博 士 ( 工 学 ) 渋 谷 秀 悦
学 位 論 文 題 名
ハイブリッド型交通流シミュレーションモデルの開発と評価
学 位 論 文 内 容 の 要旨
交通渋滞は、現在日本 のみならず世界各地でみられる交通問題となっている。 また、
交 通渋滞によってもたら される影響は多方面にわたり、社会問題、環境問題へと 発展す る までに至っている。こ のような交通渋滞を解消する方策は、現在複数の官公庁 をはじ め として、地方自治体、 企業によりいろいろなアプローチで試みられている。そ の中で も シミュレーションによ る交通状況を推定しての対策は、基本的に在来の施設を 利用す る ので、道路建設とぃっ た路線の新設等、他の解決策に比べて費用が安く済むの で積極 的 に行われている。特に 、信号制御、標識や案内表示による迂回制御などは効果 的な手
、法であり、この手法 を活用するためには、大規模ネットワークに適用可能な高速シミュ レーションモデルが求 められている。
実際にシミュレーショ ンが実行されている対象域の範囲は、その目的、用途に よって 様 々である。それに応じ て、採用する交通流モデルも選択する必要が生じてくる 。そし て そのシミュレーション で基礎となっている交通流モデルは、アプリケーション の形を 含 め幅 広く 利用 され てい るモ デル とし てマ ク ロモ デル とミ クロ モデ ルの2つに 大別 さ れ る。ミクロモデルは、 追従理論を用いて車両の運転者による個々の車両の相互 の影響 を 基本に置いているのに 対して、マクロモデルは、流体力学理論を用いて交通流 を圧縮 できる媒体とみなして 連続の定理に当てはめている。
現在利用されてい るバソコン対応の汎用型シミュレーションソフトの多くにも、基本 的 にこれらどちらかのモ デルが組み込まれてはぃる場合がほとんどである。とこ ろが、
ミ クロ モデ ルの 場合 は車 両一 台毎 に様 々を 処 理を して いるため大規模なネット ワーク の シミュレーションでは 計算機による限界があること、マクロモデルの場合は逆 に車両 を 流体的に捉えて計算す るので一台毎の評価値を算出するのが難しいこと、とぃ うよう に それ ぞれ に短 所が みら れる 。この点をふまえ,こ れら2つのモデルからそれぞ れの長 所 を組み合わせた新しい 交通流モデルが、ドイツ国内の高速道路網における交通 制御シ ス テムの開発、評価、利 用のために設計され、DYNEMOモデル(DYnamic NEtwork MOdel) と し て 1987年 に Wiedemannと Schwerdtf egerに よ り 提 唱 さ れ た 。 本研究ではまず、こ の交通流モデルDYNEMOに示されているハイブリッドタイ プの交 通 流理論が,日本の交通 状況に適用できるかを実験を通して比較、検討をおこな う。そ して、その結果を踏 まえた上で日本の市街道路網にも、ハイブリッド型のモデルを応用 で きるか否かを検討して いく。それらの結果から、ハイブリッドモデルに適した 適用例 を 提唱 し、 また 、DYNEMOモデ ルに おい ても 他 の交 通状 況に適用させるにはいく つか問 題 点がみられるため、そ れらを指摘した上に独自の改良を加え、ハイプリッドの 理論と 特 長 を 活 か し た 新 た な モ デ ル を 構 築 し 、 そ の 適 用 を 併 せ て 検 討 す る 。
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本 論 文 は8章か ら 構 成さ れ てお り 、 その 内 容は 以 下 によ う に 要約 さ れる 。 第2章では、交通流シミュレーションの発展の経過をミクロモデル、マクロモデル、
ハイブリッドを含むその他のモデルと3つのタイブ別に説明した上、それぞれのアルゴ リズムの相違点や特長を明らかにし、交通流シミュレーションモデルにおけるハイブリ ッドモデルの位置付けを明確にする。
第3章では、本研究で扱うハイブリッドモデルのべースとなっている、シミュレーシ ヨ ン モ デ ル DYNEMOの 詳 細 を 、 そ の ア ル ゴ リ ズ ム を 中 心 に 説 明 す る 。 第4章では、DYN EMOモデルでも述ぺられたハイブリッドの理論と特長を活かし、発 展させた新たなモデルとして提唱するHybridモデルの概要と、DYN EM0モデルからの改 良点を、高速道路用、街路網用、工事区間を含む路線用と、適用範囲に応じてそれぞれ 説明する。
第5章では、DYN EM0モデルで予め必要とされているハラメータが、観測データから 取得するのが困難であるため、最適化手法の導入によりそれらの値を決定する手法を述 ぺる。また、今回採用した最適化手法であるBoxアルゴリズムについてもその詳細を述 |
べている。
第6章では、第3章で述ぺたDYNEMOモデルの検証として、元々ドイッの高速道路網 のために開発されたこのモデルの、日本の高速道路への適用を道央高速道、首都高速道 の2例についてそれぞれ説明する。道央高速道ではビデオ観測の結果から集計した交通 量と平均速度を地点ごとに比較した。首都高速道では,感知器の平均速度データを時間 軸と空間軸に沿ってグラフ化して比較し,渋滞の延伸などの複雑な交通現象の再現性を 含めて検討した。また、第4章で提唱したHybridモデルと、第5章で紹介した最適化 手法を組み合わせてのシミュレーションを、道央高速道、首都高速道の観測データを用 いて検証している。
第7章では、DYNEMOモデルの各車両とセグメントのミクロとマクロのバラメータを 両方持ち合わせている特長を活かして、ー般街路網への適用を信号交差点の存在により 生じる改良点を中心に説明する。市街路の交通データは十分な観測.入手が困難である た め , 他 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン と の 評 価 値の 比 較に よ る 検討 を 行っ て い る。
第8章の結論は、前章までに得られた結果を総括し、本論文の成果としている。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 森 吉 昭 博 副 査 教 授 伊 達 惇 副 査 教 授 藤 田 睦 博 副 査 教 授 佐 藤 馨 一 副 査 助 教 授 中 辻 隆
学 位 論 文 題 名
ハイブリッド型交通流シミュレーションモデルの開発と評価
交通 渋滞 は、 現在 日本 のみ なら ず 世界 各地 でみられる 交通問題となっている。また、
交 通渋 滞に よっ ても たら され る影 響 は多 方面 にわたり、 社会問題、環境問題へと発展す る まで に至 って いる 。こ のよ うな 交 通渋 滞を 解消する方 策は、現在複数の官公庁をはじ め とし て、 地方 自治 体、 企業 によ り いろ いろ なアプロー チで試みられている。その中で も シミ ュレ ーシ ョン によ る交 通状 況 を推 定し ての対策は 、基本的に在来の施設を利用す る ので 、道 路建 設と ぃっ た路 線の 新 設等 、他 の解決策に 比べて費用が安く済むので積極 的 に行 われ てい る。 特に 、信 号制 御 、標 識や 案内表示に よる迂回制御などは効果的な手 法 であ るた め、 この 手法 を活 用す る ため に、 大規模ネッ トワークに適用可能な高速シミ ユ レー ショ ンモ デル の開 発が 、望 ま れて いる 。
実際 にシ ミュ レー ショ ンが 実行 さ れて いる 対象域の範 囲は、その目的、用途によって 様 々で ある 。そ れに 応じ て、 採用 す る交 通流 モデルも選 択する必要が生じてくる。そし て その シミ ュレ ーシ ョン で基 礎と な って いる 交通流モデ ルは、アブリケーションの形を I丶
含 め幅 広く 利用 され てい るモ デル と して マク ロモ デル とミ クロ モデ ルの2つに大別され る 。ミ クロ モデ ルは 、追 従理 論を 用 いて 車両 の運転者に よる個々の車両の相互の影響を 基 本に 置い てい るの に対 して 、マ ク ロモ デル は、流体力 学理論を用いて交通流を圧縮で き る媒 体と みな して 連続 の定 理に 当 ては めて いる 。
現在 利用 され てい るバ ソコ ン対 応 の汎 用型 シミュレー ションソフトの多くにも、基本 的 にこ れら どち らか のモ デル が組 み 込ま れて はぃる場合 がほとんどである。ところが、
ミ クロ モデ ルの 場合 は車 両一 台毎 に 様々 な処 理をしてい るため大規模なネットワークの シ ミュ レー ショ ンで は計 算機 の限 界 があ るこ と、マクロ モデルの場合は逆に車両を流体 的 に捉 えて 計算 する ので 一台 毎の 評 価値 を算 出するのが 難しいこと、とぃうようにそれ ぞ れに 短所 がみ られ る。 この 点を ふ まえ 、こ れら2つ のモ デル か らそ れぞ れの長所を組 み 合わ せた 新し い交 通流 モデ ルが 、 ドイ ツ国 内の高速道 路網における交通制御システム の 開発 、評 価、 利用 のた めに 設計 さ れ、DYN EM0モデ ル(DYnamicNEtwork MOdel)とし て1987年にWiedemannとSchwerdtf egerによ り提 唱さ れた 。
本研 究で は、 この 交通 流モ デルDYNEMOに示 されている ハイブリッドタイプの交通流理
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論が、日本の交通状況に適用できるかを実験を通して比較、検討を行っている。そして、
その結果を踏まえた上で日本の市街道路網にも、ハイプリッド型のモデルを応用できる か否かを検討している。それらの結果から、ハイブリッドモデルに適した適用例を提唱 し、また、DYNEMOモデルにおいても他の交通状況に適用させるにはぃくつか問題点がみ られるため、それらを指摘した上に独自の改良を加え、ハイブリッドの理論と特長を活 か し た 新 た な モ デ ル を 構 築 し 、 そ の 適 用 を 併 せ て 検 討 し て い る 。
本研究の作業内容は以下のように示される。
まずDYNEMOモデルの検証として、日本の高速道路への適用を道央高速道、首都高速道 の2例についてそれぞれ検証している。渋滞の延伸などの複雑な交通現象の再現性を含 めて比較検討している。
そして、Hybridモデルと最適化手法を組み合わせてのシミュレーションを、道央高速 道、首都高速道の観測データを用いて検証している。
また、一般街路網への適用を信号交差点の存在により生じる改良点を中心に検証して いる。
本研究における主要な成果は以下のように要約される。
1)高速道路用に開発されたDYNEMOをべースとしたハイブリッドモデルの作成を行った。
2)交通流のメカニズムが複雑で独特の交通現象が発生する渋滞域において、モデルの再 現性の精度向上を図るために速度モデルを改良した。
3)K−V曲線のバラメータを従来の直接観測する方法に替えて、車両感知器データから シ ミ ュ レ ー シ ョ ン と 最 適 化 手 法 を 組 み 合 わせ て 推 定す る 手法 を 確 立し た 。 4)上記の推定手法は従来の方法では推定できなかった、K―V曲線以外の他のモデルハ ラメータの推定も可能にした。
5)ハイプリッドモデルのバラメ一夕推定は、自由流だけでなく渋滞流に対しても精度の 高さを示した。
6)市街地交通流へ適用するため信号交差点処理のモデル化を行った。交差点内は方向別 に走路を定義し、その部分にはミクロモデルを組み込むことによってハイプリッド化 を実現させた。
これを要するに、著者は、適用範囲の幅広いハイブリッド型の交通流シミュレーショ ンモデルを開発し、また特にハイプリッドモデルを用いた渋滞流の再現や検証に関して は有益な新知見を得ており、土木工学、特に交通工学の発展に寄与するところ大である。
よって著者は、北海道大学博士.(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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