が 向 上 す る と 考 え た 。

本 研 究 で は 低 分 子 量 試 料 の 検 出 に 適 し て い る無 機 マ ト リク ス で あ る 酸 化 鉄(皿)ナ 粒 子 と構 造 内 に 細 孔 を 持 ち 、ブ レ ン ス テ ッ ド酸 と し て の 能 力 を 持 っ ゼ オ ラ イ トを 混 合 し た マ ト リ ク ス を 用 い る こ と で 清 涼 飲 料 水 中 に 含 ま れ る 発 が ん 性 を 疑 わ れ て い る4一 メ チ ル イ ミ ダ ゾ ー ル(4‑MI)の 定 量 分 析 を試 み た 。

ま たMALDI法 は ク ロ マ トグ ラ フ に よ る試 料 の 分 離 を必 要 と しな い た め 目的 の 分 子 以 外 の 試 料 も 同 時 に イ オ ン 化 お よび 検 出 され て し ま う。そ の た め 試 料 内 に 含 ま れ る 異 性 体 な ど を 区 別 す る こ と が で き な い と い っ た 欠 点 を 持 つ 。

そ こ で 本 研 究 で は 、温 度 に よ っ て 構 造 や 性 質 が 変 化 す る 温 度 応 答 性 ポ リマ ー の 一 種 で あ る ポ リ ビ ニ ル メ チ ル エ ー テ ル(PVME)を 用 い て 検 出 を 目的 とす る 分 了 の 鋳 型 を 作 製 し、

こ の 中 に マ ト リ ク ス を 内 包 させ る こ と で 構 造 選 択 的 イ オ ン 化 を 可 能 に す る マ ト リ ク ス の 作 製 を 試 み た 。

【実 験 】

無 機 マ トリ ク ス お よ び ゼ オ ラ イ トを 用 い た 定 量 分 析

4‑Mlと 脱 離 イ オ ン 化 効 率 が ほ ぼ 等 しい と思 わ れ る2一 エ チ ル イ ミダ ゾ ー ル(2‑EI)を 内 標 準 物 質 と し て 使 用 し 、異 な る 重 量 比 を5点 と り検 量 線 を 作 成 した 。 こ の と き 各 重 量 比 3ス ポ ッ トず つ 作 製 し 、1ス ポ ッ トに つ き3回 測 定 を行 っ た 。 そ の 後 日本 国 内 で 市 販 さ れ て い る コ カ ・コ ・ラ と2‑Elを 混 合 し た サ ン プ ル を 作 成 し 、 コ カ ・コ ・一̀ラ中 に含 ま れ る 4‑Mlの 定 量 分 析 を 行 っ た 。酸 化 鉄(皿)ナ ノ 粒 子 とZSM‑5型 の ゼ オ ラ イ トを 重 量 比2:

1で 混 合 し た も の を マ トリ ク ス と し て 使 用 し た 。

構 造 選 択 的 イ オ ン 化

2,4,6一ト リ ヒ ドロ キ シ ア セ トフ ェ ノ ン(THAP)と 活 性 炭 を 重 量 比1:1で 混 合 した も の と鋳 型 の モ デ ル と し て 使 用 し た 三 糖 の ラ フ ィ ノ ー ス(Raf)をPVME溶 液(溶 媒 は エ タ ノ ー ル:水=4:1)に 加 え 、50℃ に な る ま で 加 熱 擬 拝 を 行 っ た 。そ の 後 そ の 溶 液 の 一 部 を 透 析 チ ュ ー ブ に 移 し 、50℃ の 水 に て 透 析 を 行 い 、得 られ た も の を マ ト リ ク ス と して 使 用 し た 。そ の 後 こ の マ ト リ ク ス を 用 い てRafお よ び 同 じ く 三 糖 で あ る マ ル ト ト リオ ー ス(Mal)

(3)

を 用 い て 質 量 分 析 を 行 っ た 。

【結 果 ・考 察 】

①4‑Mlと2‑EIに よ る検 量 線 を 図1に 示 す 。 こ の と き各 ス ポ ッ トお よ び 各 重 量 比 に お い て 相 対 標 準 偏 差 が10%以 内 と な り、 高 い 再 現 性 を 得 られ た 。 ま た こ の 結 果 は ゼ オ ラ イ トを 使 用 し て い な い 場 合 に 比 べRSD値 が 向 上 し た 。 そ の 理 由 と して ゼ オ ラ イ トの 細 孔 内 に 酸 化 鉄(皿)ナ ノ粒 子 が 取 り込 ま れ 、 ナ ノ粒 了 が 均 一 に 分 散 した 状 態 を 作 る こ と が で き た た め と思 わ れ る 。

ま た コ カ ・コ ー ラ の 測 定 を 行 っ た 結 果 、 こ ち ら もRSDが10%以 内 とな り、 非 常 に 高 い 再 現 性 が 得 られ た 。 こ の 結 果 を 検 量 線 で 得 られ た 関 数 に 代 入 し た 結 果 コ カ ・コv‑一ラ 中4‑

Mlの 含 有 量 は65〜88pg/355mLと 算 出 さ れ 、 ア メ リカ の 公 益 科 学 セ ン タ ー が 発 表 し た 文 献 値 団 と一 致 した 。

ま ず 活 性 炭 とPVMEの 重 量 比 を 変 化 させ 、 透 析 を行 う前 の サ ン プ ル の 質 量 分 析 を 行 い 最 適 な 混 合 比 に つ い て 検 討 を 行 っ た 結 果 、重 量 比10:1の と き 十 分 に サ ン プ ル お よ び マ トリ ク ス を 内 包 し て い る こ と が 分 か っ た 。 次 に こ の 重 量 比 で 透 析 を行 い 、 こ れ を マ ト リク ス と し てRafお よ びMalを 測 定 し た 結 果 を 図2に 示 す 。 図2よ り透 析 後 の マ ト リ ク ス の み の ス ペ ク トル お よ びMalを 滴 下 し た ス ペ ク トル で は 三 糖 由 来 の ピv‑一ク が 出 現 し な か っ た が 、Rafを 滴 下 し た 場 合 の み 三 糖 由 来 の ピ ー ク を 高 強 度 に 検 出 され た 。 こ の 結 果 よ り作 製 し た 鋳 型 マ ト リ ク ス に よ り鋳 型 サ ン プ ル 分 子 の 構 造 選 択 的 な イ オ ン 化 及 び 検 出 に 成 功 し た 。

2000

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図1.4‑Mlの 検 量 線 図2.三 糖 の マ ス ス ペ ク トル

matrlX ̲only malmatrlX rafmatrlX

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[Mal+Na】

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【R・f・N・】+4‑【Raf+K】

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llll『1

[1]MichaelFJacobson,InternationaljournalofOccupationalandEnvironmental Health,18(2012),3,254‑259

(4)

目次

第1章 序 論

1‑1緒

1‑2質 量 分 析 法 1‑3試 料 導 入 部 1‑4イ オ ン 化 部

1‑5レ ー ザ ー 脱 離 イ オ ン 化(LDI)法

1‑5‑1マ ト リ ク ス 支 援 レー ザ ー 脱 離 イ オ ン 化(MALDI)法 1‑6質 量 分 離 部

1‑7検 出 部

1‑8レ ー ザ ー(LASER) 1‑9研 究 目 的

1‑9‑1LDI法 お よ びMALDI法 の 課 題 1‑9‑2本 研 究 の 目 的

1‑9‑2‑1LDI法

1‑9‑2‑2MALDI法 に お け る 定 量 分 析

1‑9‑2‑3MALDI法 に お け る 構 造 選 択 的 イ オ ン 化 1‑10参 考 文 献

第2章 各 実 験 の 測 定 原 理 2‑1拡 散 反 射

2‑2分 光 法

2‑2‑1蛍 光 分 光 法 2‑2‑2時 間 分 解 分 光 法 2‑3レ ー ザ ー(LASER)

2‑3‑1チ タ ン サ フ ァ イ ア(Ti=Sapphire)レ ー ザ ー

2‑4解 析 法

2‑5 2‑4‑1 2‑4‑2 2‑4‑3 2‑4‑4

参考文献

コ ン ボ リュ ー シ ョン ガ ウ ス 関 数 の 導 出 蛍 光 寿 命 曲線

ガ ウ ス 関 数 と蛍 光 寿 命 曲線 に よ る コ ン ボ リュー シ ョン

第3章 蛍 光 共 鳴 エ ネ ル ギ ー 移 動 を 用 い た レ ー ザ ー 脱 離 イ オ ン 化 の 研 究

3‑1背

3‑1‑1緒

3‑1‑2多 環 芳 香 族 炭 化 水 素(Polycyclicaromatichydrocarbons:PAHs) 3‑1‑3蛍 光 共 鳴 エ ネ ル ギ ー 移 動

3‑2質 量 分 析

3‑2‑1ア ン トラ セ ン 、 テ トラ セ ン の 混 合 比 に つ い て の 検 討 3‑2‑1‑1試 料 調 製 お よ び 実 験 条 件

3‑2‑1‑2結

3‑2‑2テ トラ セ ン 、 ペ ン タ セ ン の 混 合 比 に つ い て の 検 討 3‑2‑2‑1試 料 調 製 お よ び 実 験 条 件

(5)

3‑2‑2‑2結

3‑2‑3ア ン トラ セ ン か らペ ン タ セ ン へ のFRETに っ い て の 検 討 3‑3分 光 分 析

3‑3‑1ア ン トラ セ ン か ら テ トラ セ ン へ のFRET 3‑3‑1‑1試 料 調 製 お よ び 測 定 条 件

3‑3‑1‑2結

3‑3‑2テ トラ セ ン か ら ペ ン タ セ ン へ のFRET 3‑3‑2‑1試 料 調 製 お よ び 実 験 条 件

3‑3‑2‑2結

3‑4ま と め

3‑5参 考 文 献

第4章 金 属 ナ ノ 粒 子 を 用 い た 定 量 実 験

4‑1背

4‑1‑1緒

4‑1‑2無 機 マ ト リ ク ス

4‑1‑3ゼ オ ラ イ ト

4‑1‑4カ ラ メ ル 色 素 4‑2検 量 線 の 作 成

4‑2‑1試 料 調 製 お よ び 実 験 条 件

4‑2‑2結

4‑3清 涼 飲 料 水 中 に 含 ま れ る4‑MIの 定 量 4‑3‑1試 料 調 製 お よ び 実 験 条 件

4‑3‑2結

4‑4ま と め

4‑5参 考 文 献

第5章 温 度 応 答 性 高 分 子 を 用 い た 選 択 的 レ ー ザ ー イ オ ン 化

5‑1背

5‑1‑1緒

5‑1‑2温 度 応 答 性 高 分 子

5‑2.溶 液 中 ラ フ ィ ノ ー ス の 固 相 吸 着 実 験 5‑2‑1吸 着 剤 の 検 討

5‑2‑1‑1試 料 調 製 お よ び 実 験 条 件 5‑2‑1‑2結

5‑2‑2活 性 炭 の 吸 着 効 率 に つ い て 検 討 5‑2‑2‑1試 料 調 製 と 実 験 条 件

5‑2‑2‑2結

5‑2‑3活 性 炭 を マ ト リ ク ス に 応 用 で き る か 検 討 5‑2‑3‑1試 料 調 製 と 実 験 条 件

5‑2‑3‑2結

5‑3活 性 炭 とPVMEの 混 合 比 に つ い て の 検 討 5‑3‑1試 料 調 製 と 実 験 条 件

5‑3‑2結

5‑4透

5‑4‑1試 料 調 製 と 実 験 条 件

(6)

5‑4‑2結

5‑5鋳 型 マ ト リ ク ス を 使 用 し た 分 子 認 識 5‑5‑1試 料 調 製 と 実 験 条 件

5‑5‑2結

5‑6鋳 型 マ ト リ ク ス を 使 用 し た 分 子 認 識(再 実 験) 5‑6‑1試 料 調 製 と 実 験 条 件

5‑6‑2結

5‑7ま と め

5‑8参 考 文 献

第6章 総括

(7)

第1章 序 論[・]

1‑1緒

物 質 の 構 造 解 析 は 、環 境 測 定 や 医 療 ・医 学 分 野 等 、多 岐 に わ た る 分 野 に お い て 必 要 不 可 欠 で あ る。そ の た め の 分 析 手 法 と して 、分 子 の 立 体 構 造 や 運 動 性 な どの 情 報 が得 られ る核 磁 気 共 鳴 法 や 有 機 化 合 物 の 構 造 決 定 な どに 用 い られ る赤 外 分 光 法 に 代 表 され る振 動 分 光 法 な どが 多 く用 い られ て い る。 これ らの 分 析 手 法 と並 び 微 量 な 試 料 を 用 い て 迅 速 に 化 合 物 の 分 子 量 、 構 造 、あ るい は 反 応 性 に 関す る 情 報 が 得 られ る手 法 と して 質 量 分 析 法 が 挙 げ られ る。質 量 分 析 法 は 原 子 ・分 子 の 質 量 を 測 定 で き る唯 一 の 方 法 で あ る こ と か ら極 め て 多 くの 分 野 に お い て 必 要 不 可 欠 な 方 法 と して 普 及 して い る。 質 量 分 析 法 の 最 大 の 特 徴 は 超 微 量 の 試 料 量 で 広 範 な構 造 上 の 情 報 が 得 られ る と こ ろ に あ り、 ク ロマ トグ ラ フ ィー と組 み 合 わせ る こ と に よ り、10'13〜10'14g程 度 の 超 微 量 化 合 物 で さ え検 出 す る こ とが 可 能 とな る。 さ らに 測 定 物 を 非 破 壊 で 検 出 可 能 な イ オ ン化 法(ソ フ トイ オ ン化 法)が 発 明 され 、タ ンパ ク質 な どの 高 分 子 も 分 析 が 可 能 に な っ た 。 そ の ソ フ トイ オ ン化 法 の 具 体 例 と し て エ レ ク トロ ス プ レー イ オ ン 化 法(ESI法 、ElectrosprayIonization)、 高 速 原 子 衝 突 法(FAB法 、FastAtom Bombardment)、 マ トリ ク ス 支 援 型 レー ザ ー 脱 離 イ オ ン化 法(MALDI法 、MatrixAssisted LaserDesorption/10nization)[1'5]な どが 挙 げ られ る。 中 で も2002年 に ノー ベ ル 化 学 賞 を 受 賞 した 田 中耕 一 氏 のMALDI法 は 、 現 在 最 も高 分 子 領 域 ま で 測 定 可 能 な イ オ ン 化 法 で あ

り、 質 量 分 析 に お い て 必 要 不 可 欠 な手 法 と な っ て い る。

質 量 分 析 法 の 欠 点 と して は 同 じ質 量 の 化 合 物 を 区 別 して 検 出 す る こ とが 不 可 能 で あ る点 が 挙 げ られ る 。本 研 究 で は マ トリ ク ス 分 子 を 内 包 した 試 料 化 合 物 の 鋳 型 を 作 製 し、そ れ を 質 量 分 析 計 に試 料 と共 に 導 入 す る こ とで 、 同 じ質 量 の 物 質 を 選 択 的 に イ オ ン化 及 び 検 出す る こ

と を試 み た 。 1‑2質 量 分 析 法

質 量 分 析 法 とは 分 子 や 化 合 物 の 質 量 電 荷 比 を測 定 す る こ と で 試 料 中 に 含 ま れ る分 子 や 化 合 物 を 同 定 す る こ とが で き る 分 析 手 法 で あ り、様 々 な 分 野 で 使 用 され て い る 。質 量 分 析 は 測 定 試 料 を イ オ ン化 す る こ とが 必 要 不 可 欠 で あ り、 そ の イ オ ン の 質 量 電 荷 比 を 測 定 す る こ と に よ っ て 試 料 の 質 量 を測 定 し、同 定 す る こ とが で き る。そ の た め 質 量 分 析 が 開発 され て か ら イ オ ン 化 法 に つ い て の 研 究 が 行 わ れ て お り、現 在 で は様 々 な イ オ ン 化 法 が 存 在 す る。ま た 質 量 分 析 部 も様 々 な もの が 存 在 し、 イ オ ン化 法 と組 み 合 わ せ る こ とに よ り多 種 多 様 な質 量 分 析 装 置 をつ く る こ とが で き 、 様 々 な分 野 で 利 用 され て い る。

質 量 分 析 法 の 測 定 原 理 は試 料 を イ オ ン化 し、 高 真 空 状 態 で 電 磁 気 場 に よ っ て 試 料 に 含 ま れ るイ オ ン を 質 量 電 荷 比(m/z)ご と に 分 離 して 検 出す る こ と で分 子 の 質 量 の 測 定 を 行 う。

質 量 分 析 装 置 は 主 に試 料 導 入 部 、イ オ ン化 部 、質 量 分 離 部 、検 出 部 、デ ー タ 処 理 部 か ら構 成 され て い る 。

(8)

高真空状態

試料導入部 イ オ ン化 部 質量分離部 検出部 デ ー タ処 理 部

図1‑1.質 量 分 析 装 置 の概 略 図

1‑3 試料導入部

試 料 の 性 質 ご と に 適 した 試 料 導 入 系 を用 い る必 要 が あ る。 例 え ば試 料 が 気 体 ま た は揮 発 性 物 質 で あ る か 、 ま た は 液 体 、 固 体 、 も し くは 不 揮 発 性 物 質 で あ る か に よ っ て 導 入 法 は 異 な る。 ま た 、 質 量 分 析 計 を 高 速 液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー(HPLC)や ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー (GC)に 直 結 し、 移 動 相 を 導 入 す る こ と も可 能 で あ る。 質 量 分 析 装 置 と ク ロマ トグ ラ フ との 関係 は 二 つ あ り、 一 つ は 質 量 分 析 装 置 を ク ロ マ トグ ラ フ の検 出器 と して使 う場 合 で あ り、

も う一 つ は ク ロマ トグ ラ フ を 質 量 分 析 装 置 の た め の 分 離 精 製 手 段 と して使 う場 合 で あ る。

以 下 に 代 表 的 な試 料 導 入 法 と対 象 試 料 、 そ の特 徴 を あ げ る。

導入系 対象試料 特徴

DIP

固 体 、 ロ ウ状 の 試 料 、

高 沸 点 の 液 体

直 接 導 入 プ ロ ー ブ 先 端 に 液 体 ま た は 固 体 の 試 料 を の せ た キ ャ ピ ラ リー(El、Fl)や エ ミ ッ タ ー(FD)、 タ ー ゲ ッ ト

(FAB)を 装 着 し て イ オ ン 化 部 の 真 空 条 件 あ る い は ヒ ー タ ー に よ っ て 気 化 され る

GC 揮発性化合物 の 混合物

ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ と質 量 分 析 計 を イ ン ター フ ェ ー ス で 結 合 した も の。 測 定 可 能 な イ オ ン化 法 はEI、CIま た はFI

で あ る。 特 にEI‑MSと の 組 み 合 わ せ に ラ イ ブ ラ リー 検 索 を 組 み 合 わ せ て 混 合 試 料 中 の 化 合 物 の 同 定 に威 力 を 発 揮 して い る。

(HP)LC 液相の混合物

高 速 液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー と質 量 分 析 計 を イ ン タ ー フ ェ ー ス で 結 合 した もの 。 組 み 合 わ せ るイ オ ン化 法 は ESI,EIな どで あ る。 移 動 相 に は イ オ ン化 の 妨 げ とな らな い 緩 衝 液 を 選 択 す る。

DlP:直 接 導 入 プ ロ ー ブ(DirectlnsertionProbe) GC:ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ(GasChromatograph)

(HP)LC:(高 速)液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ((HighPerformance)LiquidChromatography) 表1‑1.質 量 分 析 に お け る 代 表 的 な 試 料 導 入 部

1‑4 イ オ ン化 部

(9)

質 量 分 析 に お い て試 料 を イ オ ン化 す る こ とは 必 要 不 可 欠 で あ る。 そ の た め分 析 の 目的 な ど に よ っ て様 々 な イ オ ン 化 法 が 考 案 され て お り、 そ の 中 で も大 き く分 け て ソ フ トイ オ ン化 法 とハ ー ドイ オ ン化 法 に 分 け られ る。

ソ フ トイ オ ン化 法 は フ ラ グ メ ンテ ー シ ョン を 起 こす こ とな く分 子 を イ オ ン化 す る こ と が で き る イ オ ン化 法 で あ り、 化 学 イ オ ン化(CI)法 、 フ ィー ル ドイ オ ン化(FI)法 、 エ レ ク トロ ス プ レー イ オ ン化(ESI)法 、 マ トリ ク ス 支 援 レー ザ ー 脱 離 イ オ ン化(MALDI)法 どが 挙 げ られ る。

ハ ー ドイ オ ン 化 法 は 過 剰 な エ ネ ル ギ ー を 供 給 す る こ と に よ り試 料 を イ オ ン化 させ る方 法 で あ り、 そ の た め ソ フ トイ オ ン化 法 に 対 し フ ラ グ メ ン トイ オ ン が 生 成 しや す い 。 ハ ー ドイ オ ン化 法 と して 主 に 電 子 イ オ ン化(EI)法 な どが 挙 げ られ る。 次 の 表 に 現 在 用 い られ て い る 主 な イ オ ン化 法 を 挙 げ る。

(10)

イ オ ン化 法 対象試料 特徴

EI 揮発性が高い試料(固 体や液 体)や 常温で気体の試料

気 体 状 態 の 分 子 に加 速 した 熱 電 子 を照 射 し分 子 か ら電 子 を 剥 ぎ取 りイ オ ン 化 す る。

フ ラ グ メ ン テ ー シ ョン を生 じや す い 。

CI 揮発性が高い試料(固 体や液 体)や 常温で気体の試料

イ オ ン化 室 内 に満 た した 試 薬 ガ ス を熱 電 子 に よ っ て イ オ ン化 した 反 応 イ オ ン と気 体 試 料 分 子 の 間 で イ オ ン化 分 子 反 応 を起 こす 。 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン を 生 じづ らい 。

FAB

常温で固体や液体の試料、ま た熱 に不安定な試料や揮発性

の低い試料 も測定可能

中性(ま た は イ オ ン)原 子 ビー ム に よ っ て試 料 をイ オ ン 化 す る。 グ リセ ロー ル な どの 液 体 マ ト リク ス を 用 い る こ

と に よ っ て ソ フ トにイ オ ン 化 す る。

FI 揮発性試料

電 界 に よ っ て イ オ ン化 す る。 試 料 の 内 部 状 態 が 高 電 界 の 作 用 よ り超 励 起 され 、 エ ネ ル ギ ー 供 給 源 とそ れ 以 上 の 相 互 作 用 を す る こ と な く電 子 を 自発 的 に放 出す る。

FD 中性 、 イ オ ン性 固 体 FIと 同様 の原 理 で イ オ ン化 す る。

ESI 生態 関連物質や難揮発性の試 料 に有用

試 料 溶 液 を細 管 に 通 し高 電 圧 を 印加 し帯 電 した液 滴 と し て 噴 霧 させ た の ち 、 溶 媒 を 蒸 発 させ て 多 価 イ オ ン を 生 成

させ る。 分 子 量10万 程 度 以 下 の 全 分 子 量 領 域 で 測 定 可 能 。

APCl 液 体 、 溶 媒 に溶 解 した 固 体

試 料 溶 液 を加 熱 噴 霧 してN2ガ ス と一 緒 に 流 し、コ ロナ 放 電 に よ っ てN2ガ ス を イ オ ン化 し、試 料 分 子 との イ オ ン分 子 反 応 を 起 こす 。 大 気 圧 下 で の イ オ ン化 。

MALDI

熱に不安定な試料 、揮発性 の 低い試料、生態関連物質に非

常 に有効

試 料 溶 液 とマ ト リク ス を混 和 し乾 燥 させ 得 られ た 結 晶 に 紫 外 線 レー ザ ー の パ ル ス を 照 射 し、マ トリ ク ス を 励 起 し、

気 化 、 イ オ ン 化 す る。 最 も高 分 子 量 領 域 ま で 測 定 可 能 。

EI:電 子 衝 突(ElectronImpact)ま た は 電 子 イ オ ン 化 法(ElectronIonization) CI:化 学 イ オ ン 化 法(Chemicallonization)

FAB:高 速 電 子 衝 撃 法(FastAtomBombardment) FI:フ ィ ー ル ド イ オ ン 化 法(FieldIonization) FD:フ ィ ー ル ド脱 離 法(FieldDesorption)

ESI:エ レ ク ト ロ ス プ レ ー イ オ ン 化 法(ElectrosprayIonization) APCI:大 気 圧 化 学 イ オ ン 化 法(AtmosphericPressureChemicalIonization) MALDI:マ ト リ ク ス 支 援 レ ー ザ ー 脱 離 イ オ ン 化 法(MatrixAssistedLaser Desorption/10nization)

表1‑2.質 量 分 析 に お け る 主 な イ オ ン 化 法[10】

1‑5 レー ザ ー 脱 離 イ オ ン化(LDI)法

レー ザ ー 脱 離 イ オ ン化 法 は ナ ノ秒 パ ル ス レー ザ ー を 測 定 物 に 直 接 照 射 す る こ と で 、 測 定 物 の 急 速 に気 化 ・脱 離 反 応 を促 進 しイ オ ン化 を行 う手 法 で あ る。LDl法 で は レー ザ ー の エ ネ ル ギー を直 接 測 定 物 に与 え る た め 、 測 定 物 が 吸 収 した 過 剰 な エ ネ ル ギ ー に よ りそ の 分 子 構

(11)

造 が 破 壊 され 、 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョン を起 こ して し ま う とい っ た 課 題 が 挙 が られ 、 ソ フ ト イ オ ン 化 に は 不 向 き で あ る と考 え られ て い た 。 しか し 田 中 らお よびHillenkampら が 開 発 し た ノー ベ ル 賞 技 術 で あ るMALDI法 が 開発 され た こ とに よ り、 測 定 物 に 対 して 間 接 的 にエ ネ ル ギ ー 供 給 を 行 うと い う概 念 が 導 入 され ソ フ トイ オ ン化 が 達 成 され た。 こ の 概 念 に従 い 、 そ の 後MALDI法 の 欠 点 を 改 善 す る た め に 開発 され たDIOS法 な ど が試 料 へ の 間 接 的 エ ネ ル ギー 供 給 に成 功 し、LDI法 に お け る ソ フ トな レー ザ ー 脱 離 イ オ ン化 を 達 成 した。

1‑5‑1マ ト リ ク ス 支 援 レ ー ザ ー 脱 離 イ オ ン 化(MALDI)法

MALDI法 は 、El法 やCI法 で は測 定 困 難 で あ っ た 熱 に 不 安 定 な物 質 や 高 分 子 量 物 質 の解 離 を 抑 え る こ とが 可 能 な ソ フ トイ オ ン化 法 と して 非 常 に 大 き な 注 目 を浴 び て い る。 こ の 方 法 は 生 体 内 に 存 在 す る タ ン パ ク 質 な どの 分 子 量 の 極 め て 大 き い 化 合 物 に 特 に 威 力 を発 揮 し、

飛 行 時 間 型 質 量 分 析 計(TimeofFright,TOF)と 組 み 合 わせ る こ とに よ り非 常 に 高 感 度 な 検 出 が 可 能 で あ る。 ま た 分 子 量 が10万 以 上 の 化 合 物 の 測 定 も 可 能 と な り、MALDI法 は タ ン パ ク 質 の構 造 解 析 な どに 汎 用 され て い る 。

MALDI法 は 大 き なエ ネ ル ギ ー をパ ル ス 的 に 与 え て イ オ ン化 し、 化 合 物 の熱 分 解 を 抑 制 す る よ うな エ ネ ル ギ ー サ ドン とい う方 法 論 に分 類 され る。 難 揮 発 性 化 合 物 は液 体 あ る い は 固 体 の よ うな 凝 集 相 の 形 を と る の で 、 これ を質 量 分 析 す る た め に は試 料 を 気 化 させ 、 さ らに は イ オ ン 化 させ る 必 要 が あ る。 しか し試 料 を 単 に 加 熱 す るだ けで は 試 料 が気 化 す る 前 に熱 分 解 が 起 こ り有 用 な 質 量 ス ペ ク トル は得 られ な い 。 した が っ て 高 分 子 量 の難 揮 発 性 試 料 を分 析 す る に は試 料 を熱 分 解 させ る こ とな く瞬 時 に 気 化 させ 、 気 相 に 抽 出 す る必 要 が あ る。

MALDI法 で は レー ザ ー 光 の波 長 領 域 に 吸 収 帯 を 持 つ マ トリ ク ス 分 子 と 呼 ば れ る物 質 と試 料 を 混 合 して 結 晶化 させ る 。 マ トリ ク ス に ナ ノ秒 パ ル ス レー ザ ー 光 が 照 射 され る と表 面 近 傍 の 薄 い 層 の マ トリク ス 分 子 が 光 を 吸 収 して い っ せ い に 電 子 励 起 され る。 試 料 の 脱 離 ・イ オ ン化 は こ の 電 子 励 起 エ ネ ル ギ ー が 極 め て 短 時 間 内 に 緩 和 す る こ とで 生 じた 集 団 的 な フ ォ ノ ン励 起 に よ る 瞬 間 的 な 高 温 ・高 圧 状 態 か ら真 空 相 へ の 分 散 及 び そ れ に 伴 う化 学 的 イ オ ン化 に よ り進 行 す る こ とが 提 唱 され て い た 。[6】近 年 で は 分 光 学 的 手 法 に よ り、 よ り厳 密 な 脱 離 ・イ オ ン 化 メ カ ニ ズ ム の 解 明 が 行 わ れ て い る。 圃

MALDI法 が ソ フ トイ オ ン化 に 成 功 した 理 由 は 、 照 射 す る レー ザ ー 波 長 領 域 に 吸 収 を持 つ マ ト リク ス 分 子 を エ ネ ル ギ ー 吸 収 体 と して 用 い 、 ま た 試 料 に対 して 多 量 に 用 い る こ と に よ り 試 料 分 子 を 分 散 させ た た め 、 マ トリク ス 分 子 に 吸 収 され た レー ザ ー エ ネ ル ギ ー は熱 エ ネ ル ギ ー な ど に 変 換 され 、 マ ト リク ス 分 子 か ら試 料 は 間 接 的 に 照 射 レー ザ ー エ ネ ル ギ ー を 受 け る。 そ の た め 試 料 へ の 過 剰 な エ ネ ル ギ ー 供 給 が 抑 制 され 、 適 度 な エ ネ ル ギ ー を受 け 、 ソ フ

ト レー ザ ー 脱 離 イ オ ン化 が 達 成 され た 。 1‑6質 量 分 離 部

質 量 分 離 部 に お い て イ オ ン 化 され た 試 料 を分 離 し、 質 量 電 荷 比 の 近 い ピー ク を 分 解 す る 能 力(質 量 分 解 能)と 測 定 可 能 質 量 範 囲 の 二 つ の要 素 が 重 要 で あ る。 用 い る イ オ ン化 法 な

ど に よ り様 々 な 質 量 分 離 部 が 用 い られ る。 以 下 に代 表 的 な 質 量 分 離 装 置 を挙 げ る。

質量分離装置 原 理 ・特 徴

SectorMS

磁 場 中 で イ オ ン に か か るカ を利 用 す る。磁 場 の 強 さ を変 化 させ 、磁 場 中 で の イ オ ン の 軌 道 の 曲 率 を 変 化 させ る こ とで 質 量 電 荷 比 に 応 じ て 分 離 す る 。

QMS 四 本 の ロ ッ ドを 平 行 に 束 ね た 分 離 装 置 で 、 ロ ッ ドに 高 周 波 電 位 と直 流 電 位 を 重 ね 合 わ せ た 電 位 を 与 え る 。 イ オ ン を ロ ッ ド問 に送 り込 む と質

(12)

量 電 荷 比 に応 じて 振 動 しな が ら進 み 、 一 定 範 囲 の 質 量 電 荷 比 の イ オ ン だ け を取 り出 す こ とが で き る。 測 定 可 能 な 質 量 の 上 限 は2000〜4000.

四 重 極 ロ ッ ドの 入 り 口 と出 口 をつ な い で リ ン グ 状 に した も の。 安 定 に ITMS 振 動 す るイ オ ン は 外 に 出 る こ とな く内 部 に と ど ま り、 印 加 す る 高 周 波 の 電 圧 を 徐 々 に 強 く して い く と質 量 電 荷 比 の 小 さ い も の か ら順 に イ オ

ン ト ラ ッ プ の 外 に 出 て く る の で マ ス ス ペ ク トル が 得 ら れ る 。

イ オ ン を加 速 して か ら検 出 器 に 到 達 す る ま で の 時 間 に よ っ て 分 解 す TOFMS る。原 理 的 に測 定 可 能 な 質 量 数 範 囲 に 制 限 が な く、全 て の イ オ ン を 捨 て る こ とな く検 出 可 能 な た め 高 い 感 度 が 実 現 可 能 。 高 感 度 な 測 定 方 法 で あ る リニ ア 型 と高 い 質 量 分 解 能 が 得 られ る リフ レ ク トロ ン型 が あ る。

イ オ ン サ イ ク ロ トロ ン 共 鳴 現 象 を 利 用 した も の で 高 質 量 イ オ ン が 高 分 解 能 で測 定 で き る 。 六 面 の 電 極 で 構 成 され た セ ル 中 で 強 磁 場 を か け る FT‑ICRMS こ と で イ オ ン を 回 転 運 動 させ る。 そ れ ぞ れ の イ オ ン の 回 転 速 度 に応 じ た 周 波 数 信 号 が す べ て 混 合 して 検 出 され 、 そ れ を フ ー リエ 変 換 しマ ス ス ペ ク トル を 得 る 。微 量 試 料 で信 号 雑 音 比(SIN比)が 大 き な スペ ク ト ル が 得 や す い 。

SectorMS=磁 場 型 質 量 分 析 装 置(SectorMassSpectrometer) QMS=四 重 極 型 質 量 分 離 装 置(QuadrupoleMassSpectrometer) lTMS=イ オ ン ト ラ ッ プ 型 質 量 分 離 装 置(lonTrapMassSpectrometer) TOFMS=飛 行 時 間 型 質 量 分 離 装 置(TimeofFlightMassSpectrometer)

FT‑ICRMS=フ ー リ エ 変 換 イ オ ン サ イ ク ロ ト ロ ン 型 質 量 分 離 装 置(FourierTransformationIon CyclotronMassSpectrometer)

表1‑3.質 量 分 析 に お け る 主 な 質 量 分 離 装 置[9】

(13)

本 実 験 で 用 い る質 量 分 析 計 で は 飛 行 時 間 型 質 量 分 離 部(TOF‑MS)を 使 用 して い る。TOF‑

MSは イ オ ン を加 速 、 一 定 距 離 を 自 由飛 行 させ 、 検 出器 に 到 達 す る ま で の 時 間 の 違 い を利 用 して 質 量 の 分 離 を 行 う。 レー ザ ー 照 射 に よ っ て 電 荷 を 帯 び た イ オ ン が 電 位 差Voの 定 常 的 な 電 場 を通 過 し、 一 定 の エ ネ ル ギ ー を 得 て加 速 す る。 電 場 に よ っ て 加 速 され た イ オ ン の 速 度 をvは 、 電 場 か ら得 られ る エ ネ ル ギ ー と、 エ ネ ル ギ ー 保 存 則 に よ っ て 求 め る こ と が で き る。

zV・‑IMV2よ りv一 ・ …(1‑6‑1)

(z:イ オ ンの 電 荷 量 、m:イ オ ン の 質 量 、v:イ オ ン速 度 、Vo:電 位 差)

1‑6‑1式 よ り、 速 度 の 自乗 と質 量 は反 比 例 の 関 係 に あ り、 速 度 と電 荷 が 比 例 の 関係 が 成 り立 つ こ とが 分 か る。 よっ て 飛 行 時 間 は質 量 電 荷 比m/zの 関 数 で 表 され る こ と が 分 か る。

こ の こ と か らm/zが 小 さい ほ ど飛 行 速 度 は 速 く な りm/zが 大 き い ほ ど飛 行 速 度 は 遅 くな る。 加 速 部 か ら検 出 部 ま で の 距 離Lを 飛 行 す る の に か か る時 間tは 以 下 の 式 に よっ て 求 め

られ る 。

…(1‑6‑2)

よ っ て 質 量 電 荷 比m/zは 飛 行 時 間t、 距 離L、 電位 差Voを 用 い て 以 下 の よ うに表 す こ と が で き る。

m/z一 亡2…(1‑6‑3)

1‑6‑3式 に お い てVo、Lは 装 置 に よ る 定 数 な の で 、m/zは 飛 行 時 間 の 二 乗 に 比 例 す る 。 TOF‑MSに は リニ ア 型 と リフ レク トロ ン型 が あ る。 リニ ア型 は イ オ ン が加 速 領 域 か ら検 出器 に 到 達 す る ま で 無 限 界 で あ り、 直 線 飛 行 す る こ とで 飛 行 途 中 に 分 解 し て 中性 粒 子 と な っ た 分 子 も全 て 検 出 す る こ とが で き る極 め て 高 感 度 な 測 定 法 で あ る。 しか し、 イ オ ン 生 成 時 の 初 期 エ ネ ル ギー の 分 布 が そ の ま ま 飛 行 時 間 に反 映 され るた め 質 量 分 解 能 は そ れ ほ ど高

くは な い 。

一 方 リフ レク トロ ン型 は 加 速 部 で イ オ ン に生 じた 運 動 エ ネ ル ギ ー の 分 布 を収 束 させ る こ とで 質 量 分 解 能 を高 くす る こ とが で き る。 加 速 部 で 加 速 され た イ オ ン は運 動 エ ネ ル ギ ー が 0に な る ま で リ フ レ ク トロ ン 内 に 進 入 し、 リフ レク トロ ン 内 で 逆 向 き の 電 場 に よ っ て 再 度 加 速 され る 。 リ フ レ ク トロ ン 進 入 の 前 後 で イ オ ン の 運 動 エ ネ ル ギ ー に 変 化 は な い が 、 リフ レ ク トロ ン 内 の 飛 行 距 離 は 進 入 前 の イ オ ン の運 動 エ ネ ル ギ ー に よ っ て 異 な る。 例 え ば 質 量 電 荷 比 の 同 じイ オ ン にお い て よ り高 い 運 動 エ ネ ル ギ ー を 持 つ イ オ ン は 長 い 間 リフ レ ク トロ ン 内 を 通 過 す る た め 、 運 動 エ ネ ル ギー に よ る飛 行 時 間 の 広 が りを 収 束 す る こ と が で き る。

ま た 、 リフ レク トロ ン を 用 い る こ とで イ オ ン の 飛 行 距 離 が2倍 に な る の で イ オ ン の 質 量 分 解 能 が 高 くな る。

1‑7検 出 部

検 出 部 は 質 量 分 離 部 で 分 離 した イ オ ン を 検 出 す る部 分 で あ る。 以 下 に代 表 的 な検 出 部 を あ げ る 。

検出器 原 理 ・特 徴

SEM

多 く の装 置 で 用 い られ て い る検 出器 で あ り、 イ オ ン が 金 属 表 面 に 衝 突 す る こ とで 複 数 の 二 次 電 子 が放 出 され る性 質 を利 用 して い

る。 イ オ ン の 質 量 が 大 き い も の ほ ど感 度 が 低 下 す る 。 PAD

電 子 増 倍 管 の 前 に アル ミニ ウム 電 極 を設 置 し、 高 電 圧 を 印 加 す る。 イ オ ン を ア ル ミニ ウム 電 極 に衝 突 させ 、 二 次 電 子 を 放 出 後 、 電 子 増 倍 管 へ 加 速 す る こ とで 高 い 電 子 収 率 が 得 られ る。

(14)

高 質 量 イ オ ン を感 度 よ く検 出 す る こ とが 可 能 。

二 次 電 子 増 倍 管 を 連 続 した 表 面 で行 う検 出器 。 ラ ッパ 型 の ガ ラ ス チ ャ ン ネ ル トロ ン 内 側 に鉛 を 塗 布 し、 高 電 圧 を 印 加 す る。 鉛 の 電 気 抵 抗 に よ っ て 連

続 した 電 気 勾 配 が で き 、 連 続 した 電 子 増 倍 管 の よ うに 働 く。

小 さ な チ ャ ンネ ル トロ ン を 平 面 に 多 数 並 べ た よ うな構 造 を して お MCP り、 薄 い 板 状 に な っ て い る。 表 面 と裏 面 の 間 に 高 電 圧 を 印 加 して

使 用 し、 広 い 面 積 で検 出 可 能 な た め イ オ ン 収 束 機 能 を持 た な い TOF‑MSな ど に 用 い ら れ る 。

数 千 個 の 小 さ な チ ャ ンネ ル トロ ン を直 線 に 配 列 した も の。 イ オ ン の 焦 点 面 に設 置 す る こ とで 磁 場 あ るい は 電 場 に よ っ て 分 散 した 複 ア レイ 検 出 器 数 の イ オ ン を 同 時 に検 出 可 能 。SIN比 の 大 き い ス ペ ク トル が 得 られ

る が 、 限 られ た 範 囲 の イ オ ン しか検 出 で き な い の で 、 磁 場 や 電 場 を段 階 的 に切 り替 え て 必 要 な範 囲 を測 定 す る。

MCPに 生 成 した 電 子 雲 をMCPの 裏 側 に 設 置 した 帯 状 導 電 性 電 極 PATRIC で 検 出す る。 イ オ ン が 到 達 した 位 置 と時 間 を正 確 に 検 出 で き 、 磁

場 な どを 掃 引 しな が ら連 続 的 に ア レイ を検 出 す る こ と が 可 能 で あ

る 。

SEM:二 次 電 子 増 倍 管(SecondaryElectronMultiplier) PAD:後 段 加 速 型 検 出 器(Post‑AccelerationDetector) MCP:マ イ ク ロ チ ャ ン ネ ル プ レ ー ト(Micro‑channelPlate)

PATRIC:位 ・時 間 分 解 型 ア レ イ 検 出 器(PositionandTimeResolvedIonCounting) 表1‑4.質 量 分 析 に お け る 主 な 検 出 部 【10】

(15)

一 般 的 に 広 く用 い られ るMCPに つ い て 記 述 す る

MCPの 構 造

チ ャ ンネ ル内 壁 出力 側 電極

,1

出力■子

ス トリッ プ電 轟

卜 噌

MCPの 入.T..̲̲‑VD.一 デ向 に 電 位 勾 配

雑 ∴ 図i‑2・McP'・as造 盗軍隷 警炭

物 線 軌 道 を 描 く。 そ して 反 対 側 の 壁 に 衝 突 して 再 び 二 次 電 子 を放 出 す る。 こ の よ うに して 電 子 は チ ャ ンネ ル の 内 壁 に 何 回 も衝 突 しな が ら 出力 側 に 進 ん で い き 、 結 果 と し て 指 数 関 数 的 に増 倍 され た 電 子 が 取 り出 され る。

■MCPゲ イ ン特 性

「口̀■」‑

101

¥

10一

10s

10s

d[+・L

1‑8レ ー ザ ー(LASI

dos ず ほ を む ち け

レー ザ ー(LASER)

ttte電圧1曲iissionofRadiation(輻 の誘 導 放 出 に よ る光 増 帖'L'th'Ik‑〜 …Lr'Hr.'y‑'…!'J/1を 増 幅 して放 射 す る レー ザ ー 装 置 を 指 凱 レー サ 図1'3・MCPの 供 給 電 圧 と ゲ イ ン[10】1、 高 輝 度 性 、 制 御 性 が あ

レー ザ ー 発 振 器 は キ ャ ビ テ ィ(光 共 振 器)と 、 そ の 中 に設 置 され た 媒 質 お よび 媒 質 を ポ ン ピ ン グ(電 子 を よ り高 い エ ネ ル ギー 準 位 に持 ち上 げ る こ と)す る た め の 装 置 か ら構 成 さ れ る。 キ ャ ビ テ ィ は 典 型 的 に は2枚 の鏡 が 向 か い 合 っ た 構 造 を 持 っ て い る。 波 長 の 半 分 が キ ャ ビテ ィ 長 さの 整 数 分 の 一 とな る よ うな 光 は 、 キ ャ ビテ ィ 内 を 繰 り返 し往 復 し定 常 波 を 形 成 す る。 媒 質 は ポ ン ピ ン グ に よ り、 吸 収 よ りも誘 導 放 出 の 方 が 優 勢 な い わ ゆ る反 転 分 布 状 態 を 形 成 す る。 す る とキ ャ ビ テ ィ 内 の 光 は媒 質 を 通 過 す るた び に誘 導 放 出 に よ り増 幅 さ れ 、 特 に光 が キ ャ ビテ ィ に 共 振 し定 常 波 を 形 成 して い る場 合 に は 再 帰 的 に 増 幅 が行 わ れ る。 キ ャ ビテ ィ を形 成 す る鏡 の うち一 枚 を 半 透 鏡 に して お け ば 、 そ こ か ら一 部 の 光 を外 部 に 取 り出 す こ とが で き 、 レー ザ ー 光 が 得 られ る。 外 部 に 取 り出 した こ とや キ ャ ビテ ィ 内 で の 吸 収 ・散 乱 等 に よ りキ ャ ビテ ィ 内 か ら失 われ る光 量 と、 誘 導 放 出 に よ り増 加 す る光 量 と が釣 り合 っ て い れ ば 、 レー ザ ー 光 は キ ャ ビテ ィか ら継 続 的 に 発 振 され る。 媒 質 は反 転 分 布 を 形 成 す る た め に 、 三 準 位 モ デ ル や 四 準 位 モ デ ル な どの 量 子 力 学 的 エ ネ ル ギ ー 構 造 を持 っ

' ,

!

'

1'

(16)

て い る 必 要 が あ る。 媒 質 の ポ ン ピ ン グ は光 励 起 、 放 電 、 化 学 反 応 、 電 子 衝 突 等 さま ざま な 方 法 で 行 わ れ る。 光 励 起 を用 い る も の の 中 に は 他 の レー ザ ー 光 源 を 用 い る方 法 もあ る。

ミ ラ ー 部 分 透 過 ミラ ー

出力光

↑ ↑ ↑ ↑ ↑

ポ ン ピ ン グ

図1‑4.レ ー ザ ー 発 振 器 の 概 略 図

本 研 究 で は試 料 の イ オ ン 化 を 行 う レー ザ ー 照 射 の 際 に 窒 素 レー ザ ー を 用 い た 。 窒 素 レー ザ ー は ガ ス の レー ザ ー の 一 種 で

、 放 電 キ ャ ビテ ィ の 中 に0.03気 圧 か ら1気 圧 程 度 の 窒 素 を 封 入 して 、 高 圧 放 電 に よっ て ポ ン ピ ン グ を 起 こ し レー ザ ー 発 振 を 行 うも の で あ る。 発 光 は パ ル ス 発 光 で 発 光 時 間 は 数ns程 度 で あ る。 発 光 波 長 は337nmで 紫 外 光 で あ る た め 紫 外 光 を 必 要 とす る分 野 で使 わ れ て き た 。 窒 素 レー ザ ー は 紫 外 領 域 に 吸 収 帯 を持 つ マ ト リク ス の 電 子 励 起 を 必 要 とす るMALDI法 で よ く用 い られ て お り、 ま た 取 り扱 い が 簡 単 で 、 ゲ イ ン も 高 く容 易 に 発 振 し、 価 格 も安 い こ とか ら色 素 レー ザ ー の ポ ン プ ソー ス 等 に も使 用 され て い る。

1‑9 研究 目的

先 述 した よ うにLDI法 お よびMALDI法 は 現 在 広 く普 及 して い る が 、課 題 も存 在 す る。

本 節 で はLDI法 、MALDI法 の課 題 及 び 本 修 士 論 文 の 目的 に つ い て 述 べ る。

1‑9‑1LDI法 お よ びMALDI法 の 課 題

LDI法 は 照 射 レー ザ ー 波 長 域 に 吸 収 帯 を もつ 分 子 に 関 して は イ オ ン化 が す る こ とが 可 能 だ が 、 吸 収 帯 を 持 た な い 分 子 に 関 して は イ オ ン化 す る こ とが 困 難 で あ る とい っ た 欠 点 が 存 在 す る 。

現 在MALDI法 に は試 料 とマ トリ ク ス を 混 合 す る こ と に よ る 欠 点 が 存 在 す る。 ま た試 料 導 入 の 際 に ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー な ど に よ る分 離 を 必 要 と しな い こ と に 起 因 す る課 題 も存 在 す る。

一 つ 目の 課 題 と して 試 料 と マ ト リク ス の 混 合 比 や 混 合 状 態 な どに よ り得 られ る結 果 が 変

(17)

わ り、再 現 性 が 高 く な い とい う点 が 挙 げ られ る。そ の た めMALDI法 で は 定 量 分 析 を行 う こ とが 困 難 で あ る。

二 つ 目の 課 題 と してMALDI法 は必 要 な 試 料 を分 離 して 導 入 す る 必 要 が な い た め 、 目的 の 分 子 以 外 の 分 子 もイ オ ン化 お よ び 検 出 され て し ま う。 そ の た め 測 定 試 料 に構 造 異 性 体 な ど分 子 量 の 同 じ分 子 が 含 ま れ て い る場 合 、 これ らを 区別 して 検 出 す る こ とが 不 可 能 で あ る。

1‑9‑2本 研 究 の 目 的

上 記 にお い てLDI法 お よびMALDI法 の 課 題 を 挙 げ た 。 そ こで 本 研 究 で は これ らの課 題 の解 決 を 図 っ た。

1‑9‑2‑1LDI法

先 述 した よ うにLDI法 は 照 射 レー ザ ー 波 長 域 に 吸 収 帯 を持 た な い 分 子 に 関 して は 直接 イ オ ン化 す る こ とが 困 難 で あ る。 当研 究 室 の 先 行 研 究 で は 分 子 間 エ ネ ル ギ ー 移 動 の 一 種 で あ る 蛍 光 共 鳴 エ ネ ル ギ ー 移 動(FRET)を 利 用 して 、 照 射 レー ザ ー を 吸 収 す る分 子 か らのFRET に よ り照 射 レー ザ ー 波 長 よ り も長 波 長 域 に 吸 収 帯 を 持 つ 分 子 を イ オ ン化 す る こ と に成 功 し た。

本 研 究 で はFRETの 段 階 を 増 や す こ とに よ り レー ザ ー 波 長 よ り もか な り長 波 長 域 に 吸 収 帯 を持 つ 分 子 の イ オ ン化 お よび 高 強 度 な検 出 を 行 っ た 。(第3章)

1‑9‑2‑2MALDI法 に お け る 定 量 分 析

MALDI法 に お い て 定 量 が 困 難 で あ る理 由 と して 結 品 中 の 試 料 とマ ト リク ス の 混 合 状 態 が 均 一 で な い こ と が 挙 げ られ る。 そ の た め 構 造 中 に ナ ノス ケ ー ル の 細 孔 を 持 つ ゼ オ ライ ト を利 用 す る こ とで マ ト リク ス を 細 孔 中 に 取 り込 み マ トリ ク ス が 均 一 に 分 散 した 状 態 を 作 り、

そ れ に よ り再 現 性 を 高 め る こ とが で き る と考 え た 。 本 研 究 で は ゼ オ ラ イ トを 混 合 した マ ト リ ク ス を用 い る こ とでMALDI法 に お け る定 量 分 析 を行 っ た 。(第4章)

1‑9‑2‑3MALDI法 に お け る 構 造 選 択 的 イ オ ン 化

MALDI法 で は 異 性 体 を 区別 して イ オ ン化 お よび 検 出す る こ とが 困難 で あ る。そ こ で 温 度 応 答 性 高 分 子 と呼 ば れ る 物 質 を利 用 し、マ トリク ス お よび 目的 分 子 を 内 包 す る。そ こ か ら 目 的 分 子 を 取 り出 す こ とで 鋳 型 マ ト リク ス を 作 製 し 、 そ れ を使 用 す る こ とで 試 料 中 の 構 造 異 性 体 の 構 造 選 択 的 イ オ ン 化 を 行 っ た 。(第5章)

1‑10参 考 文 献

[1]志 田 保 夫 、 笠 間 健 嗣 、 高 山 光 男 、 高 橋 利 枝 「こ れ な ら わ か る マ ス ス ペ ク トル メ ト リ ー 」 化 学 同 人

[2]M.Karas,D.Bachnann,EHillenkamp,.4nalChem.57,(1985)2935‑2939.

[3]M.Kares,EHillenkamp,.4nal.Chem.60,(1988)2299‑2301.

[4]K.Tanaka,H.Waki,YIdo,S.Akita,Y.Yoshida,T.Yoshida,RapidCommun、Mass Speetrom、2,(1988)151‑153.

[5]高 山 光 男 ら 「現 代 質 量 分 析 学 」 化 学 同 人 [6]R.KnochenmussandR.Zenobi,Chθm、Re.,103,(2003)441‑452.

(18)

[7]K.Murakami,T.Fujinoθt.al.,Chθm.Phys,,419,(2013)37‑43.

[8]YMinegishi,T.Fujinoet.aZ,Chem.Phys.Lθtt.,584,(2013)14‑17.

[9]島 津 製 作 所 、MALDI‑MSTechnicalReports(rev.3.0)No.06 [10]山 本 修 士 論 文(2014)

(19)

第2章 各実験 の測定原理

本 章 で は 第3章 か ら第5章 で 行 っ た 実 験 に 関 す る測 定 法 や 原 理 お よび 解 析 に 用 い た 数 式 とそ の 導 出 過 程 につ い て 示 す 。

2‑1 拡散反射

拡 散 反 射 法 は 、粉 末 試 料 の 測 定 に お い てKBr錠 を作 らず 、粉 末 の ま ま測 定 す る 方 法 で あ る。

光 を粉 末 試 料 に 当 てる と、粉 末 表 面 で正 反 射 して 外 部 に 出 る 光 と、試 料 内 部 に 入 って透 過 と拡 散 を繰 りか え した 後 に 表 面 にで る拡 散 反 射 光(散 乱 光)と が 生 じるが 、後 者 を用 い て吸 収 ス ペ ク トル を得 る方 法 であ る 。

拡散反射光 正反射光 入射光

り ○

図2‑1.粉 末 中 の 反 射[1】

拡 散 反 射 法 は 試 料 を繰 り返 し透 過 す る の で 、弱 い 吸 収 帯 が 強 調 され るた め に 吸 光 度 と試 料 濃 度 が 比 例 しない 。しか し、KBrやKCI粉 末 を 比 較 標 準 試 料 として 用 いて 相 対 的 な拡 散 反 射 率 を求 め 、得 られ た スペ クトル をクベ ル カ・ム ンク変 換 す ると、縦 軸 は濃 度 に比 例 した 強 度 にな る。

クベ ル カ ・ム ン ク変 換 に つ い て 以 下 に述 べ る 。Kを 吸 光 定 数 、Sを 散 乱 定 数 、R。を試 料 の 厚 さが 無 限 大 の ときの 反 射 率 とす る と、クベ ル カ ・ム ンク関 数f(R。。)は以 下 の 式 で 表 され る。

K(1‑R。 。)2 f(R・・)二万 二2R

.。

{をモル 吸 光 係 数 、Cを モル 濃 度 とす ると、Kは εCに 比 例 す るの で 、Sが 一 定 であ れ ば 求 め た ス ペ クトル をクベ ル カ ・ム ンク変 換 す ることに よって 、そ の 縦 軸 は 濃 度 に 比 例 した 量 にな る 。

2‑2 分光法

分 光 法 とは 物 理 的観 測 量 の 強 度 を周 波 数 、 エ ネ ル ギ ー 、 時 間 な どの 関数 と し て 示 す こ と で 、 対 象 物 の 定性 、 定 量 あ る い は 物 性 を調 べ る科 学 的 手 段 で あ る。

分 光 法 の も とは 、 可 視 光 の 放 出 あ るい は 吸 収 を研 究 す る分 野 で あ っ た が 、 光(可 視 光) が 電 磁 波 の 一 種 で あ る こ とが 判 明 した19世 紀 以 降 は 、 ラ ジ オ 波 か らY線 ま で 広 く電 磁 波 の 放 出 あ る い は 吸 収 を測 定 す る方 法 を 分 光 法 と呼 ぶ よ うに な っ た 。 ま た 光 の発 生 、 ま た は 吸 収 ス ペ ク トル は 、 物 質 固 有 のパ ター ン と物 質 量 に 比 例 した ピ ー ク 強 度 を示 す た め に物 質 の 定 性 あ る い は 定 量 に 、 分 析 化 学 か ら天 文 学 ま で 幅 広 く応 用 され 利 用 され て い る。

最 も一 般 的 な 分 光 法 は 電 磁 波 を 測 定 す る 方 法 で あ る が 、 用 い る電 磁 波 の 波 長 領 域 に よ っ て観 測 で き る現 象 や 用 い る実 験 装 置 が 大 き く変 わ るた め 、 検 出 され る電 磁 波 の 波 長 領 域 に よ る分 類 が しば しば 行 わ れ る 。 ま た 、 測 定 され る物 理 量(吸 収 、 発 光 、 光 散 乱 等)分 光 法 の原 理 、 目的 な ど に よ っ て 細 か く分 類 され て い る。 例 え ば分 子 で は 、 可 視 ・紫 外 光 で は 電 子 状 態 が 、 赤 外 光 で は 振 動 状 態 が 、 マ イ ク ロ波 で は 回 転 状 態 を観 測 す る こ とが で き 、 そ れ

(20)

そ れ 可 視 ・紫 外 分 光 法 、 赤 外 分 光 法 、 マ イ ク ロ波 分 光 法 と よ ばれ て い る。 化 学 反 応 な ど の 解 析 で は 、 測 定 す る物 理 量 が 時 間 に対 して どの よ うに 変 化 す る か を 測 定 す る 時 間 分 解 分 光 が行 わ れ る 。 通 常 の 化 学 反 応 の場 合 、 ス トップ ドフ ロ ー 法 な どを 用 い て急 速 に 試 薬 を 混 合

し、 ス ペ ク トル の 時 間 発 展 を観 測 して 反 応 中 間 体 や 反 応 速 度 を 求 め る。 光 化 学 反 応 の場 合 、 超 短 パ ル ス レー ザ ー を使 用 しス ペ ク トル を 測 定 す る こ とで 、 極 め て速 い 反 応 で あ っ て も進 行 す る様 子 を確 認 す る こ とが で き る。

2‑2‑1蛍 光 分 光 法

蛍 光 分 光 は 光 照 射 等 に よ り試 料 を励 起 し、 そ の後 自然 放 出 に よ っ て 電 子 励 起 状 態 か ら電 子 基 底 状 態 に な る と き に発 す る光 の 強 さを 光 子 のエ ネ ル ギ ー の 関 数 と して 表 す 。 蛍 光 が 発 せ られ る過 程 をJablonskiの ダ イ ア グ ラ ム で 説 明 す る。

一 重 項 状 態

三 重 項 状 態

S

吸 収

基 底 状 態S。

A 振i動 緩 和

「「

蛍 光

内 部 変 換 項 間 交 差

燐 光

■「1 F

/

T

図2‑2.Jablonskiの ダ イ ア グ ラ ム

ま ず 分 子 は 通 常 室 温 で は 電 子 基 底 状 態 の 振 動 サ ブ レベ ル の 基 底 状 態 に ほ とん ど存 在 す る。 これ に 電 子 状 態 問 の エ ネ ル ギ ー に 共 鳴 す る光 を 照 射 す る こ とで 電 子 励 起 状 態 へ 遷 移 さ せ る。 こ の遷 移 は フ ェ ム ト秒 程 度 の 時 間 ス ケ ー ル で 起 こ り、 こ の 間振 動 な どに よ る原 子 核 の位 置 の 変 化 は 無 視 で き る(Frank‑Condonの 原 理)。 ま た 一 般 に 電 子 励 起 状 態 の 平 衡 核 問 距 離 は 電 子 基 底 状 態 よ り も長 い 。 こ の た め 遷 移 の結 果 、 電 子 基 底 状 態 の振 動 励 起 状 態 と重 な りの 大 き い 電 子 励 起 状 態 の 振 動 励 起 状 態 に到 達 す る確 率 が 高 い 。 電 子 励 起 状 態 の 振 動 励 起 状 態 や 第 二 電 子 励 起 状 態 に 到 達 した 分 子 は 、 分 子 内緩 和 や 無 輻 射 遷 移 な どの 多 く の緩 和 過 程 に よ っ て ピ コ秒 の 時 間 ス ケ ー ル で 第 一 電 子 励 起 状 態 の振 動 基 底 状 態 に 戻 る。 こ の 第 一 電 子 励 起 状 態 か らの 自然 放 出 に よ る発 光 が 蛍 光 スペ ク トル で あ る。 こ の発 光 確 率 は ア イ ン シ ュ タ イ ン のA係 数 で 記 述 され 、 個 々 の 分 子 の種 に よ っ て 異 な る が 、 通 常 ナ ノ秒 の 時 間 ス ケ ー ル に よっ て 起 こ る。Jablonskiダ イ ア グ ラ ム か ら も分 か る よ うに 、 発 光 の エ ネ ル ギ ー は 吸 収 の エ ネ ル ギ ー よ り低 エ ネ ル ギ ー に な っ て い る。 こ れ は 、 吸 収 され た 光 よ りも 蛍 光 に よ っ て 発 光 され た 光 の ほ うが 長 波 長 に な る こ と と 同義 で 、 こ の 波 長 の シ フ トを ス トー ク ス シ フ トと呼 ぶ 。 ま た 第 一 電 子 励 起 状 態(一 重 項)か ら励 起 三 重 項 状 態 へ と移 行(項 問 交 差)

参照

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