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多点同時振動計測と機械学習を用いたい損傷判定手法に関する研究

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Academic year: 2022

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多点同時振動計測と機械学習を用いたい損傷判定手法に関する研究

愛媛大学大学院 学生会員 ○秋山大誠 横河技術情報 正会員 蔵本直弥 愛媛大学大学院 正会員 大賀水田生 愛媛大学大学院 正会員 全邦釘

1.序論

現在,我が国では急増する老朽化橋梁に対する早急な対応が急務となっている.従来の維持管理では事後 保全が行われていたが,今日の我が国の経済状況により事後保全は難しく,建て替える構造物は最小限に抑 え,補修・補強により維持管理を行っていくことが望まれている.維持管理においては健全度評価が重要な テーマとなっており様々な方法が提案されているが,現状は点検技術者による目視点検が主流であり,専門 知識や豊富な経験に左右されて評価がばらつくことが懸念される.従って,定量的かつ客観的な評価の確立 が必要となってくる.

そこで本研究では,まず実験及び数値解析により,得られた応答加速度から損傷の有無による振動特性の 差異を明らかにした.その後,有限要素解析を用いて様々な損傷状態を模擬したモデルを多量に作成し,実 験及び数値解析から得られた結果を基にモデルから得られる

特徴量を選定して,機械学習を用いて損傷検知システムの構 築を行った.このシステムにより,健全度が未知の構造物に 対する損傷検知ができ,客観的な健全度評価が可能となる.

2.振動特性

アルミニウム製の I 型断面供試体に対して,鋼構造物の代 表的な損傷であるき裂や減肉を模擬したものを下フランジに 与え,衝撃載荷試験を行うことにより応答加速度を取得し,

損傷の有無による振動特性の比較を行った.結果,健全時の 固有振動数や対数減衰率に対して,損傷供試体ではこれらの 変化が確認された.また,固有振動数や対数減衰率は,損傷位 置や損傷種によって変動することが確認された.しかし,こ の関係性は供試体数が少ないため確実とはいえない.そこで 有限要素解析を用いて損傷と固有振動数及び対数減衰率の関 係性について検証を行った.結果,特に固有振動数において 一定割合での変化が見られ,図-1~3 に示すように損傷位置や 程度,種類による変化が確認された.しかし,そこから損傷箇 所や程度を検知することは難しく,定量的に健全度評価がで きるとは言い難い.そこで,機械学習を用いることによって,

損傷の有無による応答加速度や固有振動数の変化から規則性 を検出し,検出した規則性を基に判定アルゴリズムを作成し,

定量的な健全度評価を次項で行う.

3.損傷判定手法の構築

振動特性より損傷の有無は検知できるが,その指標から損 傷率と損傷箇所を同時に得ることは必ずしも容易ではない.

そこで,定量的な健全度評価を行うため,機械学習を用い る. 機械学習とは,多量のデータ内に潜む規則性を見つけ 出し,その規則性を基に未知のデータに対する結果を予測する

図-1 損傷位置による固有振動数の変化

1 2 3 4 5 6 7

120 122 124 126 128 130 132

損傷箇所

固有振動数 (Hz)

き裂 減肉

5 10 15

120 122 124 126 128 130 132

き裂幅 (mm)

固有振動数 (Hz)

計測点2 計測点4

1 2 3 4 5 6 7 8 9

122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132

減肉量 (mm)

固有振動数 (Hz)

計測点2 計測点4

図-2 き裂幅による固有振動数の変化

図-3 減肉量による固有振動数の変化 jsce7-058-2016

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ものである.学習方法は多種多様であるが,本研究においては,入力データより損傷種や損傷率を正しく予 測するため,決定木とニューラルネットワークを用いる.決定木とは単純な識別規則を組み合わせて複雑な 識別境界を得る分類器であり,ニューラルネットワークとは人間の脳を模式化したものであり回帰に長けた 手法である.両者は教師あり学習に分類されるため,入力と出力の2種類のデータが学習において必要とな る.その学習には多量のデータが必要となるため,本研究では有限要素解析を用いて作成した.有限要素解 析では,供試体をモデル化し,モデルの下フランジ上にき裂や減肉を発生させ,多数の損傷モデルを作成す る.そして,入力データとして,衝撃載荷試験を模擬した動解析を行うことにより複数点で応答加速度を取 得し,取得した応答加速度より特徴量を算出する.本研究では,特徴量として,損傷箇所付近で変化率が大 きくなる特徴を持つ応答加速度の最大値の変化率,損傷の増大に伴い変化率が大きくなる特徴を持つ応答加 速度の分散値の変化率,損傷箇所や程度によって変化する特徴を持つ固有振動数を用いた.一方,出力デー タは各計測点付近における損傷種及び損傷率を用いている.以上の入出力データを用いて機械学習により,

損傷判定システムの構築を行った.

システム構築後,leave-one-out交差検証を用いて未知のデータに対する精度検証を行った.1種類の特徴量 を入力データとしたとき,判定精度はそれぞれ8割を超え,3種類を入力データとした場合,約9割の精度 が得られた.

4.損傷判定結果

損傷判定システムを用いて,実構造物である供試体に対する実用性の検証を行った.損傷供試体に対して 衝撃載荷試験を行うことにより応答加速度を取得し,取得した応答加速度より特徴量を算出し,損傷判定シ ステムに適用させることによって損傷箇所や程度を予測させる.上記 3種類の特徴量より,1 種類の特徴量 を用いたシステムによる予測結果では,応答加速度の最大値の変化率が減肉検出に有効であり,応答加速度 の分散値の変化率がき裂検出に有効であることが確認された.3 種類の特徴量を用いた損傷判定システムの 予測結果を図-4,図-5 に示す.2 種類の損傷を有する供試体とも,損傷を検知出来ており,また未検出もな く,損傷率においても正解値と近い値が得られている.これより,損傷判定システムは損傷検知において有 効性が確認された.

5.結論

(1) 健全供試体と損傷供試体の2種類の供試体を用いて衝撃載

荷試験を行い,それぞれの振動特性を調べた結果,固有振 動数や対数減衰率に変化が確認できた.特に固有振動数に おいては一定割合での変化が見られた.

(2) 構築した損傷判定システムに対して,交差検証による未知

のデータに対する精度検証を行った結果,1種類の特徴量 を用いた場合8割を超える精度が得られ,複数の特徴量を 用いた場合は約9割の精度で損傷判定が可能であった.

(3) 供試体に対して,損傷判定システムを適用させた結果,未

検出の損傷は無く,高精度で損傷判定を行うことができた.

参考文献

1) 土木学会:木曽川大橋の斜材の破断からみえるもの, 土木 学会誌, Vol93, 1月号, 2008.

2) M.Biswas, A.K.Pandey, and M.M.Samman:Modal Technology for Damage Detection of Bridges, Bridge Evaluation Repair and

Rehabilitation, Vol.187, pp161-174, 1990. 0 1 2 3 4 5 6 7

20 40 60 80 100

計測点

損傷率 (%)

予測結果 正解値

1 2 3 4 5 6 7

0 20 40 60 80 100

計測点

損傷率 (%)

予測結果 正解値

図-4 き裂損傷箇所予測結果

図-5 減肉損傷箇所予測結果

jsce7-058-2016

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参照

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